1997年9月26日
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書記局長 志位 和夫
日本共産党第21回大会最終日の9月26日におこなわれた、「大会決議案の補強・修正についての報告」「決議案、中央委員会報告の討論についての結語」および閉会のあいさつは、つぎのとおりです。
中央委員会を代表して、大会決議案の補強・修正についての報告をおこないます。
大会成功を願う全党の熱い思いが結集
大会決議案は、全党から大きな共感と感動をもって受けとめられ、多くの党外の方がたからも積極的な賛同がよせられました。とくに、決議案が第二章「日本共産党はどんな日本をめざすのか」で、わが党のめざす新しい日本像をあきらかにするとともに、「二十一世紀の早い時期に民主連合政府を実現することをめざして奮闘する」という目標をのべたことは、内外に大きな積極的反響をよびおこしました。
決議案にたいして、発表後の約二カ月間の全党の討論、大会での討論をつうじて、多くの意見がよせられました。そのほとんどが大会決議案に積極的に賛同しながら、その充実を願って補強・修正を提案するものでした。その内容はたいへん多岐にわたっておりまして、各級党機関をつうじて提出されたもの、「しんぶん赤旗」評論特集版に掲載された意見をはじめ個人から直接届けられたもの、大会で出されたものなど、字句上の問題をふくめて、八百九十三件にのぼりました。この数は、この間の党大会にない大きな規模のものであります。ここには大会成功を願う全党のみなさんの熱い思いがしめされています。
大会決議案の討論は、全体としてたいへん活発で、建設的で、充実したものであり、民主集中制にもとづくわが党の民主的気風、綱領路線にたった科学的探究の精神を、生きいきと発揮するものとなりました。私は決議案をよりよいものにしようという全党の同志の真剣な努力と熱意にたいして、心からの敬意をまず申しあげるものであります。(拍手)
全党討論をふまえての補強・修正について
中央委員会は、決議案を最終的にしあげる文書処理をおこないました。その結果は、本日お配りした決議案の最終案にしめされております。補強・修正個所は、傍線部分でありますが、大きくわけて、二つの角度からの補強・修正の作業をおこないました。
第一に、全党の討論と、大会での討論、提案をふまえて、道理ある積極的意見をとりいれ、補強・修正をおこないました。その主な内容はつぎの点であります。
第二章・第七節でのべられている“ルールなき資本主義”をただす各分野の政策について、中小企業の項に「納税者憲章」の制定、農業・食糧問題の項に漁業・林業の再建、環境問題の項に大気汚染・酸性雨問題の重視など、一連の補強をおこないました。
第二章・第八節の民主主義の発展をのべた部分については、その第三項でいくつかの重要な補強をおこないました。
その一つは、ここでのべられている「社会の病理現象の克服」とかかわって提起した十項目の「民主的な社会の 形成者にふさわしい市民道徳」についてであります。決議案の原案では、一九七七年のわが党の「教育改革の提言」でしめされたものを引用したわけですが、その後、八〇年代前半の校内暴力などの急増のなかで、八〇年代に発表した一連の政策文書では、「人間の生命を尊重する」、「いっさいの暴力を許さない」など一連の補強がおこなわれております。決議案の内容も、七〇年代、八〇年代のこれらの提言全体をふまえたものにあらためました。
二つは、学校教育のゆがみの是正の課題についてであります。これは、今回の決議案の補強の要望として、もっとも多くだされた問題でありました。それは、今日の「いじめ」問題、あるいは「不登校」の問題、あるいは教育環境の荒廃の問題など、子どもたちと学校のおかれた深刻な実態を反映する意見だと思います。そういう実態をふまえて、橋本内閣の「教育改革」の反動的内容の批判、党としてとりくむべき重点的方向、そして教育政策と運動のいっそうの発展の努力――これについてはこれまでも「いじめ」問題の提言などさまざまな努力がはかられてきたわけですが、それにとどまらない政策と運動のいっそうの発展の努力などについて、簡潔でありますがひとまとまりの叙述をつけくわえました。
三つに、アイヌ民族の生活と権利をまもる問題や、在日外国人への地方参政権の付与と人権保障についても、ここで簡潔に補強いたしました。それは日本社会における少数者の権利をまもることは、日本の民主主義の発展全体にとって大切な意義をもつものとして、重視する必要があると考えるからであります。
第三章・第十節では、アメリカ覇権主義の批判がのべられておりますが、この間、七月、九月と、あいついでアメリカによって「未臨界核兵器実験」、すなわち核分裂物質を用いながら核爆発をともなわない核実験が強行され、国際的にも大きな批判をよびおこしました。核戦力の保持と強化をめざす暴挙として、これも批判的に言及しました。
