日本共産党

仲裁法案 反対討論

2003年7月24日 参議院 法務委員会 日本共産党 井上哲士議員 

 日本共産党を代表して、仲裁法案に対して反対の討論を行います。

 仲裁制度は、当事者の合意がある場合に、裁判を受ける権利を放棄し、仲裁によって私的に紛争を解決する制度です。国際商事事件や一定の限定された分野での対等な立場にある当事者間において仲裁制度を活用することは合理的であり、これまでの法整備に当たっても我が党は賛成してまいりました。しかし、本法案は以下の理由により反対であります。

 その理由の第一は、本法案が、本来、力関係が対等な当事者間で行われるべき仲裁制度を、国内の一般民事紛争すべてについて対象としており、しかも紛争発生時の事件に限らず、将来において生ずる紛争すべてに仲裁合意を有効としている点であります。

 これによって、知識、情報量、交渉力で圧倒的な力の差がある当事者間においても、仲裁合意がなされれば、仲裁制度での解決が迫られ、仲裁で不服がある結論が出ても裁判に訴えることができなくなってしまいます。

 我が国の企業間取引では、建設業における下請関係や運送、卸、金融取引など、ほとんどの分野で力関係に差があるため、取引を成立、維持しようと思えば、仲裁合意を拒否したくとも拒否できない実態があります。ですから、社会的に弱い立場にある方が不利な仲裁合意を押し付けられ、裁判を受ける権利に重大な侵害を及ぼす危険が強いと指摘しなくてはなりません。まして、仲裁機関の公平性を担保する法的保障も本法案にありません。

 反対の第二の理由は、労働者、消費者に対する保護規定について、仲裁制度の対象から外したわけではなく、あくまでも当分の間というものである点です。これでは今後の改悪の危険性は残っていると言わなければなりません。将来の紛争に関する仲裁合意はすべての国内取引について無効とすべきであり、本法案については反対であります。

 以上で反対討論を終わります。


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