私は、日本共産党を代表して、二〇〇三年度政府予算三案に反対の討論を行います。
まず、世界の平和とともに日本の経済にも重大な影響を及ぼしているイラク問題であります。
米英軍による道理のない戦争が、毎日、罪のないイラクの市民の命を奪っています。二十六日にはバグダッド市内の住宅地や市場などにミサイルが撃ち込まれ、多くの死傷者が出ました。正に、無差別爆撃が繰り返されています。この戦争は国連憲章と国際法に照らして断じて許されないものであります。私は、この暴挙を厳しく糾弾するとともに、軍事攻撃の即時中止を強く要求するものであります。同時に、小泉内閣に対し、武力攻撃支持を直ちに撤回することを強く求めるものであります。
昨日の国連安保理の公開協議では、アラブ連盟諸国などがこの戦争を国際法違反であるとして即時停戦、全面撤兵を求めています。そもそも、国連はこの戦争の根拠となる決議は一切行っていません。アメリカがイラクから侵略や攻撃を受けたわけでもありません。国連憲章で厳しく禁じられている不法な先制攻撃であることは明らかであります。
査察委員会のブリクス委員長は数か月の査察延長でミサイルなどの廃棄によって平和的に解決できると報告し、平和解決の道は開かれていたのです。ところが、アメリカは武力攻撃によってこの平和解決の道を断ち切りました。ブッシュ大統領の言明によっても、この戦争の目的が、大量破壊兵器の廃棄ではなく、武力によるフセイン政権の打倒であることが明らかであります。これは、他国の主権尊重、内政不干渉を定めた国連憲章を公然と踏みにじる無法そのものであります。
さらに、この戦争は、お年寄り、女性、子供たちなど多くの罪のない人々の命を奪う、人の道に背く虐殺行為であります。与党の幹部は人道的立場から戦後の復興支援と言いますが、人道上許されない殺りく行為を支持しながら、何が人道支援でしょうか。戦争を即時中止させることこそ、人の道ではありませんか。
我が党は、創立以来八十年、侵略戦争反対を貫いてきましたが、平和を願う世界と日本の人々とともに、この戦争をやめさせるために全力を尽くすものであります。
さて、予算についてですが、小泉構造改革路線の破綻は国民の暮らしにかかわる指標のどれを取ってみても明らかであります。完全失業率が過去最高を記録し、企業倒産は戦後二番目の高水準、勤労者世帯の実収入は二年前に比べて大きく落ち込んでいます。国の税収は九兆円も落ち込み、公債依存は史上最悪の三十六兆円で四四・六%も占め、小泉首相が昨年掲げておりました国債発行三十兆円枠をはるかに超える状況であります。減らすという不良債権は、処理しても処理しても逆に増えるという状況に陥っています。この破綻済みの路線にしがみつく小泉内閣には、もはや日本の経済、財政を語ることも、予算編成の能力もないことは明らかであります。
予算案に反対する第一の理由は、社会保障分野での負担増と給付減、庶民への増税で国民に莫大な負担増を押し付けるものだからであります。
平年度ベースで医療、年金、介護、雇用保険など社会保障の負担増と給付削減で二・七兆円、発泡酒やワインの税率引上げ、そして配偶者特別控除の廃止、消費税の免税点の引下げなど、庶民や中小企業の増税は地方税を含めて一・七兆円、国民の負担は合計四・四兆円の巨額となるわけであります。一方、首相が宣伝する先行減税は、製薬二十社が五百億円を超える減税の恩恵を受けることが明らかになりましたが、研究開発に投資できる黒字企業だけであります。金融や土地取引に関しても、資産運用できる一握りの大資産家しか適用されず、大多数の国民には無関係のものであります。
とりわけ深刻なのは、医療費の負担増問題であります。
昨年十月から七十歳以上のお年寄りの医療改悪で国民負担が大きくなった結果、治療を中断するなどの事態が続出しています。四月からのサラリーマン本人の三割負担は、受診抑制による国民の健康悪化を招くことは明らかであります。
