日本共産党

2001年9月15日(土)「しんぶん赤旗」

リストラの嵐 職場、家族を直撃

列島各地 力合わせ 雇用守ろう


 史上最悪の失業率のうえに、空前の人減らし・リストラの嵐(あらし)が日本列島を襲っています。全国の職場、自治体・地域から、「リストラ反対」「雇用を守れ」「失業者の生活保障を」の国民的なたたかいを――と日本共産党はよびかけています。


道理も根拠もない人減らし

■大企業は社会的責任果たせ
■政府はリストラ規制策こそ

雇用責任の放棄

 大企業で相次ぐリストラ・人減らし計画は、雇用を守る企業責任を放棄する身勝手なものです。

 電機大手幹部は「よそが万人単位のリストラをしているのに千人単位では、株式市場にアピールできない」(「読売」五日付)とのべており、まさにリストラ競争そのものです。労働者と家族の暮らしは眼中にありません。

 労働者を働かせて利益をあげている企業は、雇用を守る責任があります。ヨーロッパのように解雇規制法はなく、「ルールなき資本主義」といわれる日本でも、最高裁などの判例で、経営上の都合による解雇は、企業が維持・存続できないほどで、解雇回避の努力がつくされたときなどに限定されています。自由勝手には解雇できません。

 リストラを発表している電機、通信、自動車など各社は、人員削減をしなければつぶれるような企業はまったくありません。ため込み利益の内部留保は、電機二十八社で十五兆円以上、自動車二十社で十兆円にのぼります。バブル崩壊後、人減らしの一方、内部留保を増大させてきました。

 実際に、各企業は「ゼロ成長でも収益を出せる体制」(富士通)、「今年度利益創出額二千三百七十億円の達成」(東芝)を掲げており、高収益体制をつくることがねらいです。

 「IT(情報技術)不況」を人減らしの理由にしている企業もありますが、見通しを誤り過大な設備投資を続けた経営者の責任は棚に上げ、労働者・下請けにだけ犠牲をしわ寄せする無責任ぶりです。一般紙でも、リストラ策発表に合わせて経営責任を示したトップはいないとして、「金融バブルの際に土地融資を競い合った銀行トップの行動に似ている」(「読売」四日付)と指摘しています。

 企業を追われた労働者と家族は、生活と人生設計を根本から狂わされて「住宅ローンが払えない」「子どもが進学をあきらめた」、はてはホームレスになったり自殺する例まで起きています。「利益のためにまずリストラ・人減らし」というのは、企業の社会的責任を投げ捨てるものです。

「構造改革」路線

 大企業の人減らしを促進しているのが、小泉政権の「構造改革」路線です。小泉首相は5%台の失業悪化について「生みの苦しみだ」とのべ、リストラ・失業は当然だという姿勢です。

 失業率は、仕事がなくて就職をあきらめた人を含めると10・4%(内閣府試算)にのぼる深刻さです。政府はこれまで「ITで雇用創出」を叫んできましたが、政府の主張は破たんし、いまやリストラの先頭に立っているのがIT産業です。

 これまで自民党政治は、リストラすれば減税する産業再生法、会社を分割し労働者を同意なしに移籍できる商法改正・労働契約承継法、銀行に公的資金を投入しリストラをあおる金融再生法・早期健全化法などリストラ促進の法制を次々につくってきました。

 産業再生法のもとで十五社だけで三万三千人以上削減し二百九十二億円の減税。リストラ支援が大量失業を作り出してきました。そのうえ、「不良債権の早期最終処理」で、中小企業の大倒産と大量の失業者をつくりだそうとしています。

 リストラ応援の政治は、欧州諸国の政府の立場と比べても異常です。

 フランスでは、政府が労働時間を週三十五時間に短縮して雇用を拡大する「労働の分かち合い」(ワークシェアリング)をすすめて、九八年から二十六万人の雇用が増えました。「企業により重い責任を負わせる」ために解雇規制強化法案を提案し、国民議会で可決されました。

 イギリスのブレア政権は、労働時間規制など次々に労働者の権利を拡大。これに経営者側が「規制の行き過ぎで競争力低下が避けられない」と抵抗すると「労働条件の向上は有能なスタッフを企業につなぎとめ、結果として競争力の強化になる」とのべています。

 日本でも、これまでのリストラ奨励の政策をただちにやめ、経済と雇用にたいする責任を果たす立場から、政府が企業のリストラ競争に思い切った規制をすべきです。


語録

失業者の増はやむをえない

 史上最悪の失業率5%について小泉首相 「これから改革していくうちに、ある程度失業者が増えるということはやむをえない」(8月23日)

