退職・転籍にかかわる現行法、判例法より
退職・転籍の強要は違法
下関商業高校事件判決〔1980年7月10日、最高裁第1小法廷判決)
「転籍や退職の勧奨行為は、限度をこえれば違法な権利侵害となり、損害賠償の支払い義務が生じる」
最高裁が退職勧奨で限度をこえた不法行為とした「5項目の判断基準」は次のとおり。
- 出頭を命ずる職務命令が繰り返される。
- はっきりと退職する意思がない労働者に、新たな退職条件を提示するなどの特段の事情がないのに執ように勧奨を続ける。
- 退職勧奨の回数や期間などが、退職を求める事情の説明及び優遇措置など退条件の交渉に通常必要な限度にとどまらず、多数回、長期間にわたる。
- 労働者に精神的苦痛を与えるなど自由な意思決定を妨げるような言動がある。
- 労働者が希望する立会人を認めたか否か、勧奨者(会社側)の数、優遇措置の有無などについて問題がある。
以上の点を総合的に勘案し、全体として労働者の自由な意思決定が妨げられる状況にあったか否かで、その勧奨行為の適法、違法かの判断基準にします。
▽民法第625条 別会社への転籍は本人の同意がなければできない(「使用者は労務者の承諾あるにあらざればその権利を第三者に譲渡することを得ず」)
労働条件明示なし転籍は無効
▽改定労基法第15条 労働契約を結ぶさい契約期間、就業場所、業務に関する事項、労働条件などを明示しなければならない
パートの雇い止め解雇は無効
▽契約が反復更新されている場合、最高裁の考え方は「有期の労働契約が反復更新されて、期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態になった場合には、解雇に関する法理が類推適用される」(1974年7月22日、最高裁第一小法廷判決・東芝柳町工場パート解雇事件)
解雇はきびしく制限
「倒産の危機」など4要件明示
判例法は、解雇について厳しく制限しています。最高裁は、使用者の解雇権の行使について社会通念上合理的でなければならない、と濫用(らんよう)を戒めています。大量の人減らし・「整理解雇」についても東京高裁はじめ多くの裁判で企業が倒産する経営危機が迫っているなど四要件を示しています。
これは戦後、経営者が「解雇は自由だ」として大量の人減らし「合理化」を強行してきたのにたいし、労働者が裁判に訴えてたたかい、かちとってきた成果です。この判例法によって企業は容易に労働者を解雇できません。現在大企業がすすめているリストラで「希望退職」や転籍の強要という手法に訴えているのもこのためです。
解雇権の濫用は無効
最高裁の考え方「使用者の解雇権の行使も、それが客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当として是認することができない場合には、権利の濫用として無効になる」(1975年4月25日、最高裁第2小法廷判決・日本食塩製造事件)
「整理解雇4要件」
大量の人減らし・整理解雇には4要件が必要
企業経営上の必要性による解雇をする場合
- 「整理解雇の必要性」 人員整理をしなければ、どうしても企業が倒産するなど経営危機が差し迫っているのか
- 「解雇回避努力」 新規採用をやめるとか希望退職を募るなど会社が経営上の努力をしたか
- 「解雇手続きの適正」 労働組合や労働者に十分説明をして労働者の納得を得る努力をしたか
- 「人選の適正」 誰を解雇するかの基準がはっきりしていて、その基準が適正で、基準の適用が正しくされているか
「4つの要件を満たしていない場合、その整理解雇は無効」(1979年10月29日、東京高裁判決・東洋酸素事件)
(2002年1月29日(火)「しんぶん赤旗」より)
|