私は、日本共産党を代表して、ただいま議題となりました心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律案に対し、反対の討論を行います。
本法案は、本院での最初の審議で、私たち野党の反対を押し切り、委員長職権による一方的な審議打ち切りがなされ、さらに参議院では、地域精神医療の充実に政府が後ろ向きという法案についての重大な問題点、法案がお金で動いたのではないかという重大な金権疑惑が噴き出す中、これがただされることなく、与党によるだまし討ちとも言える強行採決が行われました。
このような経過を踏まえるならば、本委員会に課せられた責務は、改めて、本法案のさまざまな問題点について、十分な時間をとって審議することであります。にもかかわらず、政府・与党が法案に関する一切の審議を拒否して採決することは、断じて許すことができません。強く抗議するものです。
反対の第一の理由は、新しい審判制度に基づく国の責任による医療が、真に心神喪失の状態で重大な犯罪を犯した者の治療と社会復帰に役立つのか、それとも、基本的人権を侵害する保安処分の強化になってしまうかの決定的な分岐点は、精神医療、とりわけ地域医療に対する人的、物的体制、予算がどのくらい手厚く確保されるかにかかっています。しかし、本法案ではその点が全く明らかにされておりません。保障もありません。
反対の第二の理由は、退院後の通院治療を含めた社会復帰のための医療・観察を保護観察所が中心となって行うこととしている点であります。
通院治療を含めた社会復帰のための施策は、まさに医療、保健、福祉、雇用の問題であって、厚生労働省が責任を持って行うべき分野であります。刑事政策として犯罪者の更生を目的とする保護観察所が対象者を観察するという法案の基本的仕組みは、まさに保安処分的発想に基づくものであり、また、現在の保護観察所は、この分野の専門性があるわけでもなく、更生保護本来の人員すら極度に不足しており、ここに責任を押しつけることはふさわしくないものと言わなければなりません。
反対の第三の理由は、法案に対する国民の理解が現時点で極めて不十分であるという点であります。
国民の基本的人権に重大な影響をもたらす制度を新設するに当たっては、その制度に対する国民の理解と合意を得て進めるべきであり、日弁連を初めとする関係団体と国民の理解と合意が十分に得られていない現時点での導入は、適当ではありません。
以上で反対討論を終わります。(拍手)