1月16日採択
(目次)
第1章 日本政治の「新しい時期」とそれをつくりだした力
(1)前大会決議と、日本政治の大きな変化の始まり
(2)歴史問題の前向きの打開と、今後の課題について
(3)総選挙は「過渡的な情勢」と特徴づけられる「新しい時期」を開いた
(4)国民の世論と運動、日本共産党のたたかいが「新しい時期」を開いた
第2章 「過渡的な情勢」のもとでの日本共産党の任務
(5)「過渡的な情勢」のもとでの国民の認識の発展過程と、わが党の任務
(6)国民要求にこたえて現実政治を前に動かす
(7)「二つの異常」をただす改革(1)――「異常な対米従属」の打破
(8)「二つの異常」をただす改革(2)――「ルールある経済社会」を
(9)日本の政治の反動的逆行を許さない
(10)「国民が主人公」の日本へ――新しい条件をくみつくし国民的共同を
第3章 大きく変わりつつある世界と、日本共産党の立場
(11)世界では平和と社会進歩への激動が進展しつつある
(12)米国・オバマ政権と、日本共産党の立場
(13)世界に広がる平和の地域共同体の動き
(14)民主的な国際経済秩序を求める動きの進展
(15)どうしたら人類は「核兵器のない世界」に到達できるか
(16)地球温暖化対策の到達点と今後の課題について
(17)日本共産党の野党外交の発展について
第4章 国政と地方政治での躍進、強大な党建設をめざす方針
(18)参議院選挙での党躍進の条件、政治的意義について
(19)参議院選挙の目標と方針について
(20)地方政治の新たな特徴と、地方選挙の方針について
(21)綱領実現をめざし、中期的展望にたった「成長・発展目標」をもって奮闘する
(22)「過渡的な情勢」を前にすすめる質量ともに強大な党建設を
第5章 激動の世界と未来社会への展望について
(23)世界の資本主義の矛盾の深まりと、科学的社会主義への注目
(24)21世紀の世界の現実のなかでの未来社会への動き
(25)党綱領の示す21世紀の世界史的な展望にたって
私たちは、この党大会を、日本政治の大きな変化の始まりという激動的情勢のもとで迎えている。
4年前の第24回党大会決議は、「自民党政治の危機とゆきづまりは、外交でも、内政でも、最も深刻な段階をむかえている」とのべ、その根底に、世界の他の資本主義国にも類例のない「自民党政治の三つの異常な特質」――「過去の侵略戦争を正当化する異常」「アメリカいいなり政治の異常」「極端な大企業中心主義の異常」があることを指摘し、これらの異常をただす日本改革の方針を、党綱領にそくして全面的に明らかにした。
前大会決議は、2005年の総選挙で、小泉・自民党が、郵政問題一本に争点をしぼるという国民をあざむく方法で議席の大幅増を果たしたことについて、「うそとごまかしが明らかになれば、政治の大きな激動はさけられない」「日本の情勢は、古い政治の枠組みを打開する新しい政治を切実にもとめる、歴史的時期をむかえている」とのべた。
この提起は、日本の情勢と展望を正確に見通すものだった。それは4年間におこった日本政治の大きな変化によって証明された。
「過去の侵略戦争を正当化する異常」については、靖国神社参拝に固執しつづけた小泉首相への内外の批判の高まりと国際的孤立、「戦後レジームからの脱却」をスローガンに戦前・戦中の体制への逆行をめざした安倍首相の惨めな政権投げ出しなどによって、「靖国」派は重大な打撃を被り、事態の前向きの打開がはかられた。わが党は、歴史問題の打開を、「民主的政権の樹立を待たずに実行すべき、急務中の急務の課題」(前大会決議)と位置づけ、逆流を克服するうえで重要な積極的役割を果たした。
逆流の根を断つ仕事はなお残されている。侵略戦争を肯定・美化する歴史教科書の問題を解決し、「植民地支配と侵略」への反省を教科書に反映させることが必要である。いまだに解決をみていない旧日本軍「慰安婦」問題などについては、政府としての謝罪と補償をおこなうことが急務である。
2010年は、日本帝国主義が朝鮮半島全体を軍事的強圧のもとに併合してから100周年となる。日中でも、日韓でも、両国政府・両国国民間で、歴史認識の基本を共有することは、21世紀に日本が東アジアの人びとと真の平和と友好を築いていくうえで、土台となる重要な課題であり、わが党はそのために引き続き力をつくす。日朝両国関係の正常化にさいしても、歴史問題を、解決すべき諸懸案の一つとして、重視してとりくむ必要がある。
2009年8月におこなわれた衆議院選挙での国民の審判は、「過渡的な情勢」と特徴づけることができる日本政治の「新しい時期」を開くものとなった。
主権者・国民が、自民・公明政権への退場の審判をくだしたことは、日本の政治にとって前向きの大きな一歩であり、新しい歴史のページを開く意義をもつ、歓迎すべき出来事である。国民が総選挙の審判にかけた思いは、自公政権によってもたらされた耐えがたい暮らしの苦難、平和の危機をとりのぞきたい、「政治を変えたい」という強い願いである。これは一時の選挙での審判にとどまらず、選挙後の情勢全体を前向きに動かす大きな力として作用しつづけている。
同時に、日本の政治は、「二つの異常」――「異常な対米従属」「大企業・財界の横暴な支配」から抜け出す方向を定めるまでにはいたっていない。国民は、「自公政権ノー」の審判をくだしたが、民主党の政策と路線を支持したわけではないし、自公政治に代わる新しい政治は何かについて答えを出したわけではない。暮らしの苦難、平和の危機をもたらした政治の根源に何があるのか、旧来の政治に代わる新しい政治の中身が何かについて、多くの国民は模索と探求の途上にある。国民が、新しい政治を本格的に探求する「新しい時期」がはじまったのである。
民主党中心の新政権が示している過渡的な性格は、情勢のこうした過渡的な特徴を、その最初の局面で反映したものにほかならない。新政権の政策には、「政治を変えたい」という国民の願いを反映した前向きの要素も混在しており、そのなかにはある範囲で、財界・大企業やアメリカの意向と矛盾する要素も存在する。同時に、新政権の政策・路線には、「二つの異常」から抜け出す立場は示されていないし、国民の利益に反した問題点も少なからず顕在化している。くわえて、衆院比例定数削減の方針にみられる議会制民主主義を危うくする逆行的要素など、民主党固有の否定的政策の存在も軽視できない。
わが党は、新政権のもとで、「政治を変えたい」という国民の期待にこたえるとともに、不安や批判を代弁して問題点をただし、日本の政治をさらに前にすすめる「建設的野党」として奮闘する。
日本政治の「新しい時期」を開いた力は何か。それは暮らしと平和を壊す旧来の政治と国民の利益との矛盾であり、国民の世論とたたかいである。とくに「構造改革」の名でおしつけられた新自由主義の政策によって、社会的貧困と格差がきわめて深刻となり、その打開をもとめる国民的なたたかいが、社会のあらゆる分野でおこったことは、日本の政治を動かす大きな力となった。
日本共産党は、情勢の前向きの変化をつくるうえで重要な役割を果たした。国民の暮らしにかかわる決定的場面――たとえば1999年の労働者派遣法改悪による派遣労働の原則自由化、後期高齢者医療制度へのレールを敷いた2000年の健康保険法改悪の「付帯決議」、1993年から95年にかけてのコメ輸入自由化にさいして、国民の利益にたって反対をつらぬいたのはわが党だけだったが、どの問題でも、いまではわが党の主張が国民多数の声となり、現実政治を動かしている。
小泉・安倍政権ですすめられた「構造改革」路線の暴走に対して、前大会決定が、「社会的連帯で社会的反撃を」との国民への呼び掛けをおこない、党があらゆる分野で国民運動との連帯・共同を広げ、強めるために奮闘したことは、この路線を破たんに追い込むうえで重要な役割を果たした。
1993年以来、財界など支配勢力が主導してすすめてきた「二大政党づくり」のくわだての狙(ねら)いは、(1)同じ古い政治の土台のうえで、「二大政党」による政権交代をおこなう体制をつくりあげ、この体制のもとで悪政を競い合わせ、危機に陥った旧来の政治の延命をはかるとともに、(2)小選挙区制導入と、「二大政党」以外は選択肢の外におくというキャンペーンの両方によって、日本共産党の活動と存在を日本の政界から締め出し、あわよくば抹殺することにおかれていた。
しかし、総選挙で示された国民の審判は、古い政治の担い手だった自民・公明に厳しい退場の審判をくだし、旧来の政治からの変化を強く求めるものとなった。日本共産党が、支配勢力による最大の狙い――政界からのわが党の排除・抹殺という狙いに抗して、この数回の国政選挙でその地歩を維持し、意気軒高に活動していることは、全国の支持者、後援会員、党員の支援と奮闘のたまものであり、支配勢力の最大の誤算である。
日本の情勢の深部で広がった支配体制と国民の利益との矛盾の蓄積が、政治の前面にあふれ出し、国民的規模での新しい政治の探求という巨大な奔流となっている――これがいまおこっていることである。わが党は、日本政治の「新しい時期」を開いた国民の世論と運動、日本共産党のたたかいの力に自信と誇りをもち、日本の政治が「過渡的な情勢」から、さらにすすんだ段階へと発展することを促進するために、知恵と力をつくす。
「過渡的な情勢」のもとでの国民の探求の過程、認識の発展の過程には、さまざまな曲折や試行錯誤もあるだろうが、国民が、自らの切実な要求を実現することを出発点にしながら、つぎのような政治的な体験を一つひとつ積み重ねるなかで、日本の政治をさらに前にすすめる自覚と力量を高めていく必然性がある。
――一方で、新しい情勢のもとで、運動と力関係のいかんで、国民要求が一定の範囲内で実現する条件が生まれている。旧来の政治ではなかなか実現しなかった要求が、新しい情勢のもとで実現する。そのことは、「国民が声をあげれば政治は変わる」という自覚と確信を広げるものとなるだろう。
――他方で、要求の本格的な実現には、なお、大きな障害があることが実体験されるだろう。たとえば労働者派遣法の抜本改正をすすめようとすれば財界の抵抗にぶつかる。沖縄の基地問題を解決しようとすれば日米軍事同盟の体制にぶつかる。国民要求と「二つの異常」とのかかわりが、これまでよりも直接的な形で明らかになってくるだろう。
――各種の政治勢力の性格や役割が、このプロセスをつうじて試されることになるだろう。民主党政権の過渡的な性格や限界・問題点、「二つの異常」を特徴とする古い政治の代弁者としての自民党の反動的な姿勢、「建設的野党」としての日本共産党の役割が試され、国民の前で明りょうとなっていく。
――これらの政治的体験の総体が、新しい政治を探求する国民の自覚と力量の前進の推進力となるだろう。そして、国民は、一つひとつの政治的体験をつうじて、暮らしと平和にかかわる自らの切実な願いを実現しようとするならば、日本の政治が「二つの異常」から抜け出し、「国民こそ主人公」の新しい日本にすすむ必要があるという認識を発展させることになるだろう。
このプロセスは自然にすすむものではない。切実な要求の実現を求める国民のたたかい、それを阻むさまざまな逆行の動き、そのせめぎ合いのなかで、新しい政治への国民の探求は前進する。日本の政治が「二つの異常」から抜け出す力を、国民の間にいかにつくりあげていくか。その自覚と力量の前進を後押しし、促進するところに「過渡的な情勢」のもとでの日本共産党の任務がある。
とくにつぎの三つの任務が重要となっている。
第一の任務は、国民要求にこたえて現実政治を前に動かすことである。国民の切実な要求から出発し、現実の政治を一歩でも二歩でも前に動かすために力をつくすとともに、要求の本格的な実現のためには「二つの異常」をただす根本的な改革が必要であることを、明らかにしていく。そうした見地で、各分野で、旧来の政策のどこを転換すべきか、それぞれの「要」をにぎったたたかいが重要である。
雇用――失業給付の延長、失業者への支援の抜本的な拡充をすすめる。日本社会の貧困と格差を深刻にした最大の元凶である労働法制の規制緩和路線と決別して、労働者派遣法の抜本改正など規制強化へと転換し、「雇用は正社員が当たり前の社会」をめざす。時給千円以上をめざし全国一律の最低賃金制度の確立をはかる。
社会保障――後期高齢者医療制度のすみやかな撤廃をはじめ、社会保障費削減路線が生んだ数々の「負の遺産」を是正する。受益者負担主義を転換し、医療、介護、障害者福祉などの利用料は無料化をめざして負担軽減をはかる。社会保障を“大企業の利潤追求の場”に明け渡し、公的責任を後退させる市場化・民営化路線を抜本的に転換し、介護・保育・医療・年金などの充実を、国の責任ではかる。憲法25条の生存権を保障する社会保障、「権利としての社会保障」を、社会のあらゆる分野でうちたてる。
中小零細企業――倒産・経営危機を回避するため、信用保証制度など融資面での支援の抜本的拡充とともに、緊急の休業補償・直接支援をおこなう。大企業優先の産業政策から、中小企業を文字どおり「日本経済の主役」として位置づける政策への転換をはかり、それにふさわしい製品開発や人材・後継者育成などの「振興策」、大企業の横暴から中小零細企業を守る「規制策」をすすめる。
