2004年2月24、25日「しんぶん赤旗」
2004年 日本共産党国会議員団
日本共産党国会議員団が二十三日に発表した二〇〇四年度予算組み替え要求の全文は、次のとおりです。
政府は、「景気は着実に回復している」というが、経済の実態は、それとはほど遠い。輸出大企業などの収益が急増しているだけで、肝心の国民の生活は、勤労者世帯の年収が小泉内閣の三年間で四十三万円も落ち込んだことに見られるように、依然として深刻な事態となっている。国民の暮らしが元気にならなければ、日本経済が本当に回復に向かうことはできない。そのための対策こそが、政府の経済運営に求められている。
日本経済の回復を本当に実現するためには、公共事業や軍事費などの浪費を削り、年金をはじめとした社会保障や、雇用・中小企業・農業対策、国民の暮らしのために予算を重点的に配分することが必要である。
ところが、二〇〇四年度予算案は、公的年金制度の大改悪をはじめ、庶民増税などによって、今後毎年一兆円以上の負担を国民に押しつける内容となっている。小泉首相の任期として予定されている二〇〇六年度までには負担増加額は年四兆円を超える。これまでに実施されたものを合わせれば、七兆円以上の負担増である。これでは、国民の暮らしはますます苦しく、不安は増大することになる。
また、政府は、多くの国民の反対の声を無視して、イラクへの自衛隊派兵を強行した。これは、いまなお戦争状態がつづいている他国に、重火器で武装した自衛隊を派兵するという、戦後初めての道に踏み込むものである。当のアメリカの調査団長の「大量破壊兵器は存在しなかった」という証言によって、イラク戦争そのものの大義が根底から崩れ、国際法を無視した侵略戦争であったことが、ますます鮮明になっている。イラクへの自衛隊派兵は、この侵略戦争と不法な占領に加担するものであり、ただちに中止・撤退し、関連経費を予算から削除すべきである。
この組み替え案は、歳出の浪費の削減(約五兆円――道路特定財源の一般財源化・三兆四千億円、その他公共事業の見直し・三千億円、軍事費削減・五千億円など)や大企業・資産家減税の中止(一兆五千五百億円)によって、六兆五千億円の財源を生み出し、これを社会保障関係(三兆四千億円)をはじめ教育、雇用、中小企業、農業・食料、地方財源の拡充などに充てるとともに、庶民増税の中止(五千五百億円)を行うものである。
以上の立場から、政府予算案について、次のような組み替えを行うことを要求する。
この間の国会審議を通じて、政府のイラク派兵の根拠はすべて崩壊した。自衛隊のイラク派兵を中止し、現地にいる自衛隊はただちに撤退させる。〇三年度予備費での自衛隊派兵経費(二百六十八億円)の執行を停止するとともに、〇四年度予算に計上された派兵経費百三十五億円を全額削除する。
政府開発援助(ODA)予算に含まれる「イラク復興支援」経費は、米英の占領支配の枠組みのもとで投入されれば、結局、占領支配を支える役割を果たすことになる。占領支援の枠組みでなく、国連を中心とした平和の枠組みの中で、有効な復興支援になるようなものに切り替えるべきである。
日本では、国民が納めた税金のうち、社会保障の公費負担として戻ってくる比率はわずか29%で、ドイツ(44%)、イギリス(43%)の三分の二しかない。予算配分の重点を思い切って社会保障に移す大転換を行うことが必要である。
基礎年金の国庫負担を現行の三分の一から二分の一に引き上げることは、四年も前に法律に明記された国民への約束である。ところが政府はこの完全実施を六年後に先送りし、〇四年度予算では、わずか二百七十二億円の増額にとどめ、しかも年金受給者への増税をその財源に充てようとしている。法律通り本年四月から国庫負担率を二分の一に引き上げるため、必要な二・七兆円の予算を増やす。そのための財源は消費税などの負担増ではなく、道路特定財源の一般財源化など、歳出の浪費をなくす改革によって生み出す。今年十月から実施が予定されている年金保険料の引き上げと、年金給付水準の引き下げ措置を中止する。政府が予定しているマイナス0・3%の物価スライドも凍結する。無年金障害者の救済制度を早急に創設する。
