日本共産党

担保物権・民事執行制度にかかわる民法等「改正」案の反対討論

 2003年6月13日 衆議院 法務委員会 日本共産党 木島日出夫議員 

 私は、日本共産党を代表して、担保物権及び民事執行制度の改善のための民法等の一部を改正する法律案、同修正案に対して反対の討論を行います。

 いわゆる占有屋等による違法な民事執行妨害、競売妨害等による収益が、暴力団を初めとする反社会的集団の資金源の一つにもなっており、その対策が必要です。その点で、それらへの対策として本法案の保全処分の強化、明け渡し執行の実効性の向上など不動産執行妨害対策の強化を行うことは必要なことと考えます。

 しかし、本法案が占有屋対策を理由に短期賃借権保護制度を廃止することは、賃貸マンション、賃貸テナントのほとんどに金融機関の抵当権がついている我が国の現状にかんがみると、社会的弱者である賃借人の保護を決定的に後退させることになり、到底認めることはできません。競売後、明け渡し猶予期間が設けられるといっても、原案での三カ月、修正案の六カ月では、賃借人の居住の安定を図ることなどできないことは明白です。

 そもそも、賃貸マンション、賃貸テナントなどは、その多くが、本来自己使用目的ではなく、文字どおり賃貸を目的として建設されています。金融機関も、そういう物件であることを承知の上で、賃料収入を返済原資と見込んで融資をし、抵当権を設定しているのです。たまたま賃貸マンション等の所有者が破産したからといって、何の責任もない善良な賃借人が立ち退かなければならないいわれは全くありません。こういう場合、フランスでは、賃借人は十二年間の保護が与えられます。ドイツでは、居住用の賃借権は保護されているのです。抵当権は賃借権を破らないという法格言さえあるのです。今求められているのは、短期賃借権保護制度の廃止ではなく、フランス、ドイツのように正常な賃借人の保護を拡充すべきことではないでしょうか。

 占有屋などは短期賃借権保護制度があろうとなかろうと執行妨害を行ってきたし、現に行っています。短期賃借権保護制度を廃止しても、占有屋はさまざまな形態で残ることが予想されています。執行妨害対策としても、短期賃借権保護制度廃止を行うことは本筋ではありません。にもかかわらず競売執行妨害対策と称して短期賃借権保護制度を廃止することは、不良債権早期処理の加速化を進める金融機関や大手ディベロッパーの要求のみを最優先させたものと言わざるを得ません。

 なお、本法案には、養育料等の債権の履行確保の制度の新設など賛成できる部分も少なからずありますが、改正法案の最大の焦点である短期賃借権保護制度の廃止は、とるべき法改正の方向が全く逆立ちしており、その及ぼす影響が甚大でありますから、法案に対し反対する次第であります。

 以上であります。(拍手)


法務委員会 質問・討論 一覧】 【委員会別 質問・討論一覧 インデックス


日本共産党の国会活動

「戻る」ボタンが機能しない場合は、ブラウザの機能をご使用ください。


著作権:日本共産党中央委員会 
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 Mail:info@jcp.or.jp