農林漁業――再生産が可能な農家収入を保障する価格保障・所得補償と、関税など国境措置の維持・強化を一体ですすめる。歯止めない輸入自由化路線を転換することは要をなす問題である。ミニマムアクセス米の「義務的」輸入をやめ、日本農業に甚大な打撃を与える日米FTA(自由貿易協定)、日豪EPA(経済連携協定)に反対するとともに、貿易拡大一辺倒のWTO(世界貿易機関)農業協定の改定など、各国の食料主権を保障する貿易ルールの確立を求める。林業を、地域経済と低炭素社会実現に不可欠な産業として国政に位置づけ、外材依存政策を転換し、国産材の利用拡大と森林の整備をすすめ、林業・木材産業を再生させる。漁業が、食料の供給とともに、海洋・国土・環境保全の役割を果たすよう、水産資源の維持・回復、水産物価格の安定・省エネ対策など漁業経営の支援をおこない、漁業・漁村の振興をはかる。
子育て支援――子ども手当など経済的給付の充実とともに、長時間労働の是正や男女ともに家族的責任を果たせるようにするための雇用のルールの改革、認可保育園の大幅増設によって待機児童を解消するなど、「子育てがしにくい」という日本社会のあり方を変える総合的な取り組みをおこなう。
地球環境――2020年までに1990年比25%削減という温室効果ガス削減の中期目標は重要な一歩前進だが、これを実効あるものにするには、政府が、排出量全体の7割を占める産業界と公的削減協定を締結し、大企業に温暖化対策での社会的責任を果たさせることが不可欠である。化石燃料依存をあらため、再生可能エネルギーの利用を抜本的に高める。温暖化対策を口実にした原発推進は、放射能汚染という深刻な環境破壊を生みだすものであり、反対する。
税制――大企業や大資産家にたいする行き過ぎた優遇税制をあらため、応能負担の原則にたった民主的税制(生計費非課税、総合・累進、直接税中心)の再構築をはかる。消費税増税、配偶者控除や扶養控除の廃止などによる庶民増税にきびしく反対する。
米軍基地――「米軍再編」の名による基地強化・固定化に反対し、縮小・撤去をめざす。沖縄・普天間(ふてんま)基地の問題は、「対等な日米関係」を主張している新政権の最初の試金石となる重大な問題である。「海兵隊は抑止力として必要」「日米安保があるから」という“二つの呪縛(じゅばく)”に縛られたままの対応では問題は解決しない。破たんした「県内たらい回し」路線、「移設条件付き返還」路線ときっぱり決別し、無条件撤去を強く求める。沖縄と本土が固く連帯して、「基地のない沖縄」「基地のない日本」をめざす一大国民闘争を発展させる。米軍への「思いやり予算」を撤廃するとともに、約3兆円にものぼるグアム移転経費を含む「米軍再編」経費の負担を中止する。
自衛隊――インド洋であれソマリア沖であれ、憲法違反の自衛隊の海外派兵はすみやかに中止し、撤退を求める。世界のどこにでも自衛隊を派兵できる恒久法である「海賊対処」法を撤廃するとともに、世界の紛争への軍事介入を可能にする海外派兵恒久法に強く反対する。海外派兵型装備の導入・開発の全廃など、大幅軍縮への転換をはかる。
核兵器――「日米核密約」を公開・廃棄し、「事前協議」条項を無条件に実施させ、「非核三原則」の厳正な実施をはかる。「核の傘」から離脱し、名実ともに「非核の日本」をめざす。核兵器廃絶を主題とした国際交渉のすみやかな開始など、「核兵器のない世界」にむけて被爆国としての真のイニシアチブを発揮する。
憲法――改憲派はこの間の政治情勢の変化のなかで打撃を受けたが、憲法改定への危険は過小評価できない。民主党のマニフェストには、同党の「憲法提言」にもとづく改憲志向が明記されている。国連の決定があれば海外での武力行使を「合憲」とする解釈改憲を求める動きも根深い。憲法改悪に反対するゆるぎない国民的多数派をつくるためにひきつづき努力するとともに、憲法を平和と暮らしに生かすたたかいを発展させる。前進しつつある「九条の会」に連帯し、その一翼を担って奮闘する。
教育――国の制度として少人数学級に踏み出すとともに、教育のすべての段階での教育費負担の軽減・無償化、とりわけ高校と大学の学費無償化をはかる。世界でも異常な競争主義と序列主義の教育を根本からあらため、学習指導要領の強制をはじめ教育内容への国家的統制をやめさせる。教育への国家的介入をすすめる憲法違反の改悪教育基本法を抜本的に改定し、日本国憲法と子どもの権利条約の原理に立脚し、一人ひとりの子どもたちの主権者としての人格の完成を目的とし、国民の教育権、教育の自由と自主性を擁護・発展させる新しい教育基本法策定への国民的合意の形成をはかる。
学術・文化・スポーツ――学術、文化、スポーツの各分野への短期的な効率主義や成果主義の持ち込みによる予算縮減を許さない。大学の基盤的経費を充実し、科学・技術の基礎研究と若手研究者支援を抜本的に拡充する。芸術・文化の支援とスポーツ振興への国の責任を果たし、国民の権利として文化とスポーツが保障される社会をめざす。
男女平等――国連女性差別撤廃条約を具体化・実現し、社会のあらゆる分野での女性差別を一掃する。女性労働者の2人に1人以上が非正規雇用労働者として不安定、低賃金のもとにおかれ、昇進・昇格のうえで深刻な差別を受けている事態を抜本的に打開し、均等待遇を実現し、女性も男性もともに仕事と家庭の両立ができる社会をめざす。
第二の任務は、旧来の政治の「二つの異常」をただし、党綱領が示す「国民が主人公」の新しい日本への改革をめざす国民的合意をつくることである。
この問題では、前項に示した国民の切実な要求から出発して改革の必然性を明らかにしていくとりくみとともに、わが党がめざす日本改革の方針を実行することが、日本の政治にどういう新しい時代を開くかについて、広く明らかにしていく独自の努力をおこなう。とくに世界の動きにてらして、日本の政治の「異常」を広く明らかにし、改革の合理性、必然性を示していくことは、重要である。
一つは、「異常な対米従属」の政治を打破し、独立・平和の日本をきずく改革である。
2010年は、1960年に国民的規模の反対闘争が展開されるなか、それを押し切って日米安保条約が改定されてからちょうど50周年の節目の年となる。この半世紀で、軍事同盟をめぐる世界の情勢はどう変化したのか、そのなかで日米軍事同盟はどういう特質をもっているのかを、広い視野にたって検証し、打開の道を示すことが大切である。
世界は、この半世紀に、大局的にいえば、軍事同盟から抜け出して、外部に仮想敵をもたない、開かれた地域の平和共同体が世界各地に広がるという方向に大きく変わりつつある。
この半世紀に、多くの軍事同盟が、解体、機能不全、弱体化におちいった。旧ソ連を中心とした軍事同盟は、ソ連崩壊とともに基本的に解体・解消した。米国を中心とした軍事同盟も、東南アジア条約機構(SEATO)の解散、中東地域の中央条約機構(CENTO)の解散、オーストラリア・ニュージーランド・アメリカ合衆国安全保障条約(ANZUS)の機能停止、米州相互援助条約(リオ条約)の機能停止と、全体として解散・機能停止がつづいた。その結果、米国を中心とした軍事同盟で、現在、実態的に機能しているものは、北大西洋条約機構(NATO)、日米、米韓、米豪の軍事同盟の四つしかない。これらの軍事同盟のもとにある国は、31カ国、国連加盟国数の16%、人口は10億8千万人で世界人口の16%にすぎない。
半世紀前はどうだったか。1960年当時は、米ソを中心とした軍事同盟のもとにあった国の数は52カ国をかぞえ、当時の国連加盟国の53%、軍事同盟のもとにある国の人口は植民地を含めて世界人口の67%を占めていた。人口の67%から16%に――半世紀前に軍事同盟に覆われていた世界は、大きく変わった。軍事同盟は、21世紀の今日の世界で、「20世紀の遺物」というべき、時代錯誤の存在となっているのである。
くわえて、日米軍事同盟は、米国を中心とした四つの軍事同盟のなかでも、他に類のない異常な特質をもっている。
――日本の米軍基地は、1980年代以降に面積では2倍以上に広がった(自衛隊との共用を含む)。海外に駐留する米軍総数は、世界的規模ではソ連崩壊後に、約61万人から約28万人へと半数以下に減っているにもかかわらず、在日駐留米兵数は4万人前後とほとんど変化がない。
――在日米軍基地は、海兵遠征軍、空母打撃群、遠征打撃群、航空宇宙遠征軍など、日本防衛とは無関係の、干渉と介入が専門の「殴りこみ」部隊がつぎつぎと配備され、米国の侵略的な世界戦略の一大根拠地として強化されてきた。海兵遠征軍が配備されている(沖縄、岩国)のも、空母打撃群と遠征打撃群の母港がおかれている(横須賀、佐世保)のも、世界で日本だけである。米国防総省の発表では、この数年をみても、日本に駐留する米軍は、陸海空海兵隊の4軍そろって、常時、2千人から3千人以上が、イラクやアフガニスタンの戦争に投入されている。在日米軍基地は、「殴り込み」戦争の最前線の基地として、常時、戦時下におかれているのである。
――在日米軍による事件・事故・犯罪・住民生活への被害は、きわめて深刻である。1995年におこった沖縄での米兵による少女暴行事件のさい、米兵が裁かれた女性暴行事件や未成年者へのわいせつ行為などの性犯罪が、米軍基地のある他の国々と比べて突出して高いことが問題となったが、その実態は現在も変わっていない。犯罪をおこした米兵が日米地位協定の治外法権的な特権によって守られるという屈辱的事態が繰り返し問題になっているにもかかわらず、半世紀にわたって日米地位協定がいっさい改定されないままであることも、異常きわまりないことである。
――米軍駐留経費負担として、国民の血税をつぎ込むことの「気前良さ」でも、日本は「世界一」の異常な国である。米国防総省の「共同防衛における同盟国の貢献度」報告(2004年)によれば、日本の米軍駐留経費負担は、米国の同盟国27カ国(当時)のなかでも突出しており、2位のドイツ以下26カ国の合計を上回る。米国政府自身が、「日本にいるほうが安上がり」と公言するような世界でも突出した米軍駐留経費負担が、米軍の居座り、基地増強をもたらしている。
――半世紀前の安保改定時に、安保条約を「対等なもの、日本の自主性を確保するものに改める」として、その道具立てとして宣伝された「事前協議」制度は、「日米密約」と一体のものであり、まったく実体のない国民を欺く「虚構」でしかなかったことが、つぎつぎと明らかになっている。米軍の日本からの出撃行動も、艦船や軍用機の寄港・通過による核兵器の持ち込みも、米国との「事前協議」の対象とせず、自由勝手におこなえることが、「日米密約」でとりかわされ、それにそった運用が現在まで続いていることは、否定しがたい事実となっている。
――「米軍再編」の名で、日米軍事同盟の体制は、日米安保条約の枠組みさえこえた、地球的規模の「日米同盟」への侵略的変質を深めている。2006年6月の日米首脳会談では、「新世紀の日米同盟」と題する「共同宣言」がかわされ、「21世紀の地球的規模での協力のための新しい日米同盟」が宣言された。日米が、世界における共通の戦略目標をもち、米軍と自衛隊の軍事一体化をはかり、基地体制の抜本的強化をはかる――これがいますすめられようとしていることの中身である。
――日米安保条約のもとで、日本経済は米国への従属と支配のもとにおかれている。米国政府は、1994年から毎年、日本に「年次改革要望書」を提出し、新自由主義のおしつけと市場開放を迫ってきた。金融の自由化、郵政民営化などは、いずれも米国の要求から始まったものである。こうした経済的従属の「制度化」がはかられている国は、世界でも日本だけである。こうした米国の理不尽な要求の「制度化」は、日本財界・大企業の横暴な要求とも結びつき、日本経済のゆがみを一段と激しいものとし、そのゆがみは世界経済危機のもとで国民生活が陥った特別に深刻な苦難という形で噴き出した。
新政権は、「対等な同盟」ということを強調しているが、この軍事同盟の不平等性、従属性、侵略性の深さは、世界に二つとないほど異常で、突出したものである。それは、恒久平和主義を世界で最も先駆的な形でうたった日本国憲法第9条とは、根本的に相いれない存在である。
日米安保条約を解消し、基地のない日本、独立・平和の日本を築くためには、国民多数の合意が必要である。そのために、わが党は、平和を求める国民の願いを実現するたたかいを、立場の違いをこえた共同の力ですすめながら、その願いを阻む根源に日米安保条約が存在することを、広く明らかにしてたたかう。同時に、改定から50年をへて、世界でも突出した従属性と危険性を、その全身にまとっている日米軍事同盟の真実の姿を、広い国民の共通の認識とするために、力をつくす。
また、東アジアに平和的環境をつくりあげていく平和外交と一体に、日米安保条約廃棄の国民的合意をつくりあげていく努力が大切である。わが党は、北朝鮮問題の解決のためには、困難はあっても「6カ国協議」の枠組みを復活させ、これを通じて核・拉致(らち)・ミサイル・歴史問題など諸懸案の包括的解決をはかり、これを地域の平和と安定の枠組みに発展させるという立場での対応を堅持する。
