2003年5月27日(火)「しんぶん赤旗」
みなさん、ごくろうさまでした。二日間で四十九人が発言した討論は、たいへん豊かな内容のものでした。昨日は、不破議長が、国際・外交問題についての幹部会報告の提起について発言をおこないました。
幹部会報告は、CS通信で一万人近い全国のみなさんが聞き、一千通近い感想が寄せられました。この間の中央委員会総会のなかでも、これは一番多い人数です。そして、CS通信で報告を聞き、それで勇気を得て、ただちに読者拡大などで足をふみだしているという経験も、全国各地から報告されているのは、たいへんうれしいことであります。
二日間にわたる討論でも、全国からの一千通近い感想でも、幹部会報告が提起した三つの問題――(1)情勢の焦点と日本共産党の立場、(2)いっせい地方選挙の総括と教訓、(3)国政選挙の勝利をめざす活動と「大運動」などの方針、その全体がたいへん積極的に受け止められたと思います。
この総会では、幹部会の提起の内容とかみあった討論がおこなわれ、全国から中央と心がひびきあう感想が寄せられました。そして新しい前進への決意がわきおこりつつあります。この総会は、大きな成果をおさめたということが確認できると思います。
情勢をどうとらえるかは、この中央委員会総会の大きな主題でした。この間の一連の事態――戦争反対の声をあげたにもかかわらずイラク戦争が引き起こされた、北朝鮮をめぐって核兵器問題という重い問題が起こっている、有事法制に反対したが衆議院では九割が賛成して強行されたなどから、一部に情勢にたいする「もやもや感」、「悲観論」も生まれていたと思います。
幹部会報告では、それらにたいするわが党の大きな見方を示しました。これにたいして、討論でも、感想でも、「展望が持てた」「元気が出た」という声が、大きな反響としてかえってきました。
私たちがいまの情勢を見るさいに、情勢を「一断面」でとらえるのではなく、「歴史の大きな流れ」の中でとらえる「科学の目」が大切であります。
イラク戦争をめぐっても「一断面」だけを取り出してみましたら、米国の覇権主義が猛威をふるい、ブッシュ大統領が勝ち誇っているかのように見えます。しかし、「歴史の大きな流れ」で見ますと、人類の歴史の進歩が画然とうきぼりになってきます。それは、戦争にいたる半年間に、国連を舞台にしてあらわれた国際社会の理性の流れにもしめされました。さらにイラク戦争を、一九六〇年代から七〇年代前半にかけてのベトナム侵略戦争と比較すると、国連が超大国の戦争に無力だった時代から、それを食い止める力を発揮しつつある時代へと、世界が大きな歴史的進歩をとげていることが、はっきりと見えてきます。
こうした世界論の根本には、わが党の二十世紀論があります。私たちはさきの党大会決議で、二十世紀を、「社会進歩の事業が多くの激動と曲折をへながらも確実に前進した世紀」と位置づけ、二十一世紀を展望してたたかっています。
たしかに「多くの激動と曲折」が、二十世紀にはありました。二度の世界大戦、ファシズムの暴虐など、この世紀も「一断面」だけで見たら、恐るべき逆流が荒れ狂った暗黒の時代に見えるかもしれません。たしかに歴史はたんたんとはすすみません。
しかし一世紀というスケールで見ると、大会決議でものべたように、民主主義と人権、民族の独立、平和の秩序、資本主義への規制、資本主義体制を離脱した国々の動きなど、この世紀が偉大な世界史的進歩を記録した世紀であることは、疑いありません。世界の平和秩序をめぐっても、戦争が一般に合法とされていた時代から、二つの悲惨な世界大戦の経験をへて、戦争が違法なものになったのが、この世紀でした。
この立場で二十一世紀の世界をとらえれば、いったい何が本流で、何が逆流かが、はっきり見えてきます。私たちは、情勢を見るさいに、「歴史の大きな流れ」の中で情勢をとらえるということをつねに強調してきましたが、それにはこうした二十世紀論の大きな裏づけがあるのです。
日本共産党は、そうした「科学の目」で世界をとらえ、野党外交などさまざまな形で世界の進歩と平和にはたらきかけ、国内でも運動の先頭にたって力をつくしてきた党です。世界史の本流に立つ日本共産党の本領が、この大激動の情勢の中でほんとうに鮮やかに浮かびあがっているのであります。そのことへの確信を全党のものにしていこうではありませんか。
この点でいえば、いまの自民党政治には、世界の流れをとらえた外交という見地は、ひとかけらもないと思います。
この中央委員会総会と並行して、小泉首相が訪米し、ブッシュ大統領の牧場に招待され、歓迎されたということです。この小泉内閣が、衆議院では民主党も含めた九割の賛成で、米軍の戦争に参戦する有事法案を強行したという状況もあります。
