7月8日の日本共産党創立80周年記念講演会で、志位和夫委員長がおこなった講演の大要は、つぎの通りです。
講演する志位和夫委員長 |
みなさん、こんばんは。日本共産党の志位和夫でございます(拍手)。会場いっぱいに参加されたみなさん、CS通信をご覧の全国のみなさんに、まず心からのごあいさつとお礼を申し上げたいと思います。(拍手)
また、さきほど心のこもった激励の言葉をいただいた大島亮準さん、米倉斉加年さん、そして記念メッセージをよせてくださった各界の方々に、あつくお礼を申し上げたいと思います。(拍手)
八十年のわが党の歴史、二十一世紀の大きな展望については、このあとの不破議長の記念講演で話されると思います。私は、「国政の焦点と日本共産党」というテーマで、小泉政権発足から一年あまりの政治をふりかえって、八十年でいいますと最後の一年分の総括と展望について、いくつかの角度からお話をさせていただきます。
この一年間の大きな政治的変化は、「小泉バブル」がはじけた――内閣の支持率の急降下にあると思います。
みなさん、一年前を思いおこしていただきたい。「小泉旋風」が、支持率80%で荒れ狂っていました。あのときは、首相の一挙手一投足から髪型まで、さんざんもちあげられて、小泉ポスターに行列ができるようなフィーバーでした。はじめからこの小泉政治をニセモノの「改革」と見ぬいて、おそれず正面から立ち向かい、本当の改革の道はここにあるということを堂々と示した党は、日本共産党だけでした。(拍手)
それだけに、風当たりも強かった。たいへんでした。参議院選挙ではくやしい後退を余儀なくされました。しかし、その結果を受けて、私は、昨年の党創立講演会で、わが党の政治的訴えは「今後の政治の展開の中で必ず生きて力を発揮すると確信する」とのべましたけれども、このことは一年間の現実の政治の展開で劇的に証明されたのではないでしょうか。(拍手)
小泉政治とは何だったのか。それは、危機に陥った自民党が、「自民党を変える」とか、「自民党をぶっつぶす」という、空手形を乱発することで、国民の支持をなんとかつなぎとめようとする、いわば「究極の延命作戦」でした。
その手法はなにか。単純なものです。まず、「抵抗勢力」という架空の敵をつくる。それとの架空の「対立」を演じる。そして自分が架空の「ヒーロー」になる(笑い)。だいたいこれが筋書きでしょう。小泉政治が、そういうまやかしの手法で政治をもてあそんで、国民を欺いたその罪は重大だといわなければなりません。(「そうだ」の声、拍手)
しかし、この「首相対抵抗勢力」という「対立」がまやかしであり、首相のいう「改革」なるものがまやかしであることは、この一年間ですっかり明らかになりました。私はその大きなきっかけになったのは、「政治とカネ」をめぐる数々のスキャンダルだと思います。
次から次へと出てきましたね。ムネオ疑惑、加藤疑惑、井上疑惑、機密費疑惑。この次々にふきだしてきた政治腐敗にたいして、小泉首相がどういう態度をとったのか。総括してみたいと思います。
首相が、繰り返し語ったのは、二つの言葉です。政治家の疑惑が明るみに出たときには、「疑惑がかけられたらご本人が明らかにすべきでしょう」という。政治家の出処進退が問題になったときには、「出処進退はご本人が判断することでしょう」という。だいたいこの二つでしょう。この二つの「レコード」を繰り返し回しただけです。結局すべては他人事で、ただの一度も自民党の総裁としての自浄能力を発揮したことはなかった。これが実態ではなかったでしょうか。(拍手)
腐敗の根源である企業献金については、珍説を言い続けました。「スポーツや音楽も、企業の寄付でなりたっていないものはない。だから政治献金も悪じゃない」という合理化論です。しかしみなさん、音楽やスポーツに企業が寄付するのは、それが広告になるからでしょう。“どこどこ会社の提供です”。これが広告になるからです。しかし、自民党に寄付したって、広告にならないでしょう。(自民党が)“どこどこ会社の提供です”とやったら、企業のイメージは悪くなる(笑い)。企業献金というのは、まさに金の力で政治をゆがめるところに目的がある。そこをごちゃまぜにして、こんな暴論で居直りを決めこむ。これも許しがたい態度と言わなければなりません。(拍手)