いま一つは、世界でも異常な「財界・大企業の横暴な支配」を打破し、国民の生活と権利を守る「ルールある経済社会」をつくる改革である。
党綱領では、「ルールなき資本主義」の現状を打破し、「ルールある経済社会」をつくる改革をすすめるさいに、「ヨーロッパの主要資本主義諸国や国際条約などの到達点も踏まえ」ることが重要だと指摘している。すなわち、わが党がめざす当面の経済改革は、机上で考え出したプランではない。世界の人民のたたかいを反映して、すでに国際条約の形で確立しているルールや、欧州の主要資本主義諸国ですでに実現しているルールを踏まえて、日本の現状にふさわしい形で具体化しようというものにほかならない。
「ヨーロッパの主要資本主義諸国や国際条約などの到達点」にてらすと、「ルールなき資本主義」といわれる日本の現状がいかに異常かが一目瞭然(りょうぜん)となる。
まず、国際条約の到達点にてらして、日本の現状はどうか。
国際労働機関(ILO)が採択した183の条約(失効5条約をのぞく)のうち、日本が批准しているのは48の条約で、わずか4分の1にすぎない。とりわけ、日本は、1号条約(8時間労働制)をはじめとする18本の労働時間・休暇関係の条約を1本も批准していないが、そうした国は主要な先進資本主義国のなかで、米国と日本だけである。111号(雇用における差別禁止条約)、158号(解雇規制条約)、175号(パートタイム条約)など、焦点となっている一連の条約も未批准である。世界の他の国には見られない「過労死」「派遣村」という現状は、こうした政治の姿勢から生まれているのである。
国連女性差別撤廃条約(1979年に国連総会で採択)は、雇用にかかわる男女平等から、女性の社会進出と家庭の問題を両立させることまで、女性に対するあらゆる差別の撤廃を義務づけた画期的な条約だが、日本はこの条約を形式的に批准しながら、実質的にはまったく実行していない。2009年8月に国連女性差別撤廃委員会から日本政府に出された勧告は、「本条約が、拘束力のある人権関連文書として、また締約国における女性に対するあらゆる形態の差別撤廃及び女性の地位向上の基盤として重視されていない」などと厳しく批判し、条約の完全実施にもとづく差別の是正を強く求めている。
国連の社会権規約委員会からは、公的年金に最低保障が存在しないことへの懸念が表明され、最低保障を取り入れるべきだとの勧告を受けている。国際人権規約の学費無償化条項を留保しているのは、日本とマダガスカルのみであり、日本が世界一の高学費の国となっていることも、恥ずかしいことである。
わが党は、雇用、社会保障、教育、男女平等、人権と民主主義など、あらゆる分野で、国際条約の水準を日本の常識にする改革を、政治の責任ですすめることを求めてたたかう。
欧州の主要国の到達点にてらしても、日本の異常な立ち遅れは深刻である。
欧州連合(EU)は、経済的共同体の関係が発展するにつれて、ヨーロッパに共通する「社会的なルール」づくりを積極的にすすめている。とくに1990年代以降、社会労働政策で共通の基準を確立する動きがすすんでいることは注目される。
残業や変形労働時間を含めて週48時間を超えた労働を禁止した「労働時間指令」、パートタイム労働者とフルタイム労働者の均等待遇を定めた「パートタイム労働指令」、雇用契約期間の定めがある労働は合理的理由がある場合に限定する「有期労働指令」、派遣労働者と正社員との均等待遇を定めた「派遣労働指令」などが、欧州連合の共通のルールとしてつくられている。欧州規模での、労働組合、経営者団体、公共企業体連合の協議がおこなわれ、団体協約が結ばれるという、ルールづくりをすすめる制度的枠組みもつくられている。欧州の経験は、日本の経済の民主的改革をすすめるうえで重要な参考になる。
現下の世界経済危機にさいしても、「社会的ルール」があるかどうかによって、国民に被害があらわれる規模と度合い、その形態は大きく違っている。ヨーロッパ諸国でも、世界経済危機の被害を受け、失業者も出ている。しかし、日本での「派遣村」に象徴されるような、職を失うとともに住居も奪われるという事態は、欧州では生まれていない。労働者のなかで非正規雇用労働者は1割前後であり、失業給付が1年から3年程度保障され、生活扶助も手厚いうえに、住まいに関する権利が国民に広く保障されているからである。「ルールなき資本主義」の国・日本では、経済危機が特別に残酷な形であらわれているのである。
「ルールある経済社会」への転換は、今日の日本の経済と社会が直面している諸問題――貧困と格差の拡大、「使い捨て」労働の広がり、社会保障の劣悪化と将来不安の増大、長時間労働による労働者の健康破壊と家族への多大な犠牲、少子化問題、地域社会の崩壊、環境問題などの解決をはかり、日本社会と経済の健全な発展への大きな道を開くものである。
それは、日本経済が、今日の経済危機から抜け出し、家計・内需主導で安定的に成長するうえでも、最も合理的な方策である。今日の世界経済危機は「金融危機と過剰生産恐慌の結合」という性格をもっているが、日本で起こっていることも「過剰生産恐慌」にほかならない。この10年余で雇用者報酬が大幅に落ち込む一方、大企業の内部留保は急増した。大企業が利益をあげても、勤労者に還元されず、巨額の内部留保として蓄積された。このことが家計・内需を著しくやせ細らせ、日本経済を外需頼みの脆弱(ぜいじゃく)な経済にする結果となった。ここには「ルールなき資本主義」の深刻なゆがみが、象徴的な形で示されている。大企業が蓄積した過度の内部留保を、雇用や中小企業、社会に還元させる政策への転換が必要である。「ルールある経済社会」を築くことは、そのための具体的な方策にほかならない。それはまた、中長期的な視野でみれば、大企業の健全な発展にもつながることを、強調したい。
この改革をすすめるためには、「大企業にたいする民主的規制を主な手段として、その横暴な経済支配をおさえる」(党綱領)ことが必要である。この課題にかかわって、わが党は、この間の大企業による無法な「非正規切り」にさいして、日本経団連や主要な大企業と直接の会談をおこない、雇用への社会的責任を果たすことを求めたが、これらの活動は労働者の生活と権利を守るとともに、わが党が政権を担う党への力量を高めていくプロセスとしても意義あるとりくみである。「国際競争力」を呪文(じゅもん)のように繰り返すことで、自らの社会的責任を逃れようとする大企業・財界の身勝手な論理を打ち破ることは、重要な意義をもつ。わが党は、「大企業に正面からモノが言える党」として、国民とともに「ルールある経済社会」への改革をすすめるために力をつくす。
第三の任務は、日本の政治の反動的な逆行を許さないということである。
「過渡的な情勢」とは、主権者・国民の審判によって、日本の情勢が大きく前に踏み出したという新しい情勢だが、それが今後どういう方向にすすむかは不確定であり、それは国民の世論と運動、政治的な力関係のいかんによって決まってくる。私たちは、このプロセスを逆行させ、「二つの異常」の政治の枠内に閉じ込めようとする動き、そうした動きが現実のものとなる危険性を、決して過小評価してはならない。
とくに、民主党政権において、またこの政権にかかわって、つぎのような民主主義に逆行する一連の問題点があらわれていることは重大である。
民主党は、「脱官僚依存」を名目にして「国会改革」をすすめようとしているが、ここには憲法の民主主義と平和の諸原則にかかわる重大な問題点がある。法律によって「官僚による答弁禁止」を決めることは、国民の代表者である国会と国会議員が行政機構、官僚機構を直接に調査・監督する権能――国会による「国政調査権」「行政監督権」を決定的に弱めるものである。
さらに、民主党の「国会改革」の方針では、内閣法制局長官も官僚だとして、その国会答弁を禁止することに特別の重点をおいている。一方、新政権は、憲法解釈について、内閣法制局長官の過去の答弁にしばられず、「政治主導」で決めていくとの見解を示している。これは解釈改憲を歯止めなくすすめる危険性をはらんでいる。
歴代の内閣法制局長官は、憲法9条についての解釈改憲を積み重ね、憲法違反の自衛隊の海外派兵を合理化する論立てをすすめてきた。しかしそれでも、憲法9条のもとでは、「海外での武力の行使」「武力行使と一体になった活動」などは禁止されているとの一線を超えることはできなかった。民主党の立場は、「国連の決定があれば、武力の行使をおこなうことも、憲法上許される」というものだが、これは解釈改憲を積み重ねてきた内閣法制局であっても、到底踏み込むことが不可能な、特異な憲法解釈である。
民主党がすすめようとしている「官僚答弁の禁止」の真の狙いの一つは、憲法解釈を「政治主導」の名で自由勝手に変え、民主党の特異な憲法解釈をおしつける――これまでの自民党政権ですら違憲としてきた自衛隊の海外での公然たる武力行使を「合憲化」する、きわめて危険なものといわなければならない。
わが党は、国会の「国権の最高機関」としての機能を決定的に弱め、「政治主導」の名で解釈改憲を歯止めなしにすすめようとする動きに、きびしく反対する。
民主党政権がいま、「政治主導」の名ですすめようとしていることの本質は何か。「二大政党づくり」の青写真を体系的に示した2002年10月の経済同友会の提言――「首相のリーダーシップの確立と政策本位の政治の実現を求めて」を読むと、いま民主党政権がすすめようとしていることは、この青写真を驚くほど忠実に実行に移すものになっていることがわかる。経済同友会の「提言」の中心点はつぎの通りである。
――「内閣と与党の一元化推進による首相のリーダーシップの確立」。そのために「与党政策責任者が閣僚を兼ね、……内閣と与党の一層の一元化を推進する」。また、「大臣・副大臣・政務官がチームとして力を発揮するよう首相主導の組閣・人事を徹底する」。
――「政策本位の政治を実現する政治改革」を実現する。そのために「各政党は政権政策(マニフェスト)を示して総選挙を戦う」。「各政党が、詳細な数値目標、達成時期、具体的な財政的裏付け等を明示した政権政策(マニフェスト)を党の方針として世に問い、選挙に勝った政党が政権政策を実行する。その後政権政党が次回選挙までに政策を自己評価するとともに、有権者は現政権の業績評価を行い、同じ政権を継続させるか、政権を交代させるかの意思決定をするという政治のサイクルを確立する」(政権政策〈マニフェスト〉による政治サイクル)。
――「真の政権交代を可能にする『単純小選挙区制』を導入する」。「衆議院議員総選挙とはまさに政権を選択する選挙となるべきであり、与野党とも政権政策(マニフェスト)を示すとともに、次の首相候補及び閣僚候補を明確に示した上で選挙を戦うことが求められる。そのために、真の政権交代を可能にする選挙制度として『単純小選挙区制』の導入を検討してはどうか。『単純小選挙区制』による総選挙は、首相公選的要素を持った政権選択の選挙となる」。
この青写真では、主権者である国民が、その意思を国政に反映する機会は、総選挙だけということになる。総選挙で、「政権政策」(マニフェスト)をもとに、ある政党を選んだら、つぎの総選挙までは「政権政策」の実行は政権を獲得した政党に白紙委任される。そこには、「国権の最高機関」としての国会が、不断に国民の民意に耳を傾けて審議をつくし、一つひとつの政策を決定していくという民主主義のプロセスは存在しない。
総選挙の役割は、「政権選択」と「次の首相」を選ぶということのみに矮小(わいしょう)化される。国民の多様な意思を反映した代表者を選出し、多様な意思を国会に反映するという、議会制民主主義にとって死活的に重要な問題は無視される。こうしたゆがめられた役割に、もっともふさわしい選挙制度として、「単純小選挙区制」が提唱される。
総選挙によって選出された首相は、「内閣と与党の一元化」によって、上意下達の「リーダーシップ」を発揮すべきだとされる。「議院内閣制をとる我が国では、政策決定の権限と責任は、首相を中心とした内閣にある」(経済同友会の「提言」)とされ、首相が政治・行政の最高権限をもつ存在だと規定される。
これらの全体に共通するのは、「国権の最高機関」「唯一の立法機関」としての国会の権限と役割を否定すること、主権者である国民の民意にたえず耳を傾けた民主主義のプロセスを否定することにほかならない。
わが党は、財界の青写真にそってすすめられようとしている強権的国家づくりに強く反対する。日本国憲法に定められた国民主権、議会制民主主義の原則を擁護・発展させるために全力をつくす。
政権についた民主党が、マニフェストに明記している衆院比例定数80削減は、財界が強権的国家づくりの青写真の「要(かなめ)」に位置づけている「単純小選挙区制」にむけての重大な一里塚であり、議会制民主主義破壊の方針である。かりにこれが強行されるならば、民主・自民両党で9割以上の絶対多数の議席を独占し、国民の民意をゆがめる小選挙区制の害悪は、いっそう極端なものとなる。消費税増税反対の声も、憲法9条改定反対の声も、国民多数の声が国会にとどかなくなる。
