1998年4月20・21日
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日本共産党第2回中央委員会総会
4月20、21の両日にひらかれた日本共産党第2回中央委員会総会で不破哲三委員長がおこなった結語はつぎのとおりです。
討論の結語ですが、討論そのものの内容にはいる前に、情勢にかかわる問題について、補足的に若干のべたいと思います。
ガイドラインとその立法化に反対する闘争
──日本共産党の役割は重大
一つは、ガイドラインをめぐる問題です。この国会で、野党共闘をいろいろな問題ですすめてきましたが、安保問題での各党の立場からいって、ガイドライン問題は、現状では、なかなか共闘の主題にはなりません。「周辺事態」なるものの判断について、国会の承認をもとめるかどうかなど、個々の問題では一致点が生まれることはありえることですが、ガイドラインによる安保強化の方向そのものについては、これに反対だといって名乗りをあげる党は、いまのところ存在しないからです。
幹部会報告でのべたように、ガイドライン反対の闘争は、立法化の問題をふくめて、いよいよ大事な局面を迎えようとしていますが、このたたかいでは、国会のなかでも外でも、日本共産党の役割がきわめて重大になります。これは、中央でのたたかいだけではありません。全国各地でその旗をかかげて国民運動の先頭にたてるのは、日本共産党だけですから、とりくみを大いに重視してほしいと思います。
つぎに、この中央委員会総会では、参院選での躍進を中心の主題として討論してきましたが、日本共産党の躍進がいま広範な人びとの熱い期待の的になっていることについて、一言したいと思います。
これまでも、各界の多くの方がたが日本共産党の活動などについて、好意的な立場からいろいろの助言や感想をよせてくれていました。以前は、かなり覚めた目での助言という性格のものが多かったのですが、このところ、その助言がいちだんと熱い期待をこめたものに変わってきていることをつよく感じます。東京四区の補選で得票の躍進という結果がでたときには、何人もの方から、この結果をふまえて攻勢的にたたかえと激励されました。二人区での自民党の議席独占を許さず、京都以外でも積極的に議席獲得をめざすべきだとか、一人区でも議席を争えるところがある、三人区以上は高位当選をめざせなど、わがことのように選挙戦を考えた親身の意見もよせられました。また、政党状況をいろいろと分析して、ここはこういう論戦が必要ではないかなど、政治戦のあり方に深くたちいった助言をよせられる方もいます。
そういう意見や助言をうかがうたびに、この期待にこたえて躍進する責任の大きさと重さをあらためて痛感するものです。私は、昨日の報告で、「日本共産党が国政選挙で躍進することは、わが党の国民にたいする責任かつ義務であることを銘記したい」と発言しました。いま紹介した助言や意見は、国民のあいだに広くある期待や願望をあらわしたものであって、それにこたえて大きな躍進をなしとげる――こういう大きな構えで参院選にとりくむことは、わが党の重大な責任だということを、かさねて強調しなければなりません。
このように、党の躍進にはかつてない期待が高まっているし、現にそれをやりとげる客観的な可能性、条件も大きく前進しつつあることはたしかですが、実際の選挙戦で躍進の課題をやりとげる、また個々の選挙区で確実に勝利をかちとろうというときには、情勢を厳格にみて、いささかの隙(すき)もゆるみもない、全力をつくしての奮闘がなによりも必要となります。報告では、選挙活動の現在のおくれについて、「なんとかなる」論のゆるみと、情勢についてゆけない消極主義の二つの問題をあげましたが、個々の選挙区のたたかいでは、なによりも危険なのは、「なんとかなる」論からのゆるみです。もし、われわれがこの誤りに少しでもおちいって、“全体の情勢がいいからなんとかなるだろう”といった気分に流れたら、二人区での議席の挑戦など論外になり、三人区、四人区といった定数の比較的多い選挙区でも、大きな失敗をまねくことは必至です。
とくにこの点では、三年前の参院選で選挙区の勝利をかちとったところが、“三年前より情勢はもっといいのだから、勝って当然”といった安易な見方におちこむ――ここに、もっとも警戒すべき危険の一つがあることを、強調しなければなりません。
党中央から支部まで全党一体の力を躍進のバネにしよう
さて、報告にたいする討論の問題ですが、きのう、きょうの会議で三十一人の同志が発言しました。全体として、情勢の見方、選挙闘争へのとりくみのたちおくれの問題、それを打開して前進をかちとる方針など、すべてにわたって幹部会の提起を積極的にうけとめ、さらに内容を豊かにした討論だったと思います。
なかでも非常に印象的だったのは、党大会で“必勝区と非必勝区のあいだの垣根”をとりはらった成果が、この討論にもあらわれていたことです。大県の発言には大県なりに、すばらしい活動内容や分析がありましたが、これまで非必勝区とされてきた諸県の同志たちの発言には、新たな意気込みで参院選にむかう活動の発展、多くの創意や展開が生きいきと反映していました。“垣根”をとりはらった討論をふまえ、この二中総を、全地方が力をあわせて躍進をかちとるバネにしたいと思います。