官房機密費について、わが党は、それが党略的に流用されている詳細な実態を明らかにしました。「国会対策」として、高級紳士服などをばらまくことがやられていた。一着百万円。これが本当の着服だ(爆笑、拍手)、というわけであります。しかし、この問題について首相は、自分がもらっていた五十万円について、「十年前のことなので覚えていない」というコメントを残しただけで、何も手をつけようとしなかった。私たちは、小泉さんへの五十万円だけを問題にしたわけではないのです。闇の金のシステムを問題にしたのに、それを指一本ふれようとしなかったというのが、小泉首相の態度だったじゃありませんか。(拍手)
みなさん、このどこに「改革」と呼べるものがあるでしょうか。そして利権政治という自民党政治のいちばん腐った土台をみれば、「首相対抵抗勢力」の「対立」なんかどこにもないじゃありませんか。首相も、自民党も、与党も、みんなそろって利権政治の仲間であり、清潔な政治への改革を阻む抵抗勢力だということは、この一年間がはっきりと証明したのではないでしょうか。(大きな拍手)
こうした政治の大きな変化をつくるうえで、わが党が果たした役割は大きかったと思います。国民のみなさんの応援をうけながらがんばったと思います。最近、財界系の世論調査会社のある幹部は、共産党のことを分析してこういう感想をよせてくれました。
「国会で共産党が『ムネオハウス』を持ち出したことで、政治をおもしろくした。固い結束があり、表からの攻めだけでなく、裏の情報も持っている。内部告発をしても安心感があるという点で、共産党は他の政党にはない絶対的な強みを持っている」(拍手)。たしかに安心です。引き続きお願いします。(笑い、拍手)
さらに、「八、九割が小泉首相を支持した一年前にも共産党は、いまと変わらないほど小泉内閣を批判していた。最もアンチ自民に徹している政党は共産党ということでの存在感は世間も認めているのではないか」。
相手が落ち目になってから批判することはたやすいことです。相手が異常人気の絶頂にあるときに、その時でも間違いは間違いといえる政党こそ、値打ちがあるのではないでしょうか。(大きな拍手)
小泉首相が「自民党をぶっつぶす」と、国民を欺き、「抵抗勢力」との八百長で国民を欺いた罪は重い。「自民党を変える」と言いながら、古い腐った自民党を指一本変えようとしなかった、この公約破りの罪も重い。私は、すみやかな解散・総選挙によって、国民の審判をあおげということを強く訴えたいと思います。(大きな拍手)
小泉政治は、自民党政治の「究極の延命作戦」だっただけに、その破たんのツケは大きいものがあります。自民党政治の危機を一段と深刻にし、政治の新しい激動が始まりつつあります。まやかしではない、本当の改革とは何かについて、国民的な規模での模索が始まっていると思います。
私は、二つの問題にしぼって、みなさんといっしょに考えてみたいと思います。
第一は、暮らしと経済をどうするのか、という問題であります。
首相は、この一年間、「構造改革」について、「いまの痛みに耐えれば、明日の経済はよくなる」ということを叫びつづけてきました。
「痛み」の方は公約どおりになりました。「不良債権処理」のかけ声で中小企業つぶしがすすめられ、小泉内閣になってからの一年あまりで地域経済を支えてきた信金・信組が六十一も無理やりつぶされました。一兆五千百億円もの負担増を国民におしつける医療大改悪の法案が、いま国会で激しい攻防のさなかです。
それから六月に、政府税調の答申が出ましたけれども、ここには所得税でも、外形標準課税でも、消費税でも、庶民と中小業者のみなさんにたいする大増税の計画が満載されています。私たちが試算してみたところ、ここに書いてある青写真がかりにすべて実行されたとしますと、最悪の場合、二十三兆円を上回る増税になる。こういう計画も公然と出されています。
私は、これほど国民の痛みに無感覚、冷酷非情な政治はないと思います。あらゆる分野で暮らしを守るたたかいをもって、これにこたえたいと思います。とりわけ医療の大改悪について、残る国会の会期は二十三日ですが、この攻防で、共同の輪を広げて廃案に追い込むために最後まで力をつくしたいと決意しております。(拍手)
それだけ国民に「痛み」を強いて、日本経済の見通しはどうか。