第四章・第十四節の地方自治体問題にかかわって、一つの新しい項を起こして補強をおこないました。この間、新潟県巻町での原発建設に反対する住民投票、沖縄県での米軍基地問題を問う住民投票、岐阜県御嵩町での産業廃棄物処理場建設に反対する住民投票がおこなわれました。討論でもだされましたが、現在も沖縄県名護市で、米軍海上基地建設の是非を問う住民投票を要求する運動がひろがって、国政をゆるがす重大な焦点となっております。そうした住民みずからの意思を直接投票という形でしめす流れは、地方自治の新しい発展として注目すべきであります。また全国各地で、自治体の「食糧費」問題、官官接待やカラ出張問題などを、住民みずから監視し、ただしていく市民オンブズマンの活動も発展しています。これらの重要性について、この節に新しく第四項を起こして補強し、ひとまとまりの叙述をつけくわえました。
第五章・第十七節の大衆運動についてのべたところでも、一連の補強をおこないました。全生連や民医連、新日本スポーツ連盟などの分野別組織、障害者運動などの発展の重要性についても明記いたしました。また高齢者運動については、この分野の今日はたしている役割、今後の重要性から、重視して補強してほしいという意見が数多くよせられました。高齢者人口は現在人口の約一五%をしめ、二〇二〇年には国民の四人に一人が高齢者となる高齢化社会をむかえます。高齢者を進歩と革新の側に結集するたたかいの意義は、年々大きくなるわけであります。そこでこの節に第六項を新しくつくり、簡潔でありますが党としての位置づけとたたかいの方向についてのべることにいたしました。
また、文化人・知識人の項目で、宗教者との対話と共同も重視することを明記するとともに、大学教員任期制導入反対のたたかいやNPO(非営利法人)法制定のとりくみについても補強いたしました。
以上が討論にもとづく主な補強点であります。出された意見のなかには、道理ある積極的提案でありますが、決議案という性格にてらして、あるいはその全体の長さの制約も考慮して、細目にわたるものなどについては、採用することができなかったものも少なくありません。全国の同志のみなさんから熱心によせられた意見を読みますと、これも入れたい、あれも入れたいと思うものが少なくないわけでありますが、これをすべてやっておりますと決議案の長さが倍ぐらいになってしまうことにもなりますので(笑い)、これらの意見は、新しく選出される中央委員会のもとでの党の政策展開、運動の発展に、生かされるようにしたいと考えますので、どうかご了解を願いたいと思います。(拍手)
中央委員会報告の提起にかかわっての修正・補強について
第二に、中央委員会報告で新たに解明、提起された問題にかかわって、決議案と報告の整合性をはかるうえで必要なものにかぎって、修正・補強をおこないました。
情勢論にかかわっては、おもに二つの点であります。一つは、決議案の第二章・第七節で、橋本「改革」の反動的内容の当面の熱い焦点としてうかびあがっている、連続的な社会保障改悪とのたたかいを明記したことであります。これはさしせまった臨時国会での闘争の重大焦点の一つになるわけで、これについて決議案にもはっきりと書きこみました。
いま一つは、第二章・第八節で、この間起こった橋本首相による、ロッキード事件の収賄罪をおかした人物の閣僚任命問題についてであります。この問題での、首相の任命責任はきわめて重大であって、今後もひきつづくきびしい追及が必要であります。この事件をつうじてしめされた自民党の救いがたい金権政治への無感覚、政治道義の退廃について、批判する記述をおこないました。
決議案の第四章・第十三節にのべられている参議院選挙方針については、必勝区と非必勝区の垣根をとりはらい、全選挙区で議席をあらそう構えで、“自共対決”の選挙をたたかうという方針の発展などについて、中央委員会報告にそくして補正をいたしました。
決議案の第五章・第十八節の党勢拡大についても、党大会までの運動の到達点にたって、党員拡大や、機関紙読者拡大の方針などの補強を、報告にそくして簡潔にのべております。
なお中央委員会報告で新たに提起された問題、解明された事項、重要な命題、これらを何もかも大会決議案にもりこむということはしておりません。大会決議案と中央委員会報告は、民主的政権の樹立をめざして二十一世紀にむけて党のすすむべき方向を、いわば立体的にあきらかにしております。党大会の決定として採択されれば、双方が一体のものとして、いわば両々相まって、つぎの党大会までの指針となるものであります。そうした見地から、できるだけ重複はさけ、必要なものにかぎって補正をおこなっております。
以上が、大会決議案を補強・修正した主な点であります。
同志のみなさん。大会代議員のみなさんの採決に付されているこの大会決議案は、二十一世紀にむけた日本の進路、日本共産党の指針をあきらかにした歴史的文書として、全党の同志の英知を結集して、立派に練りあげられたものであるということを確信するものであります。以上をもって報告を終わります。(拍手)
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