日本共産党

2005年8月11日(木)

衆議院選挙にのぞむ日本共産党の各分野の政策

5.政官財のゆ着と利権の構造にメスを入れ、浪費をあらため、生活・環境・安全優先の公共事業への転換を

 政府は、「公共事業予算を削減する」といいながら、高速道路や空港などの巨大開発には予算を集中しています。そのうえ、ゼネコンや大企業の談合が横行し、国民の税金を無駄づかいしています。その一方で、福祉、防災、環境など、国民の安全や暮らしに直結する公共事業の予算は、削られる一方です。こうした巨大開発中心の公共事業のあり方をあらため、生活・環境・安全優先の公共事業に転換します。

大型開発の浪費から、生活・環境・安全優先の公共事業への転換

大型開発の浪費にメスを入れる

 政府は、これまでの公共事業の枠組みとなっていた「全国総合開発計画」を廃止しましたが、これは決して公共事業のムダをなくすことではなく、「グローバル化への対応」「選択と集中」などと称して、国際空港、スーパー中枢港湾、大都市高規格道路整備などの大規模開発事業に、いっそう予算を注ぎ込もうとするものです。

 関西国際空港の二期事業は、2000年度から07年度まで毎年平均、発着数が1・7%、旅客数が2%増えるという需要予測をもとにしていますが、この4年間の実績は、それぞれ年平均マイナス4・6%とマイナス7%です。それにもかかわらず、今年も500億円以上の巨額の事業費が注ぎ込まれています。八ッ場ダム、川辺川ダムなど、必要性がなくなった巨大ダム計画にも歯止めがかかりません。

 大型公共事業を総点検して、事業の中止を含む大胆なメスを入れ、ムダと環境破壊の公共事業をやめさせます。そのために、計画段階、事前、着工後のそれぞれの段階で、事業の必要性、採算性、環境への影響という3つの角度から、住民参加と徹底した情報公開のもとで、公共事業を評価する「事業評価制度」を法制化します。

 政府が目玉にしている「都市再生」は、一部の大都市に公共事業を集中させ、バブル期に計画され頓挫していた開発を公共事業の後押しで復活させようというものです。すでにオフィスビルや大型マンションの供給過剰が指摘されている中で、さらに巨大ビルの建設を促進すれば、新たなムダや環境破壊、住民の追い出しにつながります。こうしたムダに歯止めをかけます。

道路特定財源を一般財源化する

 ガソリンにかかる揮発油税や、自動車重量税などの道路特定財源は、国の分だけでも3・5兆円、地方の分を含めると5・8兆円にものぼります。道路特定財源は、1953年に、国道・県道の舗装率は5%以下しかなく「整備が急務だ」という理由でつくられた制度です。舗装率が96%を超えた現在も、この制度を続ける理由はまったくありません。使途が限定されているために、税収が増えれば増えただけ道路をつくるというように、ムダを拡大する原因の一つになっています。来年には、「特定財源が余ってしまう」状況なのに、政府は見直しを行おうとしていません。

 道路特定財源制度を廃止し、社会保障財源にも使えるようにします。これによって、公共事業の予算自体についても、道路優先の固定的な配分を改め、生活密着型事業への配分を増やすことができるようになります。

 政府は、道路公団を民営化して、そのもとでムダな高速道路をつくり続けようとしています。採算の合わない高速道路建設には、巨額の道路特定財源が投入されることになります。高速道路整備計画を廃止し、新たな建設を凍結して無駄を見直すなど、浪費を抜本的にあらためます。

住宅・福祉・防災・環境・交通安全など、暮らしに密着した公共事業を拡充する

 大型開発に予算が集中される一方で、暮らしに密着した、本当に必要な公共事業の予算は年々削られています。

 政府は、住宅建設計画法や公営住宅法など住宅関連法を改悪し、公共住宅政策からの撤退を加速しています。政府も、公営住宅が176万戸足りないことを認めているのに、新規建設をストップしているため、応募倍率は全国平均で8倍、大阪や東京では10〜23倍にもなっています。「生活が苦しい」という世帯が増大する中で、公共住宅の建設から手を引くなどということは許せません。低家賃の公共住宅の供給を大幅に増やします。

 巨大ダム建設ばかりが重視される一方で、堤防改修や河川の浚渫(しゅんせつ)など、日常的な河川整備は遅れています。こうした洪水対策や、地震などの防災対策を強め、歩道や自転車道の整備、鉄道の安全設備や「開かずの踏み切り」解消など、交通安全対策を強化し、国民の命をまもる事業を進めます。

 負担と環境に配慮した下水道・合併浄化槽、特養ホームや保育所など福祉関係施設の新増設、バリアフリー化、自然エネルギーの開発、「みどりのダム」である森林の保全など、福祉・環境分野の公共事業を、大いに推進します。

 公共事業の内容を転換するためには、地方自治体が住民の要求に対応して、ほんとうに必要な事業に優先順位を置いて事業を選択できるようにすることが大切です。ところが、政府は「公共事業の重点化」と称して、日常的に必要な規模の小さい事業は補助対象からはずす方向を進めています。

