2004年3月5日 衆議院 本会議 日本共産党 吉井英勝議員
私は日本共産党を代表して、二〇〇四年度政府予算案に対する反対討論を行います。
反対理由の第一は、国民が最も求めている景気の回復と生活の安定に逆行するものだからです。
政府は、「景気は着実に回復している」と言っていますが、経済の実態も国民生活の実感も全く違っています。輸出上位三十社で輸出総額の五割(46・3%、3月2日「日経」)を占める大企業が、輸出と大規模リストラで史上最高の利益を上げているだけです。肝心の国民生活は、厚生労働省の調査によっても、給与は三年連続減少、完全失業率は五%をこえ、正規社員はこの五年間に一九二万人リストラされて、派遣労働は一二八万人増やされたのを初め、アルバイトやパートという低賃金・不安定雇用に置き換えられています。これは、小泉首相が「大企業がリストラするのは当然だ」と答弁して、ヨーロッパの雇用を守るルールの確立とは逆に、失業と低賃金を加速する労働政策を推進してきた結果です。
雇用者所得の落ち込みのうえに、増税と社会保障の負担増は、昨年からの年間四兆四千億円に追加して、今年から三年間かけてさらに年間三兆円も負担を増やす予算ですから、家計消費を冷え込ませ景気の足を引っ張るばかりです。小泉内閣の経済政策では景気の建て直しも中小企業の経営と国民生活の防衛もできません。
第二に、年金大改悪をすすめる予算だということです。とりわけ憲法二五条を根拠法とする国民年金について、生活保護水準よりいまでも低い平均月受給額四万六千円を更に一五%切り下げようとするのは、憲法の生存権保障の原則を踏みにじる重大問題です。政府統計でも六割のお年寄りが年金収入だけに頼っている中で、これほど冷酷なやり方は、国民生活の安定を図るという政治の根本に反するものです。
二〇一七年までに厚生年金と国民年金あわせて四兆円の負担増を押しつけ、実質の年金給付は一五%引き下げという、「負担増と給付減の自動装置」である年金改悪を進めること一体の予算など断じて許すことはできません。
第三に、地方財政危機を深め、地方自治の破壊と住民サービスの大幅な後退をもたらす予算だということです。
「三位一体改革」といって、国庫補助負担金の一兆三百億円の削減、地方交付税総額二兆八千億円の削減、合わせて三兆八千億円もの国から地方への財源を切り捨て、その一二%にしか当たらない税源委譲だけで、いま全国の多くの自治体で当初予算案も組めないという悲鳴が出ています。
すでに全国知事会の梶原岐阜県知事からも「これでは三位バラバラ改悪だ」と厳しい批判がでています。福祉や教育への国の責任を放棄して、地方自治体と住民に負担を押しつけるだけの「三位一体改革」でなく、住民自治の上にたつ地方団体の自治という本来の地方自治の拡充に繋がる、権限と財源の地方への委譲こそ必要なものであります。
第四に、憲法違反のイラクへの自衛隊派兵を進める予算だということです。
アメリカのケイ調査チーム団長が「イラクにはもともと大量破壊兵器はなかった」と証言したことで、大義のない戦争であったことは明白です。小泉首相が「イラクは大量破壊兵器を保有している」と断言してイラク戦争を支持したことの誤りが浮き彫りになりました。
イラク占領当局の日本政府宛の書簡などで、自衛隊の安全確保支援活動が占領支配の一端を担うこともハッキリしました。これらは、交戦権や武力行使を禁止した憲法と両立しないものであります。また、自衛隊の先遣隊報告が事前につくられていた事実など政府の説明の信頼性は根底から崩れました。
いま必要なのは、米英の占領支配をやめ、イラクの主権を直ちにイラク国民にもどすこと、国連の枠組みで有効な復興支援を行うよう切り換えることであります。
最後に、官房機密費の私的支出疑惑、警察捜査報酬費の組織ぐるみの不正支出、国会議員一人当たり四千万円、総額三一九億円の憲法違反の政党助成金など、税金の無駄づかいや不正の温床となる予算が正されていないことは、絶対に容認できません。
予算は政治を映す鏡。我が党は、国民が主人公と言える政治の実現、そういう予算の実現にむけて闘う決意を表明して、反対討論を終わります。