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日本共産党第7回中央委員会総会(2000年9月19日〜20日)で採択された、党規約改定の提案説明(不破委員長が提案)はつぎのとおりです。
幹部会を代表して規約の改定について報告いたします。
中央委員のみなさんも、全国でCSを視聴されているみなさんも、お配りしてある改定案を読みながら報告をきいてほしいと思います。
まず、今回の改定の趣旨ですけれども、二十一世紀を迎える新しい状況のもとで、日本共産党が日本社会のなかではたすべき役割にふさわしく、党規約を簡潔でわかりやすいものにする、このことを主眼として、規約全体を検討いたしました。六中総で決定した大会議題は、「党規約の一部改定」でしたが、検討の結果は全般にわたる改定になりました。したがって大会の議題も「一部改定」ではなく、「党規約の改定」としたいと思います。
現在の規約は、おおもとは一九五八年の第七回党大会でさだめられたもので、それ以来、何回かの規約の改定をおこない、個々の条項やいろいろな規定の表現などの改定をやってきましたが、全体の構成は今日まで変わりませんでした。その意味では今回の規約改定は、四十二年ぶりの抜本的な改定ということになります。
以下、重点的に説明いたしますが、まず大きな問題は前文をやめて、新たに「第一章 日本共産党の名称、性格、組織原則」という章をおこしたことであります。
ご承知のように、現行規約にはかなり長い前文がありました。これが内容的にもなかなか難しい部分で、たとえば新入党の方に読んでもらおうと思っても、まずそこで難航するということもしばしばありました。その内容は、党員の活動、党組織の活動に必要な規約的なとりきめというよりは、政治方針や組織方針とその解説や党員心得といったものがかなり大きな部分をしめていました。
今回の改定にあたっては、前文のなかの解説的、方針的、心得的な内容はのぞいて、党の基本にかんする、規約として欠くわけにはゆかない部分を第一章に定式化したわけです。
第一条は、党の名称であって、これは解説の必要はないと思います。
第二条が党の性格です。
現行規約の党の性格についての規定は、冒頭にある「日本共産党は、日本の労働者階級の前衛政党であり……」が中心でした。ここには検討を必要とする二つの問題がありました。
一つは、「労働者階級の政党」という規定であります。これはもともと、共産党が労働者だけの政党だという意味ではありません。労働者階級がになっている歴史的使命を自分の目標とする政党だというのが本来の意味であります。歴史的使命というのは、科学的社会主義の理論が最初から明らかにしてきましたように、資本主義的搾取をはじめ、あらゆる形態の搾取から人間を解放し、本当の意味での自由な人間社会をめざすことです。社会的にいえばこの仕事の主力をなすのが労働者階級だというのが科学的社会主義の理論の核心の一つであって、「労働者階級の党」というのは、この使命をにない、それを目標とする政党だという意味であります。ですから、党の構成としては、日本共産党の門戸は、日本社会の進歩をめざすすべての人々に開かれているものです。
また、党自身が、党の課題、任務としても、狭い意味での労働者の利害にとどまらず、民主主義、独立、平和、国民生活の向上、そして日本の進歩的未来の探究という国民的な課題のために力を尽くしてきましたし、政治を変え、社会を変える方法としては、「国民が主人公」の立場、いいかえれば国民多数の支持をえて目標を実現する「多数者革命」の立場を、一貫して貫いてきました。
わが党が、これまで党の性格として労働者階級の党であると同時に、「真の民族と国民の党」であることを強調してきたのは、この意味であります。
今回の規約改定案では、第二条の最初の文章で、このことを党の性格として次のように簡潔に表現しました。
「日本共産党は、日本の労働者階級の党であると同時に、日本国民の党であり、民主主義、独立、平和、国民生活の向上、そして日本の進歩的未来のために努力しようとするすべての人びとにその門戸を開いている」。