昨年、サラリーマン本人の医療費窓口負担が三割に引き上げられた結果、「受診を控えた」患者が六割にのぼり、八割が「今後の病状、健康に不安」を感じている(昨年九月、全国保険医団体連合会の調査)。このような受診抑制による健康悪化を防ぐために、窓口負担を二割に引き下げる。国民健康保険の国庫負担を増額し、低所得者を中心に窓口負担と保険料負担の軽減をはかる。老人医療の自己負担も軽減する。
特別養護老人ホームの入居待ちをしている人が全国で二十三万人(昨年二月、日本共産党国会議員団の調査)にものぼっている。〇四年度の特養ホームなどの介護施設の整備費は、〇二年度補正を含めた〇三年度分に比べて三割近くも減らされたために、地方自治体の整備計画に重大な支障が生じるおそれがある。少なくとも前年度以上のテンポで特養ホームやショートステイなどの整備がすすめられるよう、予算を拡充する。障害者支援費予算を拡充する。
生活保護の生活扶助基準の0・2%引き下げなど、低所得者の命綱を削減するような措置や、児童扶養手当、原爆被爆者手当などのマイナス0・3%物価スライドは中止する。政府は、生活保護の老齢加算を段階的に削減・廃止しようとしているが、この加算措置は基本給付の低さを補う措置であり、削減は中止すべきである。
政府の計画では、消費税の免税点引き下げ(法人は四月から、個人事業者は〇五年から実施)、配偶者特別控除の廃止(所得税は十二月の年末調整時に影響、住民税は〇五年度)、年金課税の強化(〇五年二月支給分から)、住民税均等割の増税など、昨年決められたものも含めて、今後、庶民増税が目白押しとなっている。これによる増税額は総額で一・六兆円を超え、平均的なサラリーマン標準世帯の増税額は年間六万円にものぼる。年金課税の強化は、一部の高額年金受給者だけでなく厚生年金受給者の半分以上が増税になり、それより年金額が低い世帯でも計算上所得が増えることから、国民健康保険料が増加する場合が生ずる。住民税が新たに課税されれば、連動してそれを上回る介護保険料の負担増になる。年金給付カットの中での増税は、深刻な影響を及ぼすことになる。このような庶民増税の計画は中止する。
政府がすすめている地方財政の「三位一体改革」は、三年間で約四兆円もの国庫補助負担金を削減する第一歩であり、地方自治を破壊し、住民サービスの大幅な後退をもたらすものである。来年度は「一兆円補助負担金削減」を行う一方、「税源移譲」は四千五百七億円にとどまったうえに、地方交付税は一兆円以上も削減する。地方自治体からは、「これでは『三位バラバラ改悪』だ」(全国知事会会長の梶原拓岐阜県知事)と厳しい批判の声があがっている。
福祉や教育への国の責任を放棄し、地方自治体と住民に負担を押しつけるだけの「改革」ではなく、本当に地方自治体の自主性を高め、住民の暮らし向上のための財源を拡充するような改革をすすめることが必要である。
義務教育費国庫負担金(二千三百九億円)や公立保育所運営費負担金(千六百六十一億円)の削減は、ほんらい国が果たすべき責任を弱め、住民サービス低下をもたらすおそれがある。このような負担金の削減(一般財源化)は中止する。浪費を助長し「個所づけ」や入札をめぐる利権の温床となっている公共事業の補助金を総合補助金制度に改めることこそ、補助金改革の中心にすべきである。