 公共事業補助金は、災害復旧など特別な場合を除いては、個所づけや規格の限定なしに、地方が住民に必要な事業に裁量を働かせて使えるようにきりかえます。

中小建設業者の仕事を確保する

 公共事業の内容を生活密着型に転換することは、中小業者の仕事を確保し、地域経済への波及効果をもたらすうえでも重要です。

 生活密着型の事業は、大型開発事業に比べて、中小企業の受注が格段に多くなります。東京都の発注した臨海副都心関連の大型工事では大企業の受注が9割ですが、福祉・住宅・教育関連の工事では中小企業が8割を受注しています。雇用効果や経済への波及効果も、生活密着型事業の方が大きく、公共事業の転換は、経済にも良い効果をもたらします。

 全国の市町村で実施されている住宅リフォーム助成制度は、助成額の20倍以上の工事が実施され、関連産業を含めると、その2倍以上の経済効果を生んでいるといわれます。これを国が支援することや、遅れている学校耐震化工事を急ぐことなどによって、中小企業の仕事を増やします。全国で進められている、修繕や補修などの簡易な工事は地域の中小企業を活用する小規模工事の登録制度をひろげます。

 大手ゼネコンが小規模な公共事業にも進出して、ダンピングや下請けコスト削減など、中小企業の経営を圧迫しています。1億円以下の規模の工事については、地元業者など地域要件をつけた、条件つき一般競争入札をすすめます。政府は、官公需法による中小企業への発注金額目標の設定をなくせという大企業の要求にこたえて、その検討を開始しているといわれますが、こうした動きに反対します。

公共事業をめぐる利権の構造にメスを入れる

談合をくりかえす大企業の責任は重大

 年間3500億円にものぼる史上最大規模の橋梁工事での談合に続いて、市場規模1000億円もの汚泥再生施設等の入札談合が発覚しました。いずれも10年以上前から継続してきたといわれ、国民に与えた被害は莫大な金額です。このような浪費の構造に、抜本的にメスを入れなければなりません。

 これらの談合に登場したのは、名だたる財界の中心企業です。三菱重工やJFEエンジニアリングなどは、橋梁談合で2回も起訴されたうえに、汚泥再生施設でも摘発されました。日本経団連の奥田会長は、「談合は慣習。一気になくすのは難しい」と容認するしまつです。犯罪行為を繰り返しても何とも思わない、こうした財界・大企業の責任は重大です。

独占禁止法を強化して、談合企業に厳しい制裁を

 公正取引委員会は、入札談合による不当利益を受注額の18%前後と推計していますが、独占禁止法違反で摘発されても、課徴金は6%にすぎず、談合が「やり得」という状態がありました。昨年、課徴金を引き上げる法案が国会に提出されましたが、経団連など財界は「高すぎる」として反対し、民主党も、財界の意をうけて、企業への制裁金を大幅に減免する対案を提出しました。この独占禁止法の改正は、今年4月に成立し、06年から課徴金が10%になりますが、政府が当初想定していたよりも引上げ幅が圧縮されてしまいました。

 入札談合をなくすためには、違反企業への課徴金を18%に引き上げるなど、欧米なみの厳しい制裁措置を実施すべきです。

天下りと企業献金禁止で、官製談合を根絶する

 談合を手助けしているのが、天下りと企業献金です。

 道路公団をめぐる談合では、発注者側の公団副総裁や理事が逮捕され、受注企業に天下ったOB官僚と結びついた「官製談合」の実態が浮き彫りになりました。3年前につくられた「入札談合等関与行為の排除及び防止に関する法律」は、事件解明を各省庁や公団などの内部調査に頼り、罰則もないなど、不十分なものです。そのことは、公団内に設置された「談合等不正行為防止策検討委員会」のメンバーであった副総裁と理事が逮捕された、今回の経過をみても明らかです。第三者機関による調査など、防止法の強化をはかります。

 官製談合の根源になっているのは、高級官僚などの天下りの横行です。現行では、離職後2年間、民間企業への天下りが規制されているだけで、それ以降は野放しです。公団の役職員については、何の規制もありません。日本共産党は、10年前から、特殊法人を含めた天下り規制法案を提出してきました。事件が起きたときだけの「自粛措置」にとどまらず、官公庁や公団などの一定以上の地位役職員については、在任時の業務と関わりのある企業等への天下りを法律で禁止します。

 公共工事の発注者である大臣を含め、議員・政治家が受注企業から献金を受け取っていることも、談合が根絶できない原因です。橋梁工事の談合組織参加企業からの自民党への献金は、11年間で16億円にものぼり、小泉内閣の大臣・副大臣のうち7人が、これらの企業から政治献金を受け取っていました。本来、企業献金は禁止すべきですが、少なくとも、国民の税金還流にあたる官公需受注企業からの献金は、ただちに禁止します。


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