自然再生推進法案(原案) に対する反対討論

 藤木洋子議員 衆議院 環境委員会 2002年11月19日

 

 私は、日本共産党を代表して、自然再生推進法案に反対の討論を行います。

 今最も大事なことは、過去に自然環境を破壊した公共事業の反省に立って、法案の理念として、残されている自然環境の破壊を極力防止することです。また、自然環境の復元は、自然の復元の障害となっている施設等を取り除き、自然の復元力にゆだねることにすべきです。そして、新たな工作物の設置等は、自然環境の復元または国民の生命や安全の確保に不可欠最小限のものにとどめるべきです。

 しかし、この法案では、長良川河口堰や諫早湾干拓など、これまで自然環境を破壊してきた国土交通省や農林水産省が事業実施者となるわけですから、これらみずからの事業で破壊してきた自然の再生を行うはずはありません。公共事業による再生、創出が自然環境の破壊をしない保証は全くありません。自然再生という名目で新たな公共事業を実施する道具となる危険性が極めて強いものです。これが法案に反対する第一の理由です。

 次に、提案者は、この法案では、主務大臣が自然再生事業実施計画に助言を行う際に、自然再生専門家会議の意見を聞くこととするとされているので問題はないかのように答弁をしていますが、独立性、専門性、客観性を有した第三者機関を設置して、全体構想や事業実施計画を審査する仕組みは必要不可欠です。しかし、この法案は、これまで実施してきた公共事業が自然環境に与えた影響や、これからの自然環境復元の必要性について、客観的、科学的に評価する仕組みが全くないことです。

 さらに、提案者は、この法案は地域の主体性を尊重したボトムアップの仕組みにより自然再生の推進を期待するもので、行政側が事業を選定することにはならないと答弁しています。それならば、住民などが、特定の公共事業または地域や施設について、自然環境への影響や自然環境復元の必要性等についての評価を申し出る仕組みが必要ですが、その担保がありません。

 同時に、この法案は、関係行政機関や自治体、地域住民、NPOなどが参加する自然再生協議会で全体構想や事業実施計画の協議を行うことになっていますが、この協議会は事業実施者が事業を実施するための組織です。構成員の選定も実施者任せで、公正な選定を担保する仕組みがありません。したがって、三番瀬の円卓会議では、自然保護を称する団体から新たな埋め立てを求める要求さえ出されています。これでは、従来型の公共事業推進の隠れみのとされる危険があります。

 また、提案者は、協議会には地域の多様な主体が参加することが必須であり、NPOについても、その地域の自然再生に積極的に参画するNPOであれば広く参加できると答弁しています。それなら、協議会の構成員は公募によるものとする、地域住民や環境保護団体からの申し出があった場合は協議会を設置しなければならない等の仕組みが必要不可欠ですが、そうした仕組みも全く整備されておりません。

 この法案の主題であるべき自然再生を推進する上での整備がことごとく欠落しており、自然環境の保全に資するものと評価することはできません。これが反対の理由です。

 日本共産党は、公共事業等により損なわれた自然環境の復元の推進を図るとともに、残された自然環境の破壊を防止し、自然環境の保全に全力を尽くすことを表明し、反対討論を終わります。


* 討論は、通例、採決に際して、賛否の違う場合、各会派がその態度と理由などを述べます。
   特に、反対会派が、反対の理由、法案の問題点について述べます。

*委員会名、法案名等については、略称、通称等で記載している場合があります。


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