削減の余地のほとんどない義務的負担金を一般財源化して交付金や所得譲与税に置き換えても、住民サービス拡充のための財源が増えることにはならない。税源移譲は、実際に地方自治体の福祉・教育などの財源が拡充されるように行うべきである。また、税源移譲によって自治体間の格差が拡大するため、これを補うため、地方交付税などの財源保障・調整機能を強化する。
地方交付税が大幅に削減され、交付税見合いの臨時財政対策債の減少分を含めれば、地方財源への圧迫は約三兆円にもなっている。多くの自治体が財源不足に陥り、関係者の悲鳴があがっている。地方自治体が必要な財源を確保できるようにするため、地方交付税の削減をやめ、少なくとも前年度なみの交付税規模を確保できるようにする。
市町村合併の是非は、住民の自主的な判断にもとづいて決定すべきである。「段階補正」を縮小して小さな自治体への交付税の配分を減らす財政的圧力によって、政府が合併を押しつけることは、「地方分権」の看板にも反するものである。交付税の段階補正を元に戻す。市町村合併推進のための広報啓発事業費や、都道府県が市町村に合併を押しつけるための「支援事業費」予算は廃止する。
政府は、昨年十二月の失業率が4・9%になったことを「改革の成果」などというが、失業率が5%程度で高止まりしていること自体、深刻な雇用危機が続いていることを示している。しかも、政府統計でも正規雇用は減り続けている。大企業がリストラによって、中高年の追い出しと新規採用の抑制をすすめ、正社員を減らし、パートや派遣、業務請負など、いつ解雇されるかわからない不安定な雇用への置き換えをすすめているためである。雇用不安の増大は、国民の所得を減らし、景気にも深刻な影響を及ぼすだけでなく、生活不安、将来不安の大きな要因になっている。
“仕事がある”ということは、国民の暮らしと社会の基盤であり、安定した雇用の確保は、もっとも重要な政治の使命である。大企業のリストラを野放しに、派遣労働の規制緩和など不安定雇用を拡大する雇用政策をあらため、正規雇用を拡大する、実効ある雇用対策に切り替える。
違法なサービス残業と異常な長時間労働が横行し、男性では五人に一人が、週に六十時間以上、週休二日なら、毎日十二時間以上も働いている。深刻な失業や就職難の一方で、一人で二人分も働かされる状況が広がっている。違法なサービス残業をなくし、百六十万人分の新たな雇用を生み出すようにすべきである。そのために監督官の増員など労働基準行政を強化する。
二十四歳以下の失業率が10・1%(〇三年)と史上最悪になり、新卒者の就職難も最悪の状態が続き、主要一千社の新卒採用は昨年と比べても10%も減る(「日経」調査)など、若者の雇用は深刻である。「フリーター」も増え続け、三十四歳以下の五人に一人にのぼっている。この間、三十四歳以下の正社員の数は、中小企業で三万人程度増えているにもかかわらず、大企業は百八万人も減らしている。政府と大企業の責任で、若者の正規雇用を拡大する。日本の青年雇用対策費は、フランスの四十三分の一、イギリスの十三分の一(GDP比)と先進諸国と比べても極端に低く、これを大幅に増額する。
保育園への待機児童は増え続け、介護や医療でも、現場は深刻な人手不足が続いている。消防士も市町村の目標に対して五万人も足りない。これらを計画的に解消していく。「三十人学級」の実施や複数教員配置などをすすめる。
賃金や労働条件の不当な差別や格差をなくし、理不尽な解雇・雇い止めをやめさせる。社会保険の加入の権利をまもる。派遣労働者が、派遣先で正社員となる道を広げる。
失業者へのつなぎ就労の場、仕事を確保するために、緊急地域雇用創出制度を延長するとともに、抜本的に拡充する。
雇用保険の給付期間の延長、子どもの学費・授業料などの緊急助成制度、住宅ローンのつなぎ融資など、家庭と家族を維持するための対策、失業保険が切れ困窮する失業者への生活保障などの緊急対策をすすめる。