報告で指摘したことですが、日本の情勢がいかに激動的に、新しい特徴をもって発展しているかということが、みなさんの発言をつうじて無数の肉付けをえました。そういう生きた報告がたくさんありました。同時に、その報告にとらえられている情勢の発展にてらして、自分たちの足元をみると活動がおくれている、そのことを率直にうけとめた発言というのが共通の特徴でした。党の活動の情勢からのたちおくれ――ここに、現在の瞬間、力を集中して克服すべき要(かなめ)がある、という幹部会報告の提起が、討論をつうじてしっかり確認されたということです。このたちおくれを一日も早く克服し、全党がたたかいの配置について、もっともっと大きな意気込みと勢いで参院選に足をふみださなければなりません。
この中央委員会総会での報告とそれにたいする反応は、この会場内にかぎられてはいません。ご承知のように衛星通信(CS)で、全国の多くの同志たちが報告をみています。その数もかなりの規模におよび、CSで直接みた同志は党機関の役員が三千四百七十八人、支部の同志が二千五人、あわせて五千四百八十三人にのぼりました。また、昨夜ビデオでみた同志をくわえますと、機関役員が四千六百八十二人、支部の同志が三千七百五十一人、あわせて八千四百三十三人の同志が、昨日のうちに幹部会報告を直接みたということです。この同志たちから昨日、二百九十一通にのぼる感想がよせられました。私はその全部をよみました。なかには比較的簡単な感想もありますが、大部分は紙いっぱいにびっしり書きこんだ感想で、私たちが全党にうけとめてもらいたいと思っている点を、ズバリうけとめたものが多くありました。また、党中央は自分たちが支部でなやんでいることをよくつかんで、それにこたえる方針をだしているという意見もありました。全体が、支部から党中央にいたる全党の一体感というものを文章にみなぎらせたもので、いますぐにもこの報告をバネとして活動にふみだしたいという意欲にみちたものでした。こういう感想が中央委員会の開催中に全国からよせられていることも、報告しておきたいと思います。
二中総で提起した方針は、党のあらたな発展段階に対応している
幹部会がこんどみなさんに提起した方針は、内容的にはなかなか高度なものです。
たとえば、政策の問題でも、当面の緊急政策と、逆立ち政治を転換させるより根本的な政策要求と、「二重のとりくみ」という見地をうちだしました。
政党関係でも、共闘しながら論戦をするという問題を提起しました。これは、理論的にいえば、統一戦線とその内部での批判・論争の問題です。六〇年代から七〇年代に社会党との統一戦線が問題になっていた時代には、一致点で一定の共闘をすすめながら、意見のちがう点で批判しあうという問題は、統一戦線のあり方として大きく問題になりました。統一戦線における共同と相互批判という問題は、そういう歴史をもっていますが、いま、私たちがぶつかっているのは、この問題をいわば保守党とのあいだで、それなりのやり方でこなしてゆくということです。それだけに、ここにはなかなかの知恵と努力を要する問題がありま す。
参院選のたたかい方についても、この総会で政治戦と組織戦という問題をとりあげました。わが党の活動の歴史をふりかえりますと、「赤旗」の拡大と選挙戦との関係という角度から、この点でいろいろな経験をしてきました。「赤旗」の拡大という陣地の問題を軽くみて失敗したときもあれば、「赤旗」の拡大一本やりのせまい立場におちこんで失敗した経験もあります。今回の提起はそういう歴史もふまえて、政治戦と組織戦という、もっと広い立場で方針をだしたものです。
また、党内の指導の問題でも、政治的、理論的な指導の徹底ということを重視すると同時に、一人ひとりの党員の活動に目をむけ、その成長を援助しつつ、全党員が選挙戦に参加する状況をつくりあげるという問題をあわせて提起しました。
こういう点では、ここで提起されているのは、ある一つの問題にとりくむ場合にも、一面的な見地におちいらず、問題の全体をみながら、活動を全体的に前進させようという方針だといってよいでしょう。党の以前の発展段階では方針をこういう形でうちだすことは、なかなかむずかしかったと思います。実際、党活動といえば、「月間」型の運動が中心だったという時期もありました。党が力をだそうと思うと、なにか一つの課題に集中しないと大きな運動にならない。そこから脱却しようというときに、「単眼」ではダメだ、全体をみわたして、総合的に党活動を発展させる党にならなければいけない、といった議論をさかんにやったものでした。
しかし、いまではもうそんなことでは、党にたいする社会の要請、国民の要請にこたえることはできない――そこまで情勢がすすんできています。そのなかで、おのずから党活動の方針そのものの発展があるわけですが、方針のそういう発展を中央委員会のみなさんも、当然の発展方向として正面からうけとめる、CSで報告をみている地区の同志たち、支部の同志たちも、ここにいまの情勢が必要とする方針があるといって、正面からうけとめる、これを指針に確信をもってすすもうという感想が全国からよせられる。