1994年に、細川政権によって小選挙区・比例代表並立制の導入が強行されたさい、その推進勢力は、小選挙区制は「民意の集約」をはかり「政権の選択」のためのもので、それだけでは国民の多様な民意の反映をはかれないとの理由から、「民意の反映」を「担保」する制度として比例代表を組み合わせるという説明をしたものだった。並立制のもとで、「民意を反映」する唯一の部分である比例代表を大幅に削減することは、自らのかつての言明すら反故(ほご)にし、選挙制度にとって最も重要な民主的原則――「国民の民意を鏡のように反映する」という原則を根底から否定する暴論である。
わが党は、衆院比例定数削減の動きにたいして、それに反対する一点で、あらゆる政党、団体、個人との共同を追求し、国民的大闘争によって、必ずこの反動的くわだてを打ち砕くために全力をあげる。
さらに、わが党は、小選挙区制の撤廃、政党助成金の撤廃、比例代表中心の制度への選挙制度の抜本的改革を要求してたたかう。選挙供託金の国際水準なみへの引き下げ・選挙活動の自由化を強く求める。企業・団体献金の即時禁止を要求する。選挙制度改革にあたっては、定数3〜5の以前の中選挙区制に戻すこともよりましな選択肢となりうる。
民主党政権の直接の問題ではないが、マスメディアのあり方について、問題点を率直に提起したい。この十数年来続いている財界主導の「二大政党づくり」の動きのなかで、マスメディアの大勢は、いっかんしてこの動きを礼賛・推進する異常な役割を果たしてきた。その根本にはどういう仕組みが働いているのか。
「21世紀臨調」という財界人、研究者、報道関係者、一部の知事・市町村長などからなる「運動体」がある。この運動は、その前身にあたる「民間政治臨調」(1992年発足)の時代に、小選挙区制導入に重大な役割を果たし、「21世紀臨調」(1999年発足)に衣替えして以降は、「国のあり方の改革と未完の政治改革とを『車の両輪』と位置づけて活動を進める」、国家改造の「運動体」であることを公然と宣言して活動をおこなってきた。小選挙区制の推進、「政権選択選挙」の推進、「首相を中心とする内閣主導体制」の推進――これらがこの「運動体」がとりくんできたことである。
「21世紀臨調」が発行している「物語で読む21世紀臨調」は、2002年10月に経済同友会が発表した「提言」について、「マニフェストを作成することで政党政治のサイクルを立て直すことを経済界としては初めて明確な形で提言した」ものと高く評価している。強権的国家づくりという点で、両者のめざす方向は同じである。この間、民主党がすすめている「国会改革」にさいしても、「21世紀臨調」の「学者有志」らによる「提言」が、民主党に提示されるなど、この動きのブレーンとしての役割を果たしている。
重大なことは、「21世紀臨調」の中核をなす155人の運営委員の中に、73人にのぼるマスメディア関係者が参加していることである(2009年11月現在)。「物語で読む21世紀臨調」によると、「21世紀臨調」は「何よりも改革実現のための運動体」であり、「(数々の提言を)公表するにとどまらず、マスメディアを通じて日常的な世論形成を行い、……改革を具体化し、実現していくことに最大の力点が置かれた」と、マスメディアを、自分たちに都合のよい世論を形成する手段として利用することを、あからさまに述べている。こうして「二大政党づくり」の大キャンペーンをすすめる仕組みがつくられているのである。
「新聞倫理綱領」では「正確と公正」「独立と寛容」をうたっている。放送法では「政治的に公平であること」「意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」を放送事業者に義務づけている。これらにてらして、財界主導ですすめられている「二大政党づくり」と、強権的国家づくりという、特異な立場を推進する「運動体」に、多くのマスメディア関係者が参加し、「日常的な世論形成」をはかることが許されるか。公正、公平、独立というジャーナリズムの魂を、自ら投げ捨てるものではないか。わが党は、そのことを率直に指摘し、良識あるマスメディア関係者と広く協力するとともに、マスメディアが「社会の公器」としての責務を自覚して、こうしたあり方を見直すことを求める。
情勢の反動的逆行を許さず、日本国憲法に定められた平和と民主主義の諸原則を守り発展させることは、日本共産党の重大な任務である。
国民要求にこたえて現実政治を前に動かす、「二つの異常」をただす改革をめざす国民的合意をつくる、情勢の反動的逆行を許さない――「過渡的な情勢」のもとで、日本共産党はこの三つの任務を果たし、日本の政治が「二つの異常」から抜け出す力を国民の間につくりあげていくために力をつくす。わが党がこの任務をやりとげるならば、日本の政治は「過渡的な情勢」を前向きに抜け出し、おのずと「国民が主人公」の民主的政権――民主連合政府を樹立する条件が開けてくるだろう。
わが党のめざす民主主義的な変革は、「労働者、勤労市民、農漁民、中小企業家、知識人、女性、青年、学生など、独立、民主主義、平和、生活向上を求めるすべての人びとを結集した統一戦線によって、実現される」(党綱領)。
この点で、総選挙が開いた新しい情勢のもとで、わが党の綱領的展望が、広範な国民と響き合う条件が、いよいよ広がっていることは重要である。農協、医師会、歯科医師会、自治体関係者など、従来の保守層のなかに大変動が起こっている。これまで保守基盤の中核をなしてきた団体、業界で、自民党支持を見直し、「全方位」ですべての政党と関係を持つという動きが広がっていることは、歓迎すべき重要な変化である。わが党は、国民のなかで起こっている大きな激動、新しい条件をくみつくし、広い視野にたち、国民的共同――統一戦線運動の新たな発展のための探求を前進させる。
労働運動では、一致する要求を掲げ、ナショナルセンターの違いをこえた共同が、さまざまな分野ですすんでおり、それを発展させることが重要になっている。こうした共同の流れをさらに発展させ、労働者の要求を実現していくうえでも、連合指導部が、特定政党支持路線と労資協調主義路線という二つの重大な弱点を克服できるかどうかが問われている。労働者が要求にもとづく共同行動を前進させるうえで、結成20周年を迎えた全労連が果たす役割は、いよいよ大きくなっており、その発展が強く期待される。
日本共産党が、1980年に提唱した革新懇運動は、2010年で30周年をむかえ、大きく発展しつつある。全国革新懇(「平和・民主・革新の日本をめざす全国の会」)に結集している草の根の革新懇は、地域、職場、青年で、合計801に達し、450万人を擁する組織として成長をつづけている。著名な知識人、文化人、経済人、宗教者をふくめ、各界の保守・無党派の方々を広く結集し、革新懇運動は、いま、新たな発展の段階を迎えようとしている。
革新懇運動の活力、魅力の源泉は、草の根からの国民の要求にもとづく多彩な共同のとりくみをすすめると同時に、「三つの共同目標」――平和・民主主義・生活向上の三つの分野で、日本の政治を大本から変える革新の目標を堂々と掲げ、その目標に賛同する政党、団体、個人を広く結集し、国民多数の合意をつくることを、一貫して運動の大目標にしていることである。こういう国政革新の目標を掲げた統一戦線運動は革新懇運動だけであり、その役割は、総選挙後の新しい情勢の展開のもとでいっそう輝きをましている。わが党は、革新懇運動を、綱領的な任務として重視し、運動の「提唱者」の党として、その発展のためにあらゆる知恵と力をそそぐ。
日本共産党が、高い政治的、理論的な力量をもち、広く国民諸階層と結びつき、強大な組織力をもって発展し、国政と地方政治での政治的比重を高めることは、新しい政治への国民的共同と統一戦線を発展させるための決定的な条件である。私たちは、2010年という節目の年に開かれるこの大会で、2010年代を党躍進の歴史的時代とするために、全力をつくす決意を新たにするものである。
前大会決議では、党綱領の立場を踏まえて、アメリカの動向に複眼で分析をくわえた。当時の第2期ブッシュ政権が、一方で、イラク戦争の泥沼化に象徴される一国覇権主義の孤立と破たんに直面しながら、なおそれに固執をつづけていること、他方で、「軍事力一本やりでは対応できない状況に直面して、米国政府のなかに、国際問題を外交交渉によって解決することを模索する動きがおこっていることは注目される」と指摘した。
さらに、前大会決議では、「戦争と抑圧の国際秩序」に代わって、「国連憲章にもとづく平和の国際秩序」をめざす流れが、地球的規模で豊かで多面的な広がりをみせながら前進していることを明らかにした。
この4年間をふりかえると、世界では、さまざまな曲折や逆行をはらみながらも、全体としては、綱領と大会決定が見通した方向で、平和と社会進歩への激動が進展しつつあることが明りょうである。
それは、日本共産党が日本でとりくんでいる社会変革の事業が世界の本流に立ったものであることを、力強く示すものとなっている。
党綱領の立場を踏まえて、アメリカの動向を事実にそくして複眼でとらえるという見地は、米国に誕生した新政権のもとで、ますます重要となっている。
2008年におこなわれた米国大統領選挙では、イラク戦争に反対するなどブッシュ政権の軍事・外交政策を厳しく批判したバラク・オバマ氏が当選した。わが党は、オバマ政権の発足にあたって、「アメリカ建国以来初の黒人大統領の誕生であり、この歴史的な出来事がアメリカ社会の民主的活力の発揮につながっていくことを期待している」と表明するとともに、アメリカが直面している諸困難・諸矛盾は、すべて、アメリカ一国の利害を優先させた政策的誤りの累積と結びついていることを指摘し、新大統領が、どのような方向でそこからの転換をはかるかを注視してきた。さらに日米関係では、旧来の支配と従属の関係を脱却し、対等・平等の日米関係への転換をはかることを提起したいと表明した。発足から1年たったオバマ政権の軍事・外交戦略は、なおその全体像が明らかになっているとはいえないが、つぎのことは事実として確認できる。
一方で、ブッシュ前政権がすすめてきた一国覇権主義が深刻な破たんに陥り、国連を無視した単独行動主義からの一定の転換が生まれつつある。オバマ政権は、イラク戦争の誤りを認め、米国・イラク間で結ばれた協定にもとづいて米軍の撤退をすすめている。
核兵器廃絶という国際政治の重要な課題で、前向きの変化が生まれつつある。オバマ米大統領は、2009年4月のチェコの首都プラハでの演説で、米国大統領として歴史上初めて、「核兵器のない世界」を追求することを米国の国家目標とすること、広島・長崎への原爆投下が人類的道義にかかわる問題であることを表明し、その立場から核兵器廃絶にむけて行動する責任を表明した。オバマ大統領は、2009年9月に開催された国連安全保障理事会の首脳級特別会合で「核兵器のない世界のための条件を築くことを決意」すると明記した決議を採択するうえでも積極的役割を果たした。核兵器問題でのオバマ政権の一連の行動は、問題点や限界をはらみつつも、全体として歓迎すべき前向きの変化である。
米国に前向きの変化を促した根本の力は、平和を願う世界諸国民の世論と運動であり、とりわけ核兵器問題での変化は、被爆者を先頭にした被爆国・日本での長年の核兵器廃絶をめざすたたかいが重要な役割を果たしたことを、強調したい。
同時に、米国の軍事的覇権主義への固執には根深いものがある。オバマ政権のもとで、2010年の早い時期にアフガニスタン駐留米軍は3倍化され、約10万人にまで膨張する動きになっている。しかし、アフガニスタンの情勢は、いっそうの泥沼化の様相を深めている。外国軍の存在自体が住民の反発を招き、無差別の軍事掃討作戦によって住民の犠牲が拡大し、それらが報復テロをひきおこすという悪循環をもたらし、反政府勢力タリバンの活動は拡大している。さらに、オバマ政権は、パキスタン領内への無人機による越境爆撃を拡大し、パキスタン政府にタリバン支持勢力への軍事攻撃を求めて圧力をくわえている。これらは、パキスタン国内から内政干渉との反発をよんでいるだけでなく、報復テロを主要都市に拡大させ、パキスタン情勢をいっそう不安定化させている。
わが党は、アフガニスタンへの軍事的介入を強化するオバマ政権の動きに、きびしく反対する。アフガニスタン・パキスタン問題の解決のためには、軍事的報復の道から政治的和平への転換が強く求められる。
日米関係においても、米国政府には、これまでの覇権主義的な対日支配を変更する姿勢は見られない。その一つの要因として、日本側に、これまでの卑屈な従属的態度を変え、本腰を入れて対等・平等な日米関係を求める根本的転換の姿勢がみられないことがあげられる。同時に、米国が、オバマ政権のもとでも、地球的規模での軍事的介入と干渉のための「米軍再編」をすすめ、日本をその最大の戦略拠点と位置づける基本政策を変えていない現実を指摘しなくてはならない。オバマ大統領は、「日米関係は対等なパートナー」とのべたが、この言葉が真実のものであるならば、異常な従属的な関係はすみやかに正されるべきである。文字通りの対等・平等の関係をつくりあげてこそ、日米両国、日米両国民の間に、真に心が通った友好関係が築かれるというのが、私たちの確固とした信念である。
