矯正施設運営に関する決議(案)
当委員会は、政府に対し、矯正施設運営に当たっては、次の事項に特段の措置を執るよう強く求める。
一 昨年来、全国の矯正施設において種々の問題が表面化したことにより、行刑運営及び矯正行政に対する国民の信頼が大きく揺らいでおり、このような事態を放置することは、到底看過できないものである。
このような状況下にもかかわらず、いわゆる名古屋刑務所三事案を中心とする「行刑運営の実情に関する中間報告」は、当委員会の審議に照らしても、事実の存否を含め、不正確且つ不十分であるものといわざるを得ない。
この際、政府は、国民に信頼される開かれた行刑改革を実現するため、過剰収容問題の解消及び刑務官の増員を含む行刑運営のあり方全体を徹底的に見直し、特に矯正行政の責任や検察のあり方についても検討し、再調査の上、速やかに当委員会に報告すべきである。
二 矯正施設における医療については、格段に遅れていることから、早急な医療体制の充実が求められている現況にかんがみ、緊急に改善すべき点として、医師出勤体制の強化、医療スタッフの充実、外部病院への通院及び入院を含めた緊急医療体制の確立、精神医療及び薬物医療における専門医の配置、検査医療及び予防医療の導入などについて検討し、将来的には、医療と治療の観点から、厚生労働省や文部科学省との連携体制や、各医師会等との協力体制の構築を図り、十分な人的物的措置を施した矯正医療体制を確立するよう努めるべきである。
三 受刑者に対する人権救済については、国連人権委員会の勧告を十分に尊重したうえで、受刑者の基本的権利の法制化、公正で開かれた所内規則の制定、懲罰制度のあり方、信書の検閲のあり方、不服申立てシステムの確立、独立した第三者機関の専門家からなる刑務所監察制度の実現などを検討し、刑務所の最終目的が受刑者の有効な社会復帰にあることを念頭に、所要の措置を執るよう努めるべきである。
右決議する。