[8問8答]そこが知りたい! 合併論議のポイント


問2 「将来は地方交付税がくる保障がないから、市町村合併だ」といわれますが?

答 地方交付税の変質の企ては市町村合併の理由にはなりません。


 国が将来、地方交付税の制度を変えるかもしれないからといって、いまのうちに市町村合併をすすめるというのは、まったく根拠のない議論です。

 もし地方交付税の変質を許してしまい、大幅に額が減るということになれば、合併してもしなくてもその自治体、地域の地方交付税は減るのです。それどころか、問1でみたように、合併すれば、さらにそれだけ余分に地方交付税は減るのです。もし「地方交付税が減ってやっていけないから」と、そういう自治体ばかりが集まって、合併したら、財政的にやっていける自治体になる」という制度は、残念ながらありません。逆に、その地域全体の地方交付税は大幅に減りますから、行政サービスの低下が避けられないことになります。「国の支援策があるから、合併すれば何とかなる」といっても、国の「支援策」はせいぜい一〇年間程度です。しかし、市町村は一〇年間どころか、その後もずっと存続し、子どもや孫の世代にもひきついでいくべきものです。

 目先の「地方交付税が減るから市町村合併しかない」などの議論にごまかされず、住民の利益と住民自治を発展させるのにふさわしい自治体とはどういうものか、住民の幸せにつながる町づくりはどうあるべきか、地方自治のそもそもにたって、市町村合併の問題を考えるべきではないでしょうか。

 地方交付税の原点をまもり、必要額を確保するたたかいが必要

 同時に、地方交付税制度を根本から変えようという国の企みは重視しなければなりません。地方交付税の制度と動きを、簡単にみておきましょう。

 いまの地方交付税の制度には、自治体間の税収のアンバランスを調整する機能とともに、標準的な行政水準を財政的に保障するという二つの機能があります(表2 地方交付税のしくみ)。地方交付税法は、地方交付税とは「地方団体がひとしくその行うべき事務を遂行することができるよう国が交付する税」と定義しています。地方交付税は、戦後の地方自治制度のなかで、基本的には自治体を財政的に支える仕組みの柱の役割をになってきました。この制度の趣旨の根拠は、国民の生存権など基本的人権の保障とともに、地方自治を明記した日本国憲法と地方自治法にもとめることができます。

 ところが、いま、この地方交付税の制度を根本から変質させて、全国どこの市町村でも標準的な行政を保障するという、制度発足いらいの地方交付税の重要な特質をできるだけ切り縮めようという企みがすすんでいます。

 財界や財務省サイドが要求し、それを受けて、財政にかかわる国の重要事項を討議する小泉首相を議長とする経済財政諮問会議や、地方分権改革推進会議などで、他の税制の議論とあわせて地方交付税の「見直し」と称して検討されているだけに、軽視できません。

 ことし一月の経済財政諮問会議で確認し、閣議決定された「構造改革と経済財政の中期展望」(「改革と展望」)という文書にも「地方交付税については、……国・地方を通ずる行財政制度の在り方を見直していく中で、その在り方を見直していく」と盛り込まれました。昨年十一月の諮問会議に提出された民間議員四人の文書「21世紀型地方行財政制度の確立に向けて――地方にできることは地方へ――」では、「地方交付税の役割も、中長期的には標準的歳出の財源保障から地方自治体間の税収入の偏在の調整という地域間財政調整へと重点を変えて行く」と、そのねらいをはっきりのべています。

 地方自治を財政の面から切り縮めるこの不当な攻撃を断じて許さず、地方交付税の原点をまもり、福祉をはじめ住民の利益と地方自治をまもる幅広い共同をきずくことがもとめられています。

 もちろん、日本共産党は、いまの地方交付税を全面的に肯定するものではありません。問1でみたように、交付税の不足額を地方の負担とする考え方も問題です。なによりも、この十数年来の間に、「内需拡大」やバブル経済、その破たん後の景気対策で、いずれも公共事業が前面に押し出され、地方自治体の多くが「開発会社」化路線にまきこまれましたが、その財政誘導に利用されたのも地方交付税です。地方単独の公共事業が奨励され、そのための仕組みがさまざまに持ち込まれました。

 もちろん、こうした仕組みを自治体が賢く活用して、住民に必要で身近な福祉・健康施設や生活道路の整備などをすすめてきたところも少なくありません。しかし、全国的にみると、国の公共事業拡大政策で一九九〇年代半ばには、「公共事業が五〇兆円」という規模にいたり、そのうちの三〇兆円を地方自治体が担わされました。いまは、しだいに縮小しつつありますが、それでも一九九九年度の「行政投資実績」によれば、依然として約四五兆円、うち地方が二八兆円という規模です。

 こうした公共事業偏重の政策の転換は当然であり、これに伴う地方交付税制度の改善や規模のそれに見合った縮小は必要なことでしょう。

 しかし、財界や国のねらいは、自らの政策と責任への反省にたった改革ではなく、地方への財政支出の大幅な削減であり、そのための地方交付税の制度の根本の変質にあります。このことを見抜いて、福祉をはじめ、住民の利益をまもる自治体本来の仕事のために必要な財源を保障するという、地方交付税の原点をまもる立場にたった対応がもとめられます。