わが党は、世界の平和と進歩の世論とたたかいのもとで、米国に起こった前向きの変化に対しては、これを歓迎し促進するという態度をとる。同時に、覇権主義のさまざまなあらわれに対しては、きびしく批判し、その根本的転換を求めていく。
破たんが明りょうとなった一国覇権主義の世界支配に代わって、国連憲章にもとづく平和の国際秩序をめざす動きが大きく発展しつつある。世界の各地で、その担い手として、平和の地域共同体が全体として豊かな広がりを見せていることは重要である。
アジアでは、東南アジア諸国連合(ASEAN)憲章の発効(08年12月)とASEAN共同体の創設にむけての前進、東南アジア友好協力条約(TAC)の大きな広がりなど、地域の平和共同体のひきつづく前進がみられる。TACは、EU(欧州連合)と米国の加入によって、加入国は52カ国、人口の合計で世界人口の68%に達することになり、ユーラシア大陸の多くの国々、オセアニア諸国、米国を含め、世界を覆う一大潮流に発展している。SCO(上海協力機構)、CICA(アジア相互協力・信頼醸成措置会議)など、何層にもなる多様な地域共同の枠組みがつくられていることも注目される。
民主的変革が面を覆って広がるラテンアメリカで起こっている変化は、劇的である。南米諸国連合(UNASUR)の正式発足(2008年5月)に続き、2010年には、南米・中米・カリブ海の33のすべての国ぐにで構成される「中南米・カリブ諸国機構」発足にむけた首脳会議が開催される。この機構発足にむけた首脳会議の宣言には、各国の政治体制を問わず、紛争の平和解決、領土保全の尊重など、国連憲章の諸原則を尊重し、「公正で、平等で、調和のとれた国際秩序を構築する」ことが高らかにうたわれている。
中南米における平和共同体の動きは、この地域の平和と安定のための機能を発揮しつつあることが重要である。この間起こったコロンビア政府軍による隣国エクアドルへの越境攻撃問題や領土問題をめぐり73年間も続いたパラグアイ・ボリビア紛争を平和的に解決するうえでも、ラテンアメリカにおける地域の平和共同体が現実に大きな役割を発揮している。それは、地域の集団安全保障の機構へと、質的に重要な前進をつくりつつある。
こうした動きが起こるなかで、これまで米国の中南米支配の道具とされてきた米州機構(OAS)総会(2009年4月)で、中南米諸国の一致した要求のもと、過去のキューバ排除決議を無効にする決議が、米国もふくめ全会一致で採択された。この排除決議は1962年に、「マルクス・レーニン主義を支持することは米州システムと両立しない」ことを理由におこなわれたものだったが、それが半世紀ぶりに無効とされたことは、南北アメリカ大陸で起こっている巨大な変化を象徴している。国連総会でも、キューバへの経済封鎖に反対する決議は、アメリカ、イスラエル、パラオの3カ国のみが反対で、加盟国187カ国が賛成するという空前の表決で採択された。
これらの世界の動きは、党綱領に明記された「国連憲章に規定された平和の国際秩序を擁護し、この秩序を侵犯・破壊するいかなる覇権主義的な企てにも反対する」という立場が、世界の圧倒的な大勢となりつつあることを示している。
世界でいま、新しい国際経済秩序を求める動きが進行している。
2008年以後深刻化した世界経済危機は、従来の世界の経済秩序のあり方が、世界の構造変化とあわなくなったことを、誰の目にも明らかにするものとなった。それは、一握りの発達した資本主義国だけでなく、新興国や途上国も対等の権利をもって参加する、公正で民主的な国際経済秩序への流れを大きく加速させた。
米国・ピッツバーグで、2009年9月に行われた「G20」首脳会議では、「G20を国際経済協力の第一の協議体として指定し」、その定例化を決定した。この首脳会議声明は、「G8」サミット(主要国首脳会議)に代表される旧来の経済秩序のあり方では、直面する金融・経済危機には対応不能だという現実を証明するものとなった。
さらに、ピッツバーグ・サミットで採択された文書「持続可能な経済活動のための中核的価値」では、「経済発展および繁栄には異なるアプローチがあること、また、これらの目標に到達するための戦略は、各国の状況によって異なりうることを認識する」と明記している。こうした内容に「G20」の文書として初めて言及したことは、「G20」ではさまざまな「異なるアプローチ」で経済発展をすすめている新興国、途上国が重要な位置を占めているだけに、注目される。
世界経済危機によって、アメリカ政府が、IMF(国際通貨基金)、世界銀行などとともに、「ワシントン・コンセンサス(合意)」として世界におしつけてきた新自由主義は、世界各国からの激しい批判の的となり、重大な打撃をこうむった。この路線の破たんは、ブラウン英首相の「ワシントン・コンセンサスは終わった」、オバマ米大統領の「市場が脱線する危険性について人為的な無頓着さがあった」などの発言にみられるように、主要国の当事者が認めるにいたった。
さらに、「G20」の限界もすでに指摘されていることは注目される。デスコト国連総会議長のイニシアチブで設置された専門家委員会の2009年の報告(「スティグリッツ国連報告」)は、「G20」のイニシアチブを評価しつつも、「グローバルな制度的取り決めに関する必要な改革についての決定」ができるのは、「幅広い合法性を備えている唯一の機関」である国連のほかにはないと言い切り、国連加盟国のすべてが参加する「G192」の枠組みを主張している。
米国政府・IMF・世界銀行が「司令塔」となり、「G8」を主要な舞台として、世界全体を支配してきた古い経済秩序が、世界経済危機のなかで、矛盾を表面化させ、いま壊れつつある。そして、世界は、古い経済秩序に終止符を打ち、それに代わる新しい民主的な国際経済秩序に本格的にすすもうとしている。
党綱領は、「一部の大国の経済的覇権主義をおさえ、すべての国の経済主権の尊重および平等・公平を基礎とする民主的な国際経済秩序の確立をめざす」ことを明記しているが、そのことが、国際政治において、現実の日程にのぼってきている。
この間、「核兵器のない世界」をめざす国際政治に大きな進展がおこった。2009年4月のオバマ米大統領のプラハでの「核兵器のない世界」をめざす演説につづき、09年9月には国連安全保障理事会で、核軍縮・不拡散をテーマとした初の首脳級特別会合が開催された。この会合で核保有5カ国を含む全会一致で採択された決議は、その前文で「核兵器のない世界のための条件を築くことを決意」すると明記するとともに、核不拡散条約(NPT)第6条にしたがって、核軍備の削減と撤廃にむけた誠実な交渉をおこなうことをよびかけるものとなった。同時に、決議は、その前文で、「自国核兵器の完全廃絶を達成するという全核保有国の明確な約束」を合意した、2000年のNPT再検討会議について、その「成果を想起する」ことが明記された。
こうして、「核兵器のない世界」の追求は、いまや核保有国も含めた世界の圧倒的世論となっている。いま問われているのは、どうすれば人類はこの目標に到達できるかということである。核兵器廃絶を現実のものとするうえで、二つの核心をなす問題がある。
第一は、核軍縮の個々の部分的措置を前進させることと一体に、核兵器廃絶そのものを主題とした国際交渉をすみやかに開始することである。
いまとりくまれている米ロ間の新しい戦略核兵器削減条約の交渉開始、包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准・発効、兵器用核分裂物質の製造を禁止する条約(カットオフ条約)、世界各地での非核地帯条約など、核軍縮の個々の部分的措置のそれぞれが積極的意義をもつことはいうまでもない。
同時に、そうした部分的措置の積み重ねだけでは、「核兵器のない世界」に到達できないことは、戦後の核問題をめぐる外交の全歴史が証明している。核軍縮の部分的措置と一体に、核兵器廃絶の国際交渉を開始してこそ、「核兵器のない世界」への道は開かれる。核兵器廃絶の国際交渉に踏み出すことは、個々の部分的措置をすすめるうえでも最良の力となる。
この点で、2010年5月におこなわれるNPT再検討会議は重要な意義をもつ。2000年のNPT再検討会議では、「自国の核兵器廃絶を達成するという全核保有国の明確な約束」を含む13項目の「実際的措置」を合意したが、それには「いかなる国の安全も損なわない」ことが前提とされながらも、「適切な限り早期における、自国核兵器の完全廃絶にいたるプロセスへのすべての核保有国の参加」が含まれている。2010年のNPT再検討会議で、この合意を再確認し、すべての核保有国が、核兵器廃絶への現実的プロセスに参加し、その第一歩を踏み出すことを、強く求める。
第二は、「核抑止力」論から脱却することである。「核抑止」とは、いざとなれば核兵器を使うという脅しによって、自らの「安全」を守ろうという考えであり、それは核使用が前提となって初めて成り立つ論理である。「核の傘」=「拡大抑止」は、他の国の核兵器の脅しによって、自らの「安全」を守ろうという考えだが、自国の核であれ、他国の核であれ、核による脅しに頼り、核使用を前提とする点では、少しも変わりがない。「核抑止力」論、「核の傘」論こそ、「核兵器のない世界」への最大の障害であり、国際社会が、とりわけ被爆国・日本が、この誤った考えから抜け出すことが強く求められる。
もはや「核抑止力」論とは決別すべきだという声が、国際社会からも強くあがっている。国連の潘基文(パン・ギムン)事務総長は、2009年9月に開かれた国連NGO年次総会でのあいさつで、「核兵器は道義に反するものであり、いかなる軍事的価値も与えられるべきではない」と強調するとともに、「核抑止論は明らかな誤りであるどころか、核兵器が安全保障と究極の防衛を提供するという考えを国から国へと広め、連鎖的な伝播(でんぱ)をも引き起こすものであることを、世界の指導者は認識しなければなりません」とのべた。
元米国務長官のジョージ・シュルツ氏は、「核兵器は非道徳だ。現代の世界にあって一体誰が核兵器のボタンを押せるだろうか。何十万、何百万という人が死ぬとわかっている核兵器を落とせるわけがない。文明国の指導者なら核は使えないのだ。使えなければ抑止力にならない」とのべている。
核兵器は、「道義に反する」「非道徳」なものであり、21世紀の世界においては、文明国ならば使用できない非人道的兵器であり、使用できなければ「抑止力」にならない。また、ある国が「核抑止」によって自らの安全を守ろうとすれば、核で脅された側も同じ論理で核兵器を持とうとし、核保有の「連鎖的な伝播」――歯止めない核拡散を招く。ここには「核抑止力」論の本質を突く、痛烈な批判が示されている。
日本共産党は、党綱領に「人類の死活にかかわる核戦争の防止と核兵器の廃絶」を明記している党として、あらゆる機会をとらえて、「核兵器のない世界」を現実のものとするために、奮闘してきた。2009年4月にはオバマ米大統領にあてて、核兵器廃絶にむけた具体的行動を要請する書簡を送った。同年9月にカザフスタンの首都・アスタナで開かれた第5回アジア政党国際会議では、アスタナ宣言に「核兵器のない世界を目標とする」という内容を盛り込むために、力をつくした。
原水爆禁止世界大会は、各国政府と国連の代表、海外代表も広く参加して、年ごとに発展しつつある。わが党は、この運動に連帯し、被爆国・日本から核兵器廃絶の圧倒的世論を広げるために奮闘する。また、国際政治の舞台でも、この流れを強めるために、ひきつづき知恵と力をつくす。
2009年12月にデンマークのコペンハーゲンで開催された国連気候変動枠組条約第15回締約国会議(COP15)での合意は、途上国への資金援助がともかくも盛られたのは積極面だが、世界全体で2050年までに温室効果ガスを50%削減することも、そのために先進国が掲げるべき積極的な中長期の削減目標の数字も、いっさい明記されない不十分な内容となった。
今後の取り組みとして以下の諸点が重要である。
第一に、地球温暖化に歴史的責任を負っている先進国が、条約に定められた「共通だが差異ある責任」の原則にたって、(1)率先して野心的な中長期の法的拘束力のある削減目標を掲げ、他の国はどうあれ、それをみずからの責任として実行する、(2)途上国にたいして、同じ道をたどらなくても経済成長は可能であることを示し、それにふさわしい技術・資金援助をおこなう、という「二重の責任」を果たすことである。
第二に、人類共通の課題であるだけに、途上国の側もふさわしい努力が求められる。そのさい先進国並みの発展水準を達成する途上国の“発展権”を保障することは、当然必要である。途上国が、温暖化ガスを大量排出しながら経済発展をとげてきた先進国とは違う、削減しながらの発展の道を開くことができるよう、先進国による途上国支援の拡大強化が不可欠である。こうした先進国の努力を前提として、途上国としても、国際的な拘束力のある枠組みに積極的にくわわることが期待される。