もともと小泉内閣の「構造改革」の路線というのは、「アメリカ頼み」の路線なのです。ところが、頼みのアメリカ経済が、バブルの崩壊と、不正・腐敗まみれで、大破たんに陥りつつある。それが「構造改革」路線を、二重の意味で土台からなりたたなくしていると、私は思います。
まず一つは、国内の景気悪化を、輸出で穴埋めするという「アメリカ頼み」が、通用しなくなったということです。
小泉「構造改革」というのは、「不良債権の処理」などで失業、倒産がどんどん出て内需が冷え込んだときに、アメリカの経済が好調だから、外需―輸出で補えばなんとかなる。こういう綱渡りのシナリオによってつくられたガラス細工のようなものでした。
政府は、五月の月例経済報告で、景気の「底入れ宣言」を出しましたが、そのときも内需の中心である家計消費や民間設備投資は落ち込んだままなのに、輸出がちょっと伸びた、外需がちょっと伸びたことを唯一の「根拠」にして、「底入れ」ということをいった。しかしその後、アメリカ経済が本格的に後退の様相をはっきりさせるなかで、この「底入れ宣言」は、もう「底割れ」になってしまった。これが、いまの現状です。
もう一つは、もっと深刻な問題なのです。小泉「構造改革」というのは、そのモデルはアメリカ型資本主義だった。そのアメリカ型資本主義が、「公正」でもなければ「透明」でもなく、不正と腐敗に満ちたシステムだったということが、世界中に暴露されてしまったということです。
昨年暮れ、エンロンという巨大エネルギー会社が、粉飾決算が明るみに出て破産しました。それに続いて、今年六月には、ワールドコムという資産規模ではエンロンをはるかにしのぐ巨大な電話会社で、またまた粉飾決算が明るみに出た。アメリカ経済はどこまで腐っているのかわからないという状況です。しかも、この粉飾決算は、アンダーセンという世界でも五本の指に入るといわれてきた会計監査会社ぐるみだった。会計監査をやらなければならないところが、いっしょになって粉飾をやっていた。これでは会計監査会社を「監査」しなけりゃならない(笑い)、そのための新しい監査会社をつくらなければならないという(爆笑)、笑えない話がアメリカでは起こっていると聞きました。
エンロンでもワールドコムでも、どちらにも共通しているのは、目先の株価をどうつりあげるかだけが、アメリカ資本主義の巨大企業を動かす「原理」になってしまっているということです。
「NHKスペシャル」が六月二十二日に、「エンロン破たん、アメリカがおかしくなっている」という特集番組をやりました。なかなかの力作だと思って、私は見ました。番組では、エンロンが、株価を九倍にまでつりあげたこと、そのために手段を選ばなかったことを生々しく描き出しています。エンロンでは、無理な急成長の過程でたいへんな損が出た。そうしたら、二千八百もの幽霊会社をつくって、そこに巨額の損失を隠す。損失の“飛ばし”ということをやった。つまり、損失が出てるのに、もうかってる、もうかってると、うそをつきつづけたわけであります。
この番組では、『うそつきポーカー』という本が、アメリカ証券界で流行しているということを紹介していました。「うそつきポーカー」というのは、ゲームの名前で、相手にうそが見ぬかれた時点で負ける、見ぬかれないでうそをつきつづければ勝つ、というはなはだ単純で、あまり道徳的とはいえないゲームであります。このゲームを引きあいにだして、もうけのためには、市場でいかにだますか、いかにうそをうまくつくかということを説いてあるのが、この『うそつきポーカー』という本なのです。
番組に出てきたエンロンの元社員は、「エンロンがやったのは、会社全体をかけた『うそつきポーカー』だった」と語っていました。私は、株価さえあがればすべてよしとする“カジノ資本主義”の行きつく先が、ここに示されていると思います。
小泉首相と竹中大臣などは、「アメリカの成功に学べ、それが構造改革だ」といいつづけてきました。彼らはこういってきた。“企業のもうけをあげること、株価を引き上げることが最優先だ”、“その邪魔になる規制はとり払え”、“余分な労働者の首は切れ”、“効率の悪い中小企業はつぶせ”、“弱肉強食は経済の当然の姿だ”、“貧富の格差の拡大を恐れるな”、“ハイリスク、ハイリターンの時代だ”、“危ない橋を渡ってこそ、もうけはやってくる”、“ギャンブル経済に励め”(笑い)。私がいってるんじゃないですよ(笑い)、相手の言い分なんですけれども。こう説きつづけた人々に、私は、いいたいと思います。日本を「うそつきポーカー」の国にすることのどこが「改革」か。私は、そう問いたいと思います。(拍手)
