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1999年2月25日「しんぶん赤旗」
日本共産党の全国都道府県委員長会議(二月二十三日、党本部)で、志位和夫書記局長がおこなった報告はつぎのとおりです。
いっせい地方選挙の前半戦の告示まで、あと一カ月となりました。この会議の目的は、目前に迫った歴史的な政治戦にむけて全国のとりくみの交流をはかり、また自己点検をおこない、躍進への意思統一をはかるというところにあります。
1、情勢の特徴、選挙戦の意義をどうとらえるか
まず第一に、いまの情勢の特徴、こんどの選挙戦の意義をどうとらえるかについてであります。
(1)自民党政治のゆきづまり――いっせい地方選挙をめぐる情勢のなかでもうきぼりに
自民党政治のゆきづまりは、いよいよ深刻であります。国政でも地方政治でも、二十一世紀にむけた針路も展望もしめせず、政権党としての統治能力を失いつつあるのが現状であります。そのことは、いっせい地方選挙をめぐる情勢のなかでも、うきぼりになっています。
たとえば、東京都知事選挙での自民党のたいへんな混迷であります。彼らのこの間の動きをみてみましても、都政をどう打開するかの政策はいっさいありません。政党の組み合わせだけに終始したあげく、その調整がつかないで分裂選挙ということになりました。この根本には、都民の審判にたいする彼らの恐怖があります。
すでに東京では、四年前に「自民党都政ノー」の審判がくだされました。参議院選挙では、自民党は首都で第二党に転落し、日本共産党にほとんど肩をならべるところまで追い上げられました。国会では、彼らは、自自連立や野党の一部を引き込んでの、さまざまな数合わせで当座をとりつくろっていますが、直接都民が選ぶ都知事選挙となると自信がない。これが現状です。そのなかで、混迷と保守乱立という状況がおこり、この流れとまっこうから対決して根本的な都政の転換の道をさししめしているのは、三上満候補だけという構図になっています。
全国の状況をみても、旧来の自民党の支持基盤の崩壊過程が、いたるところですすんでいます。大阪府をみますと、横山知事が「無党派」を装いながら、自民党以上に自民党的政治をすすめている。たとえば、府立高校の入学金の八倍化という、とんでもない乱暴きわまる暴政をすすめる。そういうなかで、その府政と経済界、医師会、各種業界団体など、これまで自民党の支持基盤にあった人びととの矛盾が深刻になっています。こういう諸団体が、こんどは横山知事を推さない、こういう動きが各分野でおこっています。
京都府の状況をききますと、ここでも日本共産党が躍進するなかで、保守の基盤の崩壊現象がおこり、そのなかで相手からも危機感をあらわにしたいろいろな発言がでてきています。京都府の自民党の府議で、自民党の全国青年議員連盟会長をやっている人ですが、この人が自民党執行部あてに意見書をだしました。その意見書のなかで「規制緩和万能論」はまちがっているということを力説して、これが中小企業や商店街の崩壊をまねいているということを告発しています。そして、日本共産党の躍進というのは、ただたんに消費税を五%から三%にもどすという主張が支持されただけではない、そういうまちがった規制緩和に反対して、地元の商店街や地場産業をまもるという、「保守政党として自民党が主張し、まもらなければならない大切なものを共産党が訴えていた」、その結果だとして、自民党執行部に政策の抜本的見直しをもとめています。ここにも保守基盤の崩壊現象という事態があらわれています。そういう状況というのは全国各地にあります。
それだけに、彼らの反動的なまきかえしも、もう一つの面として、よくみておく必要があります。二中総で、自民党が「地盤の崩れを大規模な組織戦でまきかえす」という方式をつよめているということを分析しました。これは、こんどの選挙戦での彼らのとりくみの構えをみても、いえることであります。自民党は党大会の決定で、こんどのいっせい地方選挙を、「背水の陣を敷く覚悟」という、これ以上絶対に負けられない選挙として位置づけています。そのなかでのしのぎをけずる陣地戦での相手の底力は、いささかも甘くみることはできません。
さきほど京都の例をだしましたが、その同じ京都では、「共産党に第一党を渡すわけにはいかない」と、一つひとつの中間選挙も、府知事と官房長官の二人が、二人三脚で陣頭指揮をとって、反共をむきだしにして、総力戦を展開するという状況があります。
彼らの執念を甘くみることはできないし、負けられませんが、ただこれは彼らの地盤が崩れつつあるもとでの悪あがきであります。ですから、おおいにわれわれは攻勢的にはねかえして、彼らを圧倒する政治戦、組織戦をすすめていく必要があります。
(2)4年間の政治的影響力の飛躍的増大――地方議会との不釣り合いを前むきに打破する
三中総決定は、こんどのいっせい地方選挙について、「二十一世紀の地方自治の動向を左右するとともに国政の動向にも大きく影響をおよぼす一大政治戦」と位置づけました。この選挙が、地方政治の民主的な立て直しはもとより、国政にも重大な影響を与える歴史的意義をもつものであることはいうまでもありません。
くわえて、こんどの選挙がわが党にとってもつ特別の意味あいに、ぜひ注目してほしいと思います。この四年間、国政選挙をつうじて、わが党の政治的影響力は飛躍的に増大しました。そういうもとで、地方議会の力関係との大きな不釣り合いが、いま生まれています。
たとえば、参議院の比例代表の得票では、日本共産党は八百二十万票を獲得し、自民党の得票の五八%に迫りました。しかし都道府県議の数をみると、自民党が千三百四十七議席であるのにたいして、日本共産党は百三十六議席とわずか一〇%であります。あまりにも政治的な影響力の増大に比してひかえめな数字にとどまっています。
それから参議院の比例票を全国の十二の政令市でみますと、自民党は十二政令市合計で百五十万票、日本共産党は百四十九万票、自民党の得票の九九%にまでせまっています。ほとんど肩をならべています。札幌、川崎、京都、大阪、神戸、北九州では、日本共産党が自民党を上まわっています。ところが政令市議の数をみると、自民党が二百五十六議席であるのにたいして、日本共産党が百五議席で自民党の四一%にとどまっています。それから政令市選出の県議をみますと、自民党は百三十一議席であるのにたいして、日本共産党は二十二議席とわずか一七%であります。
こういう不釣り合いを前むきに大きく打破していく選挙にしていく必要があります。それはつぎの国政選挙でいっそうの党の躍進をきりひらく確かな道をひらくことになります。
(3)情勢のはらむ可能性をすべてくみつくす、大きな躍進をかならずかちとろう
党躍進の客観的条件という点では、参議院選挙での躍進が、党と国民との関係をさらに一段と変えていることに、いま目をむける必要があります。
各地の演説会をみても、構えを大きくして、そして支部を基礎にして力をつくしたところでは、二万人をこえる参加者がつどった東京と大阪の集会をはじめ、静岡・田方郡、鹿児島、島根、北海道・帯広などの演説会でも、自治体関係者や業界関係者などたいへん広範な人びとの参加をえて、近年にない熱気で盛り上がった集会となっています。
