2004年5月21日 衆議院 内閣委員会 日本共産党 吉井英勝議員
私は日本共産党を代表して公益通報者保護法案に対して反対の討論を行います。
近年、内部告発によって企業や行政の違法・不正行為が次々と明らかにされています。告発がもたらす社会的役割と社会的利益にてらせば、不正等を知った者が通報をしやすくし、十分法的保護を受けられる制度を設ける必要があることはいうまでもありません。
このように本来あるべき内部通報者保護の制度からみるなら法案はむしろ、通報をしにくくし、かつ法的保護を限定するなど、通報者を萎縮させ、通報を抑制するものといわなければなりません。
以下、順次反対の理由を申し述べます。
反対する理由の第一は、法案は通報対象事実の範囲を狭くし、保護すべき通報を限定しているために、通報者の運用を複雑にし、通報者保護の実効性に乏しいことです。
法案は、保護する通報対象事実を、いわゆる消費者利益擁護関連法案に限定し、「別表」で例示的に七法律を明記していますが、政令でさらに絞り込みが予想されています。そのうえで「罰則のある犯罪行為」ときわめて狭く限定しています。
公益にとって重要で実際に通報事例の多い、税金のムダ遣い、脱税、補助金不正受給、違法政治献金、談合などは、はじめから保護の対象外です。このように通報の内容によって、法的保護があったりなかったりする法律では、運用を複雑にし実効性は期待できません。
理由の第二は、外部通報の要件がきびしいために、通報者を萎縮させ通報を企業や行政機関の内部に閉じ込めることになるからです。
法案で規定するマスコミなど外部への通報要件は、通報者に立証が困難で、高いハードルとなっていることが質疑の中でも明らかになりました。これでは通報が、企業や行政機関の内部に閉じこめられます。閉じ込められた通報は、これまでの事例が示しているように、うやむやにされ、もみ消されヤミに葬られてしまいます。
また法案の外部通報要件は、現行の判例水準を切り下げるもので、これまで守られてきた通報者保護の権利が奪われるおそれさえあります。
第三は、通報者保護の対象から下請け事業者を除外していることです。
法案は、通報者保護の対象を労働基準法の規定する労働者だけに限定し、下請け事業者を除外しています。下請け事業者は、事実上元請企業等の指揮監督下に置かれているのが実態で、労働者と同じような立場です。また、この間の内部告発の多くが、そうした関連下請け事業者などが行っている実態からしても、下請事業者を除外していることは不当であります。
第四は、不利益取扱い禁止の実効性を担保する措置がないことです。
法案は通報者の不利益取扱いを禁止しています。しかし実際には、通報者の不利益取扱いを認める事業者は、皆無に等しいでしょう。この不利益取扱いを通報者が立証する困難性はこれまでの裁判事例が示しているところです。事業者側に立証責任を課すなどの措置をとらなければ、不利益取扱い禁止の実効性は担保されません。
以上、述べましたように法案は、通報対象事実の範囲を狭くし、その運用を複雑かつ実効性の乏しいものしているだけでなく、外部への通報要件を高くし現行の判例水準さえ切り下げています。これでは「公益通報者保護法」というより「公益通報抑制法」であるということを指摘し反対討論を終わります。