2001年3月2日〜4月27日まで「しんぶん赤旗」に連載
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政府与党と建築業界の中に、“マンションは三十年ぐらいで建て替えて都市再開発をやりたい”という主張があります。これにたいし「マンションの維持管理をきちんとすれば、長持ちさせられる」と主張しているのがマンションに詳しいハウジングケースワーカーの千代崎一夫さんです。マンションを長持ちさせる方法について千代崎さんに聞きました。
マンションを長持ちさせるには、(1)生活環境を充実させて長く住みたいと思うようになること(2)建物そのものを長持ちさせる工夫―の二つが必要です。最近では「長生きマンションへのプログラムを一緒にデザインしてみませんか」と住民参画型でのとりくみを行っています。
まず、ほかの住民に迷惑をかけない範囲で生活上の制約をなくす問題です。バリアフリーから始めてみてはどうでしょうか。
「バリアフリー」は、障壁を取り除くこと、あるいは障壁のない状態をいいます。階段や段差にスロープや手すりをつけることが代表的です。小さな段差はミニスロープ(福祉用具)を置くだけで解決できることも。専有部の住戸内だけでなく廊下や階段、玄関などの共用部の両方のバリアフリーを考えましょう。
介護保険制度では、二十万円以内なら住戸内と共用部分の両方に利用できます。住戸内なら上乗せ助成をしている自治体も多くあります。東京・板橋区ではマンションの共用部の改善への助成制度もあり、住民から喜ばれています。
ペットの問題も大切です。最近、コンパニオン・アニマルといって、ペットを人間の友達や伴りょと考える言葉を聞くようになりました。
外国でも規制はありますが、たいていは大きな犬も部屋で飼っています。わが国では、現状の住戸や飼い主の時間的、肉体的条件、しつけのできていないペットを考えると、飼育禁止が良い場合もあります。
一方、「ペットはいけない」という規約から「迷惑をかけるペットはいけない」と、規約を変更してペット飼育を認めたマンションもあります。ペットクラブをつくってペット講座を催し、自主規制で、ペットを飼える優しい雰囲気と、迷惑をかけないことの両立を図っているマンションができてきています。
管理主体である住民の組織、管理組合のルールを決めた規約は重要です。規約の一番大切な点はどの人にとっても公平ということが大切です。等価交換マンションなどで、元の地権者に有利な規約が設定されていることがあります。立場が変わっても権利が変わらないようになっている規約こそ管理の基本です。
短い簡単な規約ではマンションに起こるさまざまな出来事に対応できません。規約の内容を含めたマンション全体の管理の仕方を、建設省がつくった標準管理規約を参考にしながら見直してみましょう。
最近は空き巣ねらいの被害が多く発生し、ピッキングの被害が増えました。しかし、ベランダからの侵入も多いです。防犯はオートロックが一番安上がりで、その次が人による防犯です。
自由に出入り交流ができ、火事も犯罪もないマンションは、一番高級ということになります。犯罪を防ぐのは、一戸一戸の住戸で対処をしながらも、周りのまちづくりも含めたコミュニティです。
阪神淡路大震災から六年たちました。以後も、各地でさまざまな大きな災害が起きています。倒れないマンション、逃げ出さなくてもいいまちを住民と国や自治体が協力して確立すべきですが、電気・ガス・水道・電話などのライフライン(命綱)が途絶えた場合に力を発揮できる「マニュアル」を共同で作ること自体がコミュニティづくりになります。
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