第三に、日本政府は、国連で約束した2020年までに25%削減という中期削減目標について、他の国がどうであれ前提なしに責任を負う態度を確立するとともに、産業界との公的協定など、その裏付けとなる総合的な対策をもって、この問題にとりくむことが、強く求められる。
2010年10月には、生物多様性条約第10回締約国会議が名古屋で開かれる。温暖化の進行は希少生物を絶滅の危機に追い込んでいる。生物の多様性の維持のためにも温暖化の抑制は不可欠であり、議長国としての日本政府の役割は重要である。
日本共産党の野党外交は、前大会以降の4年間に、地域的にも、内容的にも大きく発展した。中国、韓国、ベトナム、南アジア、中央アジア、中東、ラテンアメリカ、ヨーロッパ、アフリカの諸国、イスラム世界などとの交流が、新たに発展した。核兵器問題での米国大統領との書簡のやりとりを通じて、米国政府との公式の話し合いのルートがつくられた。
前大会以降、わが党代表団は、第4回アジア政党国際会議(韓国・ソウル)、第5回同会議(カザフスタン・アスタナ)に出席し、会議の成功のために奮闘した。第14回、第15回非同盟諸国首脳会議にオブザーバーとして参加した。
野党外交のなかで、党綱領と世界の流れとの響きあいが、強く実感された。侵略戦争と植民地支配の反省を踏まえて真の友好関係をつくること、国連憲章にもとづく平和の国際秩序をめざすこと、地球的規模での核兵器廃絶の追求、「ルールある経済社会」をめざすことなど、党綱領の立場が、世界各国との交流のなかで生きた力を発揮した。侵略戦争に反対し、自主独立をつらぬいた党の歴史の生命力も、交流を通じて実感された。また、世界各国との交流は、世界にたいする私たちの認識をより豊かなものとした。
とりわけ強調したいのは、党綱領に明記している「社会制度の異なる諸国の平和共存および異なる価値観をもった諸文明間の対話と共存の関係の確立に力をつくす」ことの重要性である。これはイスラム世界、キリスト教、仏教など、異なる価値観をもった諸文明間の交流において重要であるだけではない。世界のそれぞれの国には、それぞれなりの発展の歴史があり、発展の仕方も、その到達点も、社会制度や価値観もさまざまである。特定のものさしや、一断面だけで、その国を判断するのではなく、その国の発展の内的論理、発展の過程をよく理解し、それを相互に尊重しあい、誠実な対話をつうじ相互理解と協力をはかっていくという姿勢が重要である。わが党は、どの国の政府、政党との交流にさいしても、こうした姿勢を堅持して、野党外交を引き続き発展させる。
この間、わが党と、中国共産党、ベトナム共産党との間で、理論交流が大きく発展した。これは外国の党との交流関係の新しい形態であり、中国共産党もベトナム共産党も、その意義を高く評価しており、継続と発展の意欲を表明している。どちらの党も、今後とも国際的に重要な役割を果たす政権党であり、両党と理論面で深い交流をおこなうことは、日本共産党にとっても重要な意義をもっている。
これまでの理論交流で、先方の問題提起にこたえるなかで、わが党自身の理論をより発展させる必要に迫られ、実り豊かな成果を築いてきた。それぞれの国の共産党は、科学的社会主義(マルクス主義)のとらえ方の点でも、独自の歴史と特質をもっている。理論交流は、独自の歴史と特質をもったものが、共通の世界的な諸問題へのとりくみを通じて、双方の見地を接近させていく形態としても、独特の意義をもちうる。わが党はこのとりくみを引き続き発展させる努力をはらう。
6カ月後に迫った参議院選挙で、日本共産党が躍進に転じることは、日本の政治にとっても、わが党自身の今後の発展を考えても、きわめて重要な意義をもつ。「過渡的な情勢」のもとでたたかわれる参議院選挙での党躍進の条件と政治的意義を三つの角度から強調したい。
第一に、この選挙は、民主党を中心とする新政権のもとでの最初の国政選挙であり、まったく新しい政党配置のもとでたたかわれる。すなわち新政権を構成する与党3党(民主党、社民党、国民新党)、国民から退場の審判がくだった自民党と公明党、「建設的野党」としての日本共産党が、それぞれ真価を試される。
民主党は、さきの総選挙では「政権交代」を訴えれば勝利できた。また、これまでは、野党第1党が民主党、第2党が日本共産党という配置のもとで、「民主党には問題があっても、自民党よりもまし」という形で、自民党への批判や不満から民主党に支持が集中する状況があった。しかし参院選ではそうはいかない。政権党としての1年近くの「実績」が問われ、今後政権党としてどういう政治をおこなうかの「中身」が問われる。自民党と公明党は、国民からあれだけきびしい審判を受けた以上、自らのこれまでの政治に対する総括と反省が問われる。それ抜きにはどんな政策を掲げても信頼をえることはできないだろう。そういう政党配置のもとで、「建設的野党」としての日本共産党の値打ちを広く浮き彫りにできる新しい条件が生まれてくる選挙となる。
第二に、この選挙は、新しい政治を求める国民の探求が、新政権のもとでの約1年間の体験をつうじて、前進・発展するなかでの選挙となる。旧来の自民党支持基盤が大規模に崩れ、これまで保守と呼ばれてきた人びとが、自らの切実な要求をたくすことができるのはどの党かを、探求しているさなかのたたかいとなる。
この間、JA全中(全国農業協同組合中央会)全国大会、全国森林組合大会にわが党代表が初めて招待され、そこでのあいさつに共感が寄せられた。さまざまな団体が自民党支持の枠組みから自由になって、すべての政党の政策を自由に比較してみたら、わが党の政策が要求に一番ぴったりするという状況が生まれている。総選挙で民主党に投票した人びとも、その大部分は、旧来の政治を変えたいという模索の第一歩としての支持であり、この人びとも自らの体験をつうじて、その認識を前進・発展させていくプロセスのさなかにある。
こうした政党支持基盤の流動化と激変のもとで、たたかいいかんでは、これまでの他党支持者、無党派層のなかで、日本共産党の支持を大規模に獲得し、政党間の力関係を大きく前向きに変える選挙にしていく条件が大きく広がっている。
第三に、この間の数回にわたる国政選挙で、わが党が、「二大政党づくり」の厳しい情勢のもとで陣地を持ちこたえてきたことは全党の奮闘の重要な成果だが、もちろん、私たちは、衆議院選挙で連続3回とも9議席、衆参とも400万票台という得票にとどまるわけにはいかない。陣地を持ちこたえてきた状況から、何としても前進・躍進へと転じる選挙にしていく必要がある。
日本共産党の勝利は、国民の新しい政治への探求のプロセスをさらに促進し、「過渡的な情勢」を前にすすめる最大の力となる。わが党は、きたるべき参議院選挙で必ず前進・躍進をかちとるために、後援会員、支持者の協力を得て、全力をあげて奮闘する。
参議院選挙では、「比例を軸に」をつらぬき、「全国は一つ」の立場で奮闘し、比例代表選挙で650万票以上の得票を獲得して5議席を絶対確保することを目標とする。比例代表選挙では、「日本共産党」と党名での投票をよびかけることを基本にする。全国どこの党組織も、5人の全員当選に共同して責任を負っていること、この目標を全党の一致結束した力で達成することを、全党の共通の強い自覚にすることが大切である。
選挙区選挙では、全選挙区で候補者を擁立・勝利をめざし、東京選挙区で議席を絶対確保することを目標とする。かつて議席をもったことのある北海道、埼玉県、神奈川県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県で、積極的に議席獲得への挑戦をおこなう。選挙区のたたかいも、政党選択――比例代表選挙を中心にすえるという立場を堅持し、比例で日本共産党躍進の波をつくりだすなかで、選挙区での勝利をめざすというとりくみが重要である。
すべての党組織と党支部で、「650万票以上」にみあう得票目標とそれを達成する方針をもち、自覚的な活動にとりくむ。参議院選挙をたたかう活動方針の基本は、支部の「政策と計画」のなかに得票目標をしっかりと位置づけて、「四つの原点」にもとづく活動を「支部が主役」でとりくむことにある。とくにつぎの諸点に留意して、選挙勝利をめざすとりくみをすすめる。
――結びつきと要求にもとづく活動を、「四つの原点」のなかでも根本の課題として重視する。党員の持つあらゆる日常的な「結びつき」に光をあて、つねに新しい結びつきを広げ、それを生かした活動を思い切って強める。国民の暮らしの「SOS」を受け止め、苦難軽減のために献身する活動にとりくむ。生活相談、労働相談、アンケート、署名などの多面的な活動をすすめる。
――大量宣伝、対話と支持拡大を、今日の情勢にふさわしく発展させる。「草の根」の宣伝力を抜本的に強め、日常化する。とくに若い世代の心にとどく宣伝を重視する。つじつじでの系統的なハンドマイク宣伝、職場門前、大学門前宣伝や地域・職場での政治新聞の定期的発行を強化する。インターネットの活用を重視し、とりくみを抜本的に強化し、双方向型での情報発信をおこなう。
対話と支持拡大では、「対話の広がりいかんが勝敗を分ける」という立場で、支持拡大とともに、対話の広がりを思い切って重視する。対話は、「相手の政治への思いと要望を聞く」「共産党のここが好きという気持ちを伝える」という見地でとりくめば、だれにでもできる活動である。気軽に、楽しく、みんながとりくむ運動として、有権者の過半数と対話することを目標に、広大な規模でとりくむ。
――党員拡大と「しんぶん赤旗」読者拡大の大きな高揚のなかで選挙をたたかう。この数回の選挙で、私たちは、「実力が足りなかった」ということを、教訓の根本としてひきだした。それを参議院選挙では絶対に繰り返さない。党員拡大の飛躍とともに、読者拡大では前回参院選時比3割増に正面から挑戦する。新しい情勢のもとで生まれている党躍進の条件、チャンスを現実のものにするには、党勢拡大の大きな上げ潮で選挙をたたかうことが、不可欠である。それは容易ではない仕事だが、他に安易な道はない。
――選挙の日常化の要として後援会活動の強化をはかる。380万人を超えた後援会員との日常的結びつきと協力関係のネットワークを築く。後援会ニュースを活用し、得票目標にみあう後援会員の拡大にとりくむ。地域支部の28%、職場支部の66%が対応する単位後援会を持っていない現状を抜本的に打開する。地域・職場・学園のすべての支部が、対応する単位後援会を確立する。共通する要求で活動を大きく広げることのできる分野別後援会を強める。
――支部を基礎とした「綱領を語り、日本の前途を語り合う大運動」「集い」を、参議院選挙にむけ、100万人の規模でおこなう。参議院選挙勝利にむけた活動の全体を推進する「軸」として、この活動を位置づける。「集い」は、総選挙にむけた活動でも大きな力を発揮したが、総選挙が開いた新しい情勢のもとで、多くの国民が政治への関心を高め、新しい政治への探求を強めており、この活動はいよいよ重要である。
2011年4月のいっせい地方選挙の政治目標と候補者決定をいそぎ、地方議員と予定候補者が参議院選挙を一体にたたかう態勢をつくる。
市町村合併のおしつけなどによる大幅な議員定数削減のなかで、この間の地方選挙では議席占有率を目標と結果をはかる基準にしてきたが、いっせい地方選挙とこれからの中間地方選挙では、議席増そのものを重視する。それぞれの選挙で議席占有率、議案提出権、空白克服の三つの目標での前進をめざし、適切な議席獲得目標と積極的な得票目標を掲げて奮闘する。
いっせい地方選では、道府県議、政令市・区議、県庁所在地、主要な地方都市をとくに重視し、ここでの政党間の力関係を変えるとりくみが重要である。現有議席の絶対確保と前進とともに、四つの県(群馬、福井、愛知、熊本)での県議空白克服、県議空白の政令市(18政令市中10市)での空白克服、前回選挙で議席を後退させたところの失地回復などを、とりわけ重視してとりくむ。
自公政権退場という新しい政治情勢のもとで、地方政治でも激変が起こりつつある。旧来の自民党支配の重しがとれ、地方議会で住民の利益にたった意見書・決議が次々と採択されている。自治体首長との間でも、保守支配のくびきから解放され、対話やさまざまな協力関係が生まれている。地方政治で起こっている住民要求実現にむけた新たな条件をとらえ、共同の流れを大きくし、「住民福祉の機関」としての地方自治体を確立するたたかいに、新鮮な意気込みでとりくむ。
地方政治での「オール与党」政治の矛盾が激しくなり、その崩壊過程がはじまっている。多くの県(現在30府県)では依然として「オール与党」政治が継続しているが、自公政権退場の審判がくだったもとで、住民との矛盾が激化している。民主党は、国政では「無駄を一掃する」「国民の生活が第一」といいながら、地方議会では、無駄なダムなどの大型開発に賛成したり、福祉切り捨ての「地方行革」に賛成するなどの状況は、多くのところで変わっておらず、深刻な矛盾のもとにある。
