私は日本共産党を代表し、保険業法一部改正案に反対する討論を行います。
本法案に反対する最大の理由は、契約者が受け取る保険金を大幅に削減し、国民の生活設計に大打撃を与えることであります。
委員会審議を通じて、本法案による予定利率引下げの対象となる契約が五一四四万件という膨大な数にのぼることが明らかになりました。終身保険の四七・五%、養老保険の五二%、個人年金保険の六〇・四%、定期付養老保険の七五・九%など、国民が老後に備えて積み立てた貯蓄性の高い保険契約の大多数が引下げの対象となり、金融庁の試算によっても、最大四〇%も保険金がカットされる方が出てきます。
度重なる社会保障の改悪、庶民増税に続いて、国民が万一の備えとしている生命保険金まで削ることなど、断じて許せません。
第二に、政府は、「契約者の理解を前提とした自治的手続だ」などと繰り返しています。しかし、実際は、入口では行政命令によって、契約者の知らないうちに金融庁が会社を申請に追い込み、出口では解約の停止命令で契約者の行動を縛ることになっています。さらに、形骸化した総代会が会社の意思決定を行い、異議申立ての要件を厳しくして、事実上契約者の意思が全く反映されない仕組みになっています。これでどうして「自治的手続」などと言えるのですか。契約者の理解など得られないことは明白であります。
そもそも今日、生保会社の経営難をもたらしているのは、デフレ加速と金融機能不全の悪循環を作り出し、まともな資産運用を不可能にしている小泉内閣の経済大失政であります。大手生保一〇社は、この三月期決算で、「逆ざや」を穴埋めした上で、なお約二兆円の利益を上げました。ところが、銀行株等の下落によって二兆円を超える損失が生じ、利益がすべて吹き飛んだのです。小泉内閣の経済失政が引き起こした株価下落が、生保会社を追い込んでいるのは誰の目にも明らかです。本法案は、こうした小泉内閣の経済失政のツケを何の責任もない契約者に押しつけるものにほかならず、到底容認できません。
同時に本法案は、生保会社の破綻を回避することにより、本来であれば真っ先にカットされ、契約者保護のために充当されるはずの銀行の基金等を保護し、逆に契約者にそのツケを負わせようとするものです。しかも、法案は、予定利率引下げと組織再編をセットで行うことを要求しており、契約者の犠牲の上に生保業界の再編を進めるものになっています。政府は、口を開けば「契約者保護」と言いますが、本法案は、二重三重に契約者に犠牲を押しつけるものであり、政府の答弁は国民をあざむくものに他なりません。
そういう法案だからこそ、政府は、一斉地方選挙前には国民からひた隠しにし、選挙が終わったとたん、パブリックコメントも行わず、十分な説明もないままに採決を強行しようとしているのです。本法案の原案を検討した二年前の金融審議会は、国民・契約者の理解、すなわち「社会的認知」が制度導入の前提だと強調し、環境が整っていないと結論づけました。今回、世論調査では賛成はわずか五.八%、過半数が反対しており、社会的認知など全く得られておりません。審議の中でも金融審議会の部会長自身が、「社会的認知はない」と答弁しました。政府の従来の立場ですら、法案提出の前提が整っていないのは明らかであり、ましてや採決強行など論外であります。
それにもかかわらず、あくまで法案を押し通そうという、政府・与党の国民無視の乱暴な態度を厳しく批判し、反対討論といたします。