政府が新生銀行に対して投入した八兆円もの公的資金のうち四兆円以上が損失となり、国民の税金で穴埋めされることになる一方で、アメリカの投資組合グループには一兆円もの利益がころがりこむことになった。しかも、その新生銀行がやったことは、価値が目減りした債権の買い取りを政府に要求する「瑕疵(かし)担保条項」をも活用した強引な不良債権処理であり、貸し渋り・貸しはがしや金利引き上げによって、資金繰りに苦しむ中小企業を窮地に追い込むものであった。政府の金融政策が、金融再生にまったく逆行するものであったことは明白である。
ところが政府は、〇四年度を不良債権処理の「集中調整期間」の最終年度として、さらに金融機関への圧力を強めて、ますます中小企業の資金調達を困難にしようとしている。期限を区切って無理やり不良債権を処理するやり方をやめ、中小企業と地域経済を守る金融行政に転換する。銀行の国有化や不良債権の買い取り、地域金融機関の合併促進などの資金源となる「七十兆円の公的資金枠」は廃止する。
中小企業の資金調達を円滑化するため、「資金繰り円滑化借換保証制度」を延長するとともに、借り手の使い勝手のいいものに改善し、地方自治体が同制度を継続できるよう支援する。信用保証協会への補助金を増額し、財政基盤を安定させる特別措置をとる。
銀行の都合だけを優先した「郵政民営化」の検討をやめ、庶民の零細な貯蓄をまもることを目的とした郵便貯金を維持するとともに、郵貯・簡保の資金を地域経済・中小企業に供給する仕組みを強化する。
一般歳出に占める中小企業対策費の割合は、わずか0・36%と史上最低の水準である。事業所数で99%、雇用の約七割を占める中小企業の経営が上向かなくては、現在の大不況から抜け出すことはできない。中小企業対策費を大幅に増額する。
大都市部のものづくり集積への支援など「集積活性化法」にもとづく支援を強化する。厳しい経営環境の中、必死の経営努力を続けている地場産業・伝統的工芸にたいして、事業者に二分の一の負担金を課すなど、産地に重い自己負担を課す補助金改悪が行われる。今必要なのは、新商品開発、販路開拓などの産地の努力を支援することである。補助金改悪を中止し、予算の増額、補助率の引き上げを行う。建設業、サービス業などの大企業による横暴な不公正取引を是正するため、下請代金検査官等を大幅増員する。
超大型ショッピングセンターや郊外型大型店の身勝手な出店や撤退を規制するルールを確立し、商店街の衰退に歯止めをかける。大規模空き店舗対策、駐車場対策、テナントミックス等への支援策を拡充する。コンビニや中小テナントの権利をまもる。
農林水産関係予算案は、依然として公共事業費が半分をしめている。そのうえ、小泉内閣は、コメ政策「改革」と称して、中小農家への助成を削るなど、国の安定供給責任を放棄しようとしている。諫早湾干拓などのむだな公共事業を削減し、欧米諸国では当たり前となっている価格・所得保障を中心とした予算に転換する。国民の食品安全にかんする不安を解消するため、食品安全確保のための検査体制の強化をはかり、肉骨粉などの処分を推進するための助成や、BSE検査や死亡牛の処理経費の生産者負担軽減などを継続し、新たに脊柱(せきちゅう)処理のコストへの助成も実施する。アメリカからの牛肉の輸入再開は、安全性を保障するためにも、全頭検査の実施が不可欠である。
