私は、日本共産党を代表して、担保物権及び民事執行制度の改善のための民法等の一部を改正する法律案に対して反対の討論を行います。
今日、集合住宅や賃貸マンションには約九百二十八万世帯が居住しており、実に全国四千四百万世帯の二一%、借家住まいの七八%に上ります。これら住民の居住の安定を図ることは政府の責務であります。
ところが、本法案は、占有屋による執行妨害排除や短期賃貸借制度の不安定さを理由として短期賃貸借制度を廃止し、賃貸マンション居住者が安全に、かつ安心して住まう権利を後退させ、生活の基盤を揺るがすものです。いわゆる占有屋等による違法な強制執行妨害による収益が暴力団など反社会的集団の資金源の一つになっており、対策が必要なのは当然のことです。本法案の保全処分の強化、明渡し執行の実効性の向上など対策強化は必要です。しかしながら、短期賃貸借制度を廃止しても、悪質な占有屋を根絶はおろか激減させることもできないことは、与党側参考人も述べたとおりであります。
逆に、短期賃貸借制度廃止が抵当物件がほとんどである我が国建物賃借権の保護を決定的に後退させるのは余りにも弊害が大きいと言わねばなりません。明渡し猶予期間が設けられるといっても、原案での三か月、修正による六か月では賃借人の居住の安定を図ることはできず、また敷金返還請求権も承継されないというのでは、到底、国民の納得を得られるものではありません。
そもそも賃貸物件は、その多くが自己使用目的ではなく、賃借を目的として建設されています。金融機関も、賃貸用物件であることを前提に賃料収入を返済原資と見込んで融資しています。たまたま物件の所有者が破産したからといって、何の落ち度もない賃借人が立ち退きを迫られる理由はありません。
今求められているのは、フランス、ドイツのように正常な賃借人の保護を拡充することです。改正案がその方向を顧みなかったのは、不良債権早期処理を求める規制緩和論者や大手ディベロッパーの要求のみを最優先させたものと言わざるを得ません。
なお、労働債権の先取特権の種類及び範囲の拡大、扶養料等の債権の履行確保は、改善であり、賛成であります。
以上、反対の理由を申し述べ、反対討論を終わります。