日本共産党

司法制度一括法案 反対討論

 2003年7月17日 参議院 法務委員会 日本共産党 井上哲士議員 

 私は、日本共産党を代表して、司法制度改革のための裁判所法等改正案に対し、反対の討論を行います。

 反対の第一の理由は、本改正案の弁護士資格特例の要件緩和は、現行法曹養成制度の根幹である司法試験合格、司法修習終了という資格条件の例外を安易に拡大するものであり、多様化の名の下に国会議員、特任検事、企業法務担当者らに弁護士資格を付与することは、司法修習の形骸化を進めるばかりか、これから立ち上がろうとしている法科大学院によるプロセスによる法曹養成の理念にも真っ向から矛盾するものだからです。

 国会議員等に形だけの研修を課すという修正も、法案の本質を変えるものではなく、お手盛りという国民からの批判を免れるものではありません。

 中でも、特任検事に司法試験、司法修習抜きで弁護士資格を与えることは重大です。合理的理由が全くないばかりか、民事について十分な知識があるとは言えず、また刑事についても検察側の視点でしか職務を行ってきておりません。幅広い人権意識を身に付ける訓練を行っていない者に弁護士資格を付与することは到底認められるものではありません。

 反対の第二の理由は、外国法事務弁護士に対して日本法弁護士を雇用できるように改めることにより、日本の法廷にアメリカの営利第一主義の法理を持ち込み、日本弁護士の自立をも脅かし、弁護士法の理念にも影響を及ぼしかねないからであります。

 日本の弁護士のみに与えられた法律事務に関しては、雇用主たる外国法事務弁護士といえども干渉してはならないとしていますが、現行の共同関係と違って、雇用関係になった場合に不干渉が守られる保障はありません。

 日本弁護士を雇用しようとしている外国法事務弁護士は、アメリカの数百人、数千人という弁護士を抱えた巨大ローファームであり、アメリカの多国籍企業の海外での収奪を支える仕事を専らにする巨大法律会計企業であり、これらの本格的な日本への進出に道を開くものであり、到底認められません。

 なお、非常勤裁判官制度の創設、弁護士の綱紀・懲戒手続の整備は、司法の国民的基盤の強化につながるものであり、賛成です。

 また、簡裁事物管轄の百四十万円への拡大は簡裁の人的基盤の充実が、さらに弁護士の営利業務従事制限の緩和は弁護士の社会的使命の強化などがそれぞれ欠くべからざる前提であることを付言しておきます。

 以上、本法案は、若干の改善点はあるものの、弁護士資格の要件緩和と外弁法改正により、日本の裁判制度と弁護士制度を基本的人権の擁護と社会正義の実現から営利追求第一に変質させかねない改悪部分が顕著であり、全体としては反対の態度を表明をし、討論を終わります。


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