私は、日本共産党を代表して、国立大学法人法案等関連六法案に反対の討論を行います。
以下、反対する理由を具体的に述べます。
反対する第一の理由は、学問の自由、大学の自治を踏みにじるものだからです。本来、各大学が自主的に定めるべき大学の目標を文部科学大臣が定めるなど大学の自主性、自律性を損ない、学問研究の内容にまで詳細に国が関与する仕組みにより、学問の自由が侵害され、基礎研究が危機にさらされることは明らかです。しかも、文部省に置かれる評価委員会と総務省に置かれる評価委員会の評価によって中期目標・計画の達成度が毎年評価をされ、その結果が予算配分に直結するだけでなく、文部科学大臣が中期目標期間終了時には廃止を含めた所要の措置を講ずるなど大学の生殺与奪を文部科学省が握ることになり、我が国の学問と研究がゆがめられ、知の発展基盤を損なうことになります。
第二の理由は、学校教育法上の設置者を国から法人に転嫁することで財政責任を後退させるからです。授業料は現在でも世界一と言われる高負担となっています。法人化で現在の額を標準にして法人ごとに決めるというものでは、学費の更なる値上げは避けられません。
第三の理由は、学内構成員の大学運営への参加を極めて限定的なものにする一方で、大学運営の中心に学外者の登用を義務付け、学長のみが教学、経営両面を一手に主宰することで大学の自治を形骸化させるからです。学外者には文部科学省関係者も対象とされており、これでは高級官僚の天下り先を提供することにしかなりません。
法案審議の中で政府・文部科学省の国会を無視したやり方は余りにも異常でした。来年四月一日の国立学校法人化移行を前提に法案の国会提出前から、大学の中期目標・計画の作成作業を始め、新たな会計システム導入、就業規則の作成など法人化への準備作業を始めていることが明らかになりました。政府・文部科学省のこれらの行為は、国会審議を法案を追認させる場としてしか考えていない姿勢の現れであり、国会を冒涜し、国会軽視も甚だしいことを厳しく指摘しておきます。
また、法人化に伴って、国立大学は労働安全衛生法の適用となります。文部科学省がまとめた対策は大学の深刻な実態を反映していないもので、基準を満たすために一体どのくらいの経費と時間が掛かるのかは何ら明らかにされていません。このままでは教職員、学生、院生の安全と健康を守ることができず、大学に違法状態をもたらすことは明瞭です。
また、大学評価の在り方、財務問題、国立学校特別会計の債務の問題、大学運営を支える定員外職員の雇用、公立学校教員の給与問題など、ほかの法案にも余りにも多くの問題があると言わなければなりません。
民主党提案の修正案は、中期目標の作成主体を文部科学大臣から大学に変更するなど、大学の自主性、自律性を尊重したものもありますが、国による大学の設置責任、財政責任の法人への転嫁、教職員の非公務員化など政府案が抱えている問題点が抜本的に解決されておらず、残念ながら賛成することはできません。
この法案には大学人の合意はありません。今、法案の徹底審議と廃案を求める声は大学関係者だけでなく、国民の間に日増しに強まっています。
この法案は憲法が保障する学問の自由と大学の自治を真っ向から踏みにじる憲法違反の法律であることを強く主張し、反対討論といたします。
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