 「求人数、求職数の実態を見ると、かなりの線で民間の構造改革が進んでいる。生みの苦しみが今の失業率だ」(8月28日)

保険で暮らす怠け者、がん

 自民党の伊吹文明元労相 「二百万人の仕事の口はちゃんときているが、(失業者は)この仕事は汚い、きついといって仕事に就かず、失業保険をもらって暮らしている。こんな怠け者を許すことはできない。日本のなかにできたがんのようなもの」(7月25日、京都市)


国連委"日本の労働時間長過ぎ"

「深い懸念」 時短を勧告

 国連の経済的、社会的及び文化的権利委員会が八月三十一日まで開いた第二十六回会議でまとめた最終所見は、日本の過度の労働時間やリストラにたいする懸念を表明し、改善を勧告しています。

 最終所見は「締約国(日本)が公共・民間部門双方において過度の労働時間を許していることにたいし、深い懸念を表明する」とのべています。そして「必要な法的・行政的措置を採択して、公共・民間部門双方において労働時間を削減するよう勧告する」としています。

 これは、ドイツやフランスより年間三〜四百時間前後も労働時間が長く、そのうえただ働きの「サービス残業」が横行し、過労死も多発している実態の是正を求めたものです。

 また、「四十五歳以上の労働者が減給あるいは十分な補償もなしに一時解雇される危険を背負っていることにたいし、懸念を表明する」としています。そして「四十五歳以上の労働者が以前と同水準の賃金と職の安定を維持できることを保障するための措置を講ずるよう勧告する」としています。

 大企業では四十五歳など年齢によって賃金が減額されたり、早期退職や別会社への転籍(解雇)といったリストラが吹き荒れている現状の改善を求めたものです。

解雇規制でEUが指令

 ヨーロッパの多くの国々には、解雇規制法がありますが、さらにEU(欧州連合)は今年六月、閣僚理事会で「一般労使協議指令」で合意しました。

 この合意は、企業が雇用の状況、構造や雇用契約関係に顕著な変化をもたらす決定について、経営側は労働者代表に情報を提供し、合意に達する目的で協議することを義務付けています。当事者が指令に違反した場合は罰則が適用されます。


主な大企業のリストラ計画

NTT東西 保守管理などの社員6万人、子会社4万人を新会社に転籍・出向し合計11万人を削減
松下電器 5000人早期退職募集
松下グループ流通関連会社 総社員数の3割弱3000人の早期退職応募
松下寿電子工業 約930人早期退職
松下冷機  約480人早期退職
九州松下電器 子会社含め約480人早期退職
NEC 国内外で約4000人削減(国内2500人)
富士通 グループで1万6400人削減
東芝 1万8800人削減(国内1万7000人)
日立製作所 1万4700人削減(国内1万200人、海外4500人)
三菱電機 グループで3000人削減
アイワ 5000人削減
京セラ 海外中心に約1万人削減
沖電気 グループで国内2200人削減
安川電機 1000人削減
日本ビクター 7工場閉鎖、1400人削減
ケンウッド 1700人削減
三菱自工 グループ全体で9500人削減、1900人が希望退職
いすゞ自動車 グループ全体で9700人削減
マツダ 2213人が希望退職
雪印乳業 1035人が希望退職
住友金属 関連会社に出向中の社員9000人転籍
日新製鋼 グループで1140人削減
日立金属 300〜400人の早期退職募集
日立電線 グループで約1000人削減
ダイエー 希望退職1000人、自然減で1000人
大和銀行など3行 3000人削減
みずほフィナンシャルグループ 約4000人削減
三井住友銀行 約4000人削減
(注)会社発表、新聞報道などから作成


実態は失業率10%

 内閣府はこのほど、就職をあきらめた人を含めると失業率が10・4%、十人に一人が失業しているとする試算をまとめました。七月の完全失業率5%の二倍以上、約七百五十万人になります。

 潜在失業者は、就業はしたいが適当な仕事がなく、求職活動をしていない人たちで四百二十万人います。

 さらに本紙の試算によると、就業を希望しながら一時的な病気などで政府統計の失業者に入らない「働きたいが働けない」という人も加えると、その数は17・0%、実に千三百万人にのぼります。


語録

社会崩壊が心配
日経連の奥田碩会長

 「最近十年くらいの自殺や犯罪のデータをみると、失業率の上昇を追いかけるように顕著に悪化している。日本社会は、失業に対して非常に脆弱(ぜいじゃく)な構造にある。(略)今回の不良債権処理においても、万一経営者のモラルハザードが広がれば、便乗解雇が横行し、セーフティーネットが破たんして、社会全体が崩壊しかねないと心配している」(8月2日、日経連トップ・セミナー)

