1997年9月22日
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第21回党大会にたいする中央委員会の報告(6)
日本共産党第21回大会の1日目(22日)に、不破哲三幹部会委員長がおこなった「第21回党大会にたいする中央委員会の報告」(6)は、つぎのとおりです。
六、科学的社会主義の事業と二十一世紀の展望
最後に、われわれの事業の今後の展望の問題であります。
日本共産党はどういう政党か
まず、日本共産党はどういう政党かという問題についてふれたいと思います。わが党の躍進を前にして、自民党などの陣営のあいだから、「日本共産党ががんばっているのは、政権から遠いからだ(笑い)、だから革新的主張は変えないですむんだ」とか、「もっと大きくなれば、必ず社会党のようになる」とかいう勝手な解釈がしばしば聞こえてきます。マスコミの一部でも、「社会民主主義化」必然論といったものが、よくとなえられます。しかし、日本共産党の前途に、その種の期待を抱いてもまったくむだだということを、私は申しあげたいのであります。(拍手)
社会民主主義の潮流とは何か。これは歴史的にいえば、第一次世界大戦のさいに、帝国主義に屈服して、侵略戦争賛成に変質した諸党が、社会民主主義の潮流を形づくったものであります。この潮流は、労働者や国民の要求をある程度反映して、革新的な措置をもとめるという側面ももちますが、同時に、全体として(1)資本主義永続論の立場から、「資本主義のもとでの改良」だけを絶対化するという弱点、それにくわえて、(2)しばしばその改良の課題さえ中途で放棄し、背をむけてしまうなどの弱点を、根深くもっているのが特徴でした。
とくに、日本の社会民主主義諸党は、侵略戦争と軍国主義に加担した戦前の歴史にくわえ、戦後も、今日にいたる政治史をつうじて、社会党は自民党の与党勢力に転落し、民社党は新進党に解消するなど、改良とさえ無縁な現状維持あるいは反動政策の推進勢力に落ち込んできたのであります。
社会民主主義のこうした路線や体質は、日本共産党とは無縁であり、日本共産党が国民とともにすすめようとしている事業、民主的改革の事業とも無縁のものであることを、まず指摘したいと思います。(拍手)
では、日本共産党はどんな政党なのか、このことを、社会をどう変えようという党なのかという角度から、あらためてのべたいと思います。
第一は、日本共産党は社会の段階的発展の立場にたつ党だということであります。
わが党は将来の社会進歩について大きな展望をもっていますが、社会の発展というものは、国民のあいだで熟している問題を一つひとつ解決しながら、一段一段と段階的にすすんでゆくものであることを確信しています。そして、いま日本の社会が必要としているのは、国民の利益をまもる立場で大企業中心主義をうちやぶる点でも、日米軍事同盟をなくして本当の独立の道、平和・中立の道にふみだす点でも、「資本主義の枠内での民主的改革」という性格をもつことを明確に認識しています。このことは最近になってわが党がいいだしたことではありません。日本共産党がこの三十年来、日本の進路にかんする基本方針として、綱領に明記し、その実現をよびかけ、そのために努力をつくしてきた目標であります。
第二に、日本共産党は多数者革命の党であります。
日本社会のどんな改革、どんな変革も、国民多数の合意と支持のもとに実現する、「国民が主人公」というこの精神は、日本共産党が政治にのぞむ信条ともいうべきものであります。それが一時の、また口先だけのものでないことは、わが党が、あらゆる迫害に抗して「国民が主人公」の民主政治の実現のために奮闘してきた戦前からの歴史が、実証しています。(拍手)
だからこそ、日本共産党は「自由と民主主義の宣言」のなかで、そのことを明記したのであります。
「宣言」は、日本共産党が展望している日本の社会進歩の前途を、民主連合政府、民主主義革命、社会主義革命とおおづかみにしめしたうえで、社会進歩のこれらの諸段階と国民の意思との関係を、つぎのように明確に規定しました。
「これらの諸段階は、それぞれ、日本国民の生活と福祉、権利と自由を拡大向上させる、社会発展の前進的な諸段階をなすものであるが、社会進歩のどのような道をすすむか、そしてその道を、いつどこまで前進するかは、主権者である国民の意思、選挙で表明される国民自身の選択によって決定される問題である」
第三に、日本共産党は、資本主義を乗りこえてゆく人類社会の発展を科学的に展望している党であります。
資本主義の社会とは、根本的にいえば、大企業の利潤追求が経済を動かす一番中心の力となっている社会であります。だからこそ、そのもとで国民多数の利益をまもる経済民主主義の立場にたとうとするなら、大企業の横暴を民主的なルールによっておさえる政策――「大企業にたいする民主的な規制」の政策が必要となるのであります。いま日本共産党はその政策をかかげ、民主的改革の中心内容の一つに位置づけて奮闘しているところであります。
しかし、人類社会も、もちろん日本国民も、いつまでも「資本主義の枠内」というこの社会発展の段階にとどまっているものではありません。資本主義の社会は世界的には二百年あまり、日本ではまだ百数十年の歴史しかもっていない体制であります。やがてはその発展段階を乗りこえ、「国民が主人公」の原則がより全面的に実現する、より高度な社会への道をめざす新たな国民的な探究の時期が、かならずやってくることを、われわれは確信しています。日本共産党はそういう人類史的な壮大な展望をもった党であります。
