2001年11月23日(金)「しんぶん赤旗」 負けてたまるか リストラの職場で賃金6割では生活できない住友金属 9千人の転籍 屈せず拒否する人も |
大量転籍という首切りリストラをすすめる鉄鋼大手の住友金属工業(本社・大阪市中央区)。「転籍後の賃金ではとても家族は守れない」と、労働者の不安と怒りは頂点に達しています。職場の日本共産党員のとりくみで、勇気をもって転籍を拒否する労働者も生まれています。やむなく転籍に応じた労働者も、「もっと条件をよくしてほしい」などの声をあげ始めています。
「今の転籍条件では絶対同意できない」。住友金属工業和歌山製鉄所(和歌山市)の男性従業員Aさん(41)は、現在関連会社に出向中。四回も転籍強要の面接に呼び出されながら、転籍を拒否しています。
来年一月から今の賃金の60%で転籍するよういわれています。小さな子どもを抱え、多額の住宅ローンが残っています。
「転籍すると給料は十七万円くらいになる。とても生活できません。会社は面接のなかでわずかなアップをいってきていますが、変わりばえしません。90%程度ならともかく、60%では絶対に『同意』の判は押せません」とAさん。
住友金属がすすめている大リストラは、入社したばかりの若者を含む九千人の出向者全員を解雇し、出向先に転籍させるというものです。同和歌山製鉄所だけで出向者は約三千四百人にのぼり、出向先は二百二十六社あります。住金の関係会社や協力会社だけでなく、まったく関係のないガソリンスタンドやビル管理、木材加工、病院事務などさまざまな所に散らばって出向させられています。
出向先によって、転籍後の賃金水準が80〜60%の範囲で異なり、同じ出向先でも部署によって賃金が異なるという信じられないようなリストラ策です。
Aさんは一人で悩み、最近まで再就職先を探していました。そんなとき、「転籍は本人の同意が必要、強制は違法」、「転籍しても労働条件の現状維持は最低条件」(労働契約承継法)などと書かれた一枚のビラが目に飛び込んできました。日本共産党住金和歌山製鉄委員会がつくり職場や地域でまいたビラでした。同意しなければ会社を辞めなければならないものと思い込んでいたAさんにとって、ビラの内容は衝撃的でした。
「会社の一存で出向先が決められ、今度はその出向先によって転籍後の給料が異なる。給料だけでなく、老後の年金や退職金の額にも影響します。こんな理不尽なことってありますか。共産党には相談にも乗ってもらい、今では勇気をもって会社に主張できます」とAさんは話します。
会社は賃金の激減緩和措置として一定期間加算するとしています。しかし、若い層ほどその期間は短くなり、三十九歳未満の人は一律四年です。四十一歳のAさんは、七年間加算されるだけで、四十九歳以降は60%の賃金のみとなります。
また、会社は転籍強要とあわせて、六十歳定年制の法律を無視し五十九歳で退職に追い込む「定年前退職勧奨制度」を導入しています。来年三月末までに一千二百人を対象に実施中。十月末時点で九百五十三人が強制退職させられました。
党委員会では労働者の苦悩と切実な要求にこたえようと出向者宅を訪問したり、聞き取り調査も始めています。そのなかで、「移籍を断った後の職場を確保してほしい」といった声や、転籍に応じた人の中にも「もっと条件(賃金)をよくしてほしい」など切実な要求が大きくひろがっていることがわかりました。
転籍をのんだ五十七歳の男性は「会社の都合で碁石のようにあっちこっち出向させられたあげく転籍です。賃金カットだけでなく、私の場合、ボーナスもなくなる。会社に怒鳴り込みたい気持ちを抑えている状態です。定年まで後わずかだからまだいい。将来のある若いもんがかわいそうや。なんとかしてやって」と党員に語りました。
党委員会は日本共産党国会議員団とも連携をとり、二十一日には日本共産党の小沢和秋衆院議員が人権を無視した住金の行き過ぎた転籍(退職)勧奨について追及。労働基準局長が最高裁判例をあげ、「限度を超えた退職勧奨は違法」と明確に答弁しました。
二十二日には、同製鉄所海南工場(和歌山県海南市)前で、「出向先転籍は本人同意の原則守れ」と宣伝しました。
「これまで一日でほかされていた党のビラが一週間も置かれたままで職場で読み継がれてる状況も生まれています。『このビラの通りや』と。住金のリストラが小沢さんによって国会で取り上げられ、政府も行き過ぎた転籍強要は違法としたのは大きな成果です。これを契機にさらにリストラ反対、労働者の切実な願いを実現するとりくみをすすめたい」と党委員会の原田賢二委員長は話します。(中村隆典記者)
住友金属は今年四月、「変革と再生プラン」というリストラ計画を発表しました。二〇〇二年十月以降、早期に住友金属本体を純粋持株会社にし、各製鉄所を事業分野ごとに分社化するとしています。その先駆けとして九千人の転籍で三百億円の労務費を浮かせ、さらに関係会社百五十五社の半減と下請け単価を三〜五割も切り下げるリストラ策を打ち出しています。
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