日本共産党

市町村合併特例法「改正」案 反対討論 (発言)

2003年6月12日 衆議院 総務委員会 日本共産党 矢島恒夫議員

 私は、日本共産党を代表して、ただいま提出されました市町村の合併の特例に関する法律の一部を改正する法律案に対して、反対の立場から討論を行います。

 反対の第一は、この間、国による強制合併の進行の中で、数々のあめとむちが用意され、合併のためには何でもありというモラルハザードを全国で招いており、この法案もその一つだからであります。

 自主的であるべき市町村の合併が、二〇〇〇年十二月の国の行革大綱に「一千を目標とする」と数値目標が明記されて以来、政府主導で上から強引に進められてきました。

 目標達成のために、交付税の段階補正の見直しや市町村に対する知事の勧告権、あるいは議員の定数や任期の特例、合併後の交付税の補償など、さまざまなあめとむちが用意され、新たな補助金は創設しないとの政府みずからの方針にさえ反する合併補助金も創設されました。

 さらに、地方財政危機の最大の要因の一つが、景気対策のための地方単独事業の拡大とその償還財源を交付税で補てんする手法にあったことを政府自身が認めながら、同様の手法を合併促進のために容認するなど、まさに政府自身がモラルハザードを招いている事態に至っているのであります。

 しかも、三万人特例の期限が合併特例法本体の期限より一年前とされたのは、そうでないと合併促進のインセンティブが働かないとの理由からであり、その期限が切れるからといって合併特例法本体の期限に合わせることは、全く見通しのない、無節操、無定見と言わざるを得ません。

 第二は、法案施行の結果、住民と自治体に新たな財政負担をもたらしているからであります。

 二年前、この三万人特例の最初の適用を受けて誕生した潮来市では、福祉・保健サービスの向上、行財政の効率化、基盤強化をうたい文句に合併しましたが、合併による公共事業の急増で借金も急増する。一方、政府の宣伝に反して、地方交付税が二年間で約六億円も減少する中で、この二〇〇三年度の予算編成に当たっては、財政破綻の直前にあることを表明せざるを得なくなっています。この財政危機の乗り切りのために、国保税や保育料の引き上げ、人間ドック助成の廃止など、住民負担の押しつけとサービス切り捨てを進めようとしています。その上、財政力の強化のためと称して、新たな合併を視野に入れざるを得ない事態にまで立ち至っているのであります。

 第三は、地方自治制度の形骸化を招く問題であります。

 地方自治法第八条の市となるべき要件のうち、人口五万人以上という条件は、市が町村と比べて重要な事務を処理するという趣旨から、市の要件としてふさわしい人口規模を有するという必要性から設けられたもので、連檐要件や都市的業態要件は、市となる地域が都市的形態を備えているかどうかを認めるための要件として設けられたものと説明されています。

 どのような規模と形態の自治体を市にするかは、まさに地方自治制度の根幹の一つとも言うべきものであります。人口五千九百十人の歌志内市を初め、七十三の市が人口三万人を満たしていない現実がある一方で、人口三万人を超える町村が百十八存在するという実態があります。こうした制度の基本の検討や実態との調整を抜きにした合併促進のための特例は、地方自治制度の形骸化を招くものと言わなければなりません。

 最後に、法案の提出方法に関して一言述べます。

 今回、法案が委員長提出の法案となっていますが、本来、委員長提出の法案は全会一致を基本とすべきものであります。これは長年の国会運営から導き出された慣例であり、法案に対する態度の違いはあっても、与野党共通して守らなければならないルールであります。長年の国会運営のよき慣例を破ることは到底容認できません。

 また、その内容も、片山総務大臣が五月八日の経済財政諮問会議に提出した市町村合併促進プラン、いわゆる片山プランの中に盛り込まれていたものであります。それを言論の府としての国会が、質問ができない委員長提出の方法で発議するのは、みずからの審議権を放棄するものと言わなければなりません。

 三年前の十一月に同様の意見表明をしましたが、再び同じ過ちを、数を頼んで強引に押し通すことに抗議を表明して、討論を終わります。(拍手)


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