2000年 9月 19日

総選挙総括についての全党討論の結論と補足すべき問題

第7回中央委員会総会での市田選対局長の報告

 市田忠義選挙対策局長が日本共産党第七回中央委員会総会(十九日)でおこなった総選挙総括についての全党討論の結論と補足すべき問題についての報告(大要)はつぎのとおりです。


 六中総決定にもとづく、選挙総括についての全党討論の結論と、補足すべき問題についての報告をおこないます。

 

6中総決定の基本点を結論的な総括として確認

 六中総決定は、選挙結果のとらえ方とともに、(1)政策論戦について、(2)反共攻撃とのたたかいについて、(3)党の質的、量的な力量について、の三つの角度から総括の基本点を明らかにしました。

 これを受けた全党討論では、「選挙結果のとらえ方について、『次の前進にむけた土台になりうるもの』と評価している点が大事だ。ともすると後退の側面だけを大きくみて、今回の到達を正確につかめない傾向がある。六中総の角度で深めたい」「六中総は、地区や支部でだされているさまざまな意見が反映されており、まるで中央が自分の支部にいるようだ」「総括の三つの基本点は、選挙戦をたたかった実感としても納得でき、共感できるものであった」などの意見が圧倒的でした。

 この全党討論にもとづき、六中総決定が示した総括の基本点を、中央委員会の結論的な総括としてあらためて確認したいと思います。

 各級機関、党支部での熱心な討議と自己分析、そして党内外からよせられた貴重なご意見に敬意を表するものであります。

 以上の確認のうえにたって、討論で出されたいくつかの問題について、補足的な報告をおこないます。

 

日本共産党の政権論について

 まず、日本共産党の政権論についてであります。

 六中総決定は、「政権の枠組みの選択」論についてのわが党の対応の基本と問題点について解明しましたが、この問題と関連して、わが党の政権論について、よせられている意見もふまえて補足的にのべておきたいと思います。

 わが党が今度の選挙でかかげた政権論は、次のような内容であります。第一に、政権の目標は、革新・民主の改革を実行する民主連合政府を、二十一世紀の早い時期に樹立することにあり、第二に、その条件がないもとでも、仮に総選挙で与党が過半数を割り、自民党政治から一歩でも二歩でも前向きに抜け出す「よりまし」な政権をつくる条件がうまれれば、野党連合政権の協議に加わる用意はあること、第三にそうした条件がうまれるかどうかは、総選挙の審判の結果にかかっており、選挙戦の目標として野党連合政権をかかげる条件は存在していない、ということであります。

 こうした政権論は、選挙で下された国民の民意をもっとも忠実に尊重するものであり、道理ある方針でした。

 討論で出された意見のなかには、わが党の政権論の内容を正確にとらえずに、わが党が野党連合政権を政権目標として選挙戦をたたかったと理解し、その誤解のうえにたって政権論の是非を問題にするものが、一部にありました。

 政権論についてのわが党の方針は、綱領にもとづく三十数年来の方針にもとづくものであり、九八年九月の三中総決定が強調した二重の役割―自民党政治の根本的転換をめざす役割とともに、当面の政局、現実政治を実際に動かす役割、をふまえたものであります。

 党にたいする国民の期待には、「筋をまげないでがんばってほしい」という期待とともに、「現実政治を実際に動かしてほしい。そのためには思い切って柔軟な対応もやってほしい」という期待もあります。政策活動、国会対応、政局対応、大衆活動などあらゆる分野で原則的立場を堅持しつつ、現実政治を動かすために思い切った弾力的な対応をはかる―こうした立場にたってこそ、国民の期待にこたえ、党がいっそうの前進の道をきりひらくことができます。今後もこの立場を堅持し、発展させる必要があると考えます。

 

反共攻撃打破――狛江市長選からの教訓

 つぎに、反共攻撃を打破する問題で、狛江市長選挙からの教訓について意見がよせられました。

 総選挙と同じ日に投票をむかえた東京・狛江市長選挙では、激しい反共攻撃のなかで、党派をこえて矢野市長への支持の輪をひろげ、前回比約二倍の二万票へと前進し、自民、公明、民主が推した候補に約五千票差をつけて勝利をしました。

 矢野市長は、清潔で開かれた市政をすすめるとともに、税金の使い方を土木中心から暮らし・福祉優先に変え、市の借金を十四年ぶりに減らし、財政再建への道を開くなど住民の願いにこたえる地方政治を実行してきました。