もう一つの問題は、「前衛政党」という規定にありました。私たちが、これまで「前衛政党」、「前衛党」という言葉をつかってきたのは、わが党が労働者階級、あるいは日本の国民に号令をしたり、その考えや方針をわれわれが「前衛」だからといって国民に押しつけたりするという趣旨ではありません。どんな方針も、国民の共感、信頼、そして自発的な支持をえてこそ実現されるものであります。
私たちが「前衛」という言葉で表現してきたのは、実践的には不屈性、理論的には先見性、ここに集中的にあらわされると思います。
いろいろな課題を追求するときに不屈にその実現をめざし、どんな迫害や攻撃にも負けないで頑張りぬく。また当面のことだけではなく、運動の結果や先々の見通し、未来社会の展望まで科学の立場にたって見定めながら先見的な役割を果たす。この不屈性と先見性にこそ、私たちが自らを「前衛政党」とよんできた一番の核心があります。
この二つが結びついて、日本共産党は、戦前、戦後、日本社会のなかで社会進歩の道を切り開く先進的な役割をはたしてきました。戦前のあの過酷な条件のなかでの国民主権の民主主義と侵略戦争反対の平和のためのたたかい、また戦後、ソ連や中国などの大国主義の乱暴な攻撃に反対して、党の自主性と日本の民主運動の自主性をまもりぬいたたたかい、そしてまた今日、「日本改革」の提案に実っている、自民党政治を打破し日本の新しい進路を切り開くたたかい、これらすべてにそのことがあらわされています。
いろいろ文献を読んでいて面白いことに気づいたのですが、大先輩であるマルクス、エンゲルスは「前衛」という言葉はいっさい使いませんでしたが、最初の綱領的な文書である『共産党宣言』のなかで、共産党の役割を規定して、なかなか味のある言葉を残していました。実践的には、「もっとも断固たる、たえず推進していく部分」であるという特徴づけ、理論的には、「プロレタリア運動の諸条件、その進路、その一般的結果を洞察している点で、残りのプロレタリアート大衆に先んじている」という特徴づけです。これは、不屈性と先見性を独特の言葉で表したものだと読めます。
私たちは、これまで、こういう意味で「前衛政党」という言葉を使ってきたのですが、この「前衛」という言葉には、誤解されやすい要素があります。つまり、私たちが、党と国民との関係、あるいは、党とその他の団体との関係を、「指導するもの」と「指導されるもの」との関係としてとらえているのではないかと見られる誤解であります。
これは私たち自身のことになりますが、四十年ほど前、国際的なある会議で、ソ連共産党を「国際共産主義運動の一般に認められた前衛」だとする規定がもちだされたことがありました。わが党の代表はこれに反対しました。反対の理由は「前衛という言葉をもちだすことは、世界の運動のなかに『指導する前衛』と『指導される後衛』があるという区別を持ち込むことになる」という批判でした。これは、的確な批判でしたが、この事例からいっても、やはり「前衛」という言葉にはそういう誤解がともないがちであります。
これらのことを検討した結論として、今回の規約改定では、誤解をともないうるこの言葉を規約上でははずし、不屈性や先見性を、内容に即して表現することにいたしました。
それが第二条の後半の文章であります。
「党は、創立以来の『国民が主人公』の信条に立ち、つねに国民の切実な利益の実現と社会進歩の促進のためにたたかい、日本社会のなかで不屈の先進的な役割をはたすことを、自らの責務として自覚している。終局の目標として、人間による人間の搾取もなく、抑圧も戦争もない、真に平等で自由な人間関係からなる共同社会の実現をめざす」
ここで「自らの責務として自覚している」というのは、不屈性についても先見性についても、それはわが党の自己評価であって、ほかの人びとにこの認識や評価を押しつけるものではない、こういう意味であります。
第二条の最後の文章、「党は、科学的社会主義を理論的な基礎とする」は、解説の必要がないと思います。
次に、第三条では、組織原則の問題を定式化しました。「党は、党員の自発的な意思によって結ばれた自由な結社であり、民主集中制を組織の原則とする」という条項であります。
そして、民主集中制の基本的な内容を、五つの柱にまとめました。
「(一)党の意思決定は、民主的な議論をつくし最終的には多数決で決める。
