2001年12月15日(土)「しんぶん赤旗」 負けてたまるか リストラの職場で三菱重工高砂1枚のビラがただ働き正す仕事から帰らぬ夫… 共産党支部にメール |
一枚のビラがサービス残業(ただ働き)をなくす引き金になった―。夫の身を案じた妻の告発をきっかけに、日本共産党職場支部が動き、兵庫県高砂市の三菱重工業高砂製作所でサービス残業を是正させました。
(名越正治記者)
午後9時半をすぎると消灯する職場が多くなった三菱重工高砂製作所=10日、兵庫県高砂市 |
「毎日、午前零時まで仕事があります。(キリをつけなければエンドレス)」。党三菱重工高砂支部のホームページに、一通のメールが届きました。大量人減らしをすすめてきた三菱重工の職場でのサービス残業のひどい実態がつづられていました。
「土曜日は毎週出社です」「有給休暇も毎年消化していません」「正月・ゴールデンウイーク・お盆休みがまったくまともにとれません」「残業時間は毎月百二十〜百五十時間と思われますが、賃金が支払われるのはせいぜい四十〜四十五時間と聞いています」
その妻がホームページに訴えてきたのは、たまたま通りがかった駅での党支部の宣伝からでした。何気なく受けとったビラに「サービス残業解消へ厚生労働省が通達」と書いてありました。
妻は夫の働き方に悩んでいました。一家だんらんも顧みず、どうしてこの人は仕事ひとすじに打ち込むのか…。途方に暮れていた時、とってあった党支部のビラを思いだしたのでした。
党支部は「こんな事態を放置すれば、職場の仲間の健康や団らんが破壊される。われわれがサービス残業の実態をつかもう」と話し合い、社員の出門時刻を調査し、加古川労働基準監督署に申告。同労基署が会社に立ち入り調査しました。
「だれがタレこんだんや」といっていた職制が党員に寄ってきていいました。「早う帰れるようになったし、残業代はきちんとついとるんでいうことなしや。ほんま君らのおかげやで」
三菱重工高砂製作所と高砂研究所は、ガスタービンや蒸気タービンなどの回転機械の製作や開発研究を担当し、工場に約三千五百人、研究所に約五百人の労働者が従事しています。工場の開発部門や研究所では、開発期間の短縮が求められ、長時間・過密労働がまんえんしていました。
九月のある日、午後八時から午前零時までに出門したのは、三人に一人にあたる千五百人余。午後十一時以降の出門が約二百人でした。いったん退社して入構する労働者が八十人前後いました。
退出調査をもとに、党支部は加古川労働基準監督署に申告しました。同署は申告日から二十日後に会社への立ち入り調査を行ったのでした。
会社側は、サービス残業を是正する対応策を明らかにしました。
(1)高砂研究所は午後九時三十分で消灯する(2)これ以降の入門は原則禁止にする(3)休日出勤する場合はパスポート制を導入する(4)午後九時半以降、残業をしなければならないとき、パソコンの画面に名前と理由を書いて、上司の承諾をとる届け出システムを導入する―。
一週間もたたないうちに、研究所では午後九時半以降は電気を消すようになりました。管理職が労働者一人ひとりの残業時間を聞き取りに回り、四月以降の残業代が精算される動きがあります。多い人は月六〜七万円にものぼります。
党支部は、十一月にも退出調査を実施。午後十一時以降の退出者は、九月調査の四割、八十六人に減っていました。
同労基署の職員は「厚労省通達がでて、強く指導できるようになった。サービス残業は、口頭で申告があった場合でも調査に入ることになっている」といいます。
夫の健康を気づかった先の女性は「ビラで出会った共産党の人たちにこんなにやってもらえるとは思いませんでした。夫もちょっぴり早く帰れるようになりました」とうれしそうに話します。
ガスタービンを組み立てる職場で働く日本共産党員、坂口修二さん(57)はいいます。「サービス残業はできないしくみになりました。たった一人でも、声をあげれば企業犯罪のサービス残業をやめさせることができるんだと強く実感しました」
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