2001年11月26日(月)「しんぶん赤旗」

ちょっと待った 退職強要

負けてたまるか リストラの職場で

村田機械 京都

共産党員が会社に迫り、ベテラン労働者が続いた…



 繊維機械やOA機器メーカーの村田機械(本社・京都市伏見区)は十月下旬に突然、年内に三百人を削減すると発表しました。これに「ちょっと待った」と立ちはだかったのが職場の日本共産党支部。会社側から「退職強要はしない」と約束をとりつけ、宣伝すると、「よういうてくれた」と反響が広がっています。(名越正治記者)


 八日、京都本社での会社説明会。企業存続のための緊急措置だと会社幹部の人員削減の説明が長々と続き、重苦しい雰囲気に包まれていたとき、一人の日本共産党員が立ちあがり、いいました。「個人面接などで配転や転籍をちらつかせて退職に追いやったり、嫌がらせや肩たたきなど退職勧奨にあたるやり方はあってはならない。絶対しないと約束できるか」

 これに触発されて、日ごろ物静かなベテラン労働者は「私は半年前にも転籍に協力してきた。なのに、なぜ人員削減か」と語気を強めて訴えました。うんうんとうなずく労働者が目立ちました。労働者の追及に押され、総務部長は「退職強要や退職勧奨はしません」と答えました。

 労働者が「あれは効いたで」と、質問した党員に声をかけてきました。

 労働者は「広く知らせたほうがええ」。別の労働者は「共産党の職場新聞は出せへんのか。カンパや」と千円札を二枚差しだしました。

“リストラ道理なし”職場新聞 回し読み

「いやといえた」と労働者

 日本共産党村田機械支部は十数年前、日本共産党員であることを理由とした思想差別の撤廃をたたかっていたとき、職場新聞「シャトル」を発行していました。

 しかし争議が全面解決した九七年四月以降は中断していました。

 「日本共産党への期待がひしひしと伝わってきた。仲間の苦しみは私たちのもの。勇気をもって声をあげれば困難も切り開かれる。いま党ががんばらなければ」と藤原元幸さん(55)はいいます。

 支部は議論を重ね、会社側のいい分の身勝手さを広く明らかにしていこうと、「シャトル」を復刊させます。

 同社の村田純一社長は京都商工会議所の会頭を務めています。十月末の村田機械労働組合(連合・JAM加盟)の説明会で組合役員が会社側から聞いた話として、会社には八百二十億円の内部留保があると語ったように、ばく大なため込み利益があります。この村田機械が人員削減を実施することは、深刻な地域経済にさらに冷水をかけます。

 「シャトル」は書きました。「会社の経営責任や京都の経済界代表の社会的責任を省みず、働く者にその犠牲を押しつけるのは許されません」

 会社が人員削減の理由としている「赤字」宣伝に対しても、「売上高が前期比10・6%増の一千二百六億七千万円で三年ぶりの増収で、経常利益は二十億六千万円と二年ぶりに黒字転換」(「京都」八月十八日付)と報じたことを紹介。「増収増益で、いきなりの希望退職になんら道理も根拠もありません」と書きました。

 支部は、本社と吉祥院工場門前で宣伝し、「シャトル」を配りました。工場では、九割の労働者が受け取りました。

 「勇気がわいてきた」と共感が広がり、ある職場では「シャトル」が回し読みされました。

 机に(1)再三呼び出す時には抗議を(2)嫌がらせの事実は記録しよう―など「退職強要をはねかえすための八カ条」を紹介した「シャトル」を張りつけた労働者もいます。

 支部が開設したファクスやEメールにも相談が寄せられています。

 「明日面接があり、何をいわれるのか心配」という労働者は、党支部と何度もメール交換し、こう送ってきました。

 「はっきりとやめませんという意思表示ができました。共産党の存在は偉大です。会社が勝手な行動を起こさないようがんばってください」

 村田機械労組は、会社側の希望退職提案に応じることを決定しました。支部ごとに開いた代議員大会では、「もちろん、希望退職の募集については全員反対ということですが、最善を尽くすために執行部に対して信任か不信任かの選択だった」(委員長報告)といい、結果は「おおむね三分の二が賛成、三分の一が反対」とかつてなく反対意見が噴出しました。

 会社は十五日から十九日まで個人面接を実施しました。会社説明会での言明に反して「退職しない」と答えた労働者に、「残っても、どこへいかされるかわからないけどいいのか」との脅しや、「二度呼び出された」と訴える労働者もいます。

 党支部は「長年働いてきた労働者は、会社発展の宝。みんなの力で希望退職の強要をはねのけよう」と労働者訪問や対話を広げています。

 二十一日には、人権侵害まがいの退職強要をやめさせるよう指導・調査せよと京都下労働基準監督署に要請しました。


村田機械のリストラ計画 グループ十五社の三十三歳から五十八歳までの四千百六十人全員を対象に個人面接を実施し、三百人の希望退職を募集する。子会社に出向している四十五歳以上は全員一括して転籍する。来春より管理職の年俸化、降格のルール化をはかる。福利厚生も、食堂での朝食の廃止や食材値引きの実施、事務用品の新規購入ストップ、業務に必要な会社貸与の携帯電話の基本料金を本人負担に切り替える―など。


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