(二)決定されたことは、みんなでその実行にあたる。行動の統一は、国民にたいする公党としての責任である。
(三)すべての指導機関は、選挙によってつくられる。
(四)党内に派閥・分派はつくらない。
(五)意見がちがうことによって、組織的な排除をおこなってはならない。」
この五つの柱に、民主集中制の基本的内容があるというのが、私たちの考えであります。
現行の規約には、前文でも民主集中制についてかなり長い解説がありましたし、それから、第二章の第十四条にも、項目をあげて民主集中についての定式化がありました。そこには、率直にいって若干不正確な規定もありました。たとえば、現行の第十四条には、「党の決定は、無条件に実行しなくてはならない。個人は組織に、少数は多数に、下級は上級に、全国の党組織は、党大会と中央委員会にしたがわなくてはならない」という規定があります。これは、党生活のあり方、党活動のあり方が、上から下への一方通行だけで成り立っているかのような表現であります。ところが、実際に現実に規約で規定されているのは、こういう一方通行の関係ではありません。中央委員会が決めたことであっても、現地の実情にあわなければ、これについて意見をのべ、実情にあった決定をもとめる権利が、すべての組織に保障されています。そのことは、大会決議案でも強調されていることですが、上からの一方通行ではなく、いわば循環型の関係で党活動が発展するというのが、規約が実際にとりきめているあり方です。さきほど引用したような規定は、その点では、一面性をまぬがれないものです。
たとえば、狛江市長の矢野さんが、こんどの市長選挙で再選されましたが、矢野さんが四年前に市議団の幹事長をやめて立候補するというときに、党中央の関係部門はかなり強力に反対しました。なんども説得に行きましたが、現地の事情で、逆に説得されてしまって立候補を認めたという経過があります。それがまさに正解だったのですが、そういう循環型で、現地の意見も中央に反映するし、中央の意見も道理にもとづいて地方に徹底する。これが、民主集中制の大事な点です。そのことを五つの柱でも、「民主的な議論をつくす」として表明しています。
民主集中制のこの五つの柱の重要性は、どこかから持ち込まれたものではなく、わが党自身の歴史的な経験によって裏付けられたものだということも、大事な点であります。
戦後の党の歴史のなかでも、私たちは、民主集中制の根幹にかかわるような経験を、大きくいって三回かさねてきました。
第一回は、例の「五〇年問題」でした。徳田・野坂分派によって、党が分裂させられ、誤った方針が外国から持ち込まれたのですが、経過をみますと、その分派活動とは、すべて超規約的な行動ですすめられたものでした。とくに「意見の違い」によって気に入らない人たちを勝手に排除するというのが、分派活動の一貫した特徴でした。民主集中制の諸原則が破壊されたからこそ、ああいう重大事態がうまれたわけであります。
二回目の経験は、一九五八年の第七回大会から六一年の第八回党大会にいたる党綱領の討議の経験でした。
当時、党内には、党綱領の内容について大変大きな意見の違いがありました。現在の党綱領は、発達した資本主義国における民主主義革命論として、いまでは世界でも有名ですが、それに反対する意見――“日本のような発達した資本主義国では、民主主義の革命はありえない、社会主義革命ですすむべきだ、アメリカとの軍事同盟などは、日本の経済が大きくなれば自動解消するものだ”、こういう社会主義革命論が党の一部に根強くありました。
ですから、一九五八年の第七回党大会では、多数はいまの綱領路線を支持する側でしたが、大きな意見の相違があることを重視して、採決をしないで結論を次の大会に持ち越すことにしたのです。次の大会までの間に、安保改定反対の国民的闘争などがあり、これらの経験と討論が結びついて、党内で綱領をめぐっての意思統一が圧倒的な形ですすみ、第八回大会が近づいたときには、社会主義革命論を唱えた人たちは少数意見になりました。つまり、この綱領討議の過程というのは、民主集中制の第一項の柱にあげた「意思決定は、民主的な議論をつくし、最終的には多数決で決める」ということを、もっとも典型的にあらわした過程だったといってよいでしょう。