社会・人間性も
資生堂の池田守男社長

 「大幅なリストラが報道されているが、企業には、収益性を追求すると同時に社会性や人間性も重要な視点」(8月27日、電機メーカーのリストラにふれて利益減の同社はリストラしないと表明、「朝日」)

生活支える責任
ドイツのラウ大統領

 「企業は利益をあげるだけでなく、人間の生活を支える重要な責任を担っている」「人間は経済のためにあるのでなく、経済が人間のためにある」(5日、国際労組連合UNI大会で雇用問題にふれて)


労働者・国民の運動 今こそ

■電機大手 「またか」と怒り

 大手電機メーカーがこの夏、一万人規模の人員削減を柱とする大リストラ計画を相次いで打ち出しました。各職場の労働者から「利益最優先の人員削減は許されない」と怒りの声がひろがっています。

 グループ全体で一万四千七百人の人員削減をする日立製作所。五十代の男性社員は「会社は『半導体不況』を人減らしの理由にしているが、アメリカのITバブルの崩壊や国内消費の落ち込みの中での過剰な設備投資などに原因がある。責任はひとえに経営者にある」と批判します。

 日立の場合、来年三月まで一挙に人員削減する計画です。そのうち早期退職制度で三千人を減らし、五十歳以上は全員対象といいます。

 「日立は三年前にも関連子会社への転籍などで人減らしをおこない、この三年間だけで一万五千人以上も削減し、高利益をあげてきた。職場では『またかよ!』の声がひろがっている。またもや経営責任を棚上げし、労働者へ一方的な犠牲を強いることは許されない」と話します。

 四千人を削減するNEC。会社側はその理由として、「今期の利益を着実なものにするため」と発表しました。

 四十代の男性社員は「理由はそれだけでなく、従業員の生活や雇用より株主を優先し、株価上昇のためにリストラに走っているとしか思えない。短期に利益を出そうとするあまり、人材育成などをおろそかにし、設備などを切り売りしている」と批判します。

 「人を大切にしない会社に未来はない。異動による『ふるい落とし』という姑息(こそく)な手段で人減らしをおこなうのでなく、従業員の雇用をしっかり守るべきだ」と話します。

 日本共産党のNEC府中支部(東京)では、配転や出向に応じることができない労働者にたいして、「はっきり、『ノー!』といおう」と、ビラ配布で訴えています。

 NEC山形工場の閉鎖問題では、日本共産党山形県委員会の須藤美也子委員長らが山形市の同工場を訪れ、「山形の経済に与える影響が大きい。社会的責任を果たすべきだ。存続してほしい」と要請しています。

電機大手の内部留保(2000年)
松下電器 2兆6041億円
日立製作所 1兆6016億円
東   芝 1兆0889億円
N E C 1兆0971億円
三菱電機   6536億円
富 士 通 1兆0439億円

■NTT 要求での共同広く

 NTTグループは、新「三カ年経営計画(二〇〇一年〜二〇〇三年度)」で、大規模なリストラ計画を発表しました。その規模は十一万人にのぼります。労働者からは、「電電公社時代から懸命に働き、NTTの設備をつくってきた私たちに何たる仕打ちだ」「労働者に犠牲おしつけるな。経営責任を果たせ」と大きな怒りの声が上がっています。

 NTT労働者でつくる通信産業労働組合は、リストラ計画に反対し、賃金をダウンさせない、本人同意なしに退職させないなどの一致する要求での共同を職場の労働者によびかけています。

 全労連は小林洋二議長を本部長とする「NTTリストラ対策本部」を設置。通信労組とともに、NTT持ち株会社前で座り込み(八月三十一日)、リストラの不当性を広く社会的に告発するシンポジウムを一日に開くなどたたかいを広げています。

 今回のリストラは、国民向けの業務はすべて子会社・孫会社に外注化(アウトソーシング)し、その業務に携わっている労働者を全員転籍・出向させるもの。五十歳以上の社員はいったん退職させ、二割〜三割低い賃金で子会社・孫会社に再雇用します。

 NTTは、接続料引き下げなどによる東西地域会社の「赤字」をリストラの口実にしていますが、グループ全体では七千二百六十億円の大もうけをあげています(二〇〇一年三月期決算)。

 新「三カ年経営計画」のなかではリストラの狙いを「NTTグループの企業価値の増大を図るため」と強調。同社の極秘文書では、リストラの目的を「グループトータルの利益極大化のための人的資源の最適配置」とあけすけにのべています。

 NTTリストラは、昨年十一月に出された自民・公明・保守の与党三党による「NTT改革プロジェクトチーム」の結論に沿うかたちでだされ、小泉内閣からの圧力をうけてリストラ規模を積み増ししています。