 この実績は、広範な市民の共感と支持をえ、反共攻撃の基盤を掘り崩すうえで、きわめて大きな力になりました。狛江市政が、市民の利益を守る実際の活動を通じて、市政問題では、反共攻撃が通用しないところまで、市政への信頼を多くの有権者の間につくりだした、ということであります。

 狛江市長選挙のこうした経験は、党派選挙にとっても重要な教訓を示しています。反共攻撃を打ち破るためには、攻撃への正面からの反撃と同時に、国民の利益を守る党の日常活動が決定的に重要な意味をもつという教訓であります。

 

テレビコマーシャル、ホームページについて

 つぎに、テレビコマーシャル、ホームページ開設についてであります。

 六中総決定は、政治宣伝の内容や手段については、今後の積極的な研究課題とすることにしました。宣伝活動の内容と形態を工夫し改善することは、宣伝戦でわが党が他党派にうちかつためにも、広い無党派層や若い世代へ親しみやすくアピールするうえでも、きわめて重要であります。

 この見地からテレビコマーシャルなどの実施について検討をおこなってきました。これには多額の費用が必要であり、検討委員会を設けて、その費用と効果をふくめた総合的な研究をひきつづきおこなうことにしたいと思います。

 またホームページは、党中央では早くから開設し、日々のアクセスの数も大変ふえていることが報告されていますが、その内容について、さらに改善・充実に努めたいと思います。地方の党機関や国会・地方議会の議員などのホームページも、党の立場にたって、それぞれの責任で開設し、運営することが望まれます。

 

政党助成金受け取りは国民への背信行為

 つぎは、政党助成金についてであります。

 テレビやラジオのコマーシャル、新聞広告などに関連して、その費用のためには政党助成金を受け取ってもいいのではないか、そういう意見が一部からよせられています。

 政党助成金は、個々人の思想・信条の自由をじゅうりんして、支持しない政党にもその助成金が配分されるという、いわば国民の税金を各党が不当にわけどりする憲法違反の制度であります。この違憲の政党助成金をわが党が受け取るということは、国民への背信行為になります。

 政党助成金を擁護する意見のなかには、「日本では政党への献金の風土が弱いから、個人の政治献金の習慣が定着するまではやむをえない」といった議論がよく聞かれますが、これは、まったく逆立ちした議論であります。政党助成金や企業・団体献金が横行しているところで、有権者のあいだに、個人献金で政党活動をささえるという意欲が育つはずがありません。

 こういうなかで、財政活動を党の政策と立場を理解し、共感する国民の浄財によってまかなってきたことは、わが党の誇りであります。財政活動の面でも、「国民が主人公」をつらぬき、国民に依拠してこそ、党への信頼が高まります。

 また、政党助成金の不当性をもっと訴えるべきだという意見も出されていますが、政党助成金廃止、企業・団体献金禁止の宣伝や運動を今後ともつよめたいと思います。

 

力を出しきったか――自己分析を深めて

 六中総決定は、「党がもてる力量を出し切ってたたかったか―率直な自己吟味を」とよびかけました。

 この点で、各級党機関や支部が自己分析を深めるべきもっとも重要な問題は、選挙戦の構え―すなわち情勢認識を一致させ、受動主義を克服してやるべきことをやりつくす問題であります。

 選挙結果をみて、「まさか比例で後退するとは思わなかった」という声が少なからずよせられました。ここには、「比例での議席増は当たり前」という安易な気分の反映があったことは明らかであります。

 「小選挙区はとても無理」「勝てそうならがんばる」「勝てそうもないから力が入らない」「うちの県は別だ」など、受動主義、消極主義はさまざまな形であらわれましたが、これがもてる力を最大限に発揮するうえで、大きな障害となりました。あらわれ方はさまざまですが、その共通点は情勢を変革の立場でとらえ、勝利はみずからの主体的奮闘できりひらくという見地の欠如であります。

 この問題は、この間の中央委員会や都道府県委員長会議などでくりかえし強調されてきた問題であります。今年一月の五中総では、「わが党の場合には、風を頼んでの勝利というものはない」「党が前進すればするほど、これをおさえこもうとする反撃の力が強まることは、理の当然であ」り、「相手側のどんな集中攻撃にもうちかって、みずからの奮闘によって、展望をみずからきりひらくという気概が肝心」だ、とのべています。

 これらの指摘をあらためて肝に銘じ、教訓を深めて今後のたたかいに生かす必要があります。

 