政府は「待機児童ゼロ作戦」といってきたが、認可保育所はわずかしか増えておらず、公立保育所は二年間で三百三十四カ所も減少した。昨年十月時点の待機児童は六万人を超えており、政府の「作戦」の破たんは明白である。定員の「弾力化」の名による詰め込みや、営利企業の参入規制緩和などに頼るやり方ではなく、国の保育所予算を抜本的に拡充して、新増設をすすめ、延長保育・病後児保育などを拡充する。学童保育施設の増設と指導員の待遇改善をはかる。安心して子育てができるよう、全国で地方自治体が取り組んでいる乳幼児医療の無料化を国の制度として創設するとともに、小児救急の体制を確立する。深刻化する児童虐待問題などに対応するため、児童相談所の体制を強化し、市町村の担当窓口が実質的な役割を果たせるようにするために、必要な予算を増額する。
教職員の配置計画を年次計画どおり実施するため、教職員の削減を中止する。国の責任で三十人学級など少人数学級にふみだす。地方自治体が計画している新増改築や耐震化に支障をきたさないよう、公立学校施設整備費の削減をやめ、予算を増額する。国立大学の学費負担を軽減するとともに、無利子奨学金の大幅増枠など奨学金を拡充する。私学助成の一般補助の拡充、就学援助費の増額をはかる。図書館関連補助金の廃止を中止する。
メーカーに廃棄物処理まで責任をもつ「拡大生産者責任」の制度を確立し、大量生産・大量消費・大量廃棄を見直し、資源循環型の社会・経済へと転換する。ダイオキシンをはじめとする環境ホルモンや、シックハウス、シックスクールなど、有害化学物質への対策をすすめる。自動車の排ガス対策を強化して、未認定患者の新たな救済制度を確立するとともに、ディーゼル車排ガス浄化装置のための助成措置を拡充する。政府は京都議定書で約束した温暖化ガス削減の目標達成のめどを立てられずにいる一方、依然として原発偏重のエネルギー政策をすすめている。ところが原発の建設が思うようにすすまず立地交付金が余っているため、原発の周辺地域整備基金を五百三十億円も積み増して七百九十億円にしようとしている。こうした“遊休資金”をふくらますのではなく、省エネルギー対策を徹底し、家庭の太陽光発電への助成を強めるのをはじめ、風力や小水力、太陽熱、地熱、バイオマスなど自然エネルギーを促進する施策に予算を振り替えるべきである。
東南アジアや中国、韓国で発生が確認された高病原性鳥インフルエンザは毒性が強く、人が感染した場合には死亡率が高い。もし国内で流行すれば人命の被害や社会・経済の打撃は深刻である。すでに開発されている感染拡大を防ぐことが可能な抗ウイルス剤の確保を国の責任で行うとともに、時間を要する人間への感染防止用ワクチンの開発と国家備蓄に早急に取りかかるべきである。災害で被害にあった住宅を再建する際の費用や賃貸住宅入居の支援などで、最大二百万円を支給する「居住安定支援制度」の創設は、阪神・淡路大震災の被災者をはじめ全国の災害被災者の個人補償を求める粘り強い運動が実った一歩である。また、三宅島島民への新たな支援が盛り込まれるなど前進面もあるが、被災者全体を対象とする実態にあった支援制度にするために、支給条件の緩和、対象世帯の拡大や支給額の引き上げなど、いっそう踏み込んだ対策が必要である。地震に強いまちづくりをすすめるため、住宅の耐震補強への助成を強めるとともに、消防職員の増員をはじめ必要な消防力の強化を図る。
政府は、国民負担増を批判されると、「財政が危機的状況だから負担増はやむを得ない」と居直っている。その一方で、公共事業や軍事費をはじめ、巨額の浪費の構造にはメスが入れられないままになっている。財政危機というなら、まずこうした浪費こそきっぱり改めるべきである。そうすれば、社会保障や暮らしの予算を拡充するための財源を生み出すことができる。
ガソリンや自動車に課税されている道路特定財源は、特別会計を含む国税分で三・四兆円、地方税・地方譲与税を含めれば五・七兆円もの巨額に達している。バブル崩壊後、国・地方の税収は二割以上も減ったが、道路特定財源は逆に二割も増加している。ところが、この財源の使途を道路関係に限定するという時代遅れの制度がいまだに続いている。戦後の復興期や高度成長期に比べて道路整備が格段にすすんだ今日、このような特定財源制度を続けているために、不要不急の道路建設が行われ、巨額の浪費が繰り返されている。また、この特定財源が与党道路族議員の「縄張り」となり、利権と政治腐敗の温床になっている。