しかし、党綱領の路線に反対した人たちは、「最終的には多数決で決める」ということをうけいれないで、大会の直前に、党から飛び出して党を攻撃する分派活動に走って除名されました。
いまでは、民主的討議をつくして多数決でえられた民主主義革命の路線と、反党活動までやって少数意見に固執した社会主義革命の路線と、どちらが正確だったかということは、すでに歴史の判定が出ております。これも、民主集中制の重要性をしめした非常に大切な経験でした。
三回目の経験は、六〇年代のソ連、中国の大国主義的干渉との闘争でした。このときに、ソ連も、あるいは中国の毛沢東派も、わが党のなかに分派をつくり、この分派を道具にして党の転覆をはかるということを、共通してやりました。もし、そのときに、私たちの党が、分派は結構だ、自由勝手にやってよろしいという党であったら、つまり民主集中制をもたない党だったら、この攻撃を打ち破るうえで、われわれはほんとうにたいへん困難な事態に立たされたでしょう。しかし、わが党は、そういうきっちりした規律をもち、民主集中制を堅持した党でした。そうであったからこそ、その力を発揮して二つの大国の党の干渉を打ち破ったのであります。
私たちが、こんどの規約改定案でまとめた民主集中制の五つの原則は、わが党自身の経験に裏付けられたものであって、この原則をまもり豊かに発展させてこそ、国民とともに進み、二十一世紀の新しい未来を開く日本共産党の役割がある、そのことをかさねて強調したいと思います。
次に、第二章以下の条項的な内容について報告いたします。
こんどの改定では、ほとんど全条項にわたって検討をおこないましたので、文章を整理したところはたくさんあります。また、個々の内容を改定したところもかなりの数にのぼります。ここでは要点だけを報告することにしますが、そのほかの点でも、ご質問があればお答えいたします。
まず、章の編成の変化です。第一章を「日本共産党の名称、性格、組織原則」としましたので、現行規約の「第一章 党員」が改定案では「第二章 党員」になるというように、章の順序は一章ずつ順送りになっています。
そのなかで、現行の第二章――新しい改定案では第三章ですけれども、この章の名称は「組織原則と組織構成」でした。この章は、民主集中制についての基本的な考え方とその個々の条項、さらにそれに加えて党の運営にかかわるいくつかの条項などからなっていました。
改定案では、民主集中制の基本点は、第一章第三条でのべましたので、問題を整理して、この第三章では中央、都道府県、地区、支部と各級党組織についての規定をおこなう第四章以下の部分に先立つ章として、党の組織と運営の全体にかかわる共通の問題を扱うということにし、章の名称も、「第三章 組織と運営」と改めました。
ここには、党組織全体の構成、指導機関の選出の方法、大会や党会議の成立要件、党が決定をおこなう際の基本的なあり方、決定に異論がある場合の対処のしかた、全国的・国際的問題と地方的な問題の処理、組織の新設・変更と補助機関の問題など、党と組織の運営の全体にかかわる共通問題を、まとめてのべてあります。
第二点は、党員の問題ですが、党員の権利と義務を、第五条で一本化しました。
これまでは、現行の第二条で党員の義務が八項にわたってのべられ、第三条で党員の権利が七項にわたってのべられていました。改定案では、それをあわせて、「党員の権利と義務」として十項目に整理しました。
そして十項目の冒頭に、「市民道徳と社会的道義をまもり、社会にたいする責任をはたす」という市民道徳と社会的道義の問題をあらたにかかげました。これは「なになにをしてはいけない」という「べからず」式の義務条項ではなく、日本共産党がこの面でも国民と社会の信頼をかちとる役割をはたすという積極条項としてとらえてほしいと思います。日本の社会の現状は、この面でも、党が社会改革の先頭にたつことをつよく求めているからであります。
市民道徳の内容は、とくにここでは規定してありませんが、前回の第二十一回党大会の決議のなかで、教育の問題に関連してでありますが、私たちが考えている市民道徳の項目を提起しました。「人間の生命、たがいの人格と権利を尊重し、みんなのことを考える」、「真実と正義を愛する心と、いっさいの暴力、うそやごまかしを許さない勇気をもつ」に始まり、「男女同権と両性の正しいモラルの基礎を理解する」などもふくむ十項目です。
