[8問8答]そこが知りたい! 合併論議のポイント


問8 合併協議会設置の動きに、どうのぞんだらいいのですか?

答 合併に不安があれば、協議会の安易な設置には慎重であるべきです。


 いま総務省や推進側は、法定の合併協議会の設置を急いでいます。合併協議会を設置してから合併が成立するまで、二二ヵ月、およそ二年近くかかるからです。そして、法定協議会を経た合併でなければ、合併特例債など特例法が決めている「支援策」を活用することができないから、と合併に追い立てています。

 総務省は、昨年あたりから「合併協議会は合併の是非もふくめて討議する場。だからまず法定協議会の設置を」と強調しています。総務省が市町村に下ろしている合併資料やホームページでの「合併特例法の概要」では、「合併の是非もふくめて検討する合併協議会」などと、特例法にはない記述まで加えて紹介しているほどです。これは、総務省が「合併協議会では、合併の是非を議論してほしい」と考えているからではありません。そのねらいは、「合併の是非も検討する場だから」と協議会の設置のハードルを思い切って下げて、どんどん設置をすすめさせようということです。

 実際、総務省の「合併協議会の運営の手引き(マニュアル)」には、「合併の是非」を独自に議論する段取りの記述はありません。強いてあるとすれば、最後の結論を出すときが合併の是非の判断、という立場です。

 「マニュアル」では、「合併の是非をも含めて討議する場」としつつ、「一方、合併の是非の判断は、合併協議の途中で一刀両断に決断できるものでもありません」として、協議会では「まず市町村建設計画の案を作り、これを住民に説明し、意見・反応を聞いた上で、次のステップとしての合併協定項目の協議に入る手順」としています。これでは、「合併に反対の人も、不安な人も」とはいうものの、合併が前提になった議論ばかりがすすむことになります。そして二年近くたって、それらが案としてすべてできあがった最後の段階で、「さて、合併しますか、合併しませんか」というわけです。「出口が合併で決まっているトンネル」のようなものです。もちろん、これは総務省の「マニュアル」であって、合併協議会はどこでもこうしなければならない、というのではありません。

 しかし、その地域の合併について反対だったり、不安があるという場合には、「合併の是非の議論をする場だから」という宣伝文句に安易に乗らずに、協議会の設置そのものにも反対、あるいは慎重な態度でのぞむのが適切でしょう。

 合併協議会の設置の是非の住民投票について

 ことし三月二十八日に国会で成立した合併特例法の改正で、あらたに住民投票制度が設けられました。住民投票の法制化は初めてです。

 しかし、今回の住民投票制度には、重大な問題があります。

 これまでは、住民発議(有権者の五十分の一以上の署名による合併協議会の設置の請求)にもとづく合併協議会の設置協議の議案が、関係市町村のうちの一つの議会で否決されれば、合併協議会の設置はいったん白紙になりました。今回の改正は、この局面にかぎって、住民投票制度をもちこんだものです。つまり、合併協議会の設置をほかの議会がすべて可決したのに、ある市町村の議会だけが否決した場合、@その首長は協議会の設置についての住民投票を請求できる、A首長がその請求をしなかった場合は、有権者が六分の一以上の署名で、協議会の設置についての住民投票を請求できる、としたのです。そして、住民投票で有効投票の過半数の賛成があれば、協議会の設置を議会が可決したものとする、というものです。

 これはそもそも、合併協議会の設置を議会が否決した場合だけに請求が可能であるという点で、いわば、合併のブレーキはずし、合併促進のために設けられた制度です。住民投票のテーマも合併の是非そのものではなく、合併協議会の設置の是非というものです。

 日本共産党は、合併問題で住民投票制度をつくることには賛成です。しかし、この法案には当然反対し、議会などが合併の是非の結論、あるいは合併の議決をおこなう前に、住民投票を請求できるしくみにすべきと主張し、修正案を提案して論戦しました。

 同時に、国会でこの改正法に反対したからといって、この制度による住民投票がおこなわれることになれば、日本共産党として、それが住民の意思を公正に表明できる機会となるよう、全力をつくすことは当然です。もし「国会で反対した制度だから」とか、「合併そのものの是非でなく、協議会の設置の是非だから」とかの理由で軽視したりすれば、この住民投票が協議会設置に賛成多数となり、それが合併の是非の住民の意思表明であるかのように利用され、合併を前提にした議論がはじまることになりかねません。

 協議会の設置が避けられない局面では

 また、さまざな経緯から、合併協議会の設置が避けられない局面にある場合にも、「もう合併は決まってしまった」などと性急に判断しないことです。総務省でさえ「協議会は合併の是非も含めて検討、協議する場」であると盛んにいっているのです。あれこれの合併の協議事項の議論の前にも、あるいは前にこそ、その地域の合併の是非についてどう考えるかの議論をしても、何の不思議もありません。さまざまな局面で、合併の是非そのものの議論をもとめることもできます。また、協議会の運営が住民に開かれ、住民の声が反映できるようにさせるなど、住民の意思と離れて協議会の議論や運営がすすめられないようにもとめる必要があります。

 また、設置がきまるという場合には、日本共産党の議員や党員も、合併協議会に積極的に参加し、議論が公正におこなわれるように活動することが必要です。

 合併協議会での議論がすすんでいる地域では

 すでに合併にむかって協議がすすんでいる場合には、その協議に住民の意思や要望が反映されるようにする努力がもとめられます。

 協議がすすんでいるからといって、合併が決まったわけでもありません。各地には、法定協議会はできたが、協議が不調で中止になった例もあります。新設合併(対等合併)か編入合併(吸収合併)か、新しい名称や役所の位置をどうするかなどは、以前からなかなかまとまりにくいとされてきました。かつての「昭和の大合併」のさい、それだけで合併話がこわれた例も少なくありません。協議会ができても、課題や問題はたくさんあります。その一つひとつが、住民の利益や要求にかかわるものです。住民として、関心と注意をもって監視していくことです。

 合併に賛成できる場合や、やむなしと判断する場合には、合併による新市町村建設計画や、住民サービス、公共料金・税金などの負担の問題が、住民本位、住民の合意ですすむように働きかけることが必要です。合併によるメリットの条件をどう生かすかも大切です。

 たとえば、産業・経済が沈滞していたり、過疎などの地域で、住民の多くが地域の活性化をねがい、合併に期待を寄せている地域では、そこの実情をふまえて、観光や農林漁業、商店街や地場産業など産業振興の知恵を出し合い、構想化と具体化をはかることがもとめられるでしょう。

 合併特例債を活用したまちづくりの計画をつくるさいには、その内容が住民の要望と利益に沿った施設になるように、その規模が将来の財政の健全運営の範囲の適切なものとなるように、という視点がもとめられます。

 その一方で、一般的に予測できる合併によるデメリットを最小限におさえ、住民の不安にこたえていく努力も必要です。

 また、大きな節目などでの住民アンケートや、最終的な判断をする前には住民投票をおこなう、あるいは実施をもとめるなど、協議会の全体をつうじて、住民の意思を尊重する立場がつらぬかれるようにすることがなによりも大切です。

 合併した場合には、合併後も、住民の利益と住民自治を守る立場に立って、行政にたいするとりくみや監視をつづけていくことは、その地域での地方政治の民主的な改革や前進にとって、重要なことです。