参院選後の中間選挙の結果は、定例選挙と補欠選挙をふくめて、日本共産党は七十七議席増です。自民党が三十七議席の減、公明党が十五議席の増、社民党は八十議席の減、民主党は三十四議席の増。全体のなかで日本共産党は抜群の躍進であります。とくに茨城の県議選で、定数が二、三の選挙区でも勝利をかちとり、三倍化をかちとったことは、全国でおこっている政治的地殻変動の底深さを実証したものとして、貴重な成果であります。
やるべきことをやりとげれば、大きな躍進が現実のものとなる情勢が、目の前にひろがっています。こんどの選挙は約三千人の候補という最大規模の候補者を擁立したたたかいです。そして政治目標も、史上最多の目標をかかげたたたかいです。道府県議の重点区は二百八十選挙区、三百五名となっています。政令市議では百六十八名を擁立します。これまでとりくんだことのない壮大な規模でのたたかいになっていますし、道府県議でも二百八十の重点選挙区のうち百四十三選挙区が一人区、二人区、三人区であって、これまで議席に本格的に挑戦したことがない選挙区でも、意欲的な目標をかかげたたたかいに、われわれは挑戦しています。
情勢のはらむ可能性をすべてくみつくす大きな躍進を、いっせい選挙でかならずかちとろうではありませんか。(拍手)
2、政治戦をどうたたかうか
つぎに政治戦をどうたたかうかについてのべます。
(1)全体の構え――スケールの大きい政治戦、批判とともに展望さししめす
まず政治戦全体の構えについてですが、国政、地方政治、日本改革論、党そのものを語る、スケールの大きな政治戦をすすめたいと思います。もちろん地方選挙ですから、地方政治をどうするかの訴えは政治戦の要(かなめ)であります。同時に有権者の党への関心や期待というのは、それにとどまるものではありません。それこそ多面的、全面的に、いま日本共産党への関心をつよめています。それにこたえて党をまるごと理解してもらうとりくみが大切であります。地方政治だけの狭いたたかいにしない、スケールの大きな政治戦をたたかいたい。これが、まず強調したい点です。
いま一つ、政治戦全体をつらぬく基本として重視したいのは、悪政への批判とともに、解決の展望をおおいに語ろうということです。こんどの通常国会の論戦で、日本共産党の質問が「提案型」になっていることに、マスコミもずいぶん注目しました。国民は悪政の現状にたいする、やるせない怒りとともに、現状からの脱出の方途を、切実にもとめています。それをしめすことが、国民の気持ちにもかみあい、最もするどい現状批判にもなります。”二十一世紀の政権党”として、堂々と建設的対案をしめして、選挙戦をたたかいたいと思います。
(2)国政の焦点について――党の先駆性が情勢の展開をつうじて実証されつつある
つぎに国政の焦点についてのべます。内政でも、外交でも、わが党が提起してきた内容が、理性的であり、先駆的なものであったことが、その後の情勢の展開のなかで実証されつつあるということに、ぜひ注目していただきたいと思います。
経済問題――「二重の危機」を打開する責任ある処方せんしめす唯一の党
まず経済問題ですが、わが党は、いまの日本経済の現状を、不況の深刻化と財政破たんの同時進行という「二重の危機」ととらえ、”浪費に思い切ってメスを入れ、景気対策にほんとうに役にたつところに重点的な財政出動を”という、建設的な対案をしめしました。いま、景気と財政の両面をとらえて、経済危機を打開する責任のある処方せんをしめしているのは、わが党しかありません。わが党が日本経済の全体に責任をおう党だということが、いまの状況のなかでくっきりと浮かびあがっていると思います。
小渕内閣は、国会でのわが党の追及にたいして、「財政再建は景気が回復してから考える」という無責任な姿勢で、家計への支援は拒否しながら、大銀行とゼネコン支援のための放漫財政を途方もない規模で拡大しました。その結果、いまおこっているのは、新規国債だけでも三十一兆円という大量発行で、長期金利が引き上がり、それが不景気をいっそうひどくする袋小路であります。あやまった経済運営のもとで、不況の深刻化と財政破たんの「二重の危機」が、いま悪循環におちいる様相を濃くしているのであります。経済の舵(かじ)取りの展望をまったく失って、迷走しているというのが、いまの自民党政治の実態であります。
日本共産党は、消費税の減税で家計への直接支援を、社会保障への財政支出増で国民の将来不安の解消を、巨額の公共事業を計画的に半減して財政再建を、という提案をしていますが、これが今日の経済危機からの唯一の脱出の道であることは、経済情勢の進展をつうじても裏付けられています。ここに確信をもって、おおいに訴えていきたいと思います。
戦争法案――わが党の追及が核心をついたものであることを、軍事の専門家も注目している
つぎに安保・外交問題ですが、ガイドライン関連法案が国政上の大争点として、いま問われています。
こんどの国会でわが党が追及している論点は、いま日米でやろうとしていることが、国際社会でみたらどうなるのかということを、従来の延長線上にとどまらない論立てで糾明しているという点に、大事な特徴があります。
昨年のイラク攻撃のような米軍の先制攻撃戦略への参加に道をひらくこと、あるいは政府が「後方支援」としているものが国際法上では戦争行為としてあつかわれ攻撃対象となることなど、全体として問題のいちばんの核心、急所をつく論戦を展開してきました。政府は物事をすべて日米関係の枠内でしかみられません。国際社会でどうあつかわれるか、国際社会のルールではどうなっているのか、という角度から物事を吟味するという姿勢がありません。ですから、わが党の追及にたいして反論の用意もなければ、自分たちの立場を説明する論立てもない、これがいまの特徴であります。
たいへん興味深いのは、軍事の専門家ほど、わが党の追及が問題の核心をとらえた冷静な議論であるということを、注目をもってみているということです。
自民党の”国防族”といわれる、そういう筋にくわしいある議員が、わが党の国会論戦についてこういう感想をのべていました。「共産党はガイドラインの問題をアメリカの先制戦略という立場から取り上げて筋道をたてた正攻法の議論を組みたてている。共産党の議論は私たちと立場が百八十度ちがうが、二十一世紀の日本の安全保障をどう組みたてていくのかという、本質的な土俵の上で筋のたった議論をしている」
いま一人紹介したいのは、竹岡勝美さんという元防衛庁の官房長が、「周辺事態法案の審議を前にして―政治家各位への憂国の急訴」という訴えをしています。こんどの法案は非常に危険だということを訴えて、こういうことをいっています。「そもそもこの法案は、日本の平和と安全を守るという法目的と、日本を基地として第三国(北朝鮮など)を攻撃する米軍の後方支援という日本がとるべき措置が食い違っているという立法上首尾一貫を欠く致命的ミスを犯していないか」。つまり、法律の目的には「日本の平和と安全のため」といっていながら、実際は日本を拠点にして米軍が先制攻撃をやったさいに、それに日本が参加するというものになっている。日本をまさに危険にさらす法案になっているという告発であります。これもわが党の国会での追及の角度と同じ角度からの批判であります。そういう軍事の専門家からみても、いちばんの問題の急所をとらえた追及を、この間展開してきたのが日本共産党の論戦であります。