アメリカ経済の現状から、本当の教訓を学ぶとすれば、私は、次の二つだと思います。
一つは、外需―輸出頼みの経済から脱却して、内需、そのなかでも家計消費を活発にするために、雇用と社会保障の安心、中小企業への支援、そして消費税の減税など、庶民の暮らしに軸足を置いた経済にきりかえることです。
もう一つは、目先の株価つりあげに熱中する“カジノ資本主義”の猿まねをするのではなくて、「企業の社会的責任」を重視する経済にきりかえることであります。(拍手)
同じ資本主義国でも、欧州では違う道を模索しています。昨年七月にEUの政府にあたる欧州委員会が、「企業の社会的責任」についての政策提言を発表し、討論をよびかけています。これを見ますと、その根本にある考え方がよくわかります。企業は株主のためだけにあるのではない、従業員、取引会社、地域社会、環境、人権など社会全体への責任をもっており、その責任を果たしてこそ経済も企業もまともな発展が可能になるという考え方です。
これは、わが党が主張してきた「暮らしを守るルールある経済社会を」という提案とも共通する方向です。私は、二十一世紀に、本当に豊かで、そして公正な社会をつくる道はここにあると、確信をもって訴えたいと思うのであります。(拍手)
第二に、平和と外交についてです。いますすめられているアメリカの新しい覇権主義の戦略とのかかわりで、日本の進路について考えたいと思います。
この一年間の世界の最大の事件といえば、昨年九月十一日に起こった米国での同時多発テロと、米軍によるアフガンへの報復戦争でした。
その真の教訓は何でしょうか。アフガンではタリバン政権にかわって、新政権が生まれました。しかし、報復戦争はいまなお続いています。この戦争は三千人以上の罪のない民間人を殺し、今年に入っても、五月、六月と、こともあろうに結婚式場を爆撃して新たな犠牲者をふやしています。六月の結婚式場への爆撃は、ヘリコプターや大型機などによって数時間にわたって続けられ、喜びに包まれていた結婚式場は、四十八人が死亡するという、まさに地獄絵の場に変わりました。
こんな犠牲をいまなお出しながら、テロの首謀者とされるビン・ラディンは依然として捕まらないではないですか。アルカイダの組織もなくならないではないですか。戦争ではテロはなくせない。テロに戦争で対抗しようとすれば、その戦争は終わりがなくなる。法と理性にもとづく世界の団結した行動によってこそテロは根絶できる。これこそ真の教訓ではないでしょうか。(拍手)
しかしアメリカは、この真の教訓をまったく学ばず、まったく逆の危険きわまりない「教訓」を導き出しました。それはこういうものです。
「守るべき国土や国民を持たないテロ組織や、大量破壊兵器の保有を狙う国家にたいしては、これまでのやり方は通用しない。それらにたいしては、先制攻撃も辞さない。必要なら先制核攻撃も辞さない。そうした新しい戦略が必要だ」
この新しい危険な戦略は、一月にブッシュ大統領がのべた「悪の枢軸」論、同じ一月に米国議会に提出された「核態勢の見直し」報告などで事実上宣言され、ホワイトハウスがこの秋に発表する「国家安全保障戦略」で、米国の公式の軍事戦略として決定されると伝えられています。
方針を決めるだけではない。最近のニューヨーク・タイムズは、その第一の目標がイラクであること、すでに米中央軍がイラクのフセイン政権打倒にむけ、最大二十五万人規模の部隊で攻撃をしかける作戦案を用意していると報じました。
これにたいして世界からはげしい批判の声がおこっています。非同盟諸国はもちろん、欧州連合からも批判がおこっています。そして、アメリカの中からも批判の声がおこっています。
一つ紹介したいのは、米国の民間研究所で、「国防情報センター」というのがあるんですが、その所長のブレア氏が痛烈な批判論文を書きました。ブレア氏は、米国の元戦略空軍のミニットマン核弾道ミサイル発射操作担当将校なのです。非常に恐ろしい仕事を長年やってこられて、その肌身で感じたことを書いているのです。彼は、アメリカが先制核攻撃の戦略をとるなら、世界の国は核保有と核使用をアメリカによってすすめられることになる。こんな危険な道はない。こう警告してつぎのようにのべています。
