知的財産基本法案に対する反対討論

 塩川鉄也議員 衆議院 経済産業委員会 2002年11月13日

 私は、日本共産党を代表して、知的財産基本法案に対する反対討論を行います。

 政府は、産業競争力強化のための産学協同促進など経団連の強い要求を背景に、今年七月、知的財産戦略大綱を策定しました。本法案は、知的財産戦略本部の設置など、この戦略大綱の実施体制を整備するためのものです。

 反対理由の第一は、本法案のように産業競争力強化に特化した知的財産政策を進めれば、大学等における学術研究を目先の市場化、実用化に直結するものにいっそう偏らせ、広範な学問分野における調和のとれた健全な発展を阻害するものとなるからです。大学等の研究成果が、産業的利用を含め様々に社会還元されることは望ましいことです。名大日高事件、薬害エイズ事件などでも明らかな、産学官協同の弊害、癒着の構造を正さなければ、健全な産学官協同の発展はありません。大学の自主的な研究基盤の拡充とともに、真理の探究を目的とし、その成果が人類の共有財産となることを目指す大学と、私的利潤を追求する企業との性格の違いを踏まえた、国民的合意に裏打ちされた、公正なルールの確立が必要です。

 第二に、本法案には、産業競争力強化の核となる、ものづくり基盤技術と知的財産の担い手である中小企業の位置づけ、その支援の観点が欠落しているからです。中小企業での技術開発支援とその成果の保護など中小企業の技術力の存続、発展なしには、日本の産業、特に製造業の再生はありません。金型図面の海外流出事件に見られるような、多国籍大企業による中小企業の権利侵害の実態にメスを入れ、我が国産業競争力の基盤の危機的状況を打開する方策こそが求められています。

 第三に、本法案は、国民財産の大企業への無償譲渡である日本版バイ・ドール制度の適用拡大、研究者の地位を不安定にする大学等における任期制の導入など、戦略大綱を実施するものだからです。これらのアメリカ型産学連携策のつまみ食いでは、我が国産業の競争力強化につながる保証はありません。

 最後に、国民の創造的活動の成果を尊重し創造者の権利を保護し、真に、我が国産業の競争力を強化するためには、以上指摘した問題点を踏まえた、国民的な議論と合意にたった知的財産政策を確立すべきであることを申し述べ、反対討論とします。


* 討論は、通例、採決に際して、賛否の違う場合、各会派がその態度と理由などを述べます。
   特に、反対会派が、反対の理由、法案の問題点について述べます。

*委員会名、法案名等については、略称、通称等で記載している場合があります。


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