私は、日本共産党を代表し、自衛隊のイラク派兵法、軍事占領支援法に対し、反対の討論を行ないます。
本法案は、政府の言うような、イラクの復興・人道支援のための法案ではありません。米英がはじめた無法なイラク戦争とそれにつづく軍事占領に自衛隊を派兵し、日本が軍事占領に参加・加担する、まさに軍事占領支援法であります。
戦後はじめて軍事占領支援のために、しかも、いまなお戦闘が続くイラクに自衛隊を派兵することは、武力の威嚇・武力の行使、交戦権を否認した日本国憲法9条に真っ向から違反するものであり、到底許されるものではありません。
かかる重大な法案を通常国会会期末に提出し、会期を延長したうえに、わずか1週間という短期間の審議で、中央・地方公聴会もイラク現地調査も行なわず、数の力で押し通そうとしているのであります。議会制民主主義を無視した、不当極まりないやり方に断固抗議するものであります。
そもそもこの法案の出発点は、イラク国民からの要請にあるのではありません。「ブーツ・オン・ザ・グラウンド」「地上部隊をだせ」というアメリカの要求に従い、小泉総理が、「はじめに自衛隊派兵ありき」ですすめたものであります。本法案は、その内容においても、そのやり方においても、その動機においても、断じて容認できないものであります。
以下、具体的に反対理由をのべます。
第一に、この法案が前提としている、米英軍によるイラク戦争に全く正当性がないことであります。
政府は、今回のイラク攻撃が国連安保理決議に基づくものと言いますが、安保理事会がイラクに対する武力行使を認めていないことは明らかであります。アメリカが、イラクへの武力行使容認決議を画策したのにたいし、国際社会の圧倒的多数がこれを拒否した経過からいって明白であります。しかも、米英がイラク戦争の最大の「口実」とした大量破壊兵器はいまだ発見されず、米英国内ですら政府の情報操作の責任追及がおこなわれているのであります。小泉総理は、イラクが大量破壊兵器を「保有」していると「断言」しながら、いまだその根拠を示し得ないにもかかわらず、その責任を何ら明確にしていないことはきわめて重大です。イラク戦争はどこからみてもその「大義」は成り立たず、全く道理のないものであることは明らかであります。
第二に、政府は、米英の軍事占領に正当性があるといいますが、国連安保理決議1483は、無法な戦争に基づく占領行政に合法性を与えておらず、占領行政に対する国連加盟国の協力を要請しているものでもありません。無法な戦争の結果として占領国にたいし、国際人道法にもとづく義務や責任をはたすようもとめているにすぎないのであります。フランス・ドイツなどが、イラクへの派兵を拒否しているのは、当然のことです。
私は、沖縄の、米軍占領下で育ちました。占領された住民にとっては、いかなる理由によっても外国占領軍は容認しがたいものであります。しかも、それが、違法・不当な軍事占領であればなおさらであります。
現に米英の軍事占領支配は、イラクの国民から深刻な抵抗と反発を受け、武力衝突が続発しています。これに対し米英軍は、「治安の回復・安定」の名のもとに掃討作戦を展開しているのであります。その米英占領軍を自衛隊が支援することになれば、イラク国民の目に占領軍の加担者と映ることは明らかであります。占領に抵抗するイラク国民から反発と抵抗を受け、砲火を交えるという危険極まりない事態も起こるのであります。米英の軍事占領に自衛隊が参加・加担することは、断じて容認できません。
第三に、イラクへの自衛隊派兵は、憲法の平和原則に真っ向から反するものであります。
本法案は、戦後初めて、現に戦闘が行なわれている地域に、自衛隊の陸上部隊を展開させるものであります。政府は、イラク国内に「非戦闘地域」を設定するから憲法違反にならないと言いますが、イラクの実情に照らせば、これが全くの虚構の議論であることは明らかであります。
米軍に対する攻撃が連日、起こっており、米軍の司令官自身が、「イラク全土が戦闘地域」「戦争はまだ終わっていない」と発言しています。このようなイラク国内で、自衛隊は、武器・弾薬を含む輸送、補給、医療など、米軍への後方支援活動を行うのであり、いくら「非戦闘地域」だと言っても、攻撃を受けないとは言えないのであります。
しかも派遣する自衛隊の武器装備に法的制限はありません。すでに、防衛庁は、重機関銃を装備した装甲車や対戦車砲などの武装を検討しています。
米軍支援活動中の自衛隊が、攻撃を受ければ、指揮官の命令の下に部隊として組織的に武器を使用し反撃することになるのであります。これが、武力による威嚇、武力の行使、交戦権を否認した日本国憲法に反することはあまりにも明らかであります。
最後に、日本のイラク支援は、イラク国民の意思を尊重し、イラク国民の要求に基づき、国連を中心とした、非軍事の人道・復興支援でなければなりません。
これは、すべての加盟国に人道救済・復興支援を求めている国連決議1483にも合致するものであります。
私は、日本共産党の現地調査団の一員としてイラクを訪問しました。医薬品が不足している、医療技術の水準をあげたい、農業支援や雇用、職業訓練など、イラクの復旧、復興のため、さまざまな分野で、日本の支援を求める声をききました。イラク国民から「軍隊の派遣」を求める声はまったくありません。こうしたイラク国民の声にこそ耳を傾けるべきであります。
イラク国内に自衛隊を派遣し、イラク国民に敵対して軍事占領を支援することは、日本とイラク国民、イスラム社会との友好関係に深刻な障害をもたらすだけであります。イラク国民の反発と抵抗によって、米英の占領支配が泥沼化することは必至であります。
長期にわたる軍事占領支配に自衛隊を派兵することは、日本の進路にとっても、世界の平和秩序からいっても、きわめて重大な障害をつくりだす誤りであることを厳しく指摘し、憲法違反のイラク派兵・軍事占領支援法の廃案を断固として主張し、討論をおわります。