公共事業

環境破壊の浪費型公共事業はきっぱりやめ、公共事業が膨張する仕組みにメスをいれます

第19回参議院選挙にあたっての日本共産党の訴えと重点政策より抜粋


 小泉首相は、公共事業も含め「聖域のない歳出の見直しにつとめていく」と唱えながら、ムダと環境破壊の見本のような熊本県川辺川ダムや諌早湾干拓、関西空港二期工事などの大型公共事業は、住民の反対を押し切ってでも強行するという、これまでと何ら変わらぬ姿勢をとっています。これでは、ムダな公共事業にメスを入れることはできません。

 公共事業の中身を生活優先にきりかえる……

 日本共産党は、「公共事業不要」論ではありません。低家賃の公共住宅の大量建設、下水道処理、生活道路などの生活関連施設、特養ホームや保育所の新増設、学校の大規模改修、バリアフリー化など、必要な公共事業は大いに推進すべきです。

 日本共産党は、公共事業費全体の規模は、段階的なやり方で現在の半分の規模にすることを財政再建の目標の一つにしていますが、公共事業からムダと浪費を一掃すれば、公共事業費を段階的に半減しても、必要な社会資本整備をすすめることができます。大型プロジェクト中心よりも、福祉・暮らし型の公共事業のほうが、中小企業への発注率も、雇用効果も大きいことは、東京都の臨海副都心開発では、中小企業への発注率が一割にも満たないのに、同じ東京都の福祉局、住宅局の仕事は八割以上が中小企業に発注されていることでも明らかです。

 川辺川ダムなど不要なダム事業を中止する……

 いま全国でダム事業が、ムダと環境破壊として問題になっています。党国会議員団が五月におこなった全国二十二カ所のダム調査では、河川改修などで治水対策も可能であるのに、いずれも過大な水需要予測を前提にし、必要性のなくなった計画を見直そうともせず、ダム建設に固執していることが明らかになりました。

 環境への影響が大きく費用も巨額にのぼることから、コンクリートダムだけに頼らない治水、利水はいまや欧米など世界の流れです。ところが小泉首相は、「(川辺川ダムの)完成にむけて努力していく」と国会で答弁するなど、“ともかくダム建設ありき”の姿勢をあらためようとしていません。川辺川ダムは、発電、治水、農業用水という目的自身がすでに破たんしているにもかかわらず、国は清流と環境を破壊するダム建設にしがみついています。計画をただちに中止し、国の責任で五木村など地域の再生と振興をすすめるべきです。

 すべてのダム事業を、目的、財政効果、環境への影響をあらためて住民参加で検証し、不必要と判断されたものは中止します。ダムを一方的に住民に押しつけるやり方も問題です。計画段階から必要性、採算、環境への影響、代替案の検討などを、住民参加で公正におこなう事業評価制度をつくります。長野県田中知事の「脱ダム宣言」を支持します。

 諌早干拓や三番瀬埋め立てなど環境破壊の事業をやめる……

 “漁師も漁ができない環境は、人間にとってもよい環境とはいえない”海を生活の場としてきた漁民が、「死の海」となった海を見つめて語る言葉です。

 多くの市民団体・環境団体の反対を押し切って、湾の閉め切りを四年前に強行した諌早湾の干拓事業は、有明海の浄化と生命の揺りかごというべき干潟を台なしにし、漁業に深刻な被害をもたらしました。政府は、早急に水門を開放し、干拓工事を直ちに中止するとともに、国の責任で諌早湾の干潟を再生し、有明海をよみがえらせるべきです。

 日本有数の渡り鳥の飛来地である東京湾の三番瀬についても、埋め立て計画を撤回し、三番瀬をラムサール条約の指定地とするなど保全のためにこそ、国は力をつくすべきです。

 干潟を見つけては埋め立て、谷を見つけてはダムをつくるという公共事業のやり方をきっぱり捨て、子孫の将来のために、海や川、森林の豊かな自然を資産として残す観点で、公共事業を見直すべきです。そのためにも、工事最優先で、おざなりの環境調査しかやらない現状をあらため、環境アセスメントを徹底し、環境保全を優先するやり方に転換します。

 関西空港二期工事など過大な需要を前提にした空港・港湾事業を中止する……

 「国際化、大型化」のかけ声のもとに、全国で空港建設の計画や工事がすすめられ、マスコミでも「空港乱造」「計画過密」と批判されています。その空港の事業計画も過大な旅客需要を前提にしており、開港しても採算をとることができません。

 すでに完成した一期工事分でさえ、採算がとれないにもかかわらず、さらに事業費がかかる関西空港二期工事や、常滑沖に空港島を建設する中部国際空港は直ちに中止すべきです。関西新空港から高速艇で三十分程度しか離れていない神戸空港や、空港のある東京・名古屋まで新幹線でそれぞれ一時間のところにつくる静岡空港など、採算性を度外視した地方空港の乱造も中止すべきです。

 また、全国で船の入らない“釣り堀”化したコンテナ港がつくられ、自治体財政を圧迫しています。

 新幹線や道路、空港という輸送手段がばらばらに整備され、輸送能力が過剰で赤字が増えていくという今のやり方をあらため、総合的な交通政策を確立する必要があります。道路、空港、港湾などを一本化した総合交通特別会計を創設し、浪費をなくしていきます。

 公共事業を膨張させる仕組みに抜本的にメスを入れる……

 ムダな公共事業が、次々と生まれるのも、計画や財源に、公共事業を膨らませる仕組みがあるからです。具体的な計画もなしに、ただ金額だけ書き込まれた十三年間で六百三十兆円という、日米構造協議で押しつけられた「公共投資基本計画」と、それにもとづく各種の長期計画がムダと浪費の温床になっています。こうした“総額先にありき”方式を廃止します。また、第二国土軸と称して、紀淡海峡、豊予海峡など六つの海峡大橋を架けることを柱にした五全総の計画は、きっぱり中止すべきです。

 財源の面でも、建設国債の制度は、公共事業のためには、事実上、無制限で借金できる仕組みになっています。また、道路特定財源の仕組みによって、揮発油税、自動車重量税など、国・地方を合わせて六兆円もの税金が道路建設だけに限定され、これを「使い切る」ための不要不急の道路建設が膨れ上がっています。

 小泉内閣は、「道路特定財源の見直し」をいい出しましたが、「使途拡大先は、国土交通省内に限る」「都市整備の財源にする」など、道路以外の公共事業にも使えるようにしよう、というのでは、ムダな公共事業を減らすことにはなりません。日本共産党は二十年以上前から、揮発油税などを普通の税金と同じように使途を限定しない「一般財源」とすることを主張してきました。今日の「車社会」は、交通事故、大気汚染をはじめ大きな社会的な負担をもたらしており、自動車に関する税金だからといって、道路整備だけに特定する理由はありません。道路特定財源制度はきっぱりと廃止すべきです。

 こうした公共事業の膨張に、ゼネコンへの天下りと利権構造による政官業の癒着が拍車をかけており、談合の禁止や入札制度の改善は不可欠です。


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