わが党は、「オール与党」によって推進されてきた住民生活切り捨ての「逆立ち」政治を転換し、地方自治の再生を掲げる日本共産党の値打ちを浮き彫りにし、一つひとつの地方選挙で確実に勝利・前進するために力をつくす。そのさい、地方選挙における選挙戦の様相の激しさと厳しさを直視することが重要である。民主党は、地方での政治的地歩を広げるために、各地で大量に立候補者を増やす動きを強めている。自民党と公明党は、生き残りのために、必死のとりくみを展開している。一つひとつの選挙戦の勝利は、早くから候補者を決め、日常的な選挙準備に系統的にとりくみ、他党に負けない構えを確立し、やるべきことをやりぬいてこそ、可能になる。
首長選挙では、日本共産党と無党派の人びとなどとの共同で築かれている革新・民主の自治体の流れを発展させるために、努力をはらう。
直面する参議院選挙勝利のために全力をつくすとともに、全国すべての地方党機関、地域、職場、学園の党支部が、国政選挙での政治的力関係を抜本的に変える「成長・発展目標」をもつという、新しい提案をおこなう。
綱領実現をめざし、中期的展望にたって、それぞれの党組織が、つぎのような「成長・発展目標」をもち、その実現のために系統的に奮闘する。
「成長・発展目標」の基本は、国政選挙で、どの都道府県、どの自治体・行政区でも、「10%以上の得票率」を獲得できる党をめざすということである。そのさい、すすんだ都道府県、党組織では20%から30%以上の得票率をめざす。早期に5%以下の県をなくすことも重要である。
「10%以上の得票率」という目標は、党組織によっては、すでにそれを超える得票率を獲得しているところもある。党組織によっては、直面する参院選での「650万票以上」にみあう得票目標が、「10%以上の得票率」となるところもある。同時に、この目標は、多くの党組織にとっては、何回かの国政選挙での奮闘の積み重ねによって、その達成が可能になる目標である。到達点はまちまちだが、全国どの都道府県、どの自治体・行政区でも、綱領実現をめざすならば、越えるべきハードルとして、「10%以上の得票率」という「成長・発展目標」を持ち、この水準を突破しようというのが、この提案である。
さきの総選挙の比例代表選挙で「10%以上の得票率」をえた自治体・行政区は、3府県(京都、高知、大阪)、政令市の44の区、東京の9特別区、45一般市、56町村、合計157自治体・行政区にとどまっている(全自治体・行政区の7・87%)。
得票率が5%以下の自治体・行政区は、12県、政令市の6区、278一般市、526町村、合計822自治体・行政区ある(全自治体・行政区の41・22%)。
この現状にてらすならば、どの都道府県、自治体・行政区でも「10%以上の得票率」の実現をめざすという目標は、文字通り政治的力関係を抜本的に変える大志ある目標である。どの党組織も「10%以上の得票率」をめざすということは、衆議院選挙の小選挙区で、財政的な心配もなく、全区で候補者を擁立してたたかう力をつけるということである。またそれは、国政選挙で過去最高の得票をめざすということである。比例代表選挙で820万票を得た1998年の参院選で、わが党は全国平均で14・6%の得票率を獲得し、37都道府県で10%を超える得票率を記録している。全国どの自治体・行政区でも「10%以上の得票率」を実現するならば、全国平均では20%に迫る得票率、1000万票を超える得票を獲得することになるだろう。それは、政党間の力関係を変え、多くのところで第3党の地歩を確保し、すすんだところでは第1党、第2党の地歩を得ることになるだろう。そして、この目標の実現は、日本政治が現在の「過渡的な情勢」から前向きに抜け出す方向にすすむうえで、決定的な力となるだろう。
2010年代の最初の年に開く党大会において、全党がこの大志ある「成長・発展目標」をもち、その実現をめざして系統的なとりくみをすすめ、2010年代を党躍進の歴史的時期とすることを提案する。当面する参議院選挙での、比例代表選挙での「650万票以上」という目標を、その第一歩として位置づけ、その達成に全力をあげよう。
この目標を実現するために、どれだけの党員、「しんぶん赤旗」読者の陣地を築くかの目標を、有権者比でもち、その実現をめざして奮闘する。さきの総選挙の実績をみると、10%を超える得票率を得た党組織は、どこも、おおよそ有権者比で0・5%以上の党員と日刊紙読者、2%以上の日曜版読者をもっていた。得票率での抜本的な前進のためには、それにふさわしく党員、読者を大幅に拡大する、意欲的、計画的な努力と奮闘が絶対に必要である。同時に、すべての党員が条件にそくして党活動に参加する強く温かい党づくりをめざして、綱領学習・綱領読了をすすめること、「党生活確立の3原則」――支部会議に参加する、「しんぶん赤旗」日刊紙を読む、党費を納める――で大きな前進をはかる目標もあわせて持つことが必要である。
このとりくみのなかで、それぞれの世代の活力を生かしながら、新しい世代への党活動の継承を着実にはかるとりくみに、思い切って力をそそぐ。年配の党員の多くが、これまで蓄積してきた党活動の経験、長い人生経験を生かして、元気に活動し、大きな役割を担っていることは、わが党のかけがえのない財産である。同時に、わが党の年齢構成をみるさい、若い世代、働き盛りの世代を党に迎え入れ、党活動の世代的継承をはかることは、きわめて重要である。そのため、とくに職場支部の活動強化と若い世代の結集、青年・学生支部の結成と強化、民青同盟地区委員会の再建・発展を全党的に位置づけ、計画と方針をもち、ゆるがず推進する。
次期総選挙にむけて、それぞれの衆院比例ブロックでの力関係を変え議席増を確実に実現する政治戦略をもち、それにもとづく系統的な活動にとりくむ。同時に、中期的展望にたって、日常的・系統的な活動で、小選挙区で勝利する選挙区を全国各地でつくりだすことを、「成長・発展目標」のなかに位置づける。
総選挙がつくりだした「過渡的な情勢」をさらに前向きに前進させ、日本の政治が「二つの異常」から抜け出す力を国民の間につくりあげていくうえで、日本共産党が、国民と広く結びつき、理論的にも組織的にも強大な党に成長することは、決定的な条件となる。私たちは、2010年代を、党建設の面でも、歴史的前進を党史に刻む時代とするために、全力をつくす。
党建設の方針については、第22回党大会での党規約改定をふまえ、この間の3回の党大会(第22回大会、第23回大会、第24回大会)で、その基本を全面的に明らかにしている。それを前提として、つぎの諸点を強調したい。
前大会以降、「支部が主役」の党づくりという点では、支部を基礎とした国民要求にこたえた多面的な活動の発展、7割の支部でとりくまれた「大運動」「集い」、2回にわたる「職場問題学習・交流講座」にもとづく職場支部の活動強化、支部を基礎にした党員拡大が継続的な前進の軌道にのりつつあることなど、さまざまな分野で貴重な前進の端緒がつくられた。この間、「政策と計画」をもった支部は52%から82%へと前進した。
同時に、この努力は道半ばである。9中総決定で総括したように、総選挙で立ち上がった党員がのべで5〜6割、日々の活動参加が選挙本番で2割前後だったが、この根本の原因は日常平素の「支部が主役」の党づくりの努力が、道半ばであることにあった。
「大運動」「集い」のとりくみの発展、支部と党員に展望と活力をあたえる政治指導、支部会議の定期開催の努力、一つひとつの支部の実情や党員の悩みに丁寧に耳を傾け困難をともに打開していくとりくみなどをつうじて、強まりつつある「支部が主役」の活動を、いかにして全党の圧倒的大勢にし、すべての党員が参加する党活動をつくることができるか。ここに強く大きな党づくりの成否をにぎる最大のカギがある。
「綱領を語る集い」を、支部の日常活動として発展させることは、「支部が主役」の活動を発展させる重要な要となる。本来この運動は、「大運動」と銘打たなくても、綱領実現をめざして支部が日常的にとりくむべき、党の基本の活動であることを強調したい。
私たちは、9中総決定で、総選挙で掲げた目標を達成できなかった教訓として、「自力をつける途上でのたたかいだった」とのべ、「どんな激しく厳しい条件のもとでも、ゆるがず前進できる強大な党をつくる――ここにこそ、総選挙からくみだすべき最大の教訓がある」ということを強調した。
この総括に立って、全党は、党大会にむけて、「党躍進特別期間」を設定し、「すべての党支部で新たな党員を迎えるとともに、すべての党組織が『政策と計画』『総合計画』で掲げた党員拡大目標を達成する」「読者拡大は、全国すべての都道府県、地区、支部が、参院選を、前回参院選の陣地を大きく上回ってたたかうことを展望して、党大会までに……前回党大会水準を突破する」ことを目標とし、その達成にむけてとりくんできた。党員拡大では、前大会からの約4年間に、3万4千人を超える新しい党員を迎え、党員数は前大会時を上回り、40万6千人となった。「しんぶん赤旗」読者の拡大では、石川県と4地区委員会が、日刊紙、日曜版ともに前大会時を上回って大会を迎えたが、全党的には前大会時を超えるにいたっていない。
参議院選挙にむけた党勢拡大の目標としては、「躍進期間」の到達を踏まえ、党員拡大でさらに進んだ前進の目標をたてるとともに、「しんぶん赤旗」の読者拡大では、参院選を、日刊紙、日曜版とも前回参院選時の1・3倍の読者へと拡大し、全党的には35万人の日刊紙読者、160万人の日曜版読者に前進してたたかうことを目標に奮闘する。さらに、中期的展望にたった「成長・発展目標」にふさわしい党員、読者の拡大の目標を有権者比でもち、その実現をめざして力をつくす。
読者拡大について、すでに(2009年11月時点で)日刊紙、日曜版とも、前大会水準を上回り、前進している三つの地区委員会(千葉・東葛(とうかつ)、石川・金沢、長崎・北部)の活動では、つぎのような共通した教訓がみられる。
――国政と地方選挙の得票目標の実現に執念を燃やし、総合的な活動のなかで、前進のための独自追求をはかり、毎月、拡大目標をもつ支部を5〜6割に広げ、「力持ち」の党員の奮闘をけん引力に、4〜5割の支部が毎月成果をあげている。
――綱領と決定、日々の「しんぶん赤旗」にもとづく機関と支部での政治討議を重視し、「しんぶん赤旗」の役割、目標達成の意義を繰り返しみんなのものにし、とくに日刊紙拡大に独自の手だてをとっている。
――機関あげての努力で7〜8割の支部が「支部が主役」の配達・集金体制を確立し、常勤者や議員の過重負担をなくし、非常勤の党員を結集した機関紙部を確立している。
――6割前後の支部が新入党員を迎え、党に新鮮な力をもたらし、党員拡大と読者拡大が相乗的に発展している。
これらの先進的教訓に学んで、「しんぶん赤旗」読者を拡大するために、情熱と大志をもってとりくむことを心からよびかける。
多くのマスメディア関係者が、「二大政党づくり」を推進する仕組みのなかに組み込まれ、マスメディアの大勢が、この動きを礼賛・推進する異常な役割を果たしているもとで、「しんぶん赤旗」を広範な国民に広げ、民主的な国民世論の形成に大きな影響力をもつ国民的メディアに成長させることは、日本の政治・社会の発展にとって死活的に重要な課題となっている。「しんぶん赤旗」は、現在の世界がどのように大きく変わっているか、日本政治でいまおこっている変化の本質は何か、現状を打開する展望はどこにあるかなどについて、「タブーなく真実を伝える新聞」であり、平和、民主主義、生活向上を願うさまざまな人びとの絆(きずな)となる「国民共同の新聞」である。マスメディアが抱えている決定的な弱点とのかかわりでも、日本の良心・良識にたった「しんぶん赤旗」をどれだけ普及できるかは、日本の民主的変革の事業の成否を左右する重大な意義をもつ。
党が発行する雑誌の普及を重視してとりくむ。
前大会決定は、党綱領の読了党員が34・2%にとどまっていることを、わが党の重大な弱点と指摘し、綱領を学ぶことを「党づくりの第一義的優先課題」としてとりくむことを強く呼びかけた。しかし、この課題では、抜本的打開がはかられず、読了党員はなお4割程度にとどまっている。「綱領を語る集い」は大きくすすんだが、党員の綱領学習は「集い」とは別に、独自の努力が必要とされる課題である。この点で、党中央の系統的なイニシアチブに弱点があったことを、率直に反省しなければならない。
第25回大会期の一大課題として、綱領学習と綱領読了のとりくみを、抜本的に強める。新たに党の教育制度として、地区、支部指導部の責任で「綱領講座」を開き、綱領そのものをテキストとし、その読み合わせをおこない、質疑で理解を深めるという形で、すべての党員が綱領学習・綱領読了をすすめる。繰り返し綱領を読み、綱領に立ち戻って、情勢と党の任務を明らかにする党の気風をつくりあげる。
あわせて、綱領の理論的基礎をなしている科学的社会主義の世界観的な確信を自らのものとする努力を強める。科学的社会主義の古典学習を大いに推奨する。