しかし、この動きは、世界の大きな流れの中で見ますと、惨めな孤立を深めている動きであります。小泉首相のイラク戦争への支持表明が、どんなに日本外交への信頼を落としたか。これを首相は思い知るべきであります。
とくに、アラブ・イスラム世界の信頼を、大きく損なった。ここでは、ほんとうに日本外交は、取り返しのつかない損失をこうむりました。この間、アラブのある国の大使が、緒方国際局長との懇談の中でこういうことを言ったそうです。
「日本は中東ではいいポジションを持っていたが、イラク問題でアラブ諸国がみんなで平和解決に努力しているときに、日本はアメリカの味方をした。残念だった。日本とアラブとの良好な関係が傷つけられたと同僚たちは感じている」
川口外相は、イラク戦争が始まった後に、アラブ諸国の駐日大使を呼びよせて、日本政府のイラク戦争支持の立場を説明した。そのときにどの国の大使も一言も発せず、「沈黙」で答えたそうです。日本政府の立場に同意せずという強い意思表示を、「沈黙」という形であらわしたのです。
アラブの大使が言っていたように、「日本は中東ではいいポジションを持っていた」と言われてきました。とくに日本外交が中東でよい成果をあげたわけではないのですが、少なくとも欧米列強がやってきたような、この地域への植民地支配や軍事介入などには、これまで日本は加わらなかったのです。朝鮮半島、中国、東南アジアまでは、日本の侵略の手は及んだけれど、そこから先の中東諸国までは、日本の侵略の手は及ばなかった。ですから、日本はこれまで、中東諸国の人々からは、憲法九条を持つ国だ、原爆を落とされ悲惨な戦争体験を持っている国だ、平和をもとめている国だと思われてきた。
その国が、イラク戦争を公然と支持し、イージス艦まで送る。このことにたいする失望と怒りは、政府レベルでもこれだけ出てくるわけですから、民衆レベルでは、はかり知れないものがあるでしょう。
このことをみても、いま小泉内閣がすすんでいる、米国の戦争にただ追随し、有事法制を強行していく道は、いまの時流に乗って勢いがあるかのようにみえるかもしれないが、世界の大きな流れからみれば逆流そのものであって、それは孤立を深めざるをえない。この道には、けっして未来はないのであります。
私たちは、情勢を、そういう意味でも、「歴史の大きな流れ」の視野でとらえて、意気高くたたかう必要があるということを強調したいのであります。
この総会の中心議題の一つは、いっせい地方選挙の総括と教訓でありました。
この問題についての幹部会報告にたいして、全国からCS通信を見て、「気持ちにぴったりくる」「胸に落ちた」「すっきりとした気持ちで前進したい」などの感想がたくさん寄せられました。これはたいへん心強い反応であります。
そしてこの主題については、この総会でのたいへん率直な討論によって、幹部会の問題提起が深められました。私は、この問題にかかわって、二つの点について、のべておきたいと思います。
第一は、今回のいっせい地方選挙というのは、議席が全体として後退するという残念な結果となった選挙ですが、こういう時にこそ、指導にあたるものの姿勢が、中央も地方も試される、ということであります。
後退したなかでも、全党の積極的な奮闘によってかちえた、積極的な成果があります。この積極的な成果は、みんなの確信にする必要があります。けっして何もかもだめだったと清算主義におちいるようなことがあってはなりません。
同時に、何ものも恐れない科学的精神で、自己分析をおこなう。みずからの弱点を直視して、勇気をもって教訓を引き出す。この両面が大切であります。この両面をしっかりふまえた討論が、この総会でおこなわれたということは、六中総の大きな成果だったと思います。
さらにいえば、得た教訓はただちにつぎのたたかいに生かすということが、大切であります。これについても、総会の討論で、そうした戦闘的気概にたっての奮闘が報告されました。
東京都の田辺書記長から東京・足立区議選の経験の報告がありました。後半戦の区議選での「共倒れ」などの教訓を生かし、候補者をしぼることをめぐって真剣な検討がおこなわれ、その結果しっかりとした構えが確立し、全力をあげた奮闘で、全員勝利をかちとったという経験が報告されました。
福島県の最上県委員長の報告も、重要なものでした。福島県では、前半戦での県議選で、残念ながら三議席を後退させた。県委員長は「情勢判断の甘さ」ということを、率直にのべていました。しかし後半戦でただちにその教訓を生かして、「これまでになく引き締まったたたかいをやった」ということでした。そして四議席増という勝利を、後半戦ではかちとったということでした。