私たちが前大会で提起したのは、子どもたちの教育の問題としての市民道徳の内容ですが、これらの市民道徳の諸項目は、もちろん子どもたちだけの問題ではありません。私たちは子どもたちが日本社会の構成員として育つうえで不可欠のものとして提起したわけですから、これらは、党活動、党生活の基盤としても大切な意義をもつものです。
この問題を、党員の権利、義務の冒頭にかかげて重視することの意味を、深くとらえてほしいと思います。
第三点は、「支部が主役」という精神を、党規約のなかではっきり位置づけたことです。
従来の規約では「基礎組織」というのが正式名称で、支部はかっこのなかの略称として扱われてきましたが、今回の規約改定では、「支部」という名称で全部を統一しました。
「支部が主役」の問題については、まず、「第三章 組織と運営」の冒頭の第十二条で、党組織全体の基礎が支部にあることを正確にうたいました。
「第十二条 党は、職場、地域、学園につくられる支部を基礎とし、基本的には、支部――地区――都道府県――中央という形で組織される」。
これは、基礎組織である支部の位置づけを全党の構成のなかで明確にしたことであります。
また、「第七章 支部」の、支部の基本的な性格付けをした第三十八条で、「支部は、党の基礎組織であり、それぞれの職場、地域、学園で党を代表して活動する」ということを、支部の性格として明記しました。第四十条の支部の任務のところでも、表現が重なりますが、冒頭に、「(一)それぞれの職場、地域、学園で党を代表して活動する」ことをあげ、第二に、「その職場、地域、学園で多数者の支持をえることを長期的な任務とし、その立場から、要求にこたえる政策および党勢拡大の目標と計画をたて、自覚的な活動にとりくむ」ということをあげました。これは、「支部が主役」の任務を規約上明確にしたものです。
なお、この間、中央委員会総会の決定にもとづいて、青年支部という新しい支部組織をつくりました。現在までに二百二十八の青年支部が生まれています。これは「職場、地域、学園などに……支部をつくる」という枠にあてはまらない支部になりますが、そのことの規約上の根拠を明確にするために、第三十八条に「状況によっては、社会生活・社会活動の共通性にもとづいて支部をつくることができる」という新しい条文を加えました。
現在は、この規定が当てはまるのは青年支部だけですが、私たちの党活動の今後の発展のいかんでは、その他の分野でも新しい形の支部が問題になることはありうるので、この規定を設けたわけであります。
第四点は、地方的な問題についての、地方党機関の自治的な役割の明確化であります。「第三章 組織と運営」にもどりますが、第十七条で、国際的、全国的な性質の問題と地方的な性質の問題について、党機関のとりくみと処理の方法の違いを明記してあります。
まず、国際的、全国的な性質の問題についての条項は、次のとおりです。
「全党の行動の統一をはかるために、国際的・全国的な性質の問題については、個々の党組織と党員は、党の全国方針に反する意見を、勝手に発表することをしない」。
全国問題や国際問題は、中央はこう言ってるが、地方の党組織は別のことを言っているというのでは、統一した政党として国民にたいする責任をはたせませんから、この種の問題ではこの規定が重要であります。
第十七条の地方的な問題についての規定は次のとおりです。
「地方的な性質の問題については、その地方の実情に応じて、都道府県機関と地区機関で自治的に処理する」。
これは従来からあった条項ですけれども、全国組織のなかで地方党機関がもつ権限の意味をより明確にするために、改定案では「自治的」という言葉を採用しました。
この規定を受けて、都道府県委員会の任務を定めた第三十一条の第三項に「地方的な問題は、その地方の実情に応じて、自主的に処理する」という条項を、地区委員会の任務を定めた第三十六条の第三項に「地区的な問題は、その地区の実情に応じて、自主的に処理する」という条項を加えました。
それに関連する措置として、これまでは地方のいろいろな問題でも中央に承認を求めるということがかなりあったのですが、できるだけそれを減らして、地方の自主的な権限を、より強化するようにしました。
