2001年12月9日(日)「しんぶん赤旗」

負けてたまるか リストラの職場で

賃金75%か 広域転勤か

NTT 50代に無理な選択

“見通し立たぬ” 息づまるやりとり



 十一万人もの労働者を外注子会社に移す空前の大リストラを強行しようとするNTT。五十歳以上の労働者には、「退職・外注子会社に再雇用(賃金大幅ダウン)か」「全国どこにでも転勤か」と過酷な選択を迫ろうとしています。会社は労働条件などについての説明を始めていますが、職場では、「こんな説明では納得できない」との声が広がっています。(原田浩一朗記者)

 十一月下旬のこと。愛知県内のNTTの設備部門をうけもつファシリティーズの職場に、本社副社長がやってきて、「このままでは遠からず赤字になる。構造改革をしないと会社は生き残れない」と演説。つづいて担当者が外注子会社の賃金は75%にダウンすること、その補てん策などリストラ計画について説明しました。

 各職場での質疑応答では、労働者との間で息づまるやりとりがつづきました。日本共産党員も率先して質問しました。例えばこんな様子です。

 労働者―「外注子会社が赤字になったり、なくなってしまうことはないのか」

 会社側―「グループで支えていくから心配ない」「外注子会社がつぶれるときは、NTT西日本がつぶれるときだ」

 労働者―「なぜ五十歳以上は退職して再雇用されないといけないのか」

 会社側―「五十歳から賃金が急上昇するからだ」「六十歳で定年だから、生活設計はこれまでの蓄えなどでやっていけるでしょう」

 五十代は、子どもの教育費などがかさむ時期です。「そこをねらって大幅賃下げをする」との会社の説明に労働者は怒ります。五十一歳の労働者は「われわれの生活設計をどうしてくれるのか。これでは選択しようがない」と話しました。

50代ねらった人権侵害許されない 退職強要は違法

ビラで激励、連日相談活動

職場の党組織 愛知

 大幅な賃金ダウンを迫られ、思い余って愛知県のNTT日本共産党委員会に相談してきた五十代前半の課長代理のAさんはいいます。「いまのNTTのやり方をみればわかるように、外注子会社をグループで支えるなんてまったく信用できない。外注子会社が赤字になれば、さらに『リストラだ、給与ダウンだ』とされ、最後はクビにされかねない」
 
子ども3人、家のローンも

 Aさんには三人の子どもがいます。多額の住宅ローンも残っています。「外注子会社にいけば、月十万円以上ダウンする。一時金も大幅にダウンするので、年収は三百万円近く下がるでしょう。会社の説明ではとても選択できない」といいます。
 
会社の不当性ビラで広げて

 日本共産党員も同じ思いです。

 党委員会のBさん(57)にも、三人の子どもがいます。長男はこれから受験です。支部委員のCさん(52)の三人の子どもは、現在全員が大学生。年間学費とアパート代を合わせると二百六十万円になります。賃金を25%ダウンし75%にすることが、家庭を支える五十歳代の労働者にとってどれほど受け入れられないことか、身にしみています。

 党委員会は五日朝、名古屋市内のNTT西日本三の丸ビル前で「リストラ理由の人権侵害は許されない」との新しいビラを配布しました。

 車を止め、窓を開けて「ビラをください」という労働者があいつぎました。

 ビラでは、先日の国会党首討論での日本共産党の志位委員長の追及―「国連勧告を無視したNTTリストラ計画は政府としてやめさせよ」を紹介。また、最高裁判例などを示し、退職や転籍には労働者本人の同意が必要で、退職強要は違法であると訴えています。

 党委員会は、「労働者の悩みや要求にいまこそこたえよう」と話しあい、センターに連日集まり、月曜から金曜まで、午後六時から九時まで電話相談に応じる体制もとりました。電話・ファクス番号と電子メールをビラに書いて広く労働者に知らせています。

 党委員会のBさんはいいます。「NTTリストラの不当性を、徹底的に暴露していきたいと思います。同時に、『リストラはやむをえない』と思っている労働者もさまざまな要求をもっています。こうした要求をかかげて、いっしょに運動を広げ、かちとっていきたい」
 

NTT西日本 名古屋地区の場合

 退職し、外注子会社に再雇用されると賃金は75%にダウンします。

 激変緩和措置として、ダウン分の48%を補てんする「一時金型」と58%を補てんする「繰延型」があります。「一時金型」は六十歳まで、「繰延型」は六十五歳まで勤めることが補てん分全額支給の条件となっており、「NTT退職時に全額支払うのが当然」の声が上がっています。

 NTT西日本に残る選択肢もありますが、その場合会社は、「西日本どこへでも転勤してもらうことになる」としています。

8兆8800億円もためこみ利益が

 NTTグループの9月中間決算が出そろい、2002年3月期業績予想では、連結最終損益は3310億円の赤字になると発表されています。

 グループ全体では、通常の経済活動による利益を示す経常利益は6650億円と予想しており、「赤字」の原因は海外投資の大失敗(7607億円)と、リストラ費用(1830億円)の計9437億円を特別損失に計上したからです。NTTグループの内部留保(ためこみ利益)は8兆8800億円(2001年3月現在)もあり、経営危機などではありません。

 


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