この問題では、わかりやすい大衆的暴露が大切です。この点で先日の「2・7国民総決起集会」で不破委員長があいさつのなかで、こんどの法案の本質を「アメリカの戦争に参加する戦争法案」とズバリ特徴づけました。憲法九条にてらして、九条の前段でかかげている「戦争放棄」、「武力行使の禁止」という規定まで踏みにじろうという危険に日本を引き込もうとしているということを、わかりやすくあきらかにしました。国民にたいするわかりやすい宣伝がたいへん大事になっています。党としてこの問題にしぼった全戸配布ビラを作製しました。パンフレットも緊急につくりました。一気に活用をおねがいしたいと思います。また、地域・職場・学園に運動センターをつくろうというとりくみもおおいにひろげてほしいと思います。
国会の現状をいいますと、政府・与党は一部野党を修正協議に引き込んで成立をねらっています。国会のたたかいは、いっせい地方選挙と同時並行でたたかわれることになります。世論と運動のひろがりとともに、いっせい地方選挙の結果がこの問題にも大きな影響をあたえることになります。
ことは二十一世紀の日本の運命を左右する重大な問題です。日本共産党の歴史的責務はほんとうに重大です。この歴史的闘争で、まさにわが党がその使命を立派にはたして、この天下の悪法を廃案に追い込むために、知恵と力をつくそうではありませんか。(拍手)
(3)地方政治について――二つの政策文書をふまえたいくつかの留意点
つぎに地方政治にかかわる政策問題についてのべたいと思います。この間、二つの政策文書を発表しました。一つは、「地方財政の危機を打開するための日本共産党の提言――『開発会社』型からぬけだし、地方自治本来の姿をとりもどす」というものです。いま一つは、昨日発表した「『住民が主人公』の新しい政治の流れを地方からつくりだそう―いっせい地方選挙へむけた日本共産党の政策アピール」であります。
政策論戦の基調は、これらの文書でしめしており、地方ごとの政策論戦の指針としていただきたいと思います。そのうえで、政策論戦上、留意してほしいことについて、五つの点についてのべます。
自治体危機の原因と責任、打開の方策を大きくしめしていく
第一は、今日の地方政治がかかえている問題の中心点と、打開の方策を、全体として大きくしめしていくということであります。
自民党政治のゆきづまりということをのべましたが、そのなかでも地方政治はその被害がもっとも集中している、まさに矛盾の集中点です。いま全国の自治体で戦後最悪の財政危機がすすみ、自民党主導・「オール与党」の自治体では、それを口実にした「自治体リストラ」が横行しています。わが党は国会論戦と二つの政策文書のなかで、財政危機の原因と責任についての究明をおこなっています。
この財政危機というのはこの二十年来の自治体の「開発会社」化の結果であって、とくに九〇年代にはいっての公共事業の急膨張にこそ、原因があるということを、われわれはあきらかにしてきました。そして責任はどこにあるか、これもまた明りょうです。自民党主導の「オール与党」自治体の責任、同時に自治体をゼネコン仕事に動員した政府の責任、自民党が自治体でも国でも”二重の責任”をおっている、ここもあきらかにした点であります。
原因がここにあるならば、打開の方策も明りょうとなってきます。ゼネコン型開発優先の逆立ちをあらため、住民奉仕という自治体の原点にかえること―これがわれわれが提起している道であります。ところがゼネコン型開発は温存、住民サービスは猛烈な切り捨て―これが自民党と「オール与党」がつきすすんでいる道であります。この二つの道の対決がいっせい地方選挙で問われる中心的争点になります。開発中心主義と手を切るのかどうか、住民犠牲の「自治体リストラ」にどういう態度をとるのか、これが選択の基準となっています。そういう全体の対決の構図を大きくしめしていくということを、まず最初に強調したいと思います。
「自治体リストラ」――住民の目線で生きた矛盾の焦点をとらえる
第二に、「自治体リストラ」を、どうやって告発していくかという問題です。
この問題では、私は、住民の目線で生きた矛盾の焦点をとらえるということが大事だということを、強調したいと思います。問題をむずかしくしないで、住民からみて暮らしの痛みの焦点になっている問題は何か、住民要求の何が犠牲にされているかについて、だれでもわかるひどいものをうきぼりにしていくことが大切であります。
いろいろ地方でつくっている政策文書を拝見しますと、なかには「自治体リストラ」の項目が並んでいるのですが、どうも読んでも実感がわかない。どこが痛むのか、ピンとこないというものもありますが、ここは工夫のしどころだと思います。
昨年末に茨城県で県議選がありました。あそこでもひどい「自治体リストラ」がやられています。おのずとその中でもとくに怒りが集中する点というのがでてきます。茨城では乳幼児の医療費をいったん無料にしたものを、去年から有料にしてしまった。有料化をたくらんでいるところはいくつかありますが、有料化をやってしまったところは茨城だけなんですね。全国で茨城だけだという問題をあきらかにすると、たいへんな怒りが集中しました。
自治体ごとに、こういうふうに住民からみて、ほんとに生づめをはがされるような痛みをともなっている問題が、いくつかあると思います。そこを、ほんとうにこんなにむごい冷酷なことを許していいのかということを、あきらかにしていくことが大事だと思います。
この問題に関連して、全国どこでも問題になっていることで、重視してほしいことがあります。
一つは、ボロボロ校舎、危険校舎の問題です。これは、わが党が国会で追及し、反響も寄せられました。国会で追及しますと、政府は「対処」と「改善」を約束せざるをえません。やはりこの問題というのは、子どもの最小限の安全と健康にかかわる問題ですから、「危険校舎を放置して結構です」という相手はいないんですね。この問題というのは、まさにまったなしの課題として、だれも否定できない説得力もつ課題だと思います。
同時に、この問題というのは、いまの地方政治のゆがみを象徴的にしめす問題にも、私はなっていると思います。国と自治体あわせて年間五十兆円ものお金が、公共事業に使われている。そのうち三十兆円は地方自治体で使われています。そんな巨額なお金を公共事業に使っていながら、肝心の子どものための校舎はボロボロだというのは、まさにいまの公共事業がいかに無駄と浪費のゼネコン型かということを逆に証明しているものです。まさにゆがみの象徴になるわけです。ですから、すでに始まっていますが、党支部を基礎に、議員、予定候補者の同志たちも力をあわせて、ボロボロ校舎の総点検・総改善の運動をおこしていきたいというふうに考えます。