中央委員会の役割を定めた第二十一条の第七項に、「地方党組織の権限に属する問題でも、必要な助言をおこなうことができる」と、大変ひかえめな表現で規定をしたのも、この見地からであります。同じように、都道府県委員会の地区にたいする発言についても、都道府県委員会の任務を定めた第三十一条の第五項に、「地区党組織の権限に属する問題でも、必要な助言をおこなうことができる」としました。助言というのは、うけとり方はいろいろあってよいわけですから、そういう形で、自治規定をより中身のあるものにするということです。
また役員選出の問題で、従来は、都道府県委員その他の役員を選出した場合には、中央委員会の承認を受ける(現行第四十三条)、地区で地区の役員を選んだ場合には、都道府県委員会の承認を受ける(現行第五十一条)などの条項がありましたが、これらはすべて削除して、この面でも、地方党機関の自主性をより確固としたものにする措置をとりました。
さきほど第三章第十七条の内容について、国際的、全国的な性質の問題での全党の行動の統一の重要性と、地方的な問題での地方党機関の自主性とをあわせて強調しましたが、この両方の関係をよく理解すること、大いに地方的に創意を発揮しながら、全党的には行動の統一を守るということに熟達することを、党規約の改定案は求めているのであります。
第五点は、党の中央機関にかかわる問題です。
まず、第二十一条の党中央委員会の任務ですが、改定案では、「しんぶん赤旗」の役割を重視して、「中央機関紙を発行する」ということを、中央委員会の任務の第二にかかげました。従来、規約の上に機関紙の問題はいろいろな形で出ていて、機関紙の編集委員は幹部会が任命するという条項もありますが、肝心の、中央機関紙である「しんぶん赤旗」のそもそもの意義づけが規約上明確にされていないという弱点がありました。今回はそこを明確にしたわけで決議案で強調しているような「しんぶん赤旗」中心の党活動の基本はここにありますから、この大きな基礎をすえることで問題の位置づけを明確にしました。
次に第二十三条、党中央の機関の構成にかかわる問題です。現行規約では、「中央委員会議長、同副議長各一名および准幹部会委員を選出することができる」(現行第三十一条)となっていましたが、議長というポストについては、前回の大会の規約改定でおかない場合もありうる、というポストにしたわけです。そのポストに副議長を設けるというのは、あまり合理性がありません。また、幹部会および常任幹部会に准委員をおくという規定もとることにしました。
つづいて第二十六条の規律委員会です。この機関はこれまで、「統制委員会」とよんでいましたが、この名称はあまり適切ではありません。統制委員会というのは、別に党活動を「統制する」わけではなく、規律違反の審査にあたる機関ですから、その任務にあわせて名前を変更することにしました。その任務も、党員の規律違反の調査・審査と、被処分者からの訴えの審査と、実際にやられている問題に限定しました。
第六点は全国協議会という制度、現行第三十七条を廃止したことです。全国協議会の制度は、一九七七年の第十四回党大会の規約改定で導入したものでした。その趣旨は、緊急の重要問題がおきたが、党大会をひらくゆとりがないときに、党の全国的な討論と意思決定をおこなえるようにということで設けたものです。第十四回党大会での報告を見ますと、「全国的規模の重要問題について、なるべく早く全国の党組織にはかって決定する必要を認めた場合」に開く、全国活動者会議などとは違って、「決定する権限をもった会議」として開くということがのべられています。
実は第十四回大会でこの提案をする前、大会、中央委員会との権限の関係がいろいろ問題になり、結局、最終案では中央委員会が招集する、全国協議会で決定した内容は、中央委員会が追認してはじめて発効するという条項がもうけられました。そうすると実際には、物ごとを決めるさい、なぜ中央委員会でやらないで、わざわざ全国協議会を開くのかということが問題になります。実際も、この二十三年間に、八四年四月の第一回全国協議会、九一年十月の第二回全国協議会と二回実施しましたが、党大会にかわる全国的な会議としての機能を十分には発揮できませんでした。
