私は、日本共産党を代表して、政府提出の個人情報の保護に関する法律案及び関連四法案に反対、野党四党提出の修正案に賛成の討論を行います。
本委員会では、自衛官適齢者名簿問題、警察と大手サラ金業者の癒着疑惑と犯歴データ、信用情報を含む個人情報漏えいなど、法案審議の前提となる重大な問題が明らかになりました。これらの問題の解明をまともに行わないまま採決に付すことは、国会の責務を放棄するものであり、極めて遺憾であることをまず指摘するものであります。
反対理由の第一は、主務大臣制を取っており、表現、言論の自由を脅かすおそれがあることです。
主務大臣には、事業者の取り扱う個人情報が報道目的なのか著述目的なのかの判断がゆだねられており、報道や著述が狭く限定されたり、恣意的な判断がなされるという危険な構造になっています。疑惑の政治家がこの規定を根拠に苦情に応ぜよと要求し、報道の取材活動が妨害されるおそれが危惧されます。また、マスメディアを始め、NPOや市民団体、労働組合などの活動に公権力が介入する道を開くべきではありません。
反対の第二は、法案には、思想、信条など個人の名誉、信用、秘密に直接かかわるセンシティブ情報収集の原則禁止規定が欠落していることであります。
政府は、類型化できないからとしていますが、この規定は国際基準となっております。個人情報保護条例を策定している地方自治体の六割も既に実施しており、さらに経済産業省などのガイドラインにも明記されております。
反対の第三は、自分の情報の取扱いに本人が関与し選択するという自己情報コントロール権が明記されていないため、企業や行政機関の運営が優先され、個人の権利が後景に追いやられています。
目的外利用についても、行政の都合や利便性に偏った判断で、個人情報が国の機関から地方公共団体まで全国の行政機関で使い回しされるおそれが払拭できません。行政機関法のこうした欠陥の重大性は、委員会審議で明らかにされた、都道府県警察に個人の情報保護の法体系の網が掛けられていないことなどによっても一層浮き彫りになったことを指摘しておくものであります。
反対の第四は、政府案の策定によって、金融など手厚く個人情報保護策を講ずる必要がある分野の施策がむしろ後退するおそれがあることであります。
一方、野党の修正案は、第一に主務大臣制をやめて第三者機関を設置する、第二にセンシティブ情報の収集を原則禁止とする、第三に自己情報コントロール権を明記することなどによって、これらの法案の欠陥を改めるものであります。
政府は、本法案の成立をもって住基ネットの本格稼働の免罪符にしようとしていますが、とんでもありません。それは、問題が多い本法案が成立しても、個人情報の保護に万全を期するため所要の措置を講ずることにならず、住基ネットの個人情報の漏えいの危険性がなくならないからであります。このような住基ネットは直ちに中止すべきであります。
日本共産党は、今後も基本的人権の大切な柱であるプライバシー権を守り、個人情報の保護と表現、報道、言論の自由を守るために国民の皆さんとともに全力を尽くすことを申し上げ、討論を終わります。