いま一つ、重視してほしいのは、介護保険導入を前にして、実施主体の自治体で矛盾が噴出しているという問題です。たとえば、介護保険導入を口実にして、特別養護老人ホームなど民間福祉施設への自治体の単独補助の打ち切りの動きが、東京、神奈川、大阪、愛知はじめ全国各地でたいへんな矛盾をひきおこしています。まさに「特養リストラ」をやろうとしている。特養ホームの職員を減らして、サービスの水準を低下させてしまうというものですが、これを介護保険の前にやるというのは言語道断のことです。これも大きな矛盾の焦点になっていると思います。サービスの後退を絶対に許さないということが、保険料・利用料などの減免の措置、基盤整備の促進などとあわせて、たいへん大事な課題であります。そういう問題にも目を配りながらとりくみをすすめたいと思います。
大型開発批判――だれが見ても無駄づかいであることが明白なものをリアルに告発
第三に、大型開発批判についてのべたいと思います。
これも、むずかしくせずに、だれがみてもこれは無駄づかいだということが明々白々なものを、リアルに告発していくことが大事であります。これについても、なかには公共事業の額の多いものから事業名をならべて合計いくらという式のものがあるんですね。だいたいいまやられている開発プロジェクトというのは横文字が多いですから、横文字がずっとならんで合計いくらと書いてあるんですけども、これではなかなか怒りがわきません。やはりどこが問題なのか、それがどのように暮らしを押しつぶしているのか、住民の目線からみて腑(ふ)に落ちる告発が大事であります。
そのなかで暮らしの切り捨てとの対比で、これを告発しているところは、ずいぶん大きな力を発揮しているようです。「学校ボロボロ、庁舎ピカピカ」。これはあちこちでおこっている事態ですけれども、これはたいへん効果的な告発だと思いました。それから先日、島根にうかがいましたが、あそこでは、あの中海の干拓再開という暴挙をいまの県政がやろうとしてる。「減反しながら巨大干拓とは何ごとか」と、これも一方での暮らし・農業切り捨てと巨大開発の不合理を対比させて宣伝していましたが、これも大事な角度だと思います。そういういろいろな工夫もふくめて、無駄づかいにたいする総点検・告発をやっていく必要があります。
いまの自治体の公共事業の無駄という問題は、偶然におこっているものでないという点が大事な点です。いわば救いがたい逆立ちの構造を根にもっているということです。いま自治体でやられている巨大開発の多くは、住民生活の必要から出発したものではありません。総額いくらを使うかから出発している。一九九〇年に四百三十兆円の公共投資基本計画がつくられ、九四年に六百三十兆円にふくらみました。これは”必要のための事業”ではなくて、まさに”事業のための事業”というやり方を全国に押しつけることになりました。九二年以降は景気対策として公共投資を積みますやり方が国策としてとられました。それに自治体を無理やり動員しました。このやり方が”事業のための事業”をいっそうひどくしました。その結果、全国いたるところに、目的にも見通しにもなんら合理性のない、無駄としかいいようのない公共事業があふれている。そういう結果をつくりました。この救いがたい逆立ちの構造に大本からメスを入れながら、いまの事態を改革しようというのがわが党の提案です。そこにメスを入れないと暮らしをよくする道もひらけないし、財政再建の道もひらけない。これが私たちがいま強く訴えている点でありす。
地域の産業振興について、党が積極的な政策をその地域ごとにだしていくということの重要性にも、注意をうながしておきたいと思います。いまやられている大型公共事業というのは、地域振興にも少しも役立たないものがほとんどです。ゼネコンがほとんど受注を独り占めしてしまって、中小の下請け建設業者には代金の未払いと単価の切り下げなどの犠牲を強いるというやり方が横行しています。まさにこういうやり方は地域経済も衰退させることになります。やはり地域経済の振興のためには、そこで苦労してがんばっている中小企業、地元商店街、農林水産業、地場産業などへの真剣な直接の支援こそ大切であります。いま全国で「地域活性化シンポジウム」とか、「産業シンポジウム」とか、「商店街シンポジウム」とか、産業問題や経済振興問題に目をむけたとりくみがたくさんやられていますが、これも大事な一つの要をなす問題ですので、このとりくみの促進をはかっていきたいと思います。
日本共産党を躍進させることの自治体と住民にとってもつ意義をおしだす
第四に、こんどの選挙で日本共産党を躍進させることが自治体と住民にとってどういう意義をもつのかということを、説得的におしだしていくという問題であります。
いま国政では、いろいろな逆流や複雑な様相もありますけれども、「オール与党」体制に亀裂がはいって、さまざまな課題で野党の協力がすすむという場面もこれまでありました。しかし、地方政治では圧倒的に多くの自治体が文字通りの「オール与党」体制です。今回おこなわれる十二の知事選をみても、四年前に比べても「相乗り」がいっそうすすんでいるのが特徴です。自民党は、こんどの十二の知事選のうち十の知事選で事実上「オール与党」の「相乗り」で候補をかつぐということを決めています。のこる東京、大阪でも、自治体の政治の実態は「オール与党」による自民党政治が、まぎれもない実態であります。国政では野党第一党の民主党も、十二の知事選で対立候補をたてるのは、東京だけであります。北海道、神奈川などすでに八道県で、自民党との「相乗り」を決めています。
先日、毎日新聞が、地方で「オール与党」化がすすんでの弊害として、ある調査結果を発表しました。「全国47都道府県議会のうち、1995年度以降、知事が提案した条例案、予算案、決算などをすべて原案通りに可決、認定した『フリーパス議会』が全体の7割を超す34府県に達していることがわかった」。そういう「オール与党」政治の害悪を問題にしている。「なれあい政治浮き彫り、再質問や野党の討論認めぬ例も」という見出しで、こんな現状でいいのかということを告発しています。そういうひどい実態がすすんでいるわけです。
そういう政党状況との対比で、日本共産党がもっているかけがえのない役割を、おおいに訴えていく必要があります。そういう「オール与党」という政党状況を、正面から批判するとともに、日本共産党という党が、住民の立場から行政をチェックするという議会本来の役割の唯一の担い手となっている。そして住民要求を議会にとどける唯一のかけ橋となっている。そういう点でかけがえのない役割をはたしているということをおおいに語っていくことが大切であります。
そして「オール与党」の状況のもとでも、日本共産党議員団が、多くの成果、実績をあげているということ、おおいにその値うちを光らせていくようにしたい。この点が、まだまだひかえめだという感じのところが少なくありません。たとえば、現職議員がいて相当な成果をあげているのに、その選挙区に県議がいないと、まるで県全体が空白の状況であるかのような宣伝になってしまっている場合もあります。茨城県議選では、たった一人の議員でも、県全体で暮らしをまもってどんなにかけがえのない役割をはたしているかを全県的に知らせて、この地域でも日本共産党の議員がでれば暮らしをまもる力がぐんと前進するということを訴えて支持をひろげましたけれども、そういう教訓もよくふまえて、実績の光らせ方も、おおいに工夫していただきたいと思います。