今回は、そういう経過も再検討して、全国的な討議を要する緊急問題がおきたときには臨時党大会で対応することにして、全国協議会の制度を廃止することにしました。
以前、なぜ臨時党大会を避けたかというと、大会を開くとなると、支部総会からはじまる代議員の選出の過程が必要ですから、どうしても緊急のには間に合わないということがあったのです。
今回はそこを検討して、臨時党大会を開くときには、前大会の代議員によって構成するという方式を採用したのです。例えば、この十一月には二十二回大会をやったあと、どうしても緊急に臨時大会を開かなければいけない場合がおきたとしたら、二十二回大会の代議員で次の臨時党大会を開くということにする、ということです。前大会の代議員が欠けてしまったというときには、補充の措置を取ります。そういうことで、事前の党会議の積み重ねを必要としない臨時党大会の開き方を規約化し、規約の改定案の第十九条に「前大会の代議員によって」臨時党大会を開くという規定を加えました。こういう方式で、緊急の場合には、臨時党大会をもって対応するということにしたいというのが提案の趣旨であります。
同じ考えから、都道府県の協議会の規定も廃止し、前党会議の代議員によって臨時党会議を開くということにしました(第二十九条)。
それから第七点として、その他の制度的な改定の主なものについて説明します。
まず、役員に選挙される党歴の資格要件ですが、第十三条で一律に「二年以上の党歴」ということにしました。現行の規約は、資格要件を中央委員は八年以上の党歴、都道府県委員は六年以上の党歴、地区委員は四年以上の党歴としています。それを改定して、中央、都道府県、地区の別なしに、党役員に選挙される資格条件を党歴二年以上とするということに統一しました。これから二十一世紀に向けてのわが党の発展を考えた場合、新しく迎え入れた同志たちが力量に応じた活動の場をえられるようにすることは、大事な問題です。もちろん、一人一人を役員に選ぶときには、党歴だけでものを見るわけではなく、選出する党会議や党大会で、当人の資質の全体を評価するわけですが、新しく党に迎え入れて、二十一世紀の党を支える党員の活動を党歴条件で機械的に制限しない、そういう意味で、思い切った措置を取ったことを理解してほしいと思います。
次に、「第四章 中央組織」の第二十八条の名誉役員の制度についてです。従来は、規約には「名誉役員」と「顧問」という二つの規定がありましたが、実際には、名誉役員は「名誉幹部会委員」と「名誉議長」として具体化されており、名誉議長、名誉幹部会委員、顧問という三つの区分で名誉役員の制度がとられてきました。今回の改定案では、そういう区分をとり払って、規約の上でも、実際の上でも名誉役員一本に変えたいと思います。
同時に、これは規約の問題ではなくて、実施規定の問題ですが、名誉役員に推薦するさいの資格要件を新たにもうけたいと考えています。実は、この制度をもうけて二十年を超えたいま、実際的には、いろんな問題が起きてきています。その一つは、名誉役員の方が現役の中央役員よりも数が多いという状況が生まれていることです。すでに、第二十一回党大会の時点で(一九九七年)、中央委員と准中央委員を合わせた数は百八十七名でしたが、名誉議長、名誉幹部会委員、顧問を合わせた数は百八十八名と一名多くなっていました。この傾向は大会ごとに大きくなるわけで、その点に矛盾が出ています。また、個々的にも、一期だけ中央委員をやったという方が、名誉役員としては十何年も続けるというのも、不合理な点の一つです。こういうことも考えて、あらためて、「中央委員会に入って二十年以上の経歴を持つ同志の中から名誉役員を推薦する」という基準を設定したいと思います。
名誉役員というのは大会ごとに推薦しなおすことになっていますから、その基準を、現在名誉役員になっている方たちにもさかのぼって適用したい。このことは、一人ひとりの方の立場にかかわることですから、名誉役員、顧問のうち可能な方がたに集まっていただいて、この条項について事前に説明し、全員が快く了とするという回答を集まった全員の方から得ました。
