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1999年10月22日「しんぶん赤旗」
志位和夫書記局長が十月二十日の全国都道府県委員長会議でおこなったまとめは、大要つぎのとおりです。
私は報告で、「比例を軸に」という立場をつらぬこうという話をいたしました。その中身は政党選択を前面にしたたたかいをやって、日本共産党にたいする支持の大きな波をひろげるというところにあるということをのべました。そして、今日の政党配置というのは、「比例を軸に」がたたかいやすい配置だということを申しました。この点については、委員長の中間の発言でも、つっこんだ解明がおこなわれました。
若干補足していいますと、今週にはいってのわずかの期間でも、ほんとうにこの点で面白い展開になっているということです。
まず自自公体制についてですが、報告では、この体制について、両面からみる必要があるということをいいました。危険性を直視するとともに、展望のなさ、力のなさという点をみて、おおいにこれに立ちむかっていこうということを話したわけですけれども、この体制の国民との関係でのもろさが、次つぎと露呈しはじめた。これがこの間の、わずかな期間で、どんどんでてきました。
その一つが、今週の日曜日に投票となった長野の参議院補欠選挙でした。県委員長の今井同志からも発言がありましたけれども、この長野の選挙で大事な点は、「自自公ノー」ということが圧倒的流れになったということです。得票でいいますと、自民党候補は、公明党も応援した候補ですけれども、わずか三割しかとれずに、野党の三候補の得票は七割だった。国会の議席数は、逆なんですね。衆院で自自公は七割、野党は三割なんですけれども、国民の力関係は、逆になってでてくる。これは別に長野で起こった特殊事情でなくて、いまの日本の国民の中で渦巻いている自自公体制にたいする批判の気持ち、怒りの気持ちが、ここにあらわれているわけです。この体制が国民との関係では、ほんとうにもろい体制だということが、しめされたということが大事なところだと思います。
その結果として、わが党の勝利にならなかったのは残念なことです。定数一をめぐるたたかいのなかで、そういう流れにこんどはならなかったわけですけれども、しかし、「自自公ノー」という流れを県民のなかで圧倒的なものにするうえでは、わが党はたいへん大きな貢献をしたわけで、ここに確信をもって、今後のたたかいにのぞむ必要があります。
それからもう一つの事件は、西村防衛政務次官の暴言問題です。これは、昨日発売の週刊誌で明るみにでて、昨日の記者会見で、私は更迭を要求しました。さすがにああいう人物もたえきれなくなって、辞任というところに追いこまれました。
きょうの夕刊各紙をみても、政務次官でありますけれども、小渕内閣にとって”閣僚級のショック”というふうにだいたいとらえています。朝日新聞では「巨大与党 ひずみ見えた」。でかでかと大見出しです。それから、東京新聞では「”西村核爆弾”自滅」。毎日新聞では「あるまじき暴言だ」という見出しで、各界の批判が掲載されています。これは歯止めのないタカ派集団を政権に抱え込んだことから生まれている矛盾です。
そして即首相の任命責任につながってくる問題です。昨日も私は会見のなかで、任命責任は重大だという批判をやったわけですけれども、きょうはそれが大きな声となってひろがっています。
任命責任ということでいうと、西村氏というのは国会の正規の場でこんな発言をやっているわけです。
たとえば、「兵役の義務は、国防ということを考えるためには、やはり国家としてあるのが近代国家の姿である…。徴兵制を日本がとった場合に、『その意に反する苦役』に当たりそうだと(政府が)お答えになった点は、私は同意いたしかねる」。つまり「徴兵制をやるべきだ」と。これは衆院安保委員会での発言です。
それから「先制攻撃をやるべきだ」ともいっています。「防衛には、専守もへっちゃくれもない。防衛するためには攻撃精神が必要なんだ、攻撃精神のなき防衛なんか防衛にならぬ」。「ミサイル基地をたたくという思想のもとで、わが国の装備、兵器の能力、これを早急に、具体的には朝鮮半島のミサイル基地を破壊することができる装備…が必要なのではないか」。これも衆院安保委員会、つまり国会の正規の場での発言です。まさにその党を代表した質問で、こういうことをいっていた人物、それがあまねく知られていた人物であるわけです。
その人物を、こともあろうに、軍事にたずさわる部門の政務次官にすえる。いちばん物騒な人間に、戦車やピストルをもたせたわけですから、これは首相の深刻な任命責任の問題になるわけです。
自自公という体制について、危険性と同時に、彼らの弱さを、この両面をみようということをいったわけですけれども、この間の情勢の展開のなかでも、そのことは非常にわかりやすく、面白く展開している。このことをおおいにつかんで、指導にも生かしていく必要があると思います。
一方、野党の全体としての弱さということを報告でもいいました。この弱さとはなにかというと、自自公に対抗する足場を全体としてもっていないということものべました。