革新・民主の自治体で発展している新しい地方自治の姿をおおいに語る
第五は、革新・民主の自治体で生まれている新しい地方政治の流れを全国の宝にしていくということであります。
これは、この四年間でたいへん大きな変化がおこりました。この四年間で日本共産党の単独与党の自治体は、四十一自治体から七十九自治体にふえました。日本共産党員の首長の自治体は、二自治体から八自治体になりました。そこで発展している新しい地方自治の姿を全国の宝としておおいに語っていきたいと思います。これは、たんに首長選挙だけではなくて、議員選挙でも、本来の自治体のあり方というのは何なのか、”地方自治の魂”とは何なのか、これをしめす生きた実例として、また日本共産党が与党になって行政を担当するという立場になったとしても、十分それをにないうる能力をもっている、これをしめすものとしても、おおいに全国の宝として語っていく必要があります。
そこには、危機から自治体を再建した生きた教訓が多々あります。東京の狛江市、足立区などでは、土木費や大型開発にメスを入れれば、財政再建をすすめながら、福祉と暮らしを充実する方向へ踏みだすことが可能であることをしめす経験が生まれています。これらは誕生したばかりでも、自治体の姿勢が変わればどういう変化がおこるかの、すばらしい実例になっています。
それから、「政策アピール」でも紹介しましたが、五期十九年間つづけた兵庫県南光町の経験は、「住民が主人公」の地方自治の原点をしっかりつらぬいて、住民と力をあわせて長期にわたって町づくりへの努力をかさねると、町がどんなに生きいきと変化するかをしめすものです。地元の神戸新聞が、南光町の町政についてこう書きました。「南光町の役場は、県内でも指折りの古さだ。住民優先、奉仕者(公務員)後回し。この姿勢で、小中学校の建て替え、改築をすすめ、ひまわりの里、子ども歌舞伎を育成し、全国の他の自治体から『まちづくりのモデル』と高い評価をうける」。”学校ボロボロ、庁舎ピカピカ”の自治体とはたいへん対照的な、新しい地方自治の流れが兵庫県の南光町ですすんでいるということを、マスコミも注目しています。
(4)日本改革論と日本共産党論――学びつつおおいに語ろう
つぎに、日本改革論と日本共産党論をおおいに語るということについてのべます。
日本共産党が、国政でも地方政治でも、なぜ先駆性を発揮できるのか。その基礎には、わが党の日本改革論があります。この路線があれば、どんな問題でも国民の立場にたった答えがだせる。これが私たちの確信であります。
地方選挙の熱いたたかいのなかでの有権者とのじっさいの対話では、地方政治だけが話題になるわけではありません。有権者からの生の疑問として、「日本共産党はいったいどういう日本をめざすのか」、あるいは「日本共産党はどういう党か」という、”そもそも論”的な疑問がどんどんでてきます。そういう多面的な疑問や関心にこたえて、党を縦横に自分の言葉で語ってこそ、深い共感をえることができます。
そのために、学びつつたたかうということを強調しておきたいと思います。第二十一回党大会決定、三中総決定、「教育要領」にもとづく地区党学校、不破委員長の『私たちの日本改革論』など、学ぶべき教材はたくさんあります。とくに党大会決定を学習することの重要性をかさねて強調したいと思います。党大会決定を読み直してみれば、そこでのべられている日本改革論、あるいは日本共産党論は、そのまま有権者に訴えることのできる、そしていままさに新鮮な内容と輝きをもっている、そういう中身がもられているということがわかると思います。この党大会決定を、すべての党員が読了するとりくみとともに、くりかえし読み、つねにそれにたちかえって活動する重要性を強調したいと思います。
日本改革論をどう語るかということですが、たとえば短い街頭演説などでは、いいつくせない場合もあるでしょう。ですから、私たちは、この問題については、重層的な政治宣伝の計画をいま考えています。ガイドラインの問題での全戸配布ビラはすでにお届けしてありますが、それにつづいて日本改革論に一つの重点をおいた党おしだしのパンフレットをいまつくっています。これも、つづけておおいに活用してください。
この問題にかかわって、反共攻撃への反撃についてのべておきたいと思います。いまおこなわれている反共攻撃の中身をみますと、経済の問題でも、安保の問題でも、当面の日本共産党の緊急の提案についてはなかなか文句がつけられないもとで、党のしめす将来像について、つじつまがあわないではないかという式の攻撃が、一つの焦点になっています。それから、「共産党はいろいろいっても、最終的には共産主義をめざしている」という式の、「共産主義」の四文字をいえば攻撃になったかのように考える攻撃もあります。そういう攻撃にかみあって、わが党のしめす将来像、改革論、日本共産党論を、広範な有権者に理解してもらう絶好の機会としてそういう反共攻撃をとらえて、積極的な反撃をやっていきたいと思います。
3、「支部が主役」の選挙戦をどう発展させるか
つぎに「支部が主役」の選挙戦をどう発展させるかという問題について、報告します。選挙戦の方針は、大会決定、二中総決定、三中総決定などですでに明りょうです。私はそれを前提として、とりくみの推進のうえで必要ないくつかの問題について、のべたいと思います。
「支部が主役」の選挙戦という活動方向は、総選挙と参議院選挙などをつうじて、全党の大きな流れとして定着しつつある方向だと思います。ただ、いっせい地方選挙というのは、衆議院選挙、参議院選挙と比べても、比較にならない多数の候補者を擁立してたたかう選挙です。ですから、国民とむすびついた草の根の組織をもつ党の本領の発揮が、これまでにもましてもとめられるたたかいになります。
「支部を主役」といった場合、居住支部とともに経営支部の役割についても、強調しておきたいと思います。経営支部が、その経営がある地域で積極的役割をはたすとともに、その職場で多数派になる役割をおおいにはたすことが大事であります。そういう見地から、その活動を狭くその職場のある選挙区の活動だけに局限しないで、対話・支持拡大などでも、全労働者を対象にしておおいに広い視野でとりくんでいく。居住支部とともに経営支部が、党の躍進のうえで大きな役割を発揮する必要があります。
(1)住民の要求にこたえた活動に積極的にとりくみながら、選挙戦をたたかう
第一は、住民の要求にこたえた活動に積極的にとりくむということです。
この点では、三中総決定にもとづいて、この間大きな前進の流れがつくられつつあります。「大衆要求にこたえた活動のアンケート」がとりくまれ、たいへん豊かな教訓が生まれています。中央委員会に提出されたのは、全支部の五九・六%でありますけれど、これを私たちがみますと、またその後の活動の状況をみますと、これが党支部の活性化の契機になっているということがいえると思います。これをつうじて、支部が大衆要求に目をむけ、その実現にとりくみはじめていること。一人ひとりの活動に光があたって全党員参加の活動に大きく道をひらいていること。全有権者を視野に入れた活動に領域がつぎつぎにひろがりつつあること。「政策と計画」の内容が豊かになり総合的に活動が発展する契機になっているなど、このとりくみは、支部活動が質的に豊かに発展していく契機になっていると思います。ぜひ、これを発展させ、要求運動を発展させながら選挙戦をたたかう。これがまず最初に強調したい点です。
