日本共産党

「テロ特措法延長案」 反対討論

 2003年10月10日 参議院 本会議 日本共産党 小泉親司議員 

 私は日本共産党を代表して、テロ特措法改正案に反対の討論をおこないます。
 テロ特措法はそもそも、9・11テロに対し、アメリカが開始した報復戦争の軍事支援のため、自衛隊を海外派兵させるものであり、日本国憲法第9条を真っ向から踏みにじるものであります。この違憲立法を延長する今回の改正案は、断じて許されるものではありません。  

 反対の理由の第一は、戦争という手段では、テロを根絶できないどころか、軍事力での対応がテロの土壌を増幅し、拡大するものだからであります。
アフガニスタンにおけるテロ報復戦争は二年を過ぎました。しかし、米英をはじめとした大規模な武力行使によってタリバン政権は倒れましたが、依然として、ウサマ・ビンラディンや、タリバンの最高指導者であるオマール師など、アルカイダやタリバンの主要メンバーは拘束されておりません。
 その一方、対テロ報復戦争で、アフガニスタン国民は、甚大な犠牲を受けました。米軍が、アフガニスタン全土に投下した非人道的残虐兵器・クラスター爆弾によって、何の罪もない女性や子どもたちが殺戮され、傷つきました。犠牲になったアフガニスタン国民は、9・11同時多発テロの被害者数を大きく上回り、3700人をこえています。 
 国内の治安はますます悪化し、国民の願う安定とはほど遠い状況であります。アナン国連事務総長は、七月、国連に提出したアフガニスタンの状況に関する報告書で、「アフガニスタン全土の全般的な治安状況は脆弱なままであり、多くの地域では悪化の兆しを示している」と指摘しているほどであります。
 アフガニスタンにおける対テロ戦争の二年が示していることは、戦争という手段では、テロを根絶できないということであります。
 いうまでもなく、2001年9月11日、米国でおこった同時多発テロは、多数の市民の命を無差別に奪う憎むべき蛮行であり、絶対に許されない卑劣な犯罪行為であります。いかなる宗教的信条や政治的見解によっても正当化できるものではありません。この野蛮なテロを根絶することが、人類がこの地球上で平和に生きていく根本条件であることはいうまでもありません。
 テロを根絶するためには、国連が中心となって、国連憲章と国際法にもとづき、テロ犯罪の容疑者、犯罪行為を組織、支援した者を逮捕し、裁判にかけて厳正に処罰するという国際的しくみをしっかり築くことであります。戦争で報復することは、テロ根絶にはなりません。逆に、新たな戦争による大きな惨害をもたらし、国際社会の不団結をまねく結果となるのであります。
 平和憲法をもつ日本は対テロ戦争ではなく、国際的なテロ包囲網の構築のための外交努力を積極的におこなうべきであります。

 第二に、自衛隊の米軍支援が、イラクへの戦争支援にもおよび、テロ特措法に違反しているからであります。
 インド洋における自衛隊の給油支援は、イラク戦争の主力となった空母キティーホークにまで拡大されました。
 この事実を指摘した私の質問に、防衛庁長官は、明確な客観的根拠を示さず、「日米で交換公文を結んでおり、アメリカを信頼している」ことを繰り返すだけでした。
 小泉総理は、「我が国から燃料提供を受ける米海軍がその時点で現実に対テロ作戦行動に従事していれば良い」などという脱法行為を追認する答弁すらおこないました。
 テロ特措法違反の事実を隠したままでの延長など言語道断であります。
 しかも、テロ特措法にもとづいてインド洋に派遣された自衛隊の米軍支援について、政府が内容をいっさい明らかにしないことは、国会と国民を愚弄するものであり断じて容認できないことであります。

