日本共産党

生保予定利率引下げ法案 反対討論

 2003年7月18日 参議院 本会議 日本共産党 池田幹幸議員

 私は、日本共産党を代表して、保険業法一部改正案に反対する討論を行います。

 本法案に反対する第一の理由は、契約者が受け取る保険金を最大四〇%も削減し、国民の将来に重大な打撃を与えるものだからであります。

 公聴会の中では、公述人の方から、深刻な被害を引き起こすことになり、高齢者にとって耐えられない仕打ちとの指摘がありました。さらに、賛成の立場から参加された公述人からでさえ、老後の資産形成や万が一の不幸への備えを行ってきた保険契約者の生活設計を大きく損なうもので、社会的混乱は計り知れませんと、厳しい指摘がありました。

 多くの国民が社会保障の改悪や庶民増税による負担増、リストラや賃金の削減による収入の減少に苦しんでいます。その上、骨身を削って保険料支払いを続けている生命保険まで予定利率が引き下げられて保険金が大幅に減額される、こんなことは断じて許せません。

 反対する第二の理由は、契約違反を公然と認め、社会の基本的なルールを破壊することであります。

 本法案は、保険会社に対しては、約束した保険金を払わないという明らかな契約違反を許し、その負担を弱い立場に置かれている保険契約者に押し付けるものであります。契約違反を犯す側、約束を破った保険会社の側は不問に付し、何の責任もない個人契約者の側が保険金カットという重い負担を強いられる、正に正直者がばかを見るようなことは許されません。

 金融庁は、自治的手続によることでその契約違反を正当化しようとしています。しかし、その自治的手続なるものは、形骸化した総代会を意思決定機関と位置付けた上、契約者にとって唯一の手段である異議申立ての要件を厳格に定めており、契約者の意思は事実上反映できないものとなっています。しかも、保険会社自らが予定利率の引下げなしでは破綻の蓋然性が高いと認めている下では、対象契約者にとっては異議申立てをして破綻してもいいのかと脅迫されているに等しく、事実上異議申立てなどできません。

 また、委員会質疑の中で明らかになったように、予定利率引下げ対象外の契約者についても解約ができなくなるなどの重大な影響を受けるにもかかわらず、これらの契約者については、十分な説明がされないばかりか、異議申立ての機会もありません。これでは、自治どころか差別的な扱いだと言わざるを得ません。

 更に重大なことは、法案が契約者集会を盛り込まなかったことです。契約者集会は総代会が決めた契約変更案を契約者が直接議決するために開催されるもので、金融審議会が、契約者の納得を得るため不可欠であり、予定利率引下げ制度導入の前提条件としていたものです。政府は、この契約者集会の開催を切り捨てた理由について、契約者数が何百万人と膨大であり現実的でないからだと言い訳しています。しかし、契約者が膨大であることは先刻承知であり、金融審議会も具体的な方策を提示しています。こんな言い訳が通らないことは明らかです。現実的でないと言うならば、予定利率の引下げこそ現実的でないと言わざるを得ません。事実、すべての相互会社が、最近の総代会で、仮に本法案が通っても予定利率の引下げは行わないことを表明しているではありませんか。

 反対する第三の理由は、本法案が契約者の負担で生命保険会社と株式持ち合い関係にある銀行を救うためのものとなっており、保険契約者保護という口実が全くの偽りだからです。

 政府は、この時期に本法案を提出した理由として、最近の二年間で生保の経営環境が更に悪化したことを挙げています。その最大の原因は、竹中大臣自身が認めているように、株価の大幅下落であります。本当に生保の危機を乗り切ろうというのなら、この株下落リスクをなくすことこそ必要です。特に、この二年間で六〇%も下落している銀行株は生命保険会社にとって大きな爆弾となっています。本法案の本当のねらいは、生保大手十社だけで六兆三千億円を超える生命保険会社から銀行への拠出を何とか維持させるため予定利率の引下げを行おうとするもので、銀行救済のために、保険契約者、何千万人という国民にツケを回すものと断ぜざるを得ません。

 第四の理由は、本法案が国民の理解を全く得ていないことです。

 本法案の原案を検討した二年前の金融審議会は、国民、契約者の理解、すなわち社会的認知が制度導入の前提だと強調し、環境が整っていないと結論付け、予定利率引下げの制度をお蔵入りさせました。今日の環境は二年前と変わったのか。全く変わっていません。最近の世論調査では、予定利率引下げに賛成はわずか五・八%にとどまり、社会的認知など全く得られていないことを示しています。

 圧倒的多数の国民が反対している中でこのような法律をつくったらどうなるか。それは現実の動きを見れば明らかであります。本法案が浮上して以降、契約解除がけた違いに増加しております。今年三月から直近の解約数は、転換による減少を含めて二千四百八十五万件に上り、昨年同時期の二百八十九万件に比べ八倍以上に上っています。

 本気で生命保険の契約者を守ろうというのならば、今一番求められているのは生命保険への信頼性を高めることであります。にもかかわらず、これに全く逆行する法案を数を頼みに力ずくで押し通そうという政府・与党の態度は言語道断であります。厳しく批判し、反対討論といたします。(拍手)


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