次は、「第八章 党外組織の党グループ」の第四十二条の規定です。従来は、党外の組織に党グループをつくる場合、「党外組織の被選出機関に、三人以上の党員がいるばあいには、党グループを組織」するということになっていました(現行第五十七条)。つまり、その組織に常駐していないでも、たとえば評議委員会とか中央委員会とかの被選出機関に党員が三名以上いると党グループを組織するということで、これはたいへん複雑で日常の活動にあわないやり方になります。ですから、今回の改定案では、「被選出機関一般」にしないで、「各種の団体・組織で、常任役員の党員が三人以上いる場合」には「党グループを組織」できると、対象を「常任役員」に限定することにしました。党グループの任務も団体によってさまざまですから、簡潔なものとし、最低の責務として、どんな場合でも「その団体の規約を尊重する」ことを活動の大前提として明記することにとどめました。
その次は、それに続く「第九章 被選出公職機関の党組織」の第四十四条、「各級地方自治体の議会に選挙された党の議員」の問題です。地方議員は、党議員団を構成することに従来からなっていましたが、その自治体で議会に党議員が一人しかいないという場合がかなり多いのです。八月末現在で調べてみますと、四千四百五十二人の全地方議員の中で、約三〇%にあたる千三百二十五人の議員が議会で党議員一人の状態で、その自治体だけでは議員団が構成できないことになってきました。地方によっては地域の議員を集めて、地域的な議員団をすでに組織しているところがありますけれども、そうでない場合もあります。ですから、今度の規約改定で、「適切な単位で必ず党議員団を構成する」ということにして、その議会に一人しかいないときには、周辺の自治体の議会をあわせて議員団をつくり、議員団に属さずに一人で活動するという議員の同志は一人もいないようにすることを、規約上明確にしました。
最後は処分にかかわる二つの問題です。
一つは、第四十九条の規律違反の処分の内容の問題です。従来は処分の内容は、訓戒、警告、機関活動の停止、機関からの罷免、権利停止、除名と、六段階になっていました。改定案ではこれを四段階に整理しました。まず、「訓戒」と「警告」とは、言い渡すほうもそれを受けるほうも区別があまり定かでないのです。ですからこれは「警告」一本にする。また、「機関活動の停止」というのは「権利停止」のいわば変形ですから、別個の項目にしないで「権利停止」にふくめました。それから従来では、「機関からの罷免」よりも「権利停止」が重いという位置づけになっていましたが、社会的に見れば、ある機関に属している者を解任するということはかなり重い処分に属しますので、順序からいえば、「権利停止」よりも重い位置づけにしました。ですから、改定案では警告、権利停止、機関からの罷免、除名という四段階に、処分の内容が規定されました。
もう一つは、都道府県の役員、あるいは中央の役員の処分の問題です(第五十一条、第五十二条)。従来の規定では、中央委員の処分をするときには党大会で処分するのを基本にし、そのゆとりがないときには中央委員会で処分して、党大会で承認するということになっていました。都道府県委員、地区委員の場合も同じでした。しかし処分が必要な時は、その時期に必要だという場合の問題ですから、現実には、党大会まで待てるという場合はまずないのです。この規約を定めてから、党大会まで待って処分したという例は一度もありません。このように、党会議や大会まで待てない場合が圧倒的に多いわけですから、その実情にあわせて、それぞれの委員会で決定し、大会または党会議で承認を受けるという、この手続きを、一般的手続きとするように改定しました。
そのほかにもかなり変えた点がいろいろありますけれども、一番肝心な改定点は以上です。
今回は、かなり大きな規約の改定をしましたが、この機会というのは、党の組織とは何なのか、党の規律というのは何なのかという問題を、全党のいろいろな角度から検討する一番いい機会だと思います。
二十一世紀にふさわしい党をつくりあげていく上でも、大いにそういう角度から思い切った検討をしてもらい、積極的な討論がおこなわれることを期待して、提案の報告とします。
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