2001年6月1日「しんぶん赤旗」で発表

第19回参議院選挙にあたっての日本共産党の各分野の政策


教育

子どもと教育の危機をのりこえる

 いじめや不登校、学力問題、さらに「ひきこもり」や児童虐待の増加など、子どもと教育をめぐる状況は深刻さを増しています。凶悪な少年犯罪の続発に、だれもが胸をいためています。日本社会の未来にかかわる問題として、子どもと教育の問題に国民と力をあわせて取り組みます。

学校教育を抜本的に改革する国民的運動を提唱する

 いま学校教育は、大きな困難に直面しています。校内暴力は過去最高の件数を記録し、八〇年代の「荒れた学校」を上まわる規模となりました。不登校も増加の一途をたどり、過去最高です。勉強の面でも、「成績はいいが世界一勉強嫌い」「授業がよくわかる子どもは、中学二年で二十人に一人」など、ほんとうに深刻です。

 これには、さまざまな要因が考えられますが、なかでも、自民党政治が長年続けてきた競争と管理の教育が、もっとも大きな要因ではないでしょうか。

 たとえば、各方面で問題になっている学力問題です。いま子どもたちが教わっている学習指導要領は、小学校一年生に時計の「分」まで読ませるなどつめこみで、低学年から多くの「おちこぼし」を生み出しました。また、競争のための勉強は、学ぶことの意味やおもしろさを子どもたちから奪い、世界一の「勉強嫌い」をつくりだしました。

 自民党流の競争と管理の教育を根本からあらため、子どもの成長と発達を中心にすえた教育に転換することを提案します。

 すべての子どもに基礎学力を保障する……すべての子どもが、基礎学力をつけられるよう、わかるまで教えられるようにします。「学力の危機」をより深刻にするとして実施前から中止の声があがっている新学習指導要領はただちに見直し、基礎・基本とは何かを含め、英知を集めて、国民的合意の形成をはかります。教育行政による学習内容の統制をやめ、各学校が子どもたちの実態にあわせて生き生きと教えられるようにします。

 過度の競争教育の制度を是正する……欧米には、高校入試は基本的にありません。競争的教育制度の解消に向けた国民的討論をおこないます。また、「関心・意欲・態度」の点数化などの入試制度のゆがみを是正します。政府の「中高一貫」政策は、一部の学校だけを一貫校にし、そこに入学するための受験競争を招くもので反対します。大学入試は、高校以下の教育をゆがめないよう、資格試験的なものに改革していきます。

 教職員の力量の発揮と向上を保障する……学校教育で教職員の果たす役割は決定的です。「多忙化」を解消し、教員の自主的な研修、研究を保障します。行政による一方的な教員評価や恣意(しい)的な排除は、教員の目を子どもでなく管理職に向けさせ、教師の創造性や自主性をつみとってしまいます。教員評価は、教員相互の話し合いや専門家、父母、子どもも参加して、教育に役に立つ方向で検討されるべきです。

 学校・教員の自主性を保障する教育行政を確立する……上意下達の教育行政をあらため、学校の開かれた、民主的運営を保障します。そのためにも、子どもや父母の学校運営への参加を広げます。学校間競争をあおる通学区域の「自由化」は、地域に根ざした学校づくりを困難にするものであり、反対です。学校施設の整備など教育条件整備をすすめます。すべての学校図書館に人を配置し、豊かなものにします。父母の教育費負担を軽減します。

 子どもの市民道徳の形成をたすける学校に……日本共産党は、人の生命を大切にするなどの市民道徳の教育を提唱しています。そのため何より学校生活のあらゆる場面で子どもを人間として大切にすることを重視します。ボランティア活動は、子どもの成長にとって大切であり、強制するのでなく、自主性を大事にします。「出席停止」は緊急避難の措置であり、その乱発で子どもを切り捨てることに反対します。

 三十人学級を早期に実現する……学力格差や問題行動が広がるなかで、少人数学級の実現は切実な課題です。野党三党が共同で提出した「三十人学級法案」の成立に全力をあげます。

子どもたちを人間として大切にする道義ある社会をつくる

 暴力や性の映像文化などから子どもをまもる……日本の子どもは、世界に例がないほど、テレビやテレビゲームなどを通して、暴力や性の映像にさらされています。日本共産党は、この問題で社会の自己規律を確立することを提案してきましたが、この間、国民からの意見や苦情を聞く第三者機関の発足など、その取り組みが前進してきました。この動きを国民的な運動でさらにすすめます。

 社会の各分野での道義の確立を……おとな社会が政治や経済の分野でのモラルの崩壊などを放置して、子どもだけに市民道徳を身につけよという、勝手な理屈は通りません。社会の各分野での道義の確立を呼びかけます。

 「子どもの権利条約」を社会のすみずみに普及し具体化する……子どもの権利条約は、社会が子どもを大切に保護すると同時に、子ども自身の積極的な権利の行使を保障することを明記しました。この条約を普及し、条約にそって子どもたちが社会に参加する道を拡大します。

教育基本法改悪に反対する

 教育基本法は、子どもたちに「お国のために血を流せ」と教え込んだ戦前の軍国主義教育を否定し、憲法の理想にそった戦後の教育の基本を定めたものです。いまもとめられているのは、教育のゆがんだ現状を憲法や教育基本法にてらして改革することです。

侵略戦争美化の歴史教科書の「合格」取り消しを求める

 自公保政権が、侵略戦争を美化する歴史教科書を検定「合格」としたことに国内外から強い批判がまきおこっています。この「合格」は、侵略戦争と植民地支配についての「反省と決意」を歴史教科書の基準とした政府自身の国際公約にも反するものです。日本共産党は、いまの検定制度そのものに反対ですが、「合格」にした政府自身の責任で「合格」を取り消すべきです。

安心で豊かな幼児期を保障する

 幼児期は人間としての土台をつくる大切な時期です。ところが、その幼児期が今日の社会と政治の中であまりに粗末にされています。安心で豊かな幼児期を保障できる社会をめざします。充実した保育のために幼児教育・保育施策を拡充します。児童虐待など子どもにかかわる問題の急増に対応するため、児童相談所を抜本的に拡充します。

大学予算を欧米なみに引き上げ、豊かな教育研究を保障する

 日本の大学予算の水準は、欧米の半分にもみたず、大学施設の老朽化など世界の研究者からも驚きの声があがるような状態です。日本社会の知的基盤を大切にする立場から、大学予算を欧米なみに引き上げ、教育研究条件の整備をおこない、学問研究・教育の自由を保障する大学改革をすすめます。大学の基盤を掘り崩し、国家統制をつよめて教育研究を台無しにする国立大学の独立行政法人化に反対します。私学助成を抜本的に拡充します。


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