最近マスコミでの分析を一つ紹介しますと、これは毎日新聞の論説なんですけれども、自自公にたいして、「民主党は巨大与党にどう対抗していくのか。そのポイントは『「自自公」批判』そのものの賞味期限だと見る」というんですね。つまり、「民主党の頼りは、政権の枠組みである『自自公』批判しかない」。ところがその自自公批判を、どういう中身でやるかさだかでない。中身のさだかでない自自公批判ではいずれ「賞味期限」がきれてしまうというのが、このマスコミの見方なんですね。この論説の結論は、「『自自公』批判の賞味期限が切れたのに気付かず、明確な政策的な対抗軸がないまま突き進むと、やはり選挙という勝負は危うくなる」。これはなかなか冷静な見方をしているわけです。
長野の選挙がおこなわれた局面では、自自公政権ができた、民主党も新体制になった、いろんな要素が重なって、ああいう流れになりましたけれども、これからいざ国会がはじまって、たとえば原子力問題が議論になる、あるいは中小企業の問題が議論になる、あるいは企業献金や定数問題も議論になる、雇用や景気の問題も議論になる、あるいは介護保険の問題も議論になる、こういう具体的な議論が一つひとつはじまってきた場合には、中身がさだかでない自自公批判では通用しなくなってきます。
たとえば介護の問題でも、私たちはいまの制度に根本的な欠陥がある、保険を導入したことを契機にして、財政支出を削減してしまったところに問題がある、ですから大もとからその見直しをはかるべきだと主張しています。ところが、民主党の場合は、大きな手直しはしないでともかくやるのがいいんだという立場なんですね。ですから、あたりまえの見直しの要求にも、こたえられないという問題があるのです。一つひとつの問題が具体的に提起されてくると、そういうことが問われてきます。
自自公の側は、もろさを露呈しはじめている。野党の側には、全体としてはそういう弱点があって、ほんとうの意味で対抗する足場、中身が十分にしめせない。
そういうなかで、日本共産党の立場として何が大事かというと、やはり中身をほんとうに豊かにしめして、自自公に対決するということだと思います。この中身というのは、いうまでもなく、われわれの日本改革論です。これを私たちは、あらゆる分野で、内政でも、外交でも、豊かにもち、そしてきょうの東南アジア訪問の報告にもあったように、現に実践し、現実の政治に働きかけている、そういう党です。まさに自自公に対決する未来ある中身を、われわれはあらゆる面でもっているわけです。ですから、これを縦横に押しだすということが、「比例を軸に」ということの中身になってくると思います。
その押しだしをやりながら、他の野党にたいして、ほんとうに自自公を批判するというんだったら、いったいどういう中身をもって批判するのか、これを問うていく必要がある。
「比例を軸に」ということを申しましたけれども、政党選択、政党対決が、ほんとうにやりやすく、わかりやすく、面白くなっているというところに、ぜひ目をひらいて、これにとりくんでいく必要があると思います。
大運動のとりくみについては、報告で提起した点に、たいへんみなさんの発言がかみあって、法則的に運動がすすんでいるという印象をつよくもちました。たいへん心づよく全体の発言をうかがいました。
この間、私たちは「支部が主役」ということに徹して運動にとりくんできました。このとりくみが、まちがいなく党に新鮮な活力をつくっている。そして、大衆との接点を生きいきとひろげている。報告では、それがまだ支持拡大や党勢拡大の本格的前進にむすびついていないということをいいましたけれども、発言をきいて”むすびつくのに機は十分に熟している”という感じがいたしました。
そしてみなさんの発言をきいて、大運動のとりくみを、三課題の総達成という方向に自覚的にむすびつけていく努力が、はじまりつつあるということも感じました。この間、中央としても、党員・機関紙拡大局の論文をだしました。それから浜野同志の党員拡大についての一問一答もだしました。市田同志の「比例を軸に」ということについての一問一答もだしました。すでにそういうものを、たいへん敏感にとらえて、指導と活動の上で何が不足しているか、何が弱点かということを、もうすでに自己分析をはじめて、そして三課題の総達成にむけて、新しい発展がはじまりつつあるという感じをつよくしました。
実際の運動の規模でみても、まだ変化は端緒的ですけれども、確実に三課題の総達成にむかっての発展的変化が、全党的にはじまりつつあるというふうにいえると思います。みなさんの発言もそれを裏付けていたと思います。
この間、四カ月間にわたってずっととりくんできた、「支部が主役」という方向の生命力が、力強く実をむすびつつあるというところに、これも確信をもって最後の総仕上げにかかっていきたいと思います。
以上をもってまとめといたします。ともにがんばりましょう。
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