2001年3月2日〜4月27日まで「しんぶん赤旗」に連載
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住宅ローンの返済額は月平均十三万千九百三十四円。日本生活協同組合連合会の全国生計費調査報告(二〇〇〇年・年間)によると、返済額は前年比一〇〇・九%と増え、六十歳以上で平均月額十一万二千二百四十一円、年金世帯で九万四百三十円。調査世帯千七百七十五のうち、住宅ローン返済中は七百二十世帯でした。
苦労して手に入れた家が欠陥だったら――。
都心に住むAさん(63)は、一九九五年、六千九百五十万円で購入した新築マンション二階に入居しました。地下は車二十数台の機械式駐車場で、一階に商店があります。
購入時の分譲会社の説明は「騒音は、隣のマンションの排気口が問題かもしれないが、ほかに音では問題はない」とのことでした。
ところが、トロッコを押したり引いたりするような音が聞こえるのです。車の出入り時に発生する音です。睡眠時にも襲います。音はやがて砂利を石うすで引いているように変化してきました。
ゴー。ガッチャン。
就寝時間をおくらせ車の出入りがやむのを待つこともしました。早朝も、音に襲われ寝ぼけて部屋をうろうろしたりで、睡眠が中断、寝不足になりました。
入居時の説明では三カ月、一年、二年時にチェックがあるというので、三カ月チェック時に「騒音」を通知しました。ところが分譲会社の子会社の管理会社の反応は鈍く、分譲会社の社員を呼び、販売時に「駐車場の音は二階に響かない」といった社員に音を聞かせましたが話は進展しません。
Aさんは「欠陥があるものを売れば、取り換えますよね。どうして不動産にはリコール制度がないのでしょうか」といいます。
手がかりがあればどこにでも相談しました。新聞の住宅問題の記事の筆者に手紙を出し、部屋の改修ではなく、地下の駐車場の改修工事をすることが先決とのアドバイスを受けました。テレビに出演の弁護士にも相談。東京・飯田橋の都の外郭団体、「東京都防災・建築まちづくりセンター」の飯田橋不動産相談室にも相談し、アドバイスを受けて調停にもかけました。区にも持ちこみました。なかなか解決にはいたりません。
個人で騒音の測定を業者に依頼したところ、四十五〜八十デシベルにもなることが判明。交渉の過程で構造上の問題であることが明白になりました。仮眠所の要求もしました。交渉を続け七年になります。
「相談できる所には相談し、分譲会社に通い、解決するまで頑張ります。分譲会社は泣き寝入りさせたいのですね。そういう人が多いのではないでしょうか」
東京・板橋区の日本共産党のマンション相談室長の菅原敏幸さんは、建築基準法がこれでいいのかと指摘します。
「いままたマンション紛争が増えている。マンションの前にマンションが建ち、三百六十五日、二十四時間、日があたらない住戸ができている。建築基準法ができた当初はマンションが少なく、マンションの一戸一戸の日照が問題にされるのではなくビル全体が日照をクリアしているかどうかでやってきた。ビルが基準の建築基準法は、商業地域や準工業地域のマンションを視野に入れていない。法律が住民の実態に合わない」
都が住宅局に分譲マンション施策推進担当課をつくったのは一九九八年。「行政の支援はマンション相談を受けることだと、九九年に不動産相談室で相談の事業を始めました」と岡田博課長。まだ、緒についたばかりといえます。
飯田橋不動産相談室の相談件数は、「騒音」「大規模修繕」「ペット問題」など百九十五件にも(二〇〇〇年四月〜二〇〇一年二月)。九九年七月〜二〇〇〇年三月の七十三件から急増しています(月三回の土曜日に弁護士が相談に乗ったもの)。
マンションの購入者が欠陥などで不利益をこうむらないために、身近な所で専門的知識や経験をもつ人が相談にのり、トラブルの実態を行政も把握できる窓口を強化、充実することがどうしても必要です。
・騒音問題→弁護士会で仲裁・住宅供給公社の分譲マンションの建て替えの際の、積立金、お金のない人への融資→公社と話し合いを助言・建物診断の方法、依頼先→財団法人マンション管理センター、高層住宅管理業協会などを紹介・大規模修繕の方法と業者の見つけ方→日本住宅管理組合協議会、集合住宅管理組合センターを紹介・ペット問題→調停を助言・外壁補修の仕様書のチェック、塗装、漏水防止可能か→大規模修繕と同じ・管理会社のサービス劣悪→更新しない旨更新時期の三カ月前に書面で通知する・修繕積立金の管理が不明朗→調停申立をする
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