「9・11は、核兵器にはなんの価値もないということを示した。その真の教訓は、あらゆる大量破壊兵器は廃絶されなければならないということである。…この惨害にたいするただ一つの解答は、大量破壊兵器のない世界である。いかなる国もその例外になることはできない。米国でさえも例外ではない」
「9・11」の教訓は、核兵器の廃絶である――こういう理性の声がアメリカでもおこっています。(拍手)
国連憲章を根本から破壊し、世界を核の恐怖と無法のもとにおく、アメリカの覇権主義の暴走を、世界の理性と良識の声を総結集してくいとめようではないかということを、私は心からよびかけたいと思います。(大きな拍手)
それでは小泉政権は、このアメリカの新戦略にどういう姿勢をしめしたでしょうか。私は、国会で首相と何回か論戦する機会がありましたが、二つの驚くべき答弁が印象に残っています。
一つは、五月七日の(衆院)有事特別委員会で、私が、ラムズフェルド米国国防長官が論文のなかで、「先制攻撃が必要」と公然とのべていることをしめして、「こういう無法は絶対に容認できないというべきではないか」と聞いたのにたいして、首相の答弁は、「あらゆる選択肢の一つとして理解する」、という驚くべきものでした。
もう一つは、六月十二日の党首討論で、私が米国の「核態勢の見直し」報告が、非核保有国への核攻撃の拡大を方針としていることについて、「被爆国の政府として、反対を明言すべきじゃないですか」と追及したのにたいして、これも首相の答弁は、「アメリカはアメリカの選択肢を残しておくということだ」、こういうものでした。
みなさん、これまでの自民党の首相でも、ここまでいいきった人はいないのです。私は、一九九七年に、新ガイドライン(新日米防衛協力指針)の問題で、橋本元首相と論戦したことを思い出します。そのとき私が、「アメリカが先制攻撃の戦争をやった場合でも、日本はガイドラインを発動して協力するのか」、こう追及したときの橋本氏の答えは、“米国が国際法上違法な武力行使をやるとは想定していない”という趣旨のものでした。“そんなことはやるはずがない”というごまかしでなんとか逃げたものでした。ところが小泉首相は、無法だろうが、違法だろうが、アメリカが「選択肢」としたら、「理解」する、こういいきってしまうのですから、これはこれまでにない恐るべき姿です。
六月になって、報道で明らかになったことなのですけれども、二月の日米首脳会談で、ブッシュ大統領は小泉首相にむかって、「我々はイラクを攻撃する。間違いなくやる」と明言したというのです。大統領は、「迅速に片付けたい」と二回繰り返した。それにたいして小泉首相は、「大統領の意思を確認するように、小泉首相も同じ言葉を英語でオウム返しに述べた」というのです。「迅速に片付けたい」と。
私は、なるほどと思いました。アメリカにたいしてイラク攻撃への事実上の支持をあたえてしまっているわけですから、これはもう先制攻撃であろうが、核攻撃であろうが「選択肢として理解する」としかいえない。ここまでアメリカ追従が異常な姿になっている。これで独立国といえるのかということを、私はきびしく告発したいと思うのであります。(大きな拍手)
こんな政府に、有事法制をもたせたら、どんなに危険なことになるか、火を見るより明らかです。わが党は、この法案について、日本を守るためのものではなくて、アメリカが海外でやる戦争に武力行使をもって自衛隊が参戦する、日本の国民を強制動員する、そういう恐るべきものだということを明らかにしてきました。その米国がやる戦争というのは、先制攻撃の戦争であり、核攻撃の戦争です。それに、日本が参戦するという無法は、絶対に許すわけにはいきません。みなさん、この問題はまだけりがついていない。相手のくわだての息の根をとめるまで、火だねを残さず、きっぱり廃案に追い込むところまでがんばりぬこうではありませんか。(大きな拍手)
この一年をふりかえりましても、日本共産党は、世界の激動に道理の力をもって働きかけてきました。
テロと報復戦争にさいしては、世界各国政府に、二度にわたって書簡を送り、「戦争ではなく、法と理性にもとづく解決を」と訴えました。
インド、パキスタンという非同盟国同士が戦争の瀬戸際にきたときにも、両国に書簡を送り、非同盟運動の大義にたった平和解決を訴えました。