このなかで、住民アンケートの活動も、一つの大事な活動です。昨日の幹部会で報告されましたが、躍進した長野県の小諸市の市議選の経験は、たいへん教訓的でした。有権者の目線でその気持ちをどうつかむかということを、ここでは議論して、どういうアンケートをつくったらいいかという議論をやったそうです。設問の項目も、通り一遍のものにするとなかなか回答が返ってこないので、「不況のなかで何を節約していますか」という設問にしたそうです。そうしますと回答が二百通をこえて、「無駄な買い物をしない」とか、「外出、外食をしない」とか、「食費と電気代を節約する」とか、「月二回の病院を一回にする」とか、ほんとうに市民の切実な生活実態があきらかになりました。そして、「家庭ではこれだけ節約しているのに、国と市の税金の使い方がおかしい」という怒りも、アンケートをつうじてひろがっていく。それを宣伝物で市民に知らせて、住民いじめと大型開発優先でいいのか、こういう問いかけをやりながら、支持をひろげ躍進をかちとっています。
(2)全有権者規模での宣伝・組織戦――どれだけ豊かな量と質でとりくむか
第二は、全有権者規模での宣伝・組織戦を、未曽有(みぞう)の規模、新しい創意ですすめたいということであります。
やるべきことは明りょうです。ポスター、ハンドマイク、全戸配布、対話・支持拡大、演説会、シンポジウムなど、やるべきことははっきりしています。問題は、これをどれだけ豊かな量と質でとりくむかということにあると思います。そのために、どうやれば「支部が主役」の自覚的活動としてすすめることができるか、どうすればこれにすべての党員が参加する状態をつくりだすことができるか、ここにいま、党機関が知恵と力をつくすべき一つの焦点があると思います。
私はその点で、二中総決定で提起した、「二つの問題」をあらためて想起したいと思います。一つは、情勢をどう認識するか、その情勢がどんな党活動をもとめているか、たたかえばどんな展望をひらけるかなどについての政治的確信を、全党のものとする指導、援助の徹底であります。
いま一つは、党機関の側、支部の指導部の側が、一人ひとりの活動の状況に目をむけ、条件と得手におうじてすべての党員が選挙戦に参加できるようにする努力の重要性ということです。活動形態を一律に狭めない。これが大事だと思います。励ましあい、協力しあって、支部全体として全体の仕事ができればいいわけですから、そういう見地で、みんなが参加できる活動をつくっていくために力をつくしたい。
二中総では、「つきつめてみると、これは一人ひとりの党員が、大衆活動の分野でどう成長し、どう発展するかという問題です」という指摘もしました。党員の成長に目を配る、党員の発展を大事にする活動のあり方ということを提起しました。私は、党全体がそういう活動に習熟する条件は、この間の「大衆要求にこたえた活動のアンケート」などをつうじて、より成熟しつつあると思います。ぜひそういう観点から、全党員の力をひきだす指導と活動をつよめて、全有権者規模でのとりくみを、これまでにない豊かな量と質でとりくもうではありませんか。
(3)党勢拡大の上げ潮のなかで選挙戦を――三中総以後の新しい実践を生かして
第三は、機関紙拡大と党員拡大の上げ潮のなかで選挙戦をたたかうという問題です。この点では、三中総の提起にもとづいた新しいとりくみの教訓を、全党が生かすことが大切であります。
一つは、機関紙活動でも、「党と有権者の新しい関係をよくとらえ、それにそくした新しい活動の発展をはかる」ということです。東京の大田地区でとりくんだ、「しんぶん赤旗」そのものをひろく知らせつつ拡大するという活動も、三中総の提起にこたえた新しい活動でした。「私も読んでいます」というビラをおおいに配り、ハンドマイクで広く知らせ、そのこととむすびつけた立体的な拡大作戦、あるいは地域や各分野の有力者訪問がとりくまれました。大田区では区長・区議選がいっせい地方選挙に先立ってたたかわれるわけですが、この活動自身を選挙戦そのものとして位置づけてとりくんだ。同じような活動の芽というのは、全国で生まれていることが、その後の全国機関紙部長会議でも交流されましたが、それをいっせい地方選挙にむけておおいに発展させていきたいと思います。
二つ目は、機関紙読者とのむすびつきという問題です。読者との関係というのは、人間と人間との関係として、まずよく知り合いになる、これが出発点です。そして、”双方向の関係”が大切だと思います。つまり読者の側の要望、要求をよくきき、それを力をあわせて実現するということ。同時に率直に党の躍進への協力を訴えるということ。両面での関係が大事であります。
茨城の県議選で、定数二で勝った取手市区のとりくみが、この点で教訓的でした。取手では、住みよい地域、住みよい団地にするための運動を、日常的に読者といっしょにすすめている。そういう努力をやりながら、選挙戦では一人ひとり、全読者を訪問をして、さまざまな活動への協力を訴え、まさに読者とともにたたかう選挙になりました。
新しい党員を迎えながら選挙をたたかうことは、選挙をたたかう構えや体制でも積極的になり、例外なく支部が活性化し、支部の力量を高める結果をつくっています。また党員拡大を飛躍させる条件というのは、これまでになくひろがっていることは明りょうです。
昨日の幹部会でも報告されましたけれども、大阪の阪南地区の岬町の支部では、議案提案権をめざして、岬町でも二議席から三議席にという政治目標を検討していこうというなかで、全読者を二日がかりで訪問し九人の入党者を迎えています。ここでは政治目標をできるかどうかという議論をただ会議でやってるだけでなくて、実際に足を踏みだしてみよう、実際に読者にあたってみよう、率直に呼びかけてみようということを府委員会も援助して、地元の党組織がそれに乗りだしてみたら、思いがけなくつぎつぎと入党者がでてきた。とりくんだ同志たちも、「壁は自分たちにあった」ということを感想としてのべていたそうですが、大胆に率直に入党を呼びかければ、相手はこたえてくれるというのは、全国の経験が証明しています。
いっせい地方選挙の時期は、青年・学生の分野では新入生を迎える時期です。この分野での党員拡大と民青同盟員の拡大がたいへん重要です。大学ではこの時期の活動に中断がおこれば、四年間ひびくことになります。ですから、青年・学生分野では、青年学生がみずからの要求をかかげて、いっせい地方選挙をおおいに若い力を発揮してたたかうとともに、二十一世紀の運動の担い手、後継者をつくるというのは、絶対に中断が許されない仕事ですので、この分野での活動をこの時期も党機関のみなさんがよく目配りして、温かく援助していただきたいということをおねがいしておきたいと思います。
(4)後援会員を増やしともにたたかう――162万人の仲間とともに選挙を
