4年ぶりですか、赤旗まつりは。待ちに待っていたお客さんの期待にこたえなきゃと思うと、楽しみとともにプレッシャーも大きいですね。
私はこの間、毎年新作の新内を1本作り、歌舞伎とのコラボレーションなどにも挑戦しています。最近思うのは、私の師匠・林家彦六はすごい人だということ。80歳を過ぎても「次はこれをやりたい」と活力に満ちていました。
その師匠がよく言っていました。「新しいことに挑戦していれば、世の中が変わっても怖くない」と。これは落語を志す者だけじゃなく、すべての人に通じることだと思います。
ずっと「青空寄席」として親しまれてきましたが、今回は初めて屋内でやることになったんですね。雨の心配がないのはいいですね。
私が初めて師匠のお供で赤旗まつりに参加したのが1974年の多摩湖畔でした。地面が赤土でね、あいにくの雨でぬかるみ、師匠が転ばないように手をとって歩いたのを覚えています。当時は、野外で落語をやるなんて想像もつきませんでした。
行ってみて驚いたのは、お客さんの熱気です。大勢の方が師匠を待っていて「ハヤシヤ」「イナリチョウ(稲荷町)」と掛け声が乱れ飛び、熱心に聞いて下さる。そして本格的な番組の充実ぶり。そんな赤旗まつりを師匠は、たいそう楽しみにしていました。
師匠と一緒に次の年から出さしていただいているうちに、いつの間にか私の出演歴が一番長いということになったそうで。ますます、がんばらなくてはいけません。
私の演目は約150くらいありますが当日、何をやるかは、まだ決めていません。お題っていうのは、はなから決まっていたほうがいい場合と、そうでない場合があります。
この夏、東京大空襲を題材にした新作「麻の葉」をやったときには、事前に新聞で取り上げていただいたのです。すると、そういう噺(はなし)なら聞いてみたいというお客さんがやって来た。それで、こっちの思いと、お客さんの思いが共鳴して、いい雰囲気になりました。逆に演目が決まっていて、その場のお客さんに合わないとき別の噺をするわけにいきません。演者が空回りしてしまうという難しさもありますね。
赤旗まつりでの、もう一つの楽しみといえば、山形の玉こんにゃく。なかなかめぐり合えない最高の味です。これも含めて、お客さんと一緒になって楽しいまつりにしたいですね。(2010年10月4日(月)「しんぶん赤旗」)
文 武田祐一 写真 佐藤光信