私は、日本共産党を代表して、政府提出の平成十五年度における国民年金法による年金の額等の改定の特例に関する法律案について反対の討論を行います。
物価スライドの凍結解除で年金給付が〇・九%引き下げられようとしていますが、年金額の引下げは制度発足以来初めてのことです。年金の給付総額で三千七百億円の削減となり、年金に依存する多くの高齢者など二千九百五十万人の年金受給者の生活を直撃することになります。
さらに、今回の措置は、児童扶養手当や障害者関係手当、被爆者関係手当など十種類の諸手当に連動し、三十億円の給付が削減されます。政府は高齢者の年金削減は、保険料を払っている現役世代の賃金が下がっているからと言いますが、保険料で支えられているわけではない各種手当の削減を説明することはできません。
来年度の高齢者の負担増は年金給付額の削減にとどまりません。年金から天引きされる介護保険料が多くの市町村で引き上げられようとしているため、手取り額は更に減少します。しかも、既に昨年十月に施行された老人医療自己負担の定率化による負担増も深刻です。高齢者医療の負担増と介護保険料の引上げ及び年金給付の減額による高齢者の負担増は、一人当たり年間二万七千円に上り、年金受給者の生活にとって耐え難い打撃となることは明らかです。しかも、その影響すら検討していないのですから、余りにも無責任であります。
一方、年金資金運用基金の積立金運用の累積赤字は二〇〇一年度決算で三兆円を超え、さらに二〇〇二年十二月までで二兆円を超えています。累積赤字は本改正案による影響額の十四倍にも及びます。積立金運用の責任はだれも取らず、一方で高齢者の年金額を引き下げるなどということも許されません。
物価スライド制は、物価高騰による年金の実質減額を防止する仕組みとして導入されたもので、年金生活者の生活水準を維持することがその趣旨であります。四年前から物価が下がっていたのに、年金受給者の生活を考慮して政府は物価スライドを凍結してきたのです。更に物価が下がったのに今度は連結解除というのは筋が通りません。そもそも月額四万円未満の年金受給者が五百二十万人にも上る現状を放置して、更にその引下げを図ることなど断じて認められません。不況に苦しむ障害者や被爆者などの手当を削減することももってのほかであります。
年金給付削減は、高齢者の所得を奪い、消費不況を加速します。それは失業、倒産の連鎖へとつながり、結局社会保障財政の悪化をもたらす悪循環の道にほかなりません。そうではなく、社会保障に重点的に予算を配分して給付カットを凍結することこそ日本経済再生の第一歩であるということを強く主張して、反対討論とします。