第四は、後援会員を増やし、ともにたたかうということについてです。三中総後、全国で六万九千人の後援会員が増えて、百六十二万人を超えました。百六十二万人といいますとたいへんな力であります。この人びとが一つでも二つでもできることを、協力してもらえるという状況をつくれば、その力ははかりしれないものになります。百六十二万人の仲間とともにたたかう壮大な選挙戦をどうすすめるかに、知恵をつくしたいと思います。もちろん、単位後援会は支部対比で五八%ですから、すべての支部が単位後援会をつくり、後援会員を増やす努力をはかることもひきつづき重要であることはいうまでもありません。
4、党機関のイニシアチブをどう発揮するか
つぎに党機関のイニシアチブを選挙戦でどう発揮するかということについてのべます。その構えと体制について留意すべき問題についてのべておきたいと思います。
(1)必勝のための揺るぎない政治的構え――受動主義の克服は実践ではかられる
第一は、必勝のためのゆるぎない政治的構えを全党に確立するということです。
二中総決定、三中総決定は、二つの受動主義―「なんとかなる」論、「自分のところはちがう」論、この両面の消極主義の克服の重要性をくりかえし提起しました。一月に常任幹部会として、各県から提出された県議重点区の情勢判断と対策をふまえて、いくつかの選挙区について率直な指摘をおこないました。それは絶対の課題である、県議空白克服への不安、あるいは共倒れや現有議席をうしなう危険を、私たちがつよく感じたからであります。この提起は全国的に真剣に緊張感をもって受けとめられ、各県でさまざまな自己分析や、とりくみの改善がはかられてきつつあると思います。
私がここで強調したいのは、受動主義、消極主義が克服されたかどうかは、実践によってはかられるということであります。この点で情勢にてらした活動の問題点、立ち遅れとして、とくに三つの活動について、私は警鐘を鳴らしたいと思います。
一つは演説会のとりくみで、明暗があるということです。さきにのべたように一連の演説会では、これまでにない広い層を結集して、選挙戦のまさに跳躍台になるような熱気がつくりだされています。他方で、位置づけもとりくみも弱く、成功していないところもあります。みなさんにことしにはいってからの主な演説会の結果の一覧表をお配りしてありますので、みていただきたいのですが、定席の半分程度しか埋まっていない演説会もずいぶんあります。そういう状況になっているところは、党機関の構えの根本が問われる問題として、自己分析も必要になってくるでしょう。やはり演説会というのは、そのとりくみ自身が、まさに政治・組織戦全体の結節点をなすものであり、この成否が当落に大きな影響を与えるような意味あいをもってきますから、一つひとつ真剣勝負で成功させていくということが、大事になってきます。
二つ目は、連名ポスターの遅れの問題です。県議重点区でみまして、連名ポスターの張りだし率は、作製枚数にたいして五二%です。いま一週間の張りだし枚数は約五万枚で、このテンポで残りをすべて張りだすにはちょうど二カ月かかってしまいます。だれの目にもみえる活動で、遅れていたり負けていても気にせず、手だてを取らないとすれば、どんなに情勢がおもしろくても、勝利をつかめません。この遅れはただちに打開するための手だてが必要です。六種類の政党ポスターもあわせて一気にはりだして、目にみえるところで日本共産党の勢いを有権者にしめしていく。ここでも、現状を打開していきたいと思います。
三つ目は、対話・支持拡大の問題です。この活動は、みなさんにお配りした資料にあるとおり、全体として自然発生的水準にまかされているのが現状です。参議院選挙の教訓を交流したシンポジウムで、対話と支持拡大が、「際限なく後まわしになる傾向があることや、本番間近にならないととりくまない根深い経験主義の克服の重要性」が、全体の確認になりました。こんどの選挙でこそ、「この根深い経験主義」の本格的克服をしたい。
対話というのは日本共産党への共感と支持をひろげる活動ですから、私たちの活動すべての基本です。あらゆる活動のなかで追求できるし、あらゆる活動とむすびつけて自覚的に追求すべき活動であります。ビラの感想をききながら、あるいは演説会のお誘いをしながら、あるいはポスターをおねがいしながら、あるいは要求実現の運動のなかで、これとむすびつけて日本共産党への支持を訴える活動を自覚的にすすめて、ここでも大きな波をつくっていく必要があります。
そのさい、有権者全体に無差別に電話をかけるということは、もちろん大事な活動ですけれども、実際に人と人とのつながりをいかした対話を、対話の活動全体のいわば骨組みとして重視していく必要があります。
(2)共倒れを絶対にしない――政治的構えが小さくなる傾向も克服を
第二は、共倒れを絶対にしないということです。
三中総決定では、政治目標の設定にあたって、「現実の政治的力関係を全面的にとらえ、とくに他党との力関係もよく分析して、目標が過大になったり、過少になったりしてはならない。議席を確実に前進させる立場がなによりも重要だ」として、「情勢判断を正確におこない、共倒れの失敗を絶対にしない」ということを確認しました。
これをうけて、各県で政治目標の見直しがおこなわれました。そして、前回当選数より議席増をめざす選挙区は道府県議選では十五選挙区、政令市議選では三十一選挙区となりました。市区町村議選でも政治目標の見直しがおこなわれました。この間おこなわれてきた見直しというのは、三中総の提起にこたえた積極的なものだったと思います。
ただ、共倒れの失敗を絶対にしないということは、もちろん政治目標の調整ですむ課題ではありません。現実の選挙戦のなかで、これからのたたかいのなかで、正確な情勢判断を集団の英知を結集しておこない、勝利のために打つべき手を打ち、それでもなお共倒れの危険があるときには、それを絶対に避ける手だてをとる。最後までこれを絶対の課題として重視したいと思います。
同時に、この問題にかかわって重視する必要があるのは、「政治目標を見直したから」、あるいは「候補者をしぼったから」などとして、とりくみの構えが小さくなる傾向が一部に生まれているという問題です。現実の選挙戦は、いささかでも安易なゆるみがでるならば重大な結果になります。しかも、もともとわが党は、有権者比得票目標への接近・実現をめざして、議席とともに、一人でも多くの得票をえることを当然の姿勢としています。当選はもちろん大事ですが、「当選さえすればよい」という姿勢は、二十一世紀の早い時期に国民多数の支持をえて民主的政権の樹立をめざす党として、あってはならない、志の低い姿勢といわなければなりません。こういう一部に生まれている問題点にも目をむけて、改善をはかっていくことが必要です。
(3)空白克服のとりくみを最後まで握ってはなさない――党の存在意義にたって
第三に、空白克服のとりくみを、最後まで握ってはなさないということです。
いっせい地方選挙でおこなわれる空白議会での選挙は、六百二自治体におよびます。そのうち、候補者の決定が、現時点でおこなわれているのは、百三十八自治体、全体の二二・九%です。三中総時点で五十二自治体でしたから、一定の前進があります。四年前の選挙での空白の候補者擁立は上まわっています。しかし、大会でわれわれが確認した、「二十一世紀の初頭までに、党議席空白議会をなくす」という目標からみれば、到達点はまだまだ低いものです。くりかえしこの課題の意義について、党の機関でも支部でもよく討議して、集団の英知と力で、空白克服に挑戦していきたいと思います。
