私は、日本共産党を代表して、裁判迅速化法案及び同修正案、民事訴訟法等改正案に反対、人事訴訟法案に賛成の討論を行います。
まず、裁判迅速化法案についてです。
日本国憲法は、公平かつ公正で迅速な裁判を受ける権利を国民に保障しています。行政事件、労働事件、薬害事件、公害事件、医療過誤事件など証拠の偏在等が問題となっている一部の民事事件や一部の刑事事件の審理長期化が社会的問題とされています。しかし、これらは民事訴訟については挙証責任の転換、証拠収集手続の抜本的改善など、また刑事訴訟については検察官手持ち証拠の全面開示、取り調べ過程の可視化などによって、公平かつ公正で迅速な裁判の実現を図るべきであります。
しかし、刑事訴訟については、司法制度改革審議会が示した裁判員制度も含め、いまだ迅速化の方策は示されていません。また、民事訴訟についても、今回、民事訴訟法改正案によって方策が示されていますが、極めて不十分です。この状況で迅速化を、専ら審理期間の期限を定め、裁判所や当事者等にそれを義務づけることによって達成しようとすれば、迅速化の名のもとに拙速な裁判を国民に押しつけることになり、裁判の命である真実の発見がないがしろにされ、裁判の公正、公平、適正を犠牲にしかねないのみならず、刑事事件にあっては冤罪のおそれ、民事事件にあっては正当な権利の救済が害されるおそれが生じます。
第二は、最高裁判所による迅速化の検証が、最高裁事務総局による個々の裁判体、裁判官への介入となり、裁判官の独立を脅かすおそれが強いからであります。
審議の中で、検証は、現に進行中の事件も対象として含まれることが否定されませんでした。個別裁判について、証人、検証、鑑定などの証拠採否の有無、計画審理をしたか否か、個々の裁判官の手持ち事件数や処理数など、個々の裁判手続のすべてが検証の対象となることが明らかになりました。
人事権を持つ最高裁判所事務総局がこのような微に入り細に入りの個別裁判の調査を始めれば、裁判の独立に対する侵害となるだけでなく、個々の裁判官は萎縮し、裁判迅速化のために、必要な証拠調べを行わないなど、裁判の拙速化が進むことは明白であります。
なお、与党及び民主党、自由党による修正案は、本案のこれらの問題を本質的に解決するものではなく、賛成できません。
次に、民事訴訟法等改正案についてです。
遅延が深刻な事件の迅速化のために、証拠収集手続の創設や主張立証責任の転換などが必要です。今回の改正では、それについて何一つ行われないまま、裁判所、当事者に審理の期限を義務づける裁判迅速化法のもと、審理計画、攻撃防御方法の提出期間、時機におくれた攻撃防御方法の却下の制度を創設して、迅速化の名による裁判の拙速化を促進することは、裁判の公平、真実発見からも大問題です。とりわけ、経済的、社会的弱者の権利が切り捨てられるおそれを増大させるものです。
第二に、専門委員制度は、専門委員の中立、公平性の確保に関する基本的な懸念が解消されず、また当事者が専門委員の意見を直接弾劾できるわけでもありません。さらに、専門委員の選任に伴い、裁判所が鑑定の採用に消極的になるおそれも指摘されています。
第三に、知的財産権訴訟の専属管轄化は、地方の企業、個人に必要以上の負担を強いるだけでなく、知的財産権に関する裁判所、弁護士などの能力を地方から失わせてしまいかねず、日本経済の均衡ある発展の見地からも問題です。
以上、反対の理由を申し述べ、討論を終わります。