[8問8答]そこが知りたい! 合併論議のポイント


問3 合併によって、住民のサービスや負担の違いはどうなるのでしょうか?

答 それぞれの地域のサービスや負担の実態・比較を基礎に考えましょう。


 まずおさえておきたいことは、国の市町村合併推進の目的の一つが、地方への支出の削減であり、そもそも、住民サービスの向上や住民負担の軽減ではない、ということです。総務省は、国と地方の財政危機を強調し、「市町村合併は、画期的な行政改革手法」などと繰り返しています。たしかに総務省はそのさい、「一般的には住民の負担を増やさずに、行政サービス提供の高度化を図れる方策」だから、などと説明します。しかし、国が強調する「行革」は、これまでどういうかたちで、地方自治体にあらわれてきたでしょうか。言葉とはうらはらに、多くのところでは、開発型の公共事業がすすむ一方での、福祉や教育の切り下げ、公共料金の値上げ、施設の統廃合、住民サービスの切り下げにつながる職員の削減などであったことは、住民が目の当たりにしてきたことではないでしょうか。

 国もデメリットと位置づけ 国の「財政措置」はせいぜい五年間

 また、総務省自身が、「サービス水準が低下し負担が重くなることはないか」を、市町村合併によるデメリット論の一つにあげています。総務省の答えは二つで、「一般的には、サービス水準は高い方に、負担は低い方に調整されることが多いと言われている」、「合併前の市町村間で話し合って決められる」というものです。

 しかし、実際に合併を先行した自治体では、合併のさいには「サービスは高い方に、負担は低い方に」と決めてスタートしても、合併後しばらくして、あるいは直後から、公共料金の値上げやサービスの後退がおきている例が少なからず報告されています(本号掲載の各地の報告を参照してください)。

 国は、合併直後の公共料金の格差の調整に対応するためなどとして、特別交付税での措置をしています。しかし、これは五年間にかぎられます。地方税についても、合併後の一定期間(今年三月末の合併特例法の改正でその限度を三年間から五年間に延長)は「不均一課税」、つまり“従来のままでもよい”としていますが、いずれも、せいぜい五年間の措置であることは知っておかなければなりません。

 地域のサービスや負担の実態・比較はどういう項目で調べるか

 では、それぞれの地域で住民サービスがどうなるか、住民の負担はどうなるのかを考えるために、どんな項目で実態を比較するとよいか、考えてみましょう。

 地域ごとに住民サービスの特徴もあり、それぞれの行政の実態に見合った内容にすることがもとめられます。ここでは、共通するものを中心に考えてみます。

 〈住民サービス〉

 (1)高齢者福祉では、介護保険サービス(介護保険料・利用料の減免制度、特養ホームやデイサービスセンターなどの基盤整備の状況など)、介護保険外の福祉サービス(給食宅配サービスや住宅改造補助、訪問理美容、紙おむつ代補助など)、敬老事業(敬老金や敬老祝い品、銭湯無料利用など)、老人医療費助成・入院見舞金制度、通院タクシー代補助など。

 (2)子育て支援・教育では、乳幼児医療費助成、保育事業(延長保育、障害児保育、緊急・病児・病後保育、保育所の定員数・対象児数など)、学童保育(設置数、父母負担など)、奨学金制度、修学旅行費などの助成、児童館、スクールバス・通学費助成など。

 (3)障害者・児の支援事業では、作業所などの施設・定員や財政補助など。

 (4)保健医療では、各種の健康診断(がん検診、成人病、歯科など)や健康づくりの施策など。

 (5)その他、公共下水道・各種下水道の整備状況や巡回バス、除雪・雪下ろしなど地域の特徴によるものなど。

〈住民負担〉

 (1)税金(個人住民税、固定資産税、都市計画税、事業税など)。

 (2)各種公共料金(国保料・税、介護保険料、保育園・幼稚園の保育料、上下水道料金、プール・体育館等の公共施設利用料、住民票等の交付手数料など)など。

 これらを、合併の対象市町村の比較一覧表にしてみると検討の材料になるでしょう。

 住民の利便がどうなるかも大切

 住民の利便はどうなるかも住民サービス、負担の一つに加えて考えてよいでしょう。「合併すると、役場が遠くなって不便にならないか」という不安は、ひろくあります。新しくできる市役所・町役場はどこになりそうか、旧市町村からの距離や交通の便はどうなるか、支所や出張所は残るのか、そこで受けられるサービスは、住民票や戸籍謄本、印鑑証明書など法律上全住民の義務と権利にかかわる事務・サービスだけなのか、などは住民のくらしにとって切実な問題です。

 これまでの例では、広い地域の場合は、支所は残るのが普通です。しかし一〇年、二〇年を経ると、支所すらなくなる例もあります。

 また、支所や出張所では、老人医療や保育園、障害者の認定や手帳の交付、中小企業の融資などの手続きはできず、本庁(市役所・町役場)へ出向かなければならないところが多いようです。町村の場合、いまは生活保護の申請は県福祉事務所が窓口ですが、町村役場でも受付の便宜をはかっているのが通例です。しかし新市になった場合、旧役場では手続きができなくなるのが一般的です。

 県内や近隣の合併先行や類似した市町の例は一つの参考になります。旧役所・役場に相当数の人員を配置することは、財政的に不可能に近いことは念頭におく必要があります。

 資料を行政につくらせることが基本

 これらの資料は行政につくらせることです。これらは、何も秘密ではなく、行政は当然データをもっています。要は整理すればすむものです。もちろん、行政がつくらない場合や、不十分な内容である場合は、住民運動として、あるいは日本共産党の議員団や支部で、住民の目線、住民のくらしの実態にそった資料をつくる努力も大事です。