いっせい地方選挙のたたかいの結果から、積極的成果は確信にする、科学的精神で自己分析をする、得た教訓はただちにつぎのたたかいに生かす――こうした精神で総括をおこない、今後の活動にのぞみたいと思います。
第二は、幹部会報告で「二つの大きな問題点」と提起したことについてです。ここを正確にとらえ、総括を深めることが大切であります。
選挙戦を総括するさいに、やはりまず「五中総決定にもとづく構えとたたかいをつらぬいたか」という観点からの自己点検が必要です。今度の選挙というのは、なかなかきびしいたたかいではありましたが、後退不可避のたたかいではなかった。知恵と力をつくせば前進が可能なたたかいでありました。ですから後退した場合に、どこに「構え」の弱点があったかの具体的な究明が必要です。その具体的な究明抜きに、党の「基礎力量」だけに原因をもとめたら、つぎの展望をただしくつかめません。それでは「基礎力量」が大きくなるまでは、選挙に勝てないということにもなるわけです。
総会の討論を通じて、この「構え」の問題についての真剣な自己分析がおこなわれたというのもたいへんに大事な成果だったと思います。県委員長のみなさんが、たいへん率直に、「大丈夫論があった」という問題や、「情勢の見方に甘さがあった」という問題など、自己分析を討論のなかでのべました。
同時に、党の「基礎力量」――党建設の遅れを直視する必要があります。この打開抜きに、安定的な党の前進をかちとる保障はない。この根本の力を強めることの重要性を、全党のものにする必要があります。
この「構え」の問題と「基礎力量」の問題を、統一的に、またそれぞれをきちんと掘りさげていくことが大事です。そうしてこそ強く大きな党を建設しなければならないということの重みも、より深く、みんなの胸に落ちていくと思います。
今度の選挙戦というのは、選挙戦を通じて全党がそれぞれ鍛えられたたたかいでした。ここには悔しい後退もあったけれど、未来につながる財産もずいぶんとつくった選挙戦でした。そうした財産、宝は、それぞれの県ごとにたくさんあると思います。積極面はもとより、弱点もそこからただしく教訓を導くなら、つぎのたたかいの財産になります。そうした見地で、いっせい地方選挙の教訓を全党がただしく学びとって、つぎの国政選挙と党建設の前進に生かそうではありませんか。
今後のたたかいでは、総選挙と参院選の勝利をめざす活動と、「党員・読者拡大の大運動」が、党活動の中心になります。
これからのたたかいでも、「構え」がとても大切になります。幹部会報告では、「おしもどされた力関係からおしかえし、さらに前進を」を合言葉に、選挙でも、党建設でもがんばろうということを提起しました。
そして総選挙と参院選挙をたたかうにあたって、「起点はリアルに、志は大きく」という提起をしました。これは全党に衝撃的に、また積極的に受け止められています。衆院比例ブロックで「起点」では獲得議席がゼロになるといったところも、けっして落胆しないで、それなら前進しようという気概がわいてきたという感想が多いことは重要です。
幹部会報告では、「起点」ということでは、一昨年の参院比例票の水準で試算すると、衆議院で十三議席、参議院改選で五議席になるとのべました。このことをリアルに直視するという心構えを最後まで銘記してたたかいぬきたいと思います。
同時に、小さな守りのたたかいになってはならないということも、あわせて強調したいと思います。「志は大きく」ということであります。
幹部会報告では、二〇〇〇年初頭ごろから生まれている情勢の新しい特質についての解明をおこないました。この時期から日本共産党の躍進をおしとどめようという反動連合の激しい反共攻撃が始まりました。この攻撃は、きわめて激しい、熾烈なものですが、幹部会報告では、「戦後第三の反動攻勢」とはいっておりません。ここは大事なところであります。
すなわち、七〇年代の後半からの「戦後第二の反動攻勢」にくらべて、わが党の躍進にたいしての危機感から出発した反共攻撃だという共通点があるけれども、違いもあると報告ではのべました。自民党政治の危機がはるかに深いこと、政党関係でも党の輝きが画然としていること、それゆえの反共攻撃であること、反共攻撃の中身も謀略性と退廃性を深めていること、大局的にみれば、“落ち目の反動派の悪あがき”であるということです。ですから、これを打破すれば新しい情勢の局面を開けるということです。政党間の力関係の大きな激変の可能性をはらんだ情勢であるということです。この全体を攻勢的に立体的にとらえて、情勢を前向きに突破する。変革の立場で大志を持って、党の新たな上げ潮をつくることに挑戦する。この見地が大事です。