私たちは、前大会決定にもとづいて、2度にわたって「職場講座」を開き、この分野の活動の新たな探求・発展にとりくんできた。2回の「職場講座」の内容は、職場支部の法則的な前進の方針を示すものであり、これをすべての職場支部のものとするとともに、ひきつづき系統的に「講座」の開催と職場支部援助の体制確立にとりくみ、労働者のなかに不抜の党をつくるために、知恵と力をつくす。
この間のとりくみのなかで、重要な前進の一歩を踏み出したのが、非正規雇用労働者のなかでのたたかいである。派遣労働などでの大企業の横暴をただし、人間らしく働ける労働のルールを求めるたたかいは、社会全体に大きな影響をあたえ、労働法制の規制緩和から規制強化へと流れの変化をつくりだした。とくに、無法な「派遣切り」にたいして、少なくない労働者が勇気をもって立ちむかい、たたかいのなかで労働組合への結集・結成がすすみ、そのなかから少なくない新入党員を迎え、新しい支部が生まれていることは、きわめて重要である。たたかいこそ人間らしい労働のルールをつくる力であり、労働者の階級的自覚と成長の力である。長い間、職場支部が、きびしい迫害のもとで党の旗を守り、不屈に活動し、非正規の仲間に心を寄せて粘り強い活動をしてきたことが、たたかいの発展の大きな力となった。
わが党は、新たに発展しつつある人間らしい労働を求める運動に、心からの激励と連帯のとりくみをすすめ、それをさらに大きく発展させるために奮闘する。そのなかで強大な党をつくるために力をつくす。労働者のなかでのたたかいと党づくりに、新たな情熱、探求と開拓の精神をもって挑戦し、大きな前進をかちとる。
全国青年大集会の発展にみられる若い世代のなかでの雇用問題のたたかい、原水爆禁止世界大会などで発揮されている平和のエネルギー、高すぎる学費引き下げを求める若者の運動の広がりなど、若い世代が、その連帯を阻むさまざまな困難を乗り越えて、暮らしと平和を守るたたかいを生き生きと発展させていることは、日本の大きな希望である。わが党は、これらのたたかいへの連帯と支援を思い切って強める。
若い世代の広大な結集をめざして、その悩みや願いをとっくりと聞き、交流と連帯の「居場所」づくりをすすめ、その努力とむすんで切実な願いの実現をめざすたたかいの発展に力をつくす。同時に、党や科学的社会主義に関心を強めている若い世代の「知的めざめ」に働きかけ、党綱領が示す現状打開の展望、科学的世界観、社会観を広げることが重要である。大学での「党と科学的社会主義を語る大小の自主講座」のとりくみを抜本的に強める。
民青同盟の地区委員会再建のとりくみでは、前党大会後、新たに37地区が再建され、65地区となった。この仕事を「党と民青同盟の共同の事業」として前進させる。党は、民青同盟の相談相手として、その実情、要求、努力、苦労によく耳を傾け、親身な援助を改善・強化する。
党機関は、青年・学生のなかでの活動の強化を、担当部門、担当者まかせにするのではなく、党と革命運動の未来がかかった問題として、党活動・党建設の中心の一つに位置づけ、総力をあげて探求・挑戦し、うまずたゆまず系統的な努力をはかる。民青同盟への親身な援助とともに、学生の中での活動の戦略的な重要性を自覚し、学生の革新的結集に開拓者の精神でとりくむ。
「支部が主役」の党活動を発展させる党機関の指導と態勢の問題については、2中総決定、3中総決定、8中総決定などで解明した方針が重要である。
とりわけ、地区委員会の確立・強化をはかることは、その要となる重要な課題である。党中央として、地区委員長の政治的・組織的力量を引き上げることを援助するために、「地区委員長研修会」を開催する。
補助指導機関をつくり態勢強化をという第24回党大会のよびかけにこたえて、現在、補助指導機関は、665(対象自治体の54・6%)で確立され、重要な役割を発揮しつつある。補助指導機関をすべての対象自治体で確立し、地区委員会の活動を強化する。
党機関の指導姿勢として、綱領と党の方針を正確に全党のものにする指導とともに、「聞く力」が重要である。支部と党員の置かれている条件、悩み、要望などに真剣に耳を傾け、心を寄せ、ともに困難を打開していく姿勢が大切である。
財政問題については、党費納入の低下傾向の打開を財政活動の根幹に位置づけ、すべての党員が参加する強く温かい党づくりの中心課題としてとりくむ。財政問題を、担当者まかせにすることなく、県・地区機関でよく論議し、機関役員全体の共通認識にするとともに、支部に実態と打開の方向についてよく伝え、理解を得て、「四つの原則」にもとづく財政活動を党組織全体のとりくみにしていくことが大切である。
こうした努力のなかで、党のかけがえのない宝である専従活動家への給与を保障し、健康な心身を保全し、必要な態勢の維持・強化をはかることに特段の力をそそぐ。
2度にわたる「特別党学校」のとりくみは、重要な成果をあげている。受講生は、党機関役員、国政や地方選挙の候補者、政策・理論活動家など、さまざまな分野で積極的な役割を果たしている。中央として「特別党学校」をひきつづき系統的におこなう。都道府県でも若手幹部育成の特別教育がおこなわれているが、これらのとりくみも貴重である。
将来を展望した幹部政策として、中央委員会の構成のあり方を見直し、とくに准中央委員については、後継幹部として成長することを任務として位置づけ、将来性のある若い幹部、新しい幹部、女性幹部の大胆な抜てきをはかる。
党規約第5条では、党員の権利と義務の第一に、「市民道徳と社会的道義をまもり、社会にたいする責任をはたす」ことを明記している。党内のごく一部だが、社会のさまざまな病理現象、退廃的風潮におかされ、社会的モラルに反する誤りがおこっていることを重視しなければならない。党の機関を先頭に、党規約を守り、率直で活発な自己・相互批判をおこない、規律ある党生活を築き、社会進歩の促進のためにたたかう人間集団にふさわしいモラルを確立していくことに力をそそぐ。
21世紀の世界を大きな視野で見ると、資本主義という体制の是非が問われる時代に入っていることが、強く実感される。この間、日本でも、世界でも、「資本主義の限界」ということが、メディアでも広く言われるようになっている。これは世界的規模での資本主義の矛盾の深まりを反映したものである。
マルクスが、「資本主義的生産の真の制限は、資本そのものである」とのべたように、資本主義の矛盾・制限とは、それがより大きな剰余価値の生産を、生産の動機および目的としていることにある。こうした「利潤第一主義」は、今日の世界において、つぎのような社会的害悪・災厄となってあらわれている。
――世界的規模でも、それぞれの国でも、社会的貧困と格差が広がっている。米国と日本の貧困率は、発達した資本主義国のなかでも最悪水準にまで拡大した。国連開発計画「人間開発報告書」2005年版によれば、1日1ドル未満で生活する10億人の人びとを、極度の貧困から救うのに必要な費用は、世界の最富裕層10%の所得の1・6%にすぎない。そこまで世界の格差は拡大した。
――政治的独立をかちとった発展途上国に、資本主義が自立的な発展の道を提供できない。世界の飢餓人口(慢性的な栄養不足の人口)は、1990〜92年には8億4200万人だったものが、2009年には10億2000万人に増え、過去最高になったと推定されている。
――現在進行している金融危機と過剰生産恐慌は、資本主義がどんな手だてをつくしても、資本主義の「死にいたる病」である恐慌を解決する力がないことを示した。世界経済危機にたいして、世界各国は、国際的な協調によって、とりあえずの金融・財政的対応をおこなったが、全体として過剰生産恐慌から抜け出すにはいたっていない。
――地球温暖化について、英国政府の報告書は、人類史上最大の「市場の失敗」であることを認め、現行の資本主義のあり方に疑問を呈した。地球環境の破壊は、資本主義に地球の管理能力があるかどうかを、根本から問うものとなっている。先進的なとりくみをおこなっている欧州の関係者からも、「利潤第一の考え方では温暖化は止められない。社会システムの根本的改革が必要だ」という指摘がなされている。
これらの問題に対して、日本でまずめざすべきは資本主義の枠内での民主的改革――「ルールある経済社会」への改革であり、国際的には、「すべての国の経済主権の尊重および平等・公平を基礎とする民主的な国際経済秩序」(党綱領)をつくることが課題となる。同時に、そうした改革をぎりぎりまで追求したとしても、「利潤第一主義」という枠組みでは、なお諸問題の根本的な解決がはかられず、資本主義を乗り越える新しい体制への前進の条件が熟してくる。これが、私たちの展望である。
2009年11月、英BBC放送は、「ベルリンの壁崩壊から20年、自由市場の資本主義に対する不満が広がっていることが明らかになった」として、国際世論調査(27カ国で調査)の結果を発表した。それによると、「自由市場の資本主義」をどう考えるかの問いに、「資本主義はよく機能しており、規制強化は能率低下を招く」と答えた人はわずか11%、「規制と改革で対処できる問題を抱えている」と答えた人は51%、「致命的な欠陥を抱えており、新しい経済システムが必要だ」と答えた人が23%にのぼった(フランスは43%、メキシコは38%、ブラジルは35%)。資本主義の母国・英国の放送局が、こうした調査をおこない、世界で23%の人が資本主義に代わる「新しい経済システム」が必要と答えていることは、注目される。
ソ連崩壊時に喧伝(けんでん)された「資本主義万歳論」は、はるか過去のものとなった。世界の資本主義の矛盾の深まりのもとで、資本主義の前途への不安・不満が広がり、世界各国の少なくない人びとが資本主義を乗り越えた新しい社会への模索をはじめている。世界でも、日本でも、科学的社会主義とマルクスへの新鮮な注目が広がっているが、これは偶然でも一過性のものでもない。世界の資本主義の陥っている深刻な矛盾に、その根拠がある。
21世紀の世界の現実のなかに、未来社会への動きが、さまざまな形であらわれていることに注目すべきである。
人類史のなかで16世紀に誕生した資本主義は、19世紀から20世紀にかけて、世界「全体」を支配するところまで発展したが、20世紀前半に、資本主義から離脱して社会主義をめざす国ぐにが登場し、続いて、20世紀後半には、植民地体制が崩壊し、21世紀のいまでは、発達した資本主義諸国が支配している領域は、人口では世界人口の13・6%と、ごく一部でしかなくなっている。
社会主義をめざす国ぐには、世界政治、世界経済に占める比重を、年を追うごとに高めつつあり、とくに中国は、その経済規模でやがてどの資本主義大国をも追い抜く勢いとなっている。ソ連崩壊後14年間の経済成長は、発達した資本主義諸国が1・8倍、アジア・アフリカ・ラテンアメリカ(AALA)の国ぐにが2・4倍、社会主義をめざす国ぐには4・8倍である。社会主義をめざす国ぐには、国民1人当たりのGDPではなお発展途上国の段階にあり、そのことにもかかわって、さまざまな「政治上・経済上の未解決の問題」(党綱領)が生じている側面があることも、注視する必要がある。
AALA諸国は、独立・平和・非同盟・覇権主義反対の方向で、大きな共通性をもっている。ここでは資本主義の道を選んで経済発展に成功したのはごく少数で、ラテンアメリカでは、従属国時代および左翼政権下の国民的闘争の経験から、資本主義とは別個の道を探究しようという動きがあらわれている。
ベネズエラ、ボリビア、エクアドルでは、国づくりの方向として「21世紀の社会主義」を掲げているが、これらの国がそれぞれ独自の特徴をもちながらも、選挙を通じて社会変革をすすめようとしていること、国有化万能でなく市場経済を活用しつつ生産手段の多様な所有形態を認めていること、ソ連型の社会モデルを模倣せず各国独自の条件を重視していることは、注目される。
党綱領は21世紀の世界史的な展望についてつぎのようにのべている。
「世界史の進行には、多くの波乱や曲折、ときには一時的な、あるいはかなり長期にわたる逆行もあるが、帝国主義・資本主義を乗り越え、社会主義に前進することは、大局的には歴史の不可避的な発展方向である」。
「21世紀の世界は、発達した資本主義諸国での経済的・政治的矛盾と人民の運動のなかからも、資本主義から離脱した国ぐにでの社会主義への独自の道を探究する努力のなかからも、政治的独立をかちとりながら資本主義の枠内では経済的発展の前途を開きえないでいるアジア・中東・アフリカ・ラテンアメリカの広範な国ぐにの人民の運動のなかからも、資本主義を乗り越えて新しい社会をめざす流れが成長し発展することを、大きな時代的特徴としている」。
日本共産党が、こうした未来社会への展望をもっていることは、目の前で解決が迫られている問題の打開の道筋とその意義を、より大きな視野と展望のなかで明らかにする力ともなっている。社会主義・共産主義をめざす綱領の展望が、世界の現実の中で実証されつつあることに、深い確信をもって、未来にのぞもうではないか。
(「しんぶん赤旗」2010年1月17日掲載)