特殊法人等改革関連46法案に対する反対討論

 春名直章議員 衆議院 本会議 2002年11月19日

 私は日本共産党を代表して、独立行政法人国民生活センター法案等、特殊法人等改革関連46法案すべてに反対の討論を行います。

 すべての法案に反対する最大の理由は、今回の特殊法人改革の多くが看板のつけかえにすぎず、改革の名に値しないものだからであります。

 国民が期待する特殊法人改革の眼目は、ムダな部分は思い切って削減する一方、国民生活に必要は部門は拡大、充実させること、官僚の天下りをなくして利権と癒着構造にメスを入れること、ここにあります。ところが四十六本の法案には、こうした内容の改革は皆無であり、むしろ逆行しています。

 無駄の削減ではどうか。

 例えば、独立行政法人緑資源機構法案や独立行政法人水資源機構法案には、緑や自然破壊を引き起こしてきた大規模林道事業やダム建設事業など、多大な浪費を生み出してきた公共事業が依然として引き継がれ、温存されています。また、独立行政法人新エネルギー産業技術総合開発機構法案は、現行特殊法人の頭に「独立行政法人」の名称を加えただけ、肝心の業務内容は、同機構が進めてきた大企業奉仕の技術開発事業のすべてを継承するものとなっています。すでに廃止されたとされる石油公団も、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構に業務が引き継がれ、国民の批判が集中した油田開発に失敗すれば資金を返す必要がない「成功払い制度」は、形を変えて温存されたままです。このように、法案の多くが、看板のつけかえの一方、削減すべき企業・業界支援、ムダな公共事業推進部門は、依然として温存されたままなのであります。

 国民の大きな批判が集中している、官僚の天下りに何らの規制がかけられていないことも重大であります。

 高級官僚が特殊法人の特定のポストに就職し、数年勤めて高額の退職金を手に入れ、さらに関連ファミリ  企業の役員に天下り、そこへ仕事をまわす、この利権の構造こそまっ先に改革すべきです。

 ところが今回の改正では、天下りを受け入れるかどうかは独立行政法人側の判断とされ、その規制はまったく放棄されています。昨年四月、国の研究機関等が分離されて独立行政法人がつくられましたが、その役員数の約九割が旧組織からの横滑りや天下りで占められていることが明らかになっています。政府は、今回の独立法人化にあたって役員ポストを減らしたと説明しますが、これらの多くが、将来、官僚の天下りによって占められることは想像に難くありません。

 さらに「公務員制度改革大綱」では、営利企業への天下りについて、人事院の事前承認を廃止し、大臣承認に切り替えるとしています。これではいっそう天下りがはびこることになりかねません。天下りは、それ自身を法律によって規制することがどうしても必要であります。

 一方、看板かけ替えの陰で、国民生活と安全を支える部門を削減していることは許されません。

 消費生活が多様化し、相談件数が急増するなかで、独立行政法人国民生活センター法案は、国民からの直接の相談業務を廃止するとしています。国の消費者行政の明白な後退であります。

 社会保険診療支払い基金の民間法人化は、公正で全国一元的な審査支払い体制を崩壊させ、公的医療保険体制そのものを変節させかねません。

 独立行政法人医薬品医療機器総合機構法案は、法人の名称から「救済」の文字を削るだけでなく、医薬品の研究開発部門と審査部門、安全対策部門を統合するという、言わばアクセルとブレーキを一体化するもので、薬害エイズからの教訓にまったく反するものであります。

 他の多くの法案も同様であり、国民生活と安全を支える分野での明白な後退を「独立行政法人化」や「民間法人化」の名で強行することはとうてい容認できません。

 また、独立行政法人日本芸術文化振興会法案は、国が「政策目標」を明確にして、厳格な外部評価を実施するもので、本来自主的で創造的であるべき芸術・文化活動に対する権力の介入につながりかねず、許されません。

 日本共産党は、国民の期待する真の特殊法人改革にむけて、今後とも全力をつくすことを申し上げ、反対討論を終わります。


* 討論は、通例、採決に際して、賛否の違う場合、各会派がその態度と理由などを述べます。
   特に、反対会派が、反対の理由、法案の問題点について述べます。

*委員会名、法案名等については、略称、通称等で記載している場合があります。


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