小泉首相が自ら掲げた「道路特定財源見直し」を棚上げしたことは、重大な公約違反である。道路特定財源の全面的な一般財源化に向け、〇四年度については当面、国税分について一般財源化し、年金国庫負担をはじめとした社会保障などの財源にも充てられるようにすべきである。
政府の「道路四公団民営化」方針は、無駄な高速道路建設にまったく歯止めをかけない点でも、四十兆円もの巨額の債務のツケを国民に押しつける点でも、天下りやファミリー企業などの政官財の癒着の構造を温存する点でも、まったく「改革」の看板に値しない。こうした反国民的計画は撤回すべきである。道路特定財源を注ぎ込んで採算性のない高速道路を造り続ける「新直轄方式」を中止し、国費だけでも千三百億円にのぼる予算を削減する。高速道路整備計画を廃止し、予算を大幅に削減する。
公共事業は、特定財源の枠にしばられず、大型公共事業偏重をやめ、生活・環境・福祉型に転換するなどの見直しを行う中で、不要不急の事業を中止・凍結して、予算を大幅に削減する。とくに、過大な水需要を前提に計画されたダム建設や、関空二期工事をはじめとした空港や港湾建設の浪費をやめること、公共事業偏重の農業予算の見直しなどを徹底的に行う。
政府は「防衛費は1%と過去最高の削減」などと宣伝しているが、公務員給与の削減分などを除けば減っておらず、正面装備の契約額は5%も増加している。とりわけ、「弾道ミサイル防衛(BMD)システム」の整備予算(契約ベースで千六十八億円)が本格的に盛り込まれたことは、アメリカの地球規模の核戦略に日本をまきこむものであり、この計画を中止し予算を全額削減する。ヘリ空母(千五十七億円)や空中給油機(二百四十億円)をはじめとした正面装備予算、日米共同訓練経費などを大幅に削減する。「思いやり予算」(二千四百四十一億円)や「SACO関連経費」(二百六十六億円)など、世界に類を見ない手厚い在日米軍支援をやめ、沖縄の新基地建設を中止する。
国民の血税を政党が分け取りする政党助成金は廃止する。前官房長官による私的支出の疑惑が指摘されている官房機密費、組織ぐるみの不正支出が大問題となっている警察の捜査報償費など、税金のムダづかいに国民の怒りが高まっている。こうした不正の温床となる経費は厳しく削減する。
昨年中に多くの特殊法人が「独立行政法人」などに衣替えしたが、独立行政法人分を合わせれば政府支出は横ばいで、削減すべき浪費はほとんど存続されたままである。関西国際空港株式会社や日本政策投資銀行、首都高速道路公団などは、逆に財政支出が増加しているほどである。こうした特殊法人等の浪費を厳しく削減する。
〇四年度予算では、外為特会の一時借入金枠が百四十兆円、二年前の二・四倍にも急増する。これは巨額の財政赤字と経常赤字によってドルが暴落するのを買い支えるための資金であり、そのドルで米国債を購入することで、アメリカ政府の財政赤字を補てんし、イラク戦費を供給する結果にもなっている。ドル安・円高がさらに進行すれば、巨額の損失となって財政にはねかえるおそれもある。安易な増額を行うべきではない。
〇四年度は、昨年から実施した大企業・資産家への「先行減税」にくわえて、連結付加税の廃止や、欠損金の繰越期間の延長など、大企業への減税がさらに拡充される。庶民には増税を押しつけながら、大企業には減税という不公平は許されない。大企業・資産家への減税措置を中止し、史上空前の利益をあげている大企業に、応分の税負担を求めるべきである。