もちろん将来のこの探究も、あれこれの党が勝手に決めることから始まるものではありません。いま日本社会、日本国民のあいだで熟しつつある民主的改革の課題をやりとげることをつうじて、また新しい前進をもとめる国民多数の合意の成熟をつうじて、これが歴史の日程にのぼってくるものであることを、私はここでかさねて強調したいのであります。
第四に、戦争と平和の問題でいえば、日本共産党は、帝国主義と侵略戦争に反対し、世界平和と民族自決権を追求し、日本国民の悲願である核兵器廃絶に力をつくす党であります。
この問題ではあまり多くをいう必要はないと思います。改革、革新、変革の一歩一歩は日本主権独立の完全な回復への一歩一歩であると同時に、日本が他国にたいして軍事的脅威をあたえる立場――日米軍事同盟の再編強化という危険な立場からぬけだし、アジアと世界の平和へ貢献する立場に転換する一歩一歩とならなければならないものであります。わが党は、この点で、民主的改革をもとめる日本の革新・民主・平和の勢力の立場と運動は、アジアと世界の平和を願う多くの人びとの努力と、相互連帯の広範な接点をもちうることを確信するものであります。(拍手)
わが党は、民主的改革の諸課題を、今日、こういう立場からうちだしています。国民多数の同意と支持のもとにこの諸課題が実現されたら、それが「国民が主人公」という方向での日本社会の歴史的な前進、社会進歩の巨大な一歩となることはまちがいありません。このために力をつくすものであります。(拍手)
二十世紀の成果をふまえた二十一世紀の展望
つぎは、われわれのこの事業が、世界的にみてどういう意義をもつのかという問題であります。
いま私たちは二十世紀の最後の数年間を生きていますが、二十世紀はどんな世紀だったでしょうか。支配者の側では、帝国主義とファシズム、二つの世界戦争の世紀でしたが、世界の人民諸勢力の側では、民主主義と民族自決の巨大な進歩の世紀でした。
社会主義への前進という問題では、社会主義に到達したという成功例はありませんでした。それは、第一次世界大戦および第二次世界大戦の結果と結びついて世界の多くの地域で激動的な変化が起こったが、発達した資本主義に属する主要な国ぐにでは、社会主義をめざす変革が始まらなかったというところに、その重大な要因の一つがありました。
旧ロシアのような遅れた出発点から社会主義に移行するということは不可能ではありませんが、特別に困難な課題であります。その困難さの土台のうえに、スターリンの犯罪的な誤りが、この事業を決定的に変質させ、社会主義をめざす軌道を覇権主義、専制主義の軌道にきりかえて、ソ連およびそれに従属した諸国を社会主義とは無縁な抑圧的な社会に転落させたのであります。このことは前大会で詳細に解明した問題でした。
二十一世紀の新しい特徴の一つは、決議案にあるように、発達した資本主義国の全体が、矛盾と困難を深めているところにあります。
世界政治のうえでも、アメリカの帝国主義・覇権主義が、世界の平和と安定をおびやかす最大の要因となっています。核兵器廃絶の実現にとっても、アメリカの政府・軍部の核兵器固執の政策が最大の障害物となっていることは、もはや明白であります。
こういう点をあわせて考えるならば、新しい世紀が、資本主義を乗りこえてゆく社会進歩の諸条件が成熟にむかう世紀――少なくとも潜在的には、世界的規模で成熟する世紀となるであろうことは疑いえないところであります。(拍手)
また、アジア・太平洋地域が政治のうえでも経済のうえでも、いっそう重要な世界的位置をしめようとしていることは、日本のおかれている立場からいっても重要であります。この地域は、アメリカの覇権主義の戦略でも特別の重点がおかれていますが、その半面、帝国主義・新旧植民地主義・軍事同盟政策に対抗する非同盟諸国運動が大きな力をもっている地域でもあります。決議案がアジア外交の今後の展開を重視する立場をとっている根拠もここにあります。
日本における科学的社会主義の事業の前進のために
こういう歴史的な時期に、高度に発達した資本主義国の一つであり、アジア・太平洋地域におけるアメリカ帝国主義の従属的同盟者である日本で、わが党が科学的社会主義の事業を前進させていることは、文字どおり世界史的な意義をもっているといわなければなりません。
これは偶然のことではありません。民主主義のための戦前からの一貫した闘争、五〇年問題の解決、党綱領の確定、自主独立の立場の確立、覇権主義との闘争等々、七十五年の歴史のすべてが、日本共産党の今日をきずきあげる不可欠の土台とも前提ともなっているのであります。(拍手)
これらの成果を土台として、いま日本でわれわれがめざしている方向は、社会進歩の法則的な方向の一つとして、国際的な意味をもっていると思います。わが党の民主的改革の方針にたいして、多くの方面から注目がひろがっていることも、その一つのあらわれであります。(拍手)
同志のみなさん。日本の歴史をひらくと同時に、世界史の発展の先頭にたつ壮大な展望をもって、新しい課題に挑戦しようではありませんか。
以上をもって大会への中央委員会報告を終わります。(長く大きな拍手)
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