憲法九条をもつ国として、ほんらいは、政府がおこなうべき道理にたった平和外交を実践してきたのが日本共産党です。私は、歴史の試練を経てつくりあげた自主独立の党の値打ちは、この一年間の世界の激動と危機のなかでも立派に証明されたと考えるものであります。(拍手)
経済と外交の二つの問題について考えてきましたが、どちらも日本という国が、米国に従属した国になっているということが、さまざまな異常なゆがみの一つの根源であることは、明りょうだということを痛感します。ここにメスをいれずして、どんな本格的な改革もありえません。
みなさん。日米軍事同盟をなくして本当の独立国といえる日本をつくろう、大企業の横暴をただすルールある経済社会をつくろう――私たちが訴えている「日本改革の提案」にこそ、二十一世紀の希望ある未来がある、このことは内外の激動のなかでいよいよ浮き彫りになってきたのではないでしょうか。(拍手)
どうやって、その道を開くか。国政でも地方政治でも、本当の改革の党の力をのばす。政党間の力関係を変える前進と躍進をかちとることがどうしても必要です。総選挙、十月の中間国政補欠選挙、そして来年のいっせい地方選挙で、勝利者となるために全力をつくしたいと思います。
そして、そのためにも強く大きな党をつくるとりくみを成功させたい。
この一年をふりかえりまして、わが党は現実政治を動かすさまざまな成果を国民のみなさんとともにかちとってきたわけでありますが、私が強調したいのは、そのどれもが国会での奮闘と、全国での草の根でのみなさんのたたかいが、まさに一緒になってかちとった共同の成果だということであります。(拍手)
たとえば、ムネオ疑惑追及で国会議員団が大奮闘しました。この成果は、わが日本共産党北海道議団、根室市議団と一体のものでした。
色丹島に「ムネオ診療所」があるということを初めて耳にしたのは、昨年九月にビザなし交流で訪問した、わが日本共産党道議団の一員です。国後島の「ムネオハウス」について、「鈴木さん、あなたは私たちの友達です」という横断幕を発見し、その写真を入手したのは、わが日本共産党根室市議団の一員です。
道議団は、前回のいっせい地方選で二議席から六議席に躍進したわけですが、その力はここでも発揮されている。その力が、あの佐々木憲昭さんのパネルになって、何十回とワイドショーでも放映されてすっかり有名になった(笑い)、そこに実を結びました。
わが党が四千四百人の地方議員をもち、日夜、住民の利益を守り、活動していることが、どんな問題でもわが党の力の源泉になっているということに、私は大きな誇りをもつものであります。(大きな拍手)
もう一つ、サービス残業根絶のたたかいでの成果について報告したい。長年の職場でのたたかいと、国会の論戦で、昨年四月に、厚生労働省にサービス残業根絶のための通達を出させてから一年あまりがたちました。この無法にメスを入れる画期的な変化がすすんでいます。
昨年の十月から十一月には、労働基準監督署が、電機、自動車の大企業を中心に二千五百八十九の事業所に監督・指導に入り、そのうち七百五十の事業所でサービス残業を摘発し、監督・指導が行われました。
ことしの四月には、尼崎・伊丹の三菱電機で、日本共産党の職場支部がよびかけた残業日誌をつけようという運動が実り、サービス残業是正への画期的な前進がかちとられました。それがきっかけになってマスコミを動かして、毎日新聞は「サービス残業取材班」をつくってキャンペーンを始めた。そのなかでシャープとか住友生命などに是正勧告が出されました。
職場支部と職場の仲間たちとのねばり強いたたかいで、ここまで大きな変化をつくった。このことも、みなさんに報告したいと思うのであります。(拍手)
わが党の八十年をふりかえるとき、戦前の不屈の闘争、自主独立のたたかい、正確な綱領路線とともに、発達した資本主義国では最大の共産党をつくったこと―四十万をこえる党員が、二百万近い読者のみなさんの協力も得て、日夜、職場、地域、学園で、国民の利益を守って、献身的な奮闘を続けていることは、大きな誇りであります。
この力をさらに大きくしていきたい。そのためにもみなさんの大きなご支援、ご協力を最後にお願いして、私の話とさせていただきます。ありがとうございました。(大きな拍手)
(2002年7月10日(水)「しんぶん赤旗」に掲載)