日本共産党の西山登紀子でございます。日本共産党としての意見表明をいたします。
本調査会の二年目は、「真に豊かな社会の構築」をテーマとして、私も参加させていただきましたニュージーランド、オーストラリアの海外調査や沖縄など国内調査、示唆に富んだ参考人質疑などを含めて旺盛に活動を進めてきました。
まず、豊かさとは何か。それも、二十一世紀に生きる私たちの本当に幸せに生きていると実感できる豊かさとは一体何なのかについてです。
参考人の御意見の中で、子供も大人も何回もやり直しが利く、失敗してもセーフティーネットはきっちり張られている安心感のある社会という、選択の幅のあるゆとりのある社会像は共通していました。また、社会の中における個人の存在感の希薄さが豊かさを実感できない最大の問題だ、家族や友人、周囲の人と仲良く愛し合って生きていけることという人と人とのコミュニケーションの問題から、自由な時間と空間の中で創造活動や芸術活動ができる、働きながら、土曜、日曜は自由に都市と農村の両方の生活をエンジョイできる、仕事は納得のいくエンジョイできるものという個々人の自由なライフスタイルの実現まで、いずれも示唆に富んだものでした。
そして重要なことは、NPOの参考人の述べられた、個人の価値観に国家が介入しない、自己の自立心の確立こそ豊かさの原点という意見は、民主主義の花開く二十一世紀の豊かな日本社会を作る上で大事な視点ではないでしょうか。
次に、重点的に調査されたライフスタイルについてです。
二十一世紀の世界の流れを見るとき、男女がともに仕事も家庭も両立できる新しい時代に向かっていると考えます。今回、参考人からは、日本は経済大国でありながらこうした世界の水準から大きく立ち後れ、過労死や働き過ぎという問題があり、仕事と家庭生活のバランスを欠いているとの指摘がありました。これからの日本の国際的発展にとって極めて重大な指摘です。
また、その際、日本の男性の働き過ぎの弊害が大きくクローズアップされたのがこの間の調査の特徴でした。参考人からは、これからのワーク・ライフ・バランスを可能にするためには、男性が専ら会社で働いて女性は育児をするという偏った労働時間の再配分が必要との指摘、日本企業はワーク・ライフ・バランスは女性の問題というが、男性にとっても重要な問題であり、企業が真剣に考える人事戦略の大きな柱が必要だ、また、企業も行政も仕事と家庭の両立政策は母親支援が多いが、男性が家庭責任を果たせるような施策や制度を取らないと少子化は止まらないなどの意見が繰り返し強調されました。ここ数年の人間らしい真の豊かさを求める国民の意識の変化を反映するものだと考えます。
もちろん、日本の働く女性のM字カーブや、出産、育児の多大な機会費用の問題も大きな社会問題であり、根本的改善が必要です。出産は社会的機能であり、女性だけが負う問題ではないからです。保育所、学童保育の抜本的拡充、男女の賃金格差の是正、育児休業の手当の引上げや、育児時間が保障される職場環境の確立が急務です。
昨年、芝信用金庫、住友ミセスと、相次いで職場の賃金、昇格に関する男女差別裁判で歴史的に原告が勝利いたしました。しかし、今また日本のリーダーカンパニーのJALが女性客室乗務員の育児に関する深夜勤務免除を大幅に制限し、事実上多数を就業困難に追いやる重大問題が起きています。
男女の働く権利と子育ての権利が尊重される日本企業、また、子育て支援、労働時間の短縮、パート労働の権利の保障、サービス残業を根絶するなど、雇用を守るルールのある日本社会でなければ国際的信用も得られません。
多様なライフスタイルという場合、日本の財界が九〇年代に入って、多様で柔軟な働き方の拡大、性に中立、自立した個人単位などをキーワードに、国際競争力の名の下、規制緩和路線を進めている企業ニーズのことを指摘しなければなりません。
今、小泉政権はこの二年間、財界とともに構造改革路線を推し進め、不良債権の早期処理、リストラ、失業、雇用の流動化と社会保障の切捨て路線を進めています。
しかし、この方向や、日本経済団体連合会の二〇二五年への新ビジョン「活力と魅力溢れる日本をめざして」の企業ニーズにこたえる多様なライフスタイルでは、国民、男女労働者の願う真の豊かさとは逆方向になる危険性を指摘せざるを得ません。
海外視察の教訓からも、GDPが日本よりも小さな国が週休二日、男女ともに夕刻には仕事を終え、十分余暇と家庭の団らんを楽しむ新しいライフスタイルを営んでいます。経済大国と言われる日本でこうしたゆとりある社会が実現できないわけがありません。政治のかじ取りが必要と考えます。
政府は、構造改革特区を設けて規制緩和を行うことが地域経済を活性化し、デフレ対策になるとしています。しかし、小泉内閣の総合デフレ対策の中心は不良債権処理の加速であり、地域経済に大きな打撃を与えるものばかりです。日本経済を疲弊させている原因は、規制緩和の遅れにあるのではなく、医療を始め社会保障の連続改悪など、国民負担を増やす小泉構造改革そのものにあります。
規制緩和万能主義ではなく、国民生活や中小企業の営業を守るための民主的規制を逆に強化するなど、今の社会に合った民主的なルールを確立することが求められているのではないでしょうか。
都市と農村の共生の問題では、食糧自給率を高め、農林漁業が成り立つように予算を重点的に価格保証に回すことが必要です。また、農山村を破壊する強制合併に多くの町村が反対しています。町村の将来は住民投票で決め、小さな村の大きな誇りを守ることこそ真に豊かな都市、農山漁村の交流と共生の道が開けると考えます。
個の確立・教育関係の参考人からは、条件整備として二十人から二十五人学級を全国レベルで実施する必要、教員増を大胆に行い、ゆとりを取り戻すこと、スクールデモクラシーの問題が提起されました。
日本の子供たちは諸外国に比べると、セルフエスティーム、自己肯定感が極端に低い。自己肯定感を高めるためにはあらゆる領域での子供参画を拡大する必要がある。参加することによって自己決定せざるを得なくなり、自信、達成感を持ち、自己責任感を形成し、セルフエスティーム、自己肯定感を高めていくと述べておられます。
こうした指摘は、豊かな社会を実現していく豊かな子供像にとって重要な指摘だと考えます。教育、文化、芸術に予算を抜本的に増やすことが必要です。
また、教育基本法の見直しの議論がありますが、今大切なことは、教育基本法を改悪するのではなく、その精神を教育の立て直しに生かすことと考えます。
最後に、NGO、NPOの発展は、これからの日本の自立した個人の豊かな生き方、青年、女性、高齢者の生き方に大きく希望をつなぐものです。
参考人から指摘のあった日本型の官指導のクワンゴの多い現状の改善、真に個人の自己実現につながるNPOの発展は、税制の改善を含めて民主的な日本社会を築く重要な課題と考えます。
大変貴重なこの一年の調査を更に来期につなげてまいりたいと思います。
以上で意見表明といたします。(拍手)