私は、党活動の長い発展の歴史を考えると、党が今日、非常に重要な、新しい発展段階を迎えつつあることの一つのあらわれがここにあることを、ほんとうに痛感します。
量・質ともに、民主的政権をめざす党にふさわしい発展を
党大会の決定は、「民主的政権への接近のために何が必要か」として五つの任務をあげた冒頭に、「この課題をになうにふさわしい日本共産党の量的・質的な成長・前進」という任務をうちだしました。そして、「総選挙の得票の一割の党員と五割の読者」、「衆議院に百をこえる議席、参議院に数十の議席」などの量的な目標と同時に、党の質的な前進ということを、民主的政権に接近するために欠くことのできない課題としてあげ、つぎのようにのべました。
「質的には、全党の努力によって党の活動の内容と水準を民主的政権をめざすにふさわしいものに発展させ、数千万の国民と結びつく大衆的な政党への発展をめざすことであります」
わが党が政権をめざそうと思えば――わが党が単独で政権をになうつもりはありませんが、民主的な連合政権の軸をになうべき日本共産党が、量的な力だけでなく、党活動の質の点でも政権党にふさわしい力と水準をもつことが必要だ、そうでなければ国民に責任をおって、現実に政権をになう実力をそなえた党にはなりえない、これが党大会決定の指摘です。
こういう角度からこの二中総の歴史的な意義を考えると、二中総とその方針は、わが党の質的な発展という面で、一つの記録的な意味をもっているといえると思います。
さきほどある同志から、二十一世紀の政権をになう党にふさわしい発展をめざして、二中総の方針にとりくむという発言がありました。まさにそのとおりであって、ここに二十一世紀の政権党への成長・発展をめざす、わが党の確実な足取りがある、そのことをたがいによく確認し、確信をもってすすみたいと思います。
こういう方針は、ある意味では、方針としてしめすことは比較的簡単です。しかし、実行はたいへんです。その実行の要をになうのが、それぞれの地方で、党組織に責任をおっている中央役員の同志たちであり、また党活動のいろいろな部門の責任をおっている同志たちです。方針がこの中央委員会総会で決定されたら、これをどれだけ早く党活動の現実にするか、また実践をつうじてどれだけ豊かなものに発展させるか、そしてその成果を参院選での躍進にどれだけ生かしてゆくか、これは、二中総の決定をふまえ、それを指針としてのみなさんの活動によって決まります。そういう見地での、全力をつくしての奮闘を、おねがいするものであります。
思い切って視野をひろげる
最後に、参議院選挙での躍進をめざす活動の基本姿勢にかかわることとして、二つのことをのべたいと思います。 一つは、思いきって視野をひろげる、という問題です。今日の情勢の特徴が、われわれの認識と活動がたえず情勢の発展に追いこされる、そういう激動的な発展にあるということは、報告でも、みなさんの発言でも、くりかえしいわれたことです。そうであるだけに、私たちが情勢の発展に的確にこたえる見方をし、情勢にこたえる活動の前進をかちとるためには、やはり、情勢の発展にふさわしい視野をもつこと、思いきって視野をひろげ、その目で情勢をみてゆく、活動をみてゆく、という態度が大事だと思います。
また、どんな分野の活動でも、“これまでこういうやり方でやってきた、だから今後もそれで”ということで間にあわせないで、新しく発展している情勢にてらして活動を考える、これまでのやり方がそれにふさわしいものかどうかをいつも吟味し、発展が必要なものはどんどんとりいれる、そういう吟味をいつもやって、情勢の認識の点でも、活動の方法や規模の点でも、情勢の激動にたちおくれない――このことにつねに留意してほしいと思います。
党機関と支部のあいだに血のかよった関係をうちたてる
いま一つは、党機関と支部との関係――党の機関として活動をすすめるとき、支部との血のかよったつながりを徹底的に大事にする、という問題です。県機関の場合は、支部から比較的遠い立場にありますが、方針をだしっぱなしにせず、自分たちがだした方針が支部の現場で実際にどうなっているのかを、いつもよくつかむ。また、支部にどんな問題があって、どんなことになやんでいるかなど、支部の実情をつかむ。こういう努力をふくめて、党機関と支部のあいだに生きた血のかよった関係をつくり、これを大事にし、より発展させることに力をそそぐ――この立場も、ぜひあらゆる活動のなかでつらぬいてほしいと思います。
以上、幹部会報告を補足するかたちで、いくつかの点をのべました。
いよいよ二カ月あまり先に、参院選挙戦の公示をむかえます。この参院選は、日本共産党が二十一世紀の政権党に発展する流れを現実にきりひらくかどうか、そのことをはかる場ともなるものです。全党の奮闘で日本共産党の思いきった躍進をかちとることをめざし、中央委員会の諸同志が選挙戦の先頭にたって全力をつくされることをねがって結語を終わります。
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