 第三に、今回のテロ特措法の2年間延長は、自衛隊派兵を恒常化し、憲法違反の歯止めなき海外派兵に道を開くからであります。
テロ特措法は「テロ攻撃によってもたらされている脅威の除去に努める」と規定しています。ところが、いったいどのような状態になれば脅威が除去されたことになるのか、内閣官房長官も、防衛庁長官も、明確な根拠をしめすことができませんでした。
 一方、ブッシュ大統領は、「テロ戦争はわが国の力の試金石だ」とのべるとともに、イラクでのアメリカの戦略の一つがテロ組織の壊滅にあるといいはじめました。小泉総理も、「国際社会によるテロとの闘いは継続していかなきゃならない」とのべて、日米同盟と国際協調を主張しています。
 ブッシュ大統領と小泉総理が対テロ戦争を世界各地に広げようとしているなかで、テロ特措法の延長は、自衛隊の撤退どころか、海外派兵に歯止めがなくなるということにつながるものであります。

 第四に、小泉総理が、アナン国連事務総長をはじめ世界の多数の国がつよく反対しているイラク戦争を支持したあやまりを認めず、アメリカいいなりに、年内にも自衛隊をイラクに派兵し、ブッシュ政権の対テロ戦争と先制攻撃戦略に唯々諾々と従おうとしているからであります。
 総理は、イラクが大量破壊兵器を「保有している」と断定して、アメリカのイラクに対する先制攻撃を支持しました。しかも、「保有」と断定した根拠を聞かれても、欺瞞に欺瞞を重ねてきたのであります。
 しかしいまや、アメリカCIAの調査団でさえ、米議会に、イラクの大量破壊兵器保有の「証拠は未発見」と中間報告するにいたっています。また、国連査察団の新旧責任者はそろって、大量破壊兵器がイラクにあるとは「ますます考えがたくなっている」とのべました。総理が「保有」したと断定したことの誤りは、明々白々であります。
 これらの事実は、米英のイラク戦争に大義がなかったことを明確に示しています。
 それにもかかわらず、自衛隊を派兵して、米英の軍事占領を軍事支援することは、誤りに誤りを積み重ねるだけであります。
 イラク情勢は、米軍司令官が、「米軍がイラクにとどまる限り、攻撃と死傷者は続くだろう」とのべたように、泥沼化していることは明白であります。政府は非戦闘地域を見つけて自衛隊を派遣すると強弁しますが、米軍司令官がイラク全土が戦闘地域であり、非戦闘地域など線引きできないと明言しています。非戦闘地域や安全な地域などどこにもないことは明白であります。にもかかわらず、アーミテージ米国務副長官から「日本は逃げるな」「お茶会じゃないんだ」と一喝されるや、政府調査団派遣を実施し、自衛隊派兵の道筋をつくろうとしています。
 官房長官は、「政府調査団は、米軍に警護されているのか」との私の質問に、その事実を認めました。米軍に守られなければ調査もできないということは、いかにイラク全土が危険にさらされているかを証明しているではありませんか。
 国連では、アナン国連事務総長を先頭に、多くの国々が、米英占領軍による軍事占領のもとでの復興ではなく、国連中心、国連主導のイラク復興に転換することを求めています。イラクの主権は、期限を決めて、イラク国民に返還することを要求しています。
 ところが、総理は、米軍の占領が中心であって、国連は補助的役割にするというブッシュ大統領と同じ言い分に終始しました。まさに、アメリカ追随の極みといわなければなりません。

 わが党は、イラク問題の真の解決は、米軍主導の占領支配から、国連主導の復興支援に軌道をきりかえ、イラク国民に主権を返還し、イラク国民が真に主人公となった国づくりを支援することにあることを強調するものであります。
 無法な占領支配を支援するための自衛隊派兵を、米国いいなりで強行することは、日本が、アメリカと同じ泥沼に沈むことになります。いまからでもイラクへの派兵計画を中止すべきであります。
 テロと戦争の悪循環をもたらすブッシュ政権の対テロ戦争への追随をやめ、テロ特措法を廃止して、インド洋から自衛隊をただちに撤退させるべきことをつよく要求して、反対討論を終わります。


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