ある患者さんは、がんが発見されて入院したら医療費が約百万円、二割で二十万円の負担、高額医療費の負担分は払えるが、二十万円の一時払いができなくて苦労した、三割負担なら三十万円となり大変なことになると語っています。
日本医師会など医療関係四団体が三割負担凍結などを求めて運動を展開し、二十二道府県でも意見書や請願が可決されるなど、国民の健康を守る運動は大きく広がっています。
野党四党が共同で健康保険本人三割負担凍結の法案を提出しましたが、与党はその審議さえ拒否しました。この与党の姿勢は、国民の声に背を向け、国会の責任を放棄するものであり、その責任は極めて重大であります。
反対の第二の理由は、未曾有の経済危機の中でも必死で日本経済を支えている中小企業に深刻な打撃を与えるものだからであります。
中小企業対策予算を七・一%も減らし、二十五年前の一九七七年当時と同じ水準に落ち込ませました。不良債権処理の加速化政策によって、銀行が自己資本比率の維持のため貸しはがしを強め、金利引上げに走り、その結果、赤字企業ばかりか、この不況の中でも頑張っている企業までが倒産などの窮地に追い込まれるという事態が広がっています。期限を切って無理やり不良債権を処理するやり方を改め、借り手企業の育成という銀行本来の機能を復活させる金融政策に戻すべきであります。
反対の第三の理由は、まともな雇用対策を行わず、史上最悪の失業率を更に悪化させる一方で、失業者への給付を大幅に削減するなど、働く国民に対して余りにも冷たい予算だからであります。
三百六十万人もの失業者が職を求めているのに、雇用の現場では異常な長時間労働のため過労死が増え、パソコンの勤務記録を改ざんしたスズキ自動車に見られるような違法なサービス残業が横行しています。サービス残業の廃止で九十万人、残業をすべてなくせば二百六十万人の雇用が増えるとの試算もあります。二十一世紀こそサービス残業のない日本をつくることが政府の責任ではありませんか。
反対の第四の理由は、国民の厳しい批判の的になっている無駄な公共事業が温存され、税金の無駄遣いと自然破壊の構造にメスが入っていないことであります。
関西空港第二期工事や諫早湾干拓、川辺川ダムの税金の無駄遣いと自然破壊はそのままの続行であります。浪費の温存と拡大を一層進め、十五か月予算として見れば、道路予算を含め公共事業予算は実質的には増大しており、浪費構造は明白であります。
また、軍事費については手厚く措置されていることも本予算の特徴であります。
イージス艦や空中給油機を始めとした正面装備費、ミサイル防衛日米共同技術研究、米軍との共同訓練経費、米軍への思いやり予算など、アメリカの軍事行動に協力することを中心とした軍事費も到底容認することはできません。
最後に、政治と金をめぐる問題であります。
昨年の鈴木宗男議員に続き、今国会でも、坂井衆議院議員の逮捕、大島農水大臣の疑惑の浮上など、政治腐敗の広がりと深さは目を覆うばかりであります。大島大臣は辞任せよとの国民の声に、小泉首相は本人の判断の問題などと無責任な態度に終始していますが、内閣の信頼性に直接かかわる重大な問題であります。
委員会審議では、小泉首相らに続いて大島農水相も公共事業受注企業から選挙期間中に一千七百万円の企業献金を受けている事実が明らかになりました。
これらは、自民党長崎県連事件と同様、選挙に関する寄附と疑われる献金であります。
我が党は企業・団体献金の禁止を提案していますが、少なくとも公共事業受注企業からの献金は直ちに禁止すべきであります。税金を還流する公共事業受注企業からの献金さえ禁止できない政府に対して公正な予算執行を期待できないのは当然であります。今や小泉内閣には日本の経済も国民生活も再建する資格も能力もありません。
私は、予算の基本を国民の暮らしを応援し日本経済を再建する方向へ転換することを強く主張し、討論を終わります。(拍手)
このほかの討論 → 【討論一覧】 (156通常国会、2003年 1/20〜)
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