市町村合併、地方財政「改革」の焦点は?  


Q9 法定協議会ができても、解散する例が相ついでいると聞きましたが。

A そういう例が各地に広がっています。

 それは、なによりも、いまの合併が住民や市町村の必要や要望から出発したのではなく、国の押しつけで始まり、しかも、「特例法の期限(二〇〇五年三月末)までに合併しなければ」と拙速に法定協議会を設置しているところが多いことが背景にあります。

 徳島県では、「那賀川上流流域」「勝浦・那賀川流域」の二つの法定協議会が三月末で解散しました。うち「那賀川上流流域」の場合は、上流の山間部から下流までの広大な地域で四町村の合併の協議でしたが、結局新庁舎の位置をめぐって対立が解けず、解散しました。

 兵庫県の美方郡四町と香住町の法定協議会も、七月新庁舎の位置をめぐって対立が解けず白紙・解散の見通しとなりました。

 福島県東白河郡の法定協議会も、矢祭町が合併しない宣言をしたのをうけて残る三町村で設置されていましたが、七月十三日の三町同時の住民投票の結果、中心になる町は賛成多数になったものの、他の二町村で反対が多数になり、解散することになりました。とくに、JR水郡線の沿線からはずれている鮫川村では、賛成八五〇票にたいして反対二〇四六票で、二・四倍という圧倒的な差がつきました。村民が知らないところで合併協議がすすみ、その進展を知った村役場周辺の商店街の人びとを中心に、「役場がなくなれば、村の経済はなりたたない」という危機感から反対世論が急速に広がった結果です。

 香川県の小豆島三町の法定協議会は、昨年二月に規約にも「合併の是非をふくめた」協議をおこなうとして発足、将来構想づくりのあと、十八歳以上を対象に住民意向調査をおこなったところ、三町の真ん中に位置する池田町では賛成多数でしたが、他の二町では二倍の開きで反対が多数となり、十一月解散しました。

 埼玉県の南部四市(朝霞、志木、和光、新座)の法定協議会は、四月のいっせい地方選挙の前半戦と同日に合併の是非を決める住民投票がおこなわれ、和光市で反対票が一万九八二五票で、賛成の五九六二票を三倍以上上回り、解散しました。協議のなかで「サービスは高い市に、負担は低い市に合わせる」という方針が確認されましたが、和光市にとっては、他市の水準を現在の市の水準に改善するに過ぎない一方、他市の借金が和光市民の負担としてかかってくること、四市でいちばん広い現市役所が無駄になることや市職員や議員が減り、市民サービスの低下につながることなどがあきらかになるなかで、市民の反対世論が大きく広がった結果です。

 これらは、特殊な事例ではありません。今回の合併押しつけが持つ矛盾のあらわれです。新庁舎ができるところは栄えても、役場がなくなる周辺部はさびれるのではないか、住民のサービスの後退や負担増への不安など、どこにも共通する問題です。

 もちろん、法定協議会ができて協議がすすんでいるところで、合併反対の世論をひろげることは簡単なことではありません。しかし、住民の利益がどうなるかという立場で、合併問題に最後まで真剣にとりくむことは、合併の帰趨がどうあれ、けっして無駄になるものではありません。


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