「起点はリアルに、志は大きく」。この「構え」で、選挙戦にも、党建設にも、新たな気概を持って全党がたちむかおうではないかということを、確認しあいたいと思います。
いま一つのべておきたいのは、党の持っている活力という問題です。選挙にとりくむうえでも、「大運動」にとりくむうえでも、いまわが党が持っている活力に、私たちは自信を持つ必要があります。そして、現に持っている活力をすべて引き出すとりくみが大切であります。
幹部会報告では、党の世代構成の特徴についてのべました。そこでのべたように、わが党は三十代、四十代、五十代の「働き盛り」の世代が党員全体の六割をしめます。六十代以上の世代も、多くのみなさんが長い経験と知恵を生かし、元気にがんばっている。かけがえのない力を発揮しています。
実は、このことを幹部会報告で強調したことには理由がありました。それは、選挙直後に、県委員長、地区委員長から寄せられた、選挙戦をたたかっての感想を読みますと、「高齢化」を嘆くという傾向が一部にあったからです。
わが党にとって、新しい世代、若い世代の後継者をつくることが、切実な課題であり、その努力が強くもとめられていることはいうまでもありません。そのための方針は明確です。党大会決議では、一章をまるまるあてて若い世代のとりくみをどう強めるかについてのべてあります。三中総決定、四中総決定でも、くりかえし方針は明らかにしています。いまここで重要なのは、実践でこの分野での前進をきりひらくという活動です。そして変化も生まれています。平和の問題で、若い世代のはたした役割は、目覚ましいものがありました。京都の中井府委員長がのべていたように、少なくないところで、「青年の顔が見える選挙」という前進が生まれたことは、うれしい変化です。若い世代のなかでの活動の前進というのは、ほんとうに党が総力をあげ、知恵と力を結集してとりくむべき課題です。
ただ、このとりくみというのは、一朝一夕になるものではありません。やはり一定の長期の展望を持って、とりくむことがどうしても必要となるものです。半年ぐらいで若い世代の党員が、何十万と入党して、一挙に解決というわけにはいかない。やはりこれは、一定の長期の展望を持ってとりくむことがどうしても必要な課題です。
若い世代を結集するための探求と努力を、長期的な展望を持っておこないながら、現にある党の活力を、すべて引き出すことが大切です。とくに「働き盛り」の世代がいろいろな生活や仕事の困難をかかえているなかで、職場支部の活動をどう豊かに発展させるか、あるいは居住支部でもそういう党員の力をどう結集するか、この努力が大切です。その努力がどれだけ指導機関によってやられているか。そのこと抜きに「高齢化」と嘆いても、問題は解決しないのではないか。がんばっている年配の同志の気持ちを傷つけることにもなるのではないか。そのことを、実は各地からの報告を読んで感じたわけであります。
党の持っている活力に自信を持って、現にある力を引き出しながら、世代の継承をかちとってゆく。「それぞれの世代が、それぞれの世代なりの活力を発揮し、たがいに協力しあいながら、長期的な視野にたって、新しい世代、若い世代への継承を着実にかちとっていく」という見地が重要だということを幹部会の報告でものべましたが、この見地で党の安定的発展のための党建設に力をそそぎたいと思います。
きたるべき国政選挙の勝利と、「大運動」の成功をめざし、以上のような点にも留意しながら、党の新たな上げ潮をつくりだそうではありませんか。
最後に、昨日の幹部会報告とこの結語が採択され、党の決定になりましたら、今度こそすべての党員がこれをしっかり読み、身につけて活動するということを、やりぬきたいと思います。
幹部会報告で、五中総決定の「構え」がどれだけしっかりとつらぬかれたのかという問題が、今度の選挙の総括のポイントになるとのべました。討論のなかで、「ほんとうにそのとおりだ。ただ、そのうえでも五中総決定を読んだ同志が三割程度だったという現状を変えなければならない」という発言がありました。そのとおりです。七割の党員が、この選挙をどういう「構え」でたたかうかについて、決定を読まないままでの選挙となったわけですから。これは大きな反省点です。
この中央委員会総会の決定の徹底については、いままでのだいたい三割程度というところを突破して、文字どおりすべての党員が決定を身につける活動に正面からとりくみたいと思います。そして、すべての党員が中央の決定に団結しながら、直面する国政選挙と大会にむけた「大運動」に、まさに自覚的にとりくみ、そうした自覚した力を総結集して、この大事業の成功を必ずおさめようではありませんか。
以上をもって、討論の結語といたします。