小選挙区の指導体制と支部への基本指導

 つぎは、小選挙区の指導体制と支部への基本指導の問題についてであります。四中総決定は、基本指導は地区委員会がにない、選挙戦独自の一定の課題は、選挙区の指導部が責任をおうというのが基本であるとしつつ、とくに必要な場合には、臨時的な措置として、地区委員会の機能をその選挙区の指導部に移す場合もありうることを提起しました。選挙戦では、地区を小選挙区ごとに再編したところ、地区委員会が基本指導に責任をもち、選挙区指導部は選挙の限定された任務をもったところ、それに、地区機能を選挙区の指導部に委譲したところと、大きくいって三つの形態がとられました。

 各県からの報告では、このうち、とくに地区の機能を選挙区指導部に権限委譲したところでさまざまな困難に直面し、とりわけ、支部への基本指導の弱まりを解決できなかったところが少なくありませんでした。

 選挙体制の確立にあたって留意すべき最大のポイントは、どんな場合にも、選挙戦をたたかう主役である支部への基本指導体制を絶対にくずさないことであります。この見地から次の総選挙での指導体制については、検討をすすめることにしたいと思います。

 

対話・支持拡大が前回水準にとどまった問題点

 最後に、対話・支持拡大が前回総選挙水準にとどまった問題点についてであります。

 「対話・支持拡大が際限なく後回しになる傾向」は、今回の選挙でも克服されませんでした。

 この問題について六中総決定は、「わが党は五中総決定で、『どの活動でも、躍進した参議院選挙の二倍以上、三倍以上の奮闘をやろう』ということを確認しました」「しかし、全体としてみますと、党の選挙戦の運動量の一つの目安となる対話・支持拡大では、前回総選挙と同水準、参議院選挙よりも低い水準にとどまりました。厳しい条件のもとでの選挙ではありましたが、党がその持てる力を出し切っての結果であったかどうかは、吟味が必要だと思います」と指摘をしました。この指摘を重くうけとめ、自己吟味を深めることが、積年の弱点を克服する道だと思います。

 対話・支持拡大がたちおくれた要因の第一は、さきにのべた受動主義、消極主義の克服が不徹底に終わったことであります。これが、持てる力の発揮を妨げたことは明らかであります。どんなに躍進の条件があっても、やるべきことをやりきらなければ、その条件を現実のものとすることはできません。

 対話・支持拡大がどういう規模でとりくまれているかは、党の国民への働きかけ、むすびつきがどれだけ自覚的に発展しているかのバロメーターであります。今度の総選挙で、対話・支持拡大が参議院選挙の二倍、三倍どころか、それ以下の水準にとどまったことが、後退の一因になったことを直視する必要があります。

 第二は、対話・支持拡大活動の軽視です。二中総決定が解明したように、政治戦で相手を圧倒するとともに、組織戦でも相手の組織力をうちやぶる力を持つことが、いまの局面を大きく打開し、前進をかちとるうえで重要なかなめの一つになっています。有権者のなかに、どれだけ「自公保の政治はごめん」という雰囲気があっても、それを現実にわが党への投票にまで組織する、そのための独自の組織活動がなければ、前進と勝利をかちとることはできません。この立場から、対話・支持拡大の活動を正しく位置づけ、これなしに選挙戦の勝利はない、という自覚にたってとりくんだかどうかであります。

 第三は、対話・支持拡大が選挙になってから、しかも投票日直前にならないと本格的なとりくみにならないということであります。選挙戦は日常活動の総決算であります。したがって、選挙が近づいてから対話・支持拡大にとりくむのではなくて、日常のあらゆる活動のなかで、日常不断に目的意識的にとりくむことを全党に定着させなければなりません。この点で、第二十一回党大会決定が選挙戦の「四つの原点」の活動を今日の情勢にそくして改定し、大量宣伝とともに、対話・支持拡大に、日常的にとりくむことをあらたに明記したことを真正面からうけとめ、この活動の抜本的強化と日常化に全力をあげる必要があります。

 以上、六中総決定が示した総括の基本方向が、全党の共通の認識と合意になったことを確認するとともに、補足が必要ないくつかの問題についてのべました。党内外からよせられた貴重な意見にあらためて感謝するとともに、全党組織が総選挙の教訓をただちに活動に生かし、「大運動」と歴史的な第二十二回党大会の成功、きたるべき参議院選挙、東京都議会議員選挙で必ず勝利することをめざして奮闘されるよう、心から訴えて報告をおわります。

 


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