私は、日本共産党を代表して、仲裁法案に対して反対の討論を行います。
反対の第一の理由は、本法案が国内の一般民事紛争すべてを仲裁の対象としており、しかも紛争発生後の事件に限らず、将来において生ずる紛争すべてに仲裁合意を有効としている点であります。
我が国の多くの企業間取引を見ると、下請関係や、卸、小売の関係、金融取引関係など、力関係に大きな差があるのが通常であり、下請企業が取引を成立、維持しようと思えば、将来の紛争を仲裁制度で解決するという契約事項を拒否することは不可能です。大企業や使用者に対して情報量や法的知識、交渉力に劣る労働者、消費者、中小企業などの社会的弱者が大企業の都合により不当な仲裁合意を結ばされてしまうことになり、紛争が発生した場合も裁判に訴えることができなくなります。
我が党は、紛争発生後の事件について、当事者間の合意を前提に仲裁によって迅速簡易に解決するという仲裁制度一般について否定するものではありません。国際商事事件や一定の限定された分野での対等な立場にある当事者間において仲裁制度を活用することは合理的であり、これまでの法整備に当たっても、我が党は賛成してまいりました。しかし、本法案は、将来生ずる国内の一般民事紛争すべてを仲裁の対象としており、国民の裁判を受ける権利に重大な侵害を及ぼす危険が強いので、賛成するわけにはいきません。
反対の第二の理由は、労働者、消費者に対する保護規定が不十分な点であります。
本法案は、第一の理由で述べたような危惧を払拭するために、労働者、消費者について法律の附則で保護規定を設けています。しかし、あくまでも限定的に当分の間保護するというもので、仲裁制度の対象から外したわけではなく、これでは今後の改悪の危険性は残っていると言わなければなりません。将来の紛争に関する仲裁合意はすべての国内取引について無効とすべきであり、本法案については反対であります。
以上で、反対討論を終わります。(拍手)