昨日の幹部会では、長野の須坂市での空白克服のとりくみが報告されました。ある住民と話していたら、須坂市に党議員がいないということを知らなかった。そして、「こんなときに、こんなご時世なのに、共産党のいない市があるのか」と住民にいわれて、それが発奮する契機にもなった。おおいに議論もして、とりくみを強め、複数の議員の当選をかちとって空白を克服したということでした。この住民の声にもあるように、地方議会に議員をもち、住民の利益のために活動すること自体が、国民の苦難の軽減というわが党の存在意義にかかわる重大な責任です。
選挙戦が、ここまで近づいてきますと、「いまから決めても間にあわない」とか、「他にやることがある」などといってあきらめる傾向もでてきていますが、きびしくしりぞけたいと思います。いまからでも擁立を決めることができれば、当選の可能性は十分にありますし、現に直前の候補擁立で空白克服した経験はたくさんあります。
そして、住民の要求にこたえてがんばる誠実な同志なら、だれでも候補者の資格はあります。現に入党間もない新入党者が空白克服に挑み、当選してわずかな期間に、つぎつぎと住民要求にこたえた成果をあげている例も全国にあります。千葉県の天津小湊(あまつこみなと)という町で、去年八月に、町議会の選挙がおこなわれて、空白議会が克服されました。この候補者になった同志は、入党して一カ月半の同志です。この同志が、選挙に立候補して見事に当選し、そのあとのわずか数カ月のあいだに、住民の要望にこたえて、町政を動かす奮闘をしている。こういう経験というのは全国いたるところにあると思います。そういう誠実な同志だったら、だれでも候補者の資格はあるという見地でみれば、三十数万の同志を、私たちは擁しているわけですから、道はひらけてくると思います。
(4)党機関の集団的指導体制をしっかり確保する――総合力をつけて勝利への道をひらく
第四に、党機関の活動姿勢と体制についてのべます。
「支部が主役」ということを強調しましたが、これは支部まかせにするということではけっしてありません。これは党機関の指導にいっそう高い質がもとめられるということです。党機関の指導というのは、まず何よりも支部と党員が本気で選挙にたちあがるための政治的指導が大切でしょう。それから、「大衆要求にこたえた活動のアンケート」にもとづく活動がすすめられてきているわけですが、このアンケートを地区委員会も県委員会のみなさんもよく読んで、支部がどんな活動にとりくんでいるのかをよく知って、その実現のために援助すること、これも大事な活動になるでしょう。それから、困難を抱えた支部や党員にたいしては、親身になった個別の指導が必要になるでしょう。「支部が主役」の活動をすすめていくということは、これまで以上に党機関の指導の水準を引き上げるということがもとめられるということになります。
いま一つここで強調したいのは、選挙にむけて、党の総合力を高めていくという方向を、視野をひろげてとりくむことも、機関の活動としてたいへん重要であるということです。党機関のなかには、選挙が近づいてくるなかで、「選挙だからむずかしい」として、本来やるべき総合的課題を事実上棚上げにして、活動の視野が狭い意味での選挙活動になってしまう傾向もあります。そうではなくて、「選挙だからこそ」という姿勢にたって、党の総合力を高めていく指導が大切であります。「選挙だからこそ」機関紙拡大や党員拡大もとりくむし、「選挙だからこそ」おおいに大会決定の学習や地区党学校の活動にもとりくむし、「選挙だからこそ」要求実現の運動にどんどんとりくむ。そうしてこそ、党の躍進がかちとれます。この点で、党機関とその長の力量が、問われているということを強調したいと思います。
候補者にたいする援助も、党機関の重要な仕事です。選挙戦の最前線にたって活動する候補者が、生きいきと確信をもって活動できるかどうかは、選挙戦全体の帰趨(きすう)を左右します。活動上の悩みや要望・意見をよくきいて、親身な援助を、それぞれの機関がはかることを、訴えたいと思います。とくに、演説の悩みの相談にのることをはじめとした政治的・政策的援助、候補者をささえる体制のうえでの援助、配達・集金の過重負担問題の解決など、一つひとつが苦労のいる課題だと思いますけれども、最前線にたってたたかっている同志が、心おきなく伸びのびと選挙戦をたたかえるようにする必要があります。
そして以上のべてきたような活動のためにも、機関の集団的指導体制は絶対にくずさないということが大切です。一部に選挙の種類と候補者の数が多いということから、個別選対をどう構成するかから体制づくりがはじまり、そこに数少ない機関の専従者を配置し、機関の体制をくずしてしまっているところがあります。そして個別選対に、支部への指導を代行させるまちがった傾向も、一部に生まれています。これもなかなか苦労の多い課題ですが、非常勤の同志、支部の同志なども結集し、統一選対、個別選対、事務所などの体制をつくりあげ、党機関の体制は絶対にくずさないということを、強調したいと思います。
党機関が、とりわけきょうは県の指導部のみなさんがあつまられているわけですが、県の機関が、複雑な選挙戦の情勢の全体を正しくとらえ、勝利に必要な手だてをとりきり、問題があれば機敏にとらえ機敏に解決する、まさにたたかいの司令塔としての役割をはたせるよう、その体制をしっかり確保してたたかいにのぞみたいと思います。
(5)財政問題について――“どれだけ多くの人に訴えたか”が大切
第五に、財政問題についてのべます。財政上の困難から、宣伝物などをだすのもたいへんだということで、政治的構えが小さくなる傾向が、一部にあります。これは、積極的に財政活動にとりくむことで、前むきに突破するしか道はないし、それが大道です。
まず、党費の問題を、すべての党員を結集する要の一つと位置づけて重視すること。それから、党への期待のひろがりに確信をもって広く大衆募金にとりくむこと。”どれだけ多くの人に募金を訴えたか”というのは、たいへん大事な活動の指標であります。
党の財政のあり方を知らせながらの積極的な募金の訴えというのは、それ自体が党への信頼をひろげる活動ともなります。そういう経験は全国各地で生まれていますけれども、しかるべき位置づけ、手だてをとらないで、財政難でなげいているところもあります。これも総合力を高めてたたかうという意味で、党機関とその長の力量が問われる問題として、重視しなければなりません。
以上で報告を終わりますが、この会議を、目前に迫った選挙戦で歴史的な躍進をかならずかちとるために、方針にてらしてとりくみの到達点について自己検討をくわえ、またすぐれた経験を交流し学びあう会議として成功させるために、参加された同志のみなさんの積極的な討論をおねがいして、報告を終わるものであります。(拍手)
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