■連合傘下の職場でもスト

 無法なリストラとのたたかいは、連合傘下の職場にも広がっています。

 「一般債権者には九月に全額返済する。倒産する必要はなかった」。十二、十三両日、札幌市で開いたゼンセン同盟の定期大会で愛知県の代議員はこう訴えました。総合繊維の山田紡績(愛知県半田市)が昨年十月、民事再生法による倒産を申請、従業員全員に解雇を通告したことにたいし、ゼンセン同盟山田紡績労働組合の六十五人が昨年暮れの十二月三十日から今年の四月二十六日まで約四カ月(実労働日八十八日間)にわたってストライキを実施しました。同月末には解雇無効と未払い賃金の支払い、退職金規定がないパート社員への適用を求めて名古屋地裁へ提訴し、たたかい続けています。

 電子部品製造のミツミ電機の一〇〇%出資の子会社、山形ミツミは昨年十二月、「赤字解消」を理由に鶴岡工場の閉鎖を発表。実際は海外に工場を進出させ、国内の工場をつぶし、従業員の首を切るというものでした。

 ミツミユニオン(JAM加盟)は一月十五日、全国九工場で二十四時間ストを実施し、さらに四十八時間ストを構えて会社側と団体交渉。社長が「工場の事業転換と雇用の継続をはかる」と言明し、百六十四人の全従業員の雇用を守りました。

 政府の「規制緩和」によって、タクシーや運送業などの交通運輸分野で解雇が増加しています。

 財団法人、長野県自動車学校は、所轄官庁から民間企業に転換せよとの指導を受け、経営譲渡の交渉を開始。同校には全国一般の組合があり、「全国一般からの脱退が買収の条件」と組合つぶしの攻撃を受けました。全国一般労組は経営者の責任を追及し、激減した組合員を三十三人まで回復してたたかっています。


"先生、私たち、世の中に必要ないんですか"

 十五歳から二十四歳の完全失業率は二〇〇〇年の調査で9・2%と、ほかの世代に比べて突出して高くなっています。就職率は大卒で91・9%、高卒で92・8%と、依然として厳しい状況です。

 七月末現在の高校生の求人倍率は〇・六一倍。現場の教員からは「派遣やアルバイトの求人が増えた」との声もあり、定職につけずにフリーターになる青年が増えています。

 北海道高教組の大地巖委員長(58)の話 北海道では、来春卒業する高校生の求人倍率が〇・二四倍ときわめて厳しい状況にあります。商業や工業など三年間学んできたことが就職難の壁に阻まれ、「先生、私たちは世の中で必要とされていないのですか」と真剣に訴える生徒もいます。

 教師たちはいっしょに悩みながら全道の企業を回り、東京や名古屋、大阪にまで足を運ぶケースもあります。われわれ教師にとって、教え子が働く場所がない、笑顔が消えていく姿を見るほどつらいことはありません。

 道高教組は、学校に対する求人数など現時点での実態を把握し、事態の打開をはかる運動を展開するよう「高校生の就職・求人に関する緊急実態調査」を始めました。日本の未来を担う生徒たちのために全力をあげてとりくんでいきたい。


日本共産党は国民的たたかいをよびかけます

「よびかけ」発表 闘争本部を設置

 日本共産党中央委員会は十日、「大規模なリストラに反対し、雇用を守る国民的たたかいをよびかけます」とする「よびかけ」を発表し、「リストラ反対・雇用を守る闘争本部」(本部長・市田忠義書記局長)を設置しました。

 「よびかけ」は「空前のリストラに反対する声をいまこそあげよう」と訴え、リストラ攻撃には何の道理もないこと、日本ほど横暴勝手な首切り・リストラがまかり通っている国はないことを明らかにしています。

 そして、大リストラに反対し雇用を守ることは「日本社会と経済のまともな発展にとっても国民的意義をもったたたかい」と位置付け、「政府と大企業が、その責任を果たすよう、全国の職場から、自治体から、声をあげ、たたかいの輪をひろげよう」とよびかけています。


「よびかけ」から

「まじめに働く国民こそが宝」

 もともと資源のとぼしい日本にとって、まじめに働く国民こそが最大の宝であったはずです。これを粗末にして、どうして将来の安定的な発展があるでしょうか。小泉内閣は、経済の「非効率な部門」をなくすとして、「構造改革」をすすめようとしていますが、中小企業を無理やり倒産させ、大量の労働者を解雇し、失業を放置することこそ、日本経済にとって、最大の非効率、最大の損失といわなければなりません。

 いま無法で、無謀なリストラ攻撃に反対し、これを打ち破ることは、暮らしを守るだけではありません。日本社会と